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<東京怪談・PCゲームノベル>


GATE:03 『砂礫の宝玉』 ―中編―



「フレアちゃん大丈夫!?」
 慌ててフレアに駆け寄る成瀬冬馬に彼女は驚いた。
「僕たちを庇ったせいで怪我とかしてない!?」
「あ、いや……」
 戸惑ったように後退するフレアは帽子を引っ張って顔を隠す。
「大丈夫だ」
 フレアの言葉にハッと我に返る冬馬。
「っと、あ……ご、ごめん、ちょっと取り乱しちゃったね。いや〜、流石に王家の遺跡だけあって油断できないね。一層気をつけてかからないと」
 苦笑いして後頭部を掻く冬馬を、フレアはなんだか苦いものでも見るように帽子の下から覗く。
 冬馬は内心ではひどく狼狽していた。やはりだ。自分は今も忘れていない。忘れることなどできない。
(参ったな……いまだに傷痕だな……。気持ちを切り替えていかないと……)
 軽く呼吸して息を整える冬馬。
 梧北斗は周囲を見つつ呟く。
「これ以上罠にかかると身が持たないな……気をつけよ……」
 どこで罠が発動するかわからない以上、本当に危険だ。冬馬に先に言われたせいで言い損ねたが、北斗はフレアに近づいて囁いた。
「さっきはありがとな。あと、顔平気か?」
 覗き込もうとする北斗からフレアは身を引いて距離をとる。帽子を軽く少しだけあげ、頷いた。
「助けてもらってアレだけど、あんまり無茶はしすぎるなよ?」
「……なら、もう助けてやらん」
「ええっ!?」
 ガーンとショックを受ける北斗に、帽子をさげてフレアは小さく笑う。どうやら冗談だったようだ。
「さて、そろそろ進んでよろしいでしょうかね」
 嫌味ったらしく言うニアにシュライン・エマは微笑む。
「ええ。慎重に進みましょう、みんな」
 その言葉に嘆息し、ニアは歩き出した。そんな彼をシュラインは鋭く見遣る。
(本当に……下働きとは思えないわね。もしかして……変装したお姫様とか?)
 ニアの知識といい反応といい、姫君付きとはいえ下っ端のものではない。ニアの後ろ姿を見ていたが、骨格などを見ても少年だ。少女のそれではない。
(……もしかして、ということもあるし…………それとなく探ってみたほうがいいわね)
 ニアに続いてシュラインも歩き出した。
「ちょっと待ってくれるか」
 唐突に菊理野友衛の声が響く。ニアとシュラインは足を止めて振り向き、残るメンバーは友衛に注目する。
 ランプの薄明かりの中、友衛はフレアを真っ直ぐ見て口を開いた。
「はっきりさせないといけないことがある」
 フレアは帽子の下の瞳を細める。
 友衛はフレアと、部屋の隅で欠伸をしている維緒を見遣った。
「おまえたち二人が強いのは知ってる……だがフレア、お前あの子供の事になるとキレるだろ?」
 友衛の言葉にフレアが視線を鋭くした。
「……そのことを口にするなと言ったはずたが……」
「……維緒があの調子でおまえも不安定なまま、チグハグで動くとその内この中の誰かが死ぬぞ?」
「ちょ、菊理野さんっ!?」
 困惑する北斗に構わず、友衛は続けた。友衛以外の者は『あの子』と言われても誰のことかわからない。
「守られてるヤツにこんな事を言われるのは気に食わないか? ならちゃんと役目を果たせ、他所事を考えるな」
「……言いたいことはそれだけか?」
 冷たい瞳のフレアに、友衛は怯まない。
「フレア、おまえあの子を殺すと言っていたが……人を殺した事はあるのか? 俺は…………ある」
