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IF 〜神様と私0〜
世界がまだ規則で縛られていた頃。
まだ世界の人口の半分が神様で、もう半分が巫女だった世界。
全てが決められているこの世界。
けれど何事にも例外という物は存在してしまう。
切っ掛けは、その例外による出来事。
その頃のみなもはまだ巫女になったばかりだった。
まだ何も知らない頃に、特例としか言えない事がみなもの身に降りかかったのである。
他の神様におつかえしなさい。
驚いた、何かしてしまったのだろうかとも不安になりもした。
こう考えてしまったのも無理はない。
一人の神様に一人の巫女、今まではそれが当然だと信じて来たのだから。
しっかり話を聞いてみればみなもの予想とは違っていて、とても『良い』巫女だから、というのがこの話がみなもに回ってきた真相だ。
やけに強調された『良い』の部分が若干気になりはしたが、考えれば考えるだけ悪い方に言ってしまいそうな気がしたので考えないでおく。
結果、頼まれたことを断れずに、みなもはその話を受けることとなった。
色々と考えてみれば、感情のある人と人の関係。
そう言う事もあるのだろうと納得しておく。
けれどその神様がとても有名な問題児だと知ったのは……初めて新しい神様にあった、その日のことだった。
これは、みなもと神様が出会った時の話。
■
「やだ」
開口一番に否定され、そっぽを向かれる。
名乗る暇もないほどに早かった。
初めて顔を合わせた神様はまだ子供の姿をしていて、先任の巫女をしていた人の話では性格や行動も容姿の通りだとの事。
その時は詳しい話を聞く前に、話すのもイヤだと行ってしまったのだが……。
余程の事があったのだと想像はしていただけに、この反応はまだ想像していた内には入っていた。
もっともそれで対処までを考えていたわけではない。
つまりは大した反応も返せないというわけだ。
「え、えっと……」
「やだったらやだよーだ、誰がきたって一緒だから」
とりつく島もないとはまさにこのことである。
何かあったに違いないだろうが、それが何かも解らないままだ。
けれどこのままで良いはずがない。
何とかして話だけでもと、思い切って最後まで言ってしまう。
「みなもです、よろしくお願いますっ」
深々と頭をさげるみなもに、ため息混じりにだが返事が返される。
「えー……どうせすぐいなくなっちゃんうでしょ?」
「そんなことありません、精一杯お仕えさせていだだきます」
「うっそだぁ」
「本当です」
「また口だけじゃないのー?」
埒があかない気がしたが、そう簡単に折れるわけにも行かなかった。
知ってから嫌われてしまったのでは仕方がないが、なにも伝えられないまま追い返されてしまってはみなもを選んでくれた方に対してあまりにも申し訳ない。
それに……みなもの方も、初めてあった神様のことを何も知らないのだ。
「お願いします。あたし、頑張ります」
「んー……何でもする?」
「はい、出来ることなら」
「ほんとーに?」
小首をかしげ、パッと目を輝かせる。
今まで味わったことのない感覚が背中を駆け抜け、無意識に後退りそうになったがどうにかそれを堪える。
まさか、そんなことできる筈がない。
「ほ、ほんとうです」
「じゃあねぇ、どうしようかなー。お願い聞いてくれたら認めてあげるよ」
「はいっ!」
早くなり始める鼓動を押さえるように胸の上に手を置く。
そうでもしなければ、何が起きるか解らないのにはっきりと頷けないような気がしたのだ。
もう少し疑ってかかることの出来る性格であれば。
あと少し何をするかを聞けていれば。
けれど、この時のみなもは認めて貰うことに精一杯だったのだ。
「じゃあおとなしくしててね」
「はいっ」
「逃げたらお終いだからね」
「は、はいっ」
「じゃあトイレになって」
「はい……えっ!?」
驚き聞き返すまもなくドンと突き倒される。
慌てて立ち上がろうとするが、その時には手も足も動かなくなっていた。
床から無数に伸びた手のような形をした何かが、みなもの体をしっかりと押さえつけている。
手を伸ばす事も出来ず、何をされるかもまったく解らない。
「おとなしくしてて」
「か、神様? 神様っ!?」
「黙っててよ」
ぺたぺたと足に触れ始めた箇所から、まるで粘土細工のようにおかしな柔らかさで形を変えてしまった。
太ももの中程までが押し曲げられ、掌で押すように転がされると長く柔らかく引き延ばされていく。
「………っ」
「そうそう、大人しくしてた方がいいよ、それとも怖くて声も出ない?」
「あ、ああ……」
「柔らかくしないと変えにくいからね」
粘土遊びでもするかのような手の動きは、みなもの体をまったく別の固い素材へと作り替えていく。
叩けば音が鳴りそうな足は、人であった頃の名残がかけらもない。
こんな事をされたのは初めてのことで、どうなってしまうのだろうという恐怖が頭の中を満たしていった。
唯一、救いがあるとすれば……痛くはないと言うことだろう。
