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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


鈴童を探して

●オープニング
 ある雨の日。
「幽玄堂」の主人、香月・那智は傘を差しながら何かを探している様子だった。

「鈴童、どこですか?」
 ペットの犬か猫だろうか。
 気になったあなたは、那智に声をかけ、鈴童探しを手伝うことに。
 鈴童って犬ですか? それとも、猫ですか? と聞くあなたの問いに、那智は困った表情をしながらこう言った。
「…化け猫です。最近、人間に変化できたのは良いのですが、まだ耳と尻尾が隠しきれないのですよ。あの姿のまま、街中にいるのかと思うと…」
 確かにそれはまずい。
「鈴童は、トンボ柄の着物姿、赤い鼻緒の黒下駄を履い少年のような外見で、黒い猫耳、先が白い黒い尻尾が特徴です。手伝って…いただけますか?」
 那智は控えめに協力を求めた。ちなみに、甘いものにはものすごい目が無いとのこと。

 あなたは、那智と共に鈴童を探すことにした。

●協力者
「あの…どうかしたんですか?」
 困っている那智に声をかけたのは、青い番傘を差して歩いている溜息坂神社の宮司、空木崎・辰一(うつぎざき・しんいち)。
 彼の肩には、雨に濡れないよう、爪を立てて主人から離れまいと白衣をしっかりつかんでいるブチ猫式神の甚五郎と、茶虎子猫の式神、定吉がいる。
 そんな彼に、那智は何かを感じ取ったようだ。
「あなたは、何らかの力をお持ちのようですね。力のある方と見込んでお願いがあります。鈴童という名前の化け猫を捜すのを手伝っていただけますか?」
 自分の能力に気付く、ということは、この人物は只者ではないと睨んだ空木崎は、警戒しながらも那智に事のあらましを聞き返す。那智は、自分の店で買っている、性格には居候している化け猫の姿が見えなくなったので捜している、ということを事細かく説明した。
 捜し人ならぬ探し化け猫ですか…と呟くと
「僕でよければ、探すのを手伝わせてください。変身したのであれば、見つかるとまずいですし」
 と協力を申し出た。
「甚五郎と定吉の良い遊び相手になるかもしれませんしね。鈴童くん、いえ、ちゃん、と呼べばいいんでしょうか?」
 空木崎の質問に「どちらでもいいですよ」と答える那智。
「では、僕はこっちの方に行って鈴童くんを探しに行きますね。那智さんは、反対側をお願いします」
「わかりました」
 二人は二手に分かれて、鈴童を捜すことにした。

●鈴童捜し
 トンボ柄の着物姿、赤い鼻緒の黒下駄、黒い猫耳、先が白い黒い尻尾が特徴の少年のような子、となるとかなり目立つはず。しかし、相手は化け猫とはいえまだ子供。そのような姿でも、全く気にしないで街中に行くだろう。
「甚五郎、定吉、お前達も鈴童くんらしき人物を捜してくれ」
 にゃあと鳴き返事をした二匹は、雨に濡れるのを嫌がりながらも鈴童捜しを始めた。
「甘いものに目が無い…ということは、ケーキ店とか、和菓子店とかに行っているかも…」
 そう考えた空木崎は、商店街通りをメインに捜し始めた。

 十数分後、甚五郎がにゃあにゃあと鳴きながら空木崎の紫の袴を裾を引っ張る。
「どうしたんだい? 甚五郎。え? 鈴童くんらしき子を見つけたって? その場所に定吉がいるからすぐわかるから、今すぐ行こうって言うのかい? わかったよ、行こう」
 甚五郎の道案内で、空木崎はその場所に向かった。

 着いた先は…甘味処の前だった。
「ここにいるんだね?」
 空木崎がそう聞くと、コクンと頷く甚五郎。入ろうとしたその時、開き戸がいきなり開き、逃げ出すような勢いで走って出ようとする誰かとぶつかり、尻餅をついた。
「食い逃げだ! そいつを捕まえてくれ!」
 という店主の声がしたので、もしかして…と思い、ぶつかった人物の姿を見た。那智から聞いた特徴と一致する少年、いや、少女だろうか、が空木崎と向かい合うように尻餅をついていた。この子が鈴童くんだ、と空木崎は確信した。
「おっと、やべぇ!」
 立ち上がって逃げ出そうとする鈴童の着物の衿を掴み、店主は金を払えと要求する。
「あ、あの…その子が食べた分の代金は、僕がお支払いします。おいくらですか?」
「なんでぇ、姉ちゃんの連れか」
 姉ちゃん、という言葉に空木崎はやや落ち込んだが、今はそんな場合ではない。メニューを見せてもらうと…鈴童は店にある甘味全てを頼んでいた。持ち合わせが無い、ということもあり、空木崎は前金として財布の中の全財産を店主に手渡す。足りない分は、明日改めて支払いということで。思わぬ出費に、空木崎の頭は痛んだ。そんな彼に、にゃあ、と鳴く二匹。「めげるな」と言っているのだろう。

●鈴童と一緒 
「君が鈴童くん? ご主人様の那智さんが探していたよ。一緒に行こう」
「何だおまえ、那智の知り合いか? おいらが鈴童だ、宜しくな!」
 威勢良く挨拶する鈴童に、やっと見つけたよ…と力が抜ける空木崎。

「ああ、ここにいましたか。捜しましたよ。あまり私を心配させないでください」
「おいら、ちゃんと書き置き残したぞ。見なかったのか?」
 書き置きはたしかに置いてあったが、何が書いてあるのか、那智には全然わからなかった。
「そういう問題ではないでしょう。外に出るのは、耳と尻尾を隠し、完全に人間に化けられるようになってからにしなさい」
 変化を覚えたての鈴童にとっては、それは酷なこと。
「那智さん、そのくらいにしてください。鈴童くん、僕のところによければ遊びにきませんか? そのままの姿で結構ですから」
「いいのか?」
 鈴童の顔がほころぶ。
「はい。キミの好きな甘いお菓子を用意して待っていますよ」
「やったぁ! おいら、羊羹が大好きだ! それ、用意してくれるか?」
「わかりました」 
 すみません…と那智が頭を下げるが、気にしないでくださいと頭を上げるよう説得する空木崎。

 こうして、鈴童探しは終わった。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2029 / 空木崎・辰一 / 男性 / 28歳 / 溜息坂神社宮司

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■         ライター通信          ■
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お久しぶりです、空木崎様。
このたびは「鈴童を探して」にご参加くださり、ありがとうございました。
空木崎様、甚五郎、定吉の二匹に再び会えて嬉しいです。

鈴童は、空木崎様を「甘いものをくれる友人」として認識しましたが…いかがでしょう?

またお会いできることを楽しみにしております。

氷邑 凍矢 拝