 表情を消して言う友衛を、やや呆れたように維緒が見ていた。
 友衛はすぐに小さく笑う。
「冗談だ。だが、悪いが……あの子に会えたとしても、今のお前に知らせる気はない。言えば殺すんだろ?」
「うるさいお兄さんやね」
 維緒の声が割り込んだ瞬間、フレアがぎょっとしたように目を見開く。彼女は顔を強張らせた。恐怖に怯えたような目をする。
「よ、よせ、維緒……っ!」
 維緒はいつものようにヘラヘラと笑顔だ。手には黒い番傘。
 刹那、友衛の目の前に黒い風が吹いた。風だったかどうか、はっきりしないほど短い。
 フレアがかろうじて腕を軌道上に伸ばしていた。彼女が走っても間に合わなかったのだ。
 フレアの腕が肘で切断され、吹き飛んだ。その先に居た友衛は怪訝そうにする。だが三秒後、友衛の指がばらっと落ちた。
「あかんよフレアちゃん。邪魔したら」
 微笑む維緒は、持っていた番傘を床につき、それにすがった。
「腕一本で軌道をズラそうなんて……甘いわ。けどまぁ、余計なもん入ったから狙っとった首は落ちんかったなぁ」
「うっ……ぐ」
 うめくフレアが慌てて傷口をおさえた。友衛は痛みが脳に到達するまで呆然としていた。二人の傷から血が床に落ちる。
「フレアちゃん!」
「菊理野さん!」
 冬馬とシュラインがそれぞれに駆け寄った。
「フレアちゃん大丈夫!?」
「だ、大丈夫だ。それよりこの符を……」
 冬馬に、ふところから出した符を渡す。
「菊理野に……傷に貼っておけ。化生堂に戻って女将に指を繋げてもらうしかない……。梧、指を拾っておけ」
 事態が理解できずに佇んでいた北斗は我に返り、慌てて落ちているフレアの腕に手を伸ばす。衣服の袖ごと完全に切断されている。
 吐き気が込み上げてくる北斗は目を逸らしながら腕を、指を拾う。冬馬は慌てて友衛の手に符を貼り付けた。
 維緒は平然とした顔で歩いてくると、痛みにうずくまる友衛の傍に立つ。
「わかってへんお人やね。フレアもオレも、あんたの数十倍は長生きしとるんやから、説教される筋合いないんやけどねぇ。
 事情も知らんくせに……。フレアに感謝こそすれ、邪魔するやなんて……恩知らずも大概にしとき」
 低く笑う維緒は番傘を軽くあげると先端を友衛に向ける。シュラインが庇うように両手を広げて首を左右に振る。
「お姉さんも邪魔するんならそれでもええけどね。一人も二人も、オレには一緒やし」
「よせ!」
 フレアが残った右手から炎の槍を出現させ、維緒に向ける。維緒は動きを止め、肩越しにフレアのほうを見遣った。
「……ほんま、おまえの善人ぶりには腹立つわ。こんなお荷物ここに捨てていけばええやんかぁ」
「自由に探すことを条件に、今回はそういう契約をしたんじゃないか……!」
「それはぁ、フレアとオートだけでぇ、オレには関係あらへんよ?」
 首を傾げる維緒は友衛を指差す。
「ま、オレはこのおっちゃんがピーチクパーチクうるさかったから斬っただけやけどね」
 友衛は激痛に顔をしかめ、声をあげるのを堪えている。堪えることができたのは、フレアの符のおかげだった。それと、維緒の攻撃によってできた斬り口があまりにも綺麗すぎたせいだった。
「維緒……! これ以上問題を起こすなら、相手になる……!」
 片腕で構えるフレアを、目を細めて見つめる。羨望と、陶酔の混じった目だ。そして維緒は己の唇を舐めた。
「ええねぇその眼……。
 オレは、フレアのこと大好きなんよ?」
 唐突に言い出す維緒に、北斗は背筋がゾッとした。異性への告白ではない。これは…………これは。
(殺人予告だ……!)
