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メリクリcrazy
突然なまた、突拍子もない出来事に店内はてんやわんやしていた。
前回のふざけたお茶会から、更に人数が増えているのだ。
なんやかんや、テイラーズの面々はあれやこれやと言うし、突然迷い込んできた地質調査研究室の高良は愉しそうにうきうきと周りと見渡し、八角に至ってはちんまりと少々居心地悪そうに椅子に腰掛けていた。
「ねぇねぇー。何食べるー?」
能天気に尋ねるのはヒコノ。
うふふふー。これから出てくるケーキが楽しみといわんばかりに、含み笑いを浮かべて高良を見た。
「え、えぇ……んー。何が美味しいんですか?」
「うぅーん。そうねぇ、ヒコノは少女だから、生クリームとイチゴは外せないか」
何も知らない高良は逆に尋ね貸した。
ちょっとトンチンカンな答えが返ってくる。
どうしたものかと、少し考え込んでしまう高良。
八角といえば、赤わら図の仏頂面でむすっと腰掛けていた。
「先輩、きっとおいしいプリンありますって」
「――――――!!」
その様子に隣の高良が、軽く肘でつんつんとつつきながら八角の機嫌を伺う。
プリント言う言葉に、ぴきーんと思わず反応を返す八角。ちらりと高良を見た視線はちょっと怒っていたかもしれない。
「プリンスキなのー?}
ヒコノは相変わらず、空気を読んでいるのか読んで居ないのかただ愉しそうに話をしていく。
そんな中、突然扉が開かれ、ベルがカランカラン鳴った。
「はーい。いらっしゃいませー」
美咲が慌しく厨房から出てきてた。
「まだ、お店開いてますか?」
その声にあれ?と、思ったのは地質調査研究室の二人。
一瞬顔を見合した後、声のした方向へ視線は同時に移った。
「あーっ。里美ちゃん」
ガタン、と、大きな音をさせて立ち上がり、勢い良く店の入り口に立ったままの里美に向かって指差す高良。
「あら、高良さん………と、八角さんも?」
里美もきょとんとした表情で高良を確認した後、座ったままの八角にも気がついた。
暢気にしかもちょっと愉しそうに、里美はアラアラ、偶然とか笑う。
「お知り合いですか?」
「えぇ、ちょっとした知り合い……持って帰ろうかなと思ったんだけれども、ここで食べることはまだ出来ますか?」
「はい、お断りする理由はありませんもの」
美咲ももちろん、きょとんとした顔をしながら里美に尋ねる。
その言葉にうんうん、と、頷く里美。
ふらりと帰り道にいつもと違う道を通っていたら、この店を見つめて折角のクリスマス。ケーキのひとつでも買って帰って食べようかなと思っていたところ、不思議な巡り会わせで顔見知りの二人がいる。
それにこれはもう偶然じゃなく、必然よね。なんて勝手に思いながら、美咲にここに加わりたいと告げる。
美咲もここまできたら、特別断る理由もないから里美を八角と高良が並ぶ席の方へと案内する。
「で、これは何なんです?」
「うーん……。なんだろうねぇ、なんかパーティーらしいよ?」
ちゃんと状況がわかって居ない里美が尋ねる。
里美の隣の高良もちょっと言葉を濁す。彼だって勢いのままここにいるのだから、少々唸りながらちらりと目の前に並ぶ奇妙な3人組を見た。
その視線に、里美もつられて前の3人組を見る。
……ピンクの頭の男の人
……可愛いオンナノコ
………………ウサギ?
もう一度右から見ていく。
……ピンクの頭の男の人
……可愛いオンナノコ
……………やっぱり…ウサギ?
