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トーキョー・ラバー
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０．オープニング
「お兄さん、お兄さんっ」
珍しく、はしゃぎ気味の零。
俺は微笑みながら返す。
「ん？どした？」
「これ！どうですか？」
そう言って、零はチラシ？を差し出す。
俺は、コーヒーを飲みつつそれを受け取り見やる。
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【 第１回 東京ラバーコンテスト 】
来たれ！ラブラブカップル！！
バカップル歓迎！インテリカップル歓迎！
優勝カップルには賞金30万円贈呈！
更に旅行もついてくる！（行先は発表まで極秘！）
日時：12/1 サテラナ教会
主催：トーキョーラバー実行委員会 代表/工藤
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へぇ〜…東京ラバーコンテストねぇ。
賞金30万円＋旅行か…へぇ〜…。
って、おい。
「何の冗談だ。零」
俺がチラシを返しつつ言うと、
零は、微笑んで返す。
「お兄さん、ガールフレンドたくさんいるから」
「………」
「どうかなぁ、と思って」
ガールフレンドってなぁ。
別に、多くねぇよ。…多分。
それに、これ参加条件は「恋人」だろ。
生憎、俺に恋人は いねぇ。今は。
「…うーん。やっぱり駄目ですか」
「ダメ。っていうか、相手がいねぇって……」
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１.
ガチャッ―
「邪魔するぞ」
特に用はない。
ただ何となく近くを通りがかったから寄ってみただけだ。
決して草間に会いに来たワケではない。
断じてない。
「冥月さぁんっ！！」
ガシッ―
「うわっ」
所内に入った途端、抱きついてくる零。
頭を撫でつつ笑って、私は問う。
「どうした？草間にセクハラでもされたのか？」
「しねぇよ。馬鹿」
ピクッ―
私は眉間にシワを寄せつつ、素敵な笑顔を向けて言う。
「何か言ったか？」
「いや。何も」
平然と返し煙草に火を点ける草間。
よし、覚悟は出来てるようだな。
どうしてくれようか…。
草間に与える制裁を考えていると。
「これに お兄さんと一緒に出て下さいっ」
零がチラシを差し出して乞う。
「…何だ？」
チラシを受け取り、それを見やる。
東京・ラバーコンテスト…。ふぅん。
私はチラシを零に返して言う。
「断る」
「えぇぇ〜〜…」
大袈裟に落ち込む零。
私はキッチンに向かいつつ言う。
「例え嘘でもこんな阿呆の恋人なんぞやってみろ…人生の汚点だ」
シュンと俯く零。
続けて草間が口を開く。
「そうだぞ、零。俺だってな、相手が男じゃ…」
ドカッ―
「ごふっ」
鉄拳の制裁に うずくまる草間。
私は、草間の口から落ちた煙草を拾い、咥えて言う。
「大体私が出てもコレが相棒では優勝は無理だ。…不味っ」
煙草を灰皿に押しやり消すと。
うずくまったまま、阿呆が言う。
「だから、男同士で優勝は無理だって…」
ガスッ―
「いっ…」
踵落としの制裁に うずくまる草間。
草間の顔をガシッと掴み、胸に埋めて低い声で言う。
「この立派なのがどこが男だ。あ？」
「むぐぐ…」
苦しそうにもがきつつ、私の背後を指差す草間。
ん？と振り返ると。
「…う〜ん」
真剣な面持ちで自分の胸に悩む零の姿。
可愛らしい その姿にクスッと笑い。
草間を剥がして、告げる。
「よーしいいだろう、参加してやる。草間、ここで死ぬか参加か選べ」
指をバキボキと鳴らしニッコリ微笑む私。
「死ぬのは勘弁…っつーか お前、それ脅迫…」
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２．
…物凄い数だな。
コンテスト開催当日、
会場で まず思った事。
人が、多い。
観客もそうだが。参加者も多い。
皆、仲が良さそうで何よりだが。
中には馬鹿な奴等もいるな。
いや…というか、そんなのばっかりではないか。