「フレアのええとこは、完全な善人やないってことやね。知り合いなら捨て身でも助けるけど、見知らぬ他人は見て見ぬふり。そういうとこ好きやねん」
 可愛らしく微笑む維緒の言葉にフレアの顔色が青くなってくる。恐怖ではなく……それはおぞましさからだった。
 腰を低く落として槍を構えるフレアに、維緒はせせら笑う。
「あかんね。武器の扱いのスペシャリストのオレに、敵うとでも思ってんのかなぁ」
 フレアの左の袖口からは血が滴り落ちていた。維緒は目を細くする。
「そこまで」
 フレアの目の前にニアが立つ。そして維緒を睨んだ。
「騒ぎはやめていただきたい。それに、喧嘩なら外でやってください。今はひめさまを探すことが目的のはず……」
「…………」
 維緒はニアを凝視していたが、ふいに姿勢を崩して肩をすくめた。
「やる気殺がれるなぁ。まあええわ。ここでドンパチしても狭くてしゃあないし」
 殺気が消えたことにフレアは安堵し、維緒を通り越して友衛の傍に膝をつく。
「状態はどうだ?」
「符でかろうじてってところね」
 シュラインの報告にフレアは頷いた。北斗が声をかけてくる。
「あの、拾ったこれは……」
「アタシの腕はよこせ」
 フレアは器用に右手で左の袖を捲り上げると、北斗から腕を奪って傷口に無理やりつけた。そして右の指先をその切り口にあてていく。火で焼いてくっつけているのだ。なんという荒療治……いや、これは治療とは呼べない。
 くっつけた左腕は動かないようだったが、フレアはそれを気にした様子もない。ふところから別の符を取り出して北斗に渡し、それで指を包むように指示する。そして更に符を取り出した。
「ありったけの回復とかの符だ。これを手に巻いておくしかない。いいか、菊理野。もう余計なことは二度と言うな。次はおまえの首が落ちる」
 友衛は何も言うことができない。ただ痛みを堪えるだけだ。よかれと思って悪役になろうとした結果がこれだ。フレアの為をと思っての行動が、完全に裏目に出た。
 友衛が思うよりもフレアは冷静だし、頭も回る。何より……今、ここに居る誰もが思い知ったはずだ。
 まるで凶器のような維緒。彼の攻撃に反応できたのはフレアだけ。そう……維緒もフレアも護衛はしているがなんらかの事情があってのこと。場合によってはこうして簡単にこちらに危害を加えることだってある。
 彼らがコチラを攻撃しないなんて、それは甘い考えだ。利害が絡めば何を優先するかは、彼らの自由なのだから――。



 友衛は頭に巻いていたターバンで手をぐるぐるに巻き、肩を小さくして歩く。憔悴していた。
 その様子を心配そうに見ているのは冬馬に、北斗だ。先頭を歩くニアとシュラインは歩く先をチェックして進んでいて、それどころではないのだろう。
 一番後ろは維緒。その前にフレアとなっている。
 全員静かなものだった。先ほどのせいだろう。
「足跡は複数あったわ……ユティスさんは心当たりはないの?」
「は?」
 ニアは怪訝そうにシュラインを見遣った。シュラインは慌てて訂正する。
「ご、ごめんなさい。ニアくん、って言うつもりだったのに間違えたわ」
「そうでしたか。意味のわからないことを言われたので何事かと思いました」
「あ、でも俺も気になってたんだよな。お姫さんが一緒に来そうなヤツとかいねぇの?」
 シュラインに続いて北斗も尋ねる。ニアは鼻を鳴らした。
「心当たりはありますがね。従妹のファティ様……は、無理でしょうね。あの運動音痴の方が来るはずがありませぬ。
 だとすれば叔父のマイレ様……もしくは、従弟のウーナ様か……」
「色々いるんだね」
 冬馬が感心したように言うと、ニアは頷く。
「それぞれに複数の魔法の品が生まれた時に与えられているのです。遺跡を開ける鍵も、お一人で一つずつ。わたしの持つ鍵はユティス姫の物。持参してきたのは姫の兄君の鍵です」
 なるほど、と全員が納得した。つまり姫は鍵を持っていないということになる。
「……どうしてニアくんは鍵を?」
 持っているの? と尋ねたシュラインを見上げ、彼は薄く笑う。
「わたしは国王の信頼が厚いのです。それだけです」



 巨大な石の扉の前に来て、北斗が胸を撫で下ろす。なんとかここまでは罠にかからずに済んだ。入り組んだ道を慎重に来た甲斐があったというものだ。
「ここか?」と、北斗。
「……足跡はないわ」
 床をランプで照らすシュラインの言葉にニアが嘆息する。
「一番近いここではなく、別の場所ですか……。あまり奥に行くと番人がいるので危ないのですが……」
 と、ニアが動きを止めた。扉を振り向く。
「……そんなバカな……。鼻歌?」