どうやら間違ってはいないようだ。
うん、と一人頷き自分を納得させようとする。
「今からね、クリスマスパーティーをするの」
「ぇ。クリスマス?」
「うん、だって今日は聖なる夜よ?」
そういえばそうだった。今日クリスマスだということに気がついた、里美。ここ最近、年末ということもあって仕事が忙しくて、そんな事さえ気がつかないでいた自分にこそりとため息ついた。
「それにももう10時を回ってしまったの。しかも、ヒコノ昨日も今日もまだクリスマスケーキを食べて居ないのよ。明日食べるブッシュ・ド・ノエルはただのロールケーキだと思うのよ」
テーブルに両手をつき、ちょっとエキサイトしながら説明をしていく。その説明内容はちょっと的外れだったかもしれないが、なんだか妙な説得力があり、里美はそうかもしれないと、頷いた。
「そうでしょうー」
だから、これから日付が変わってしまう、たった2時間だけでもクリスマスパーティーをするという。
「いいね、とっても愉しそう」
ヒコノの提案に里美は心底愉しそうな笑みで答えた。
「八角さんもよかったですね、たらふくプリン食べれますよ?」
高良越しに八角を見てみれば、にこりとわらった。それに八角はどっちつかずな表情で、ただちょっと眉間の皺が一本増えた。
「つか、あんまり忙しくしないでよ。やっと戦争が終わったんだから」
ぶちぶち文句を言いながらも、美咲がお茶の用意をしていく。
「美咲ちゃん、俺、コーヒー」
「はいはい。アンタにはどろっと濃いコーヒーを用意してあげるわ」
「ヒコノはー」
「もう、煩いなぁ、ヒコノちゃんはコレにしておいて」
文句も言いながらも美咲の手は止まらずに、的確に仕事をこなしていく。
手馴れたように、奇妙な3人組をあしらった後向かい側のちょっとまだ場になれない3人に向かう。
「オニーサンたちはコーヒー?紅茶?……で、オネーサンは何にする?ケーキ凝ったものは今から作れないけれども、簡単なものなら好きなものオーダーしてもらってもいいですよ?」
「えぇー。ズルイー。ヒコノもー」
「はいはい、ヒコノちゃんはコレ。とりあえず、パティシエから」
美咲が里美に尋ねた言葉に、むー。と頬を膨らませていると、厨房からいくつかケーキの乗ったトレーを片手に尚乃が出てきた。
ちょっと拗ねているヒコノ前に置かれたのは、オーソドックスなイチゴのショートケーキ。
「アーン。尚乃くんありがとねー。………ぁ、でもちゃんと、クリスマスケーキも出してよ」
それだけで機嫌が治る。と、フォークを片手に握り締めて頂きますの声とともに食べていく。が、ちゃんと注文も忘れなった。
それには尚乃もはいはい、と。諦めた笑みを浮かべつつ、堂助とザザの前にもそれぞれケーキを置いていく。
「本当に作ってもらっていいんですか?」
「えぇ、前日から仕込が必要なものじゃなければ」
「それじゃぁ……クリスマスケーキとは別に。チョコ生クリーム系で果物沢山のケーキとかいいですか?」
「はいはい、大丈夫よ。で、そこのオニーサンたちはどうしますか?」
「じゃぁ、俺は何がいいのかわからないんで、こう適当にお願いしちゃってもいいですか?……先輩はどうします?やっぱりプリン?」
「………――――――!?」
「ぁ、オニーサンはお任せで、オニーサンはプリン系ね。」
了解ー。と、言うと美咲は忙しそうに厨房へと戻っていった。
いや、ちょっと待ってくれと、軽く伸ばされた八角の手は行き場を失ってしまった。
従業員がいなくなった店内。
何となく雰囲気に慣れてきたのか、それなりに和やかに話も軽く弾んでいた。
すると美咲が厨房から出てきた。
トレーにはいくつかのケーキが乗せられていた。
「……お任せのオニーサンには、年明けに新作で出す予定のものを特別に」
そう言って高良の前に置かれたのは、ドーム型のチョコレートムース。中には緑色のピスタチオムースでその中心にはダークチェリーの酒付けが数個、入っているというものだった。
「それから、オニーサンにはパンプディング」
普通のプリンよりもおいしいと思うよ。と、美咲は付け加え皿を置く。少し焦がし気味のカラメルソースがかかった、パンプディングの中にはラムレーズンが散らばっている。プリンの部分はふるふるといい具合に震えるも、下はしっかりとした生地が焼き上げられている。
