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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>



炎の宴

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0.オープニング

…さて。どうしたものかね。
カタカタと動く小瓶の前で肘をつく。

あたしは何もしちゃいないよ。
触れてもいないし、細工もしていない。
この小瓶は、勝手に動いているんだ。
カタカタカタッ―
カタカタカタッ―
「あぁ、もう。うるさいねぇ」
文句を言いながら、小瓶にキセルを近づける。
すると、小瓶の動きは一瞬止まる。
でも また すぐに。
カタカタカタッ―
カタカタカタッ―
こうして動き出す。

勝手に動く小瓶。
それだけなら、いいんだよ。
少しうるさいだけで、大した問題じゃない。
けれど、この小瓶はね。
蓋を開けると…。
ボッ―
…わかったかい?
そう。
炎を噴くんだ。

実は、この小瓶を欲しがってる客が居るんだよ。
その客は珍品収集家でね。
かなりの値段で買い取るって言ってるのさ。
勿論 売りたいよ。
唯、その客は こうも言うんだ。
「炎を噴かなくなれば、すぐにでも買う」

もう十分だろう?
何とかして この小瓶を黙らせとくれ。

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1.

おや…?
いつもは店の中で優雅に客待ちしている御方が。
外で月光浴ですか。
僕は歩み寄り、声を掛ける。
「珍しいですね」
「あら。久しぶりだねぇ、慎一郎」
「ご無沙汰してます」
「どうだい?調子は」
「おかげさまで。そうそう最近、錬金術を学び始めまして…」
そこまで言い掛け、僕は口を噤む。
上の空。
その表現がピッタリな蓮サン。
ははぁ…なるほど。
僕は腕を組んで夜空を見上げ、言う。
「何か お困り事ですか?」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに。
蓮さんは即座に食いつく。
「何とかしてくれるのかい?」
「僕に出来る事なら」
微笑んで そう返すと、蓮サンは いそいそと店内に入っていく。
さてさて…今回はどんなモノに悩まされているのやら。


「これなんだけど」
蓮さんが差し出した小さな小瓶。
僕はソレを受け取り、おもむろに蓋を開ける。
「あっ…」
ボッ―
「うわっ」
突然噴出す炎。慌てて蓋を閉じる。
「そういう事さ」
クックッと笑いながら言う蓮サン。
「なるほど…」
少し焦げた前髪を弄りながら返す。
炎ですか。それなら…。
対策を頭の中で練っていると。
「おぉぉ〜〜い!蓮〜〜!!助けに来てやったぞ〜!!」
叫びながらこちらに向かってくる少女…はて?誰だろう?
「あぁ。丁度いいね」
満足気に笑う蓮サン。僕は問う。
「蓮サン。このコは?」
「ハリュ。知人の娘さ」
「へぇ」
何歳くらいだろう。8歳…くらいかな?
微笑んで見やっていると、ハリュちゃんはズバッと言う。
「蓮。何だ?この眼鏡」
眼鏡…。
そうかー。やっぱり、そこに目がいきますかー。
クスクス笑いながら蓮サンは言う。
「召喚師さ。さぁ、チャッチャと片付けとくれ」
僕達を煽る蓮サン。
「協力して始末しろ、と?」
「そういう事さ。その方が早いさね」
まぁ、確かに。
でも、大丈夫かな?
ハリュちゃん、そんなに丈夫そうには見えないけど…。
「おい、眼鏡!さっさとやるぞ!」
「…そうですね」
そんな事もなさそうですね。

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2.