まるでずっと正座をしていたときのように痺れ、感覚がなくなっている。
自分の体がまったく別の物になっているのだ。
「か、かみさま」
「イヤなら止めるよ」
「………っ」
それは出来ないと首を左右に振る。
動かしてから、まだ首だけは自由だと気付いて少しだけホッとした。
「あはは、がんばるね」
「ん……っ」
「じゃあこうしよう」
腹部へと触れた手がドンと体内へとめり込む。
粘土細工のように容易く、血も出ない。
けれど……。
「ひっ!」
「いたい? ねえ、いたい?」
「いっ、きゃあああああああ!」
手を中で捻り、骨を押し曲げ、内臓をかき乱していく。
枝を折るような音で曲げられる腕。
やわらかな部分を乱暴に扱われ、体を引き裂かれるような激痛を与え続けられる。
手足が動かないから拒否も出来ない。
何かされたのか意識を失うことも出来なかった。
痛みだけを与え続けられる中、見なければいい物を見てしまう。
既に胸の上の方までトイレに変化している体を。
「あっ、あああ………」
「何でもするって言ったのは自分でしょ」
「う……」
確かに何でもするとは言ったが、こんな事になるなんて思っていなかった。
考え込むまもなく強い痛みが絶え間なく襲ってくる。
「泣いたってだーめ」
「ひっ!?」
乱れた髪をぐいと引っ張り笑う様子は、あまりにも無邪気で残酷だ。
喉が痛くなるほどに叫んでも手が止まる様子はない。
むしろ余計に乱暴に扱われる。
「もう、いっ……」
「いまさらおそいよ」
涙の跡が幾筋も残る頬を撫でると、赤く染まった肌は白くて固い陶器へと作り替えられた。
平たくなった顔も熱を持ち、僅かに痺れを伴ってから鋭い痛みへと変わる。
「―――っ!」
口も動かず、声も出ない。
喉を振るわせ悲鳴を上げる事すらも出来なくなっていった。
「そろそろ出来るよ」
「……っ! ………!!」
完全にトイレにされてしまったらどうなってしまうのだろう。
痛みだけでも苦しいのに、考えたら泣きたいくらいに恥ずかしくて堪らなかった。
終わって欲しいのに、その時がきて欲しくない。
そう考えた途端、考えたことを読まれたかのように神様が手を止める。
とうとうこの時がきてしまったのだ。
「でーきたっ」
「………」
パンパンと手を叩き、満足したように笑う。
それはそれは楽しそうな表情だった。
「さあ、どうしようかなー。その前にきいておこう」
思い出したようにぱちりと指を鳴らすと、体のどこかがすっと穴でも開いたように楽になる。
まるでそこだけが無くなってしまったかのように痛みもない。
「これで話せるはずだよ」
「あ、あああ……」
擦れたような声をどうにか絞り出す。
話す方法を忘れてしまったかのようだったけれど、どうにか話せないこともない……そんな程度だ。
「どうする? やめる? これで解っただろ、解ったら早く帰れよ」
「あ、あ……う」
気付いてしまう。
乱暴に言い放った言葉は、口にした神様の方が辛そうで……。
ここでもし帰ると行ったら、イヤだと言ったら。
神様はどんな思いでどんな風に思うのだろう。
解ってしまった。
わざと怒らせて反応を確かめている。
怒らせるようなことをしても、側にいてくれるかどうかを知りたがっているのだ。
とても幼くて、子供らしい方法で。
「早くっ!」
「あたし、は……」
断ればきっと泣いてしまう。
だから、選んだのだ。
この世界で、みなもが選んだ選択。
「おつかえ、させていだだき……ます」
「………」
辿々しく紡ぐ言葉に、神様がホッと息を付いたのが解った。
その後すぐにパッと表情を輝かせ、もっと楽しげに笑ってみせる。
「おもしろい、おもしろいね。いいよ、ここにみなもをおいてあげる」
「はい……」
認めて貰ったのだろうかとホッとするみなもに、更に神様が続けた。
それもまた、気付いておくべきだったこと。
「次は何しようかなー」
「………!!」
「いーっぱい遊ぼうねっ」
その後も色々な方法で遊ばれることになるのは……予知でも予言でも予定でもないけれど。
それよりもずっと簡単に気付いたことだった。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【1252/海原・みなも/女性/13/中学生】
→もしも、全人口の半分が神様だったら?
そして、残り半分がその神様に仕える巫女だったら?
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■ ライター通信 ■
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※注 パラレル設定です。
本編とは関係ありません。
くれぐれもこのノベルでイメージを固めたり
こういう事があったなんて思わないようお願いします。
発注ありがとうございます。
出会いの時から凄いなと思いつつ書かせていただきました。
喜んでいただけたら幸いです。
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