「それから、オネーサンにはチョコ生クリームの、ショートケーキ」
オーソドックスなショートケーキ、けれども周りを包んでいるのはチョコ生クリーム。上には零れ落ちるほどのフレッシュな果物が宝石のようにキラキラしていた。
「わぁー。すごーい。頂きます」
出てきたものの豪華さに里美は、パン。と、手を叩いて早速食べ始める。
「ん、凄いおいしいです」
オンナノコですから、甘いものは大好きだ。
これだけでとっても幸せな気分になる。
チョコもいやらしいほどの甘さじゃなく、ほんのりとビターだから果物の甘さが際立つ。
「ホント、すっごいおいしい」
里美に同意をしめしたのは、隣の高良。
新作だといわれたケーキは、ちょっとビターな大人の味で簡単に1個食べてしまうことが出来る。
「ンー。お待ち」
どこかの居酒屋のような軽い口調で、尚乃が更にケーキを運んでくる。
出てきたのは4種類のケーキ。
ひとつは15センチサイズのホールケーキ。
チョコレートムースとチョコレートジェノワーズ、ガナッシュを重ね、表面をチョコレートコーティング。
ラズベリーと金粉を少々散らしたちょっとリッチなチョコレートケーキ。
ひとつは18センチ四方の四角いケーキ。
スポンジの間にはぎっしりと赤いイチゴが敷き詰められ、外側は生クリームで綺麗にデコレートされている。
上面にはぎっしりと色とりどりのフルーツ、やマジパンで作ったキノコ、小さなシューで作ったクリスマスツリーやサンタクロースの人形などが愉しくデコレーションされている。
ひとつは二股に分かれているブッシュドノエル。
洋ナシのババロアを中心とし、回りの生地はナッツ入りその上をキャラメルクリームでデコレーションされたもの。
切り株の上にはスノーマンと洋ナシのコンポートが飾られている。
そうして本日特別な4つ目のクリスマスケーキは。
小さな円柱型の様々なムースが沢山並べられて、上から見ればそれはクリスマスツリーの形になっていた。
「さぁ、どれでも好きなのものを、好きなだけドウゾ?」
尚乃がケーキナイフ片手で、皆に呼びかける。
ヒコノと里美がオンナノコらしい歓声を上げる。
「あ、わたしこの四角いのと、チョコのを一緒にください」
見た目の可愛らしさから四角いのと、自分の好きなチョコレート系をお願いする里美。
尚乃が切り分けて、サーブしていく。
美咲がカップに飲み物がなくなれば、紅茶や、コーヒーを注いでいく。
里美は一体、どんな風にこのケーキが作られたのかわからない。
ただその美味しさと、一人で家でケーキを食べるよりは偶々の偶然で、ここでこんな沢山のひとと離しながらケーキを食べれたことに幸せを感じる。
「里美ちゃん、おいしいね」
「本当に、そういえば。高良さんこのお店知ってたんですか?」
おいしい笑顔のまま高良は里美に話しかけた。
そこでふ、っと。
里美が思い出したかのように、尋ねた。
…………高良の表情が若干固まった。その奥の八角は食べていたケーキを落しそうになった。
「……実は」
高良がこそりと里美に耳打ちする。
その内容に、思わず笑い出した里美。
「あぁー。もう、笑わないでってば、だから小声でいったのに」
とほほほ。と、困ったような表情で里美を見る高良。
もう、こうなったらここにあるケーキ全部食べて帰ってやる。とばかりに尚乃にケーキ皿を突き出して、更にケーキをお願いしてく。
その奥の八角も、ひとり黙々とケーキを食べているところをみると、どうやらまんざらでもないようだ。
そうして、時間は過ぎていく。
たまに喧騒が起こり。
たまにはちきれんばかりの笑い声が響いたり。
店内にある大きな振り子時計が12時を指した。
ぼーん。と、重い音が響き渡った。
12月26日へとなった。
ここでパーティーはお終い。
だれもそうは言わなかったが、何となくそんな雰囲気になった。
………それじゃぁ。
と、楽しむだけ楽しんだ奇妙な3人組は、帰っていく。
そうして残ったのは、里美と、高良と、八角。
「それじゃぁ、私もソロソロ」
そう言って、里美が席を立ち上がったとき厨房からまたひとり男性が出てきた。