これは、もしかすると。
優勝とやらを狙えるかもしれぬ。
…この阿呆次第だが。
私は欠伸している草間の背中をグリグリと肘で押しながら言う。
「ちょっとはやる気を出せ。煙草を奢ってやるから」
「あ？煙草？」
「そうだ。…1ヶ月分まるまる面倒みてやる」
「おっ。マジで？」
草間の表情が明るくなる。
単純な奴め。
まぁ、これで多少は…良い感じになる、と思うのだが。
しかし、あんな不味いものに踊らされる お前の気持ちが理解できん。
いつまでたっても、理解できん。
『それでは！第１回 東京ラバーコンテストを開始します！！！』
ワァァァッ―
司会役のアナウンスで、一斉に盛り上がる会場。
…教会で こんなに馬鹿騒ぎして良いものなのか？
私は耳を軽く塞ぎつつ思う。
『今回は第1回という事もあり、至って簡素な進行になります！！！』
簡素…ふむ？
よくわからぬが…難しい事をするワケではないのだな。
イチャイチャしろ、とか言われたら どうしようかと思ったぞ。
別に出来なくもないが。
デレデレしている草間を見たら 殺しかねん。
うん。想像しただけで、気持ちが悪い。
『お２人には着替えて頂きまして〜…』
着替え？
…何だ。このザワつく感じ。
嫌な予感が。
『後ほど順に舞台へ上がって頂きます！！！それでは各組着替えを済ませて下さい！！！』
「めんどくせーな…」
ボソリと草間が言った。
私も、そう思う。
それに、何となく想像できるしな。
どんな服に着替えるのか。
まぁ、ここまで来たら仕方あるまい。
腹をくくれ。
私は草間の背中を叩き、
「じゃあ、後でな」
楽屋へ向かう。
…やっぱりか。
渡された衣装を見て、ガックリと肩を落とす。
まぁな。理解はできるよ。
ここは教会だし。恋人コンテストだし。
当然といえば当然な衣装だよ。
けれど、これは…。
まだ着たくなかったな。正直…。
歩きにくいっ…。
着替えを済ませ、草間を探す。
しかし何だって、ウェディングドレスって物は こんなに歩きにくいのだ。
…まぁ、当然か。
この姿で躍動的にならねばならぬ状況なんぞ ないであろうしな。
普通は。
ドレスのまま、広い教会をトタトタと駆ける。
皆、同じ格好をしているから見分けがつかん。
イラつきつつ探していると。
窓の傍で煙草をふかす見慣れた男の後姿を発見。
「草間」
私が背後から声をかけると。
草間は パッと振り返る。
「…ぶっ！！！」
途端に、私は吹き出してしまう。
白いモーニングに身をつつんだ草間は。
それはそれは。
滑稽だ。
その場に しゃがみこんで大笑いする私。
似合っている。妙に似合っている。
だが。
滑稽だ。
「くっくっくっ……」
「笑い過ぎだろ」
真顔でツッコみを入れる草間。
ひぃ、やめろ。
その格好で、真顔で喋るな。
腹が。腹がよじれる。
『次〜！エントリーＮｏ．86！どうぞ〜！！！』
司会役が叫ぶ。
私達の出番だ。
いまだにケラケラ笑う私。
草間は頭を掻いて。
グイッ―
「オラっ。行くぞっ」
「おっ？」
私の手を引き、舞台へ向かう。
『おぉ〜。これはまた、美男美女カップルですね〜！！！』
嬉しそうに言う司会役。
「すげぇー！！めっちゃ美人じゃん！！」
「俺の彼女になってくれー！！」
「うわぁ…綺麗ー……」
「素敵ー！お姉様ー！！」
次々と発せられる、観客の声。
美人、綺麗というのは素直に嬉しいが。
彼女になってくれ、って言ってる阿呆がいるな。去ね。
お姉様って…何だ それは。まぁ、悪い気はしないが。
『それでは、熱い抱擁をどうぞ！！！』
はっ？
抱擁？
何だ それは。聞いてないぞ。
この格好を披露目するだけではないのか？
呆れる私。
草間は頬を掻きつつ、言う。
「まぁ、仕方ないな。我慢しろ冥月。俺も我慢する」
「は？」
我慢って…お前。まさか…。
ガバッ―
「っぎゃ…」
パフッ―
何の前触れもなしに抱きしめる草間。
とっさに出た悲鳴を、草間は掌で抑える。
「優勝優勝…」
耳打つ草間。
…いや。理解るがな。
この状況…耐えられん。
見ろ。鳥肌が。
「キャー！！素敵ー！！」
「暑い！暑いよ！」
「キスしろ、キスー！！」
「おぉー！いいぞー！しろしろー！！」
………。
思わず舌打ち。