小瓶を一旦 地に置き。
僕は召喚準備を。
相手が炎ですから、ここは やはり水でしょうね。
深きもの ディープワンを…。
ゴオオオオッ―
「え?」
召喚準備の最中、周辺が 一瞬で炎に包まれる。
僕は慌ててディープワンを召喚し、炎の中で呆れつつ叫ぶ。
「何やってるんですか〜」
「アッハッハッ!」
勝手に蓋を開けたハリュちゃんは、
目を輝かせて炎の中で悪びれることなく笑う。
まったくもう…。


それにしても、もの凄い炎。
親の仇のように これでもかって程 燃えてますね…。
僕は、ディープワンを次々と召喚しながら 炎の核、本体を探す。
小瓶 小瓶…。小瓶はどこでしょう。
「おっと。発見」
小瓶を確認した僕は、それに向けてディープワンを放つ。
ゴボゴボゴボッ―
水泡の中、それでも燃え続ける小瓶。
眼鏡をクイと上げ、少し待機。
そろそろですね。
カウントでもしてみましょうか。
5…4…3…2…1…――
ゴオオオオオッ―
水泡の中、正体を現し暴れる 炎の魔物。
それは、すさまじい形相。
何かに似てるような…。
あぁ、鬼に似ているんだ。

「うぉりゃあああッ!!」
バッシャアッ―
あぁ。
ハリュちゃんの蹴りが炸裂。
魔物は無様に吹っ飛び、怒り心頭の御様子。
僕は、ディープワンを次々と放り、魔物を囲う。
それを見て、ハリュちゃんが嬉しそうに笑う。
「眼鏡、お前 すごいなー!」
「ありがとうございます」
クスクス笑いながら、辺りを舞う火の粉を払う僕。
「ウガァァァァッ!!!」
僕達の余裕綽々な会話を見て、逆上したのか。
魔物は物凄いスピードで、僕達に向かってくる。
燃え盛る炎を纏い、牙を剥いて。
「じゃあ、トドメ お願いします」
「まかせろッ!!」
一旦 掌を魔物に向け、ギュッと握り拳を作り。
全てのディープワンを魔物にぶつける。
ゴボボボボッ―
水…水泡に囚われ、身動きが出来なくなった魔物。
それに向かい、ハリュちゃんは全力疾走で駆ける。


月明かりの下。
踊る、水の調べ。
歌う、ハリュちゃんの拳。
響く、魔物の呻き声。

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3.

「ごくろうさん」
店先の階段に座って、満足気に言う蓮サン。
僕は服についた煤を払い、地に転がる小瓶を拾う。
「蓮〜。手伝ったんだから、何かくれ〜」
蓮サンの足にしがみついて、ねだるハリュちゃん。
微笑ましい その光景に笑いながら、
僕は蓮サンに小瓶を渡す。
「あんたは、何が欲しいんだい?」
小瓶を目の前で揺らしながら言う蓮サン。
僕は目を伏せ微笑。
「何も要りませんよ」
「そうかい。あんたの、その謙虚なところ 好きだよ。あたしゃ」
「ははっ」




炎の魔物を成敗した翌朝。
何気なくネットサーフィンしていた僕は、
とある怪奇現象の特集サイトを見て驚愕。
そこには、僕とハリュちゃんが あの魔物と戦っている写真が掲載されていた。
写真の下にデカデカと書かれたタイトル…。

【 炎の宴 】

投稿者は蓮サン。
僕達が必死に戦ってる間、何やってるんだか、あの人は。
クスクス笑いながら、
服の裾に残る宴の名残をフッと吹き落とす。

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   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2322 / 宇奈月・慎一郎 / ♂ / 26歳 / 召喚師 最近ちょっと錬金術師

NPC / 碧摩・蓮(へきま・れん)

NPC / ハリュ


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         ライター通信          
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こんにちは。はじめまして。宇奈月さん。
発注ありがとうございました。心から感謝申し上げます。
発注が 宇奈月さん1名だけっぽいので、受注窓を閉めまして。
NPCと協力して成敗して頂くカタチをとりました^^

宇奈月さん、書いてて凄く楽しかったです。
召喚師って辺りが、自分ツボだったので(笑)
ちょっと天然キャラみたいな仕上がりになってしまいましたが;
気に入っていただければ幸いです。

また よろしくお願い致します^^

一檎 にあ