ここのパティシエの宮里だった。
「今日は、ありがとうございました」
宮里は帰り行く3人に、深く頭を下げる。
「い、いえ、そんな。突然押しかけて、しかもこんなにおいしいケーキを食べさせてもらって、こっちがお礼をいわないと」
「作ったケーキを美味しく、食べてもらえればパティシエ冥利に尽きます」
慌てたように里美が、慌しく両手を顔の前で振れば、小さく笑ったパティシエがそっと何かを里美に差し出した。
それは籐の籠で中には4種類のプチケーキが入っている。
「今日の、よき思い出に」
「え?……貰っていいんですか?」
「えぇ、是非に。………できればここに今日の思い出を飾ってください」
戸惑いがちに受け取る里美。
里美が籠を受け取れば、宮里は籐の籠の端っこを指差す、そこにはカードがさせるように細工してあった。
はっと、宮里を見た里美。ただパティシエは小さく笑っていた。
今日のよき思い出…………。
さっき、ギリギリ12時前に折角だからとみんなで写真を数枚撮ったのだ。
相変わらず写真嫌いな八角は上手くうつっているかどうかわからないけれども、焼いてみないとどんな写真ができているのかわからないけれども。
それはとてもかけがえのない、今日という日の出来事の証拠。
おいしいケーキに、楽しい時間。
たった2時間のクリスマスパーティだったけれども、もっと沢山時間をすごしたような、もっと足りないような。
そんな感覚に陥った感じだった。
「ありがとうございます」
里美は嬉しそうに頭を下げて、お礼を言う。
「もう、遅いし送っていくよ」
高良が申し出る。
無言の八角も、やっぱりどこか無愛想を振りまくが、どうやらまんざらではなかったことだけは皆にも伝わった。
「それじゃぁ…………」
そうして3人も扉の向こう側へと消えていく。
今年の慌しいクリスマスもようやく幕を閉じた。
普段以上に疲れたけれども、やっぱりこの充実感は溜まんないと、尚乃と美咲は顔を見合わせる。
パティシエはまたいつものように厨房にもどった。
―――――――Fin
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
2836 / 崎咲・里美 / 女性 / 19歳 / 敏腕新聞記者
NPC
八角・総司 / 男性 / 39歳 / ランドダウナー
高良・京悟 / 男性 / 34歳 / ディフェンダー
宮里 秋人/男性/28歳/Le Diable Amoureuxのオーナーパティシエ
蒼井 尚乃/男性/20歳/Le Diable Amoureuxのアシスタントパティシエ
鹿島 美咲/女性/16歳/Le Diable Amoureuxのホール係
駒田 堂助/男性/32歳/tailors:9 仕立屋
市川 ザザ/無性別/?/tailors:9 ヒマ人
吾妻 ヒコノ/女性/17歳/tailors:9 看板娘
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■ ライター通信
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崎咲・里美 様
二度目のこんにちわ。
ライターの櫻正宗です。
この度は【メリクリCRAZY】にご参加下さりありがとうございました。
二度目の出会いを嬉しく思っています。
お任せということで、ちょっとドキドキしながら、
本当に好きなように書かせていただきました。
地質調査質のお二人との絡みを希望されたのに、なんだか少なかったような気もするのですが、
いかがでしたでしょうか?
たった2時間だけの、メリクリなのかよくわからないお茶会でしたが、
里美さんが普段の仕事疲れを忘れてのんびり出来たのなら、嬉しい限りです。
そうして此方のスケジュール管理不自由分で大分とお待たせしてしまって、
申し訳ありません。
それでは
重ね重ねになりますがご参加ありがとうございました。
またどこかで出会えることを祈りつつ。
櫻正宗 拝
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