何て事を言い出すんだ。この阿呆共が。
そんな事出来るわけないだろう。
というか、何だ。このイラつく状況。
何だ。このコンテスト。
眉間にシワを寄せる私。
「冥月」
小声で言う草間。
私は不愉快なまま返す。
「何だ」
「もう俺、無理」
「…は？」
草間は、パッと私から離れ。観客に言う。
「キスは勘弁してくれ！！」
…うむ。まったくだ。
腕をさすりながら頷く私。
「こいつ、男だから そんな事出来ねぇんだよ！！」
ピクッ―
眉が釣る。
何だと…？
「この胸もシリコンたっぷりで固いの何の！！」
胸を指差し、続けて叫ぶ草間。
…ほほぅ。なるほど。
お前の言う”無理”とは、要するにアレか。
私とイチャつくのが耐えられぬ、と。そういう事か。
それは私も同じだ。賛同する。
気持ちが悪くて仕方なかったんだ。
だがな。その言葉は聞き捨てならぬ。
制裁を くらえ。
「はあッ！！」
ドカッ―
垂直落下式バックドロップ炸裂。
フウッと息を吐き、記憶を辿りつつ胸元で十字を刻む。
たしか、こんな感じだったな。
アーメン。
『パ、パワフル！！！な〜〜〜んてパワフルな彼女だ〜〜〜！！！』
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３．
コンテストの結果は、当然優勝ではなく。
だがしかし。妙な賞を貰った。
貰ったメダルに刻まれている名誉。
『パワフル彼女賞』
ネーミングセンス皆無だな。誰だ。考えた奴。
苦笑する私。
まぁ、賞が貰えたのは嬉しいな。素直に。
草間は、グッタリしているが。
私はケラケラ笑いながら近寄り、
草間の頭にメダルを乗せて言う。
「小旅行、楽しみだな」
「は？小旅行？」
首を傾げる草間。
私は３枚の旅行券をヒラヒラと揺らし、微笑む。
私も、優勝者だけにだけ与えられると思っていたんだがな。
どうやら違ったらしい。
手放しで喜べる行先ではないが。
旅行獲得に変わりはない。
しかも推薦者にまで旅行券が進呈されるのだ。
今回の場合、零の分も。という事だ。
くだらんイベントだと思っていたが。
なかなか太っ腹。
ネーミングセンスはないが、太っ腹。
褒めてつかわそう、発案者。
お前は、滅多に まとまった休みを取らないからな。
良い機会だ。この旅行で、日頃の疲れを取るが良い。
「冥月さぁーん！お兄さーん！」
トタトタと駆け寄ってくる零。
抱きついてきた零を受け止め、私は微笑む。
「どうだった？」
「とっても面白かったです」
キャッキャと笑う零。
そうかそうか。
楽しんでもらえて何よりだ。
…何か趣旨がズレてる気がしないでもないが。
まぁ、良いか。
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登場人物（この物語に登場した人物の一覧）
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【 整理番号 / ＰＣ名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
2778 / 黒・冥月 / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵＆用心棒
ＮＰＣ / 草間・武彦
ＮＰＣ / 草間・零
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ライター通信
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こんにちは。2度目の発注ありがとうございます＾＾
心から感謝申し上げます。
豪快で、粗暴なんだけど。そこはかとなく乙女な雰囲気を。
表現しきれているか不安ですが、気に入っていただければ幸いです。
コンテスト参加の証としてアイテムを進呈致します。
作中で得たものです。ちょっと恥ずかしい代物ですが大事にしてやって下さい＾＾
よろしければ また お願い致します＾＾
2006/12/15 一檎 にあ
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