 驚愕して呟く彼に、冬馬と北斗も青くなった。この閉めきられた扉の向こうに誰が居るというのか。
 フレアが一気に全員の前まで来ると、「退がれ」と短く言い放つ。ニアに確かめるように問うた。
「……敵か?」
「……悪意はないようですが……」
 呆然としたように呟く彼に、シュラインが言う。
「ここは魔法の道具があるんでしょう? 中にそういうのはないの? オルゴールみたいなものとか」
「子供の声で歌うオルゴールなど……!」
 ニアは顔を険しくし、右手を横に振った。すると扉が重い音を立てて開いていく。
 ゆっくりと開かれていく扉の向こうには、怪しげな青い輝きを放つ道具が所狭しと置かれていた。
 その魔法具の山の上に座る人物が居る。子供だった。しかも、少女の。
 彼女は脚をばたばたと交互に揺らし、鼻歌を歌っている。
 友衛が疲れきった顔をあげ、目を見開く。それは冬馬もだ。
「…………ムーヴ……!」
 底冷えのするような低い声でフレアが洩らした。彼女は歓喜していた。そう、心の底から。
 ムーヴと呼ばれた少女は歌を止め、こちらを見る。そして微笑んだ。
「ここにあるもの、ぜーんぶちょうだい! ねえ、いいでしょ?」
「ふざけ……!」
 駆け出したフレアとニアが同時にその場で硬直した。きらきらと光る細い糸が彼女たちを拘束し、そのまま左右に引っ張る。壁に穴が空いてそこに引っ張り込まれた。
「ニアくんっ!」
 シュラインが止めようとしたが糸に絡めとられ、そのまま壁に引っ張り込まれる。それは北斗もだった。北斗もフレアを助けようとしたためだ。
 冬馬は冷汗をかいた。残されたのは怪我人の友衛と、役に立たない維緒だけ。
「あ、この間のお兄ちゃん!」
 ムーヴは山から軽々とジャンプして床に着地すると、冬馬のほうへ駆けて来る。やはりだ。冬馬は彼女を見るとひどい既視感を覚える。だが、なぜなのかわからない。
「あかんね」
 維緒がその道を塞いだ。冬馬が驚いたように彼を見る。
「おまえはフレアの探しモノなんやから、大人しくしとき」
「まぁた邪魔するの?」
 頬を膨らませる少女に維緒は微笑む。
「奪ったもん全部返してくれるなら、フレアも追ってきぃへんよ」
「これは全部ムーヴの! フレアもいずれ、ムーヴのものになるもんっ」
 だって。
 ムーヴは無邪気に低く笑う。
「フレアはちっちゃい頃からムーヴのものだもん。
 ここにある物も、ぜーんぶムーヴのものだよ!」
 両手を大きく広げるムーヴは興味深そうに冬馬を見ている。
「お兄ちゃんかわいそう。すごく辛いことあったんだね。だからコレあげる」
 差し出された小さな掌には、赤い宝玉が乗っている。それは妖しい輝きを持つ、美しい珠だ。
 友衛はよろよろと前に出てくる。
「君とフレアはどういう関係なんだ……?」
 子供を殺すなんて言うフレアと、フレアは自分のものだと言い張る幼女。一体この者たちの関係とは?
「どういうって……なんだろう? お互いを必要としてる関係かなぁ」
 首を傾げるムーヴはくすくすと笑った。冬馬に近づき、その手を掴む。そして宝玉を握らせた。
「一回しか使えないけど、それはいらないからあげる。一番力が弱くてクズみたいだし」
 ふふっと笑うとムーヴは落としそうになった大きな時計を持ち直す。そして部屋の中を歩き回った。
 維緒は番傘をムーヴに向けて容赦なく投げた。だがムーヴの姿は忽然と消えてしまう。
「チッ。まぁた逃がしたか。ほんま逃げ足の速いガキやで」
 番傘は一瞬でどろりと崩れると、再び維緒の手の中で形をとった。瞬間移動ではなく、一度崩れて再び形を作ったようだ。
 冬馬はそっと、手の中の宝玉を見つめる。何か見える。何か――。



「きゃああぁぁぁっ!」
 悲鳴をあげて落ちていくシュラインは、唐突に広い場所に出た。真下に見えるのは針の山だ。串刺しにされている頭蓋骨も見える。
(死ぬ……!)
 瞼を閉じたシュラインには、いつまで経っても刺さる衝撃は来なかった。
 恐る恐る目を開けると、すぐそこに針の先端が見える。いや、近すぎて最初はわからなかった。
「まったく……不要な体力を使わせないでくださいよ」
「ニアくん?」
 シュラインの足首を掴んでいるのはニアらしい。必死に振り向こうとするがうまく首が回らない。
 ニアは天井に足をつけていた。そう、彼は逆さまに立っているのだ。やはりタダ者ではなかったようだ。
「あなた……何者なの?」
 不審そうに尋ねるシュラインを見遣り、ニアは嘆息する。
「わたしはユティス姫生誕の際に、彼女に贈られた魔法具……精霊・ジンですよ」



「いって……」
 北斗は頭を軽く振って起き上がった。手に柔らかい感触があり、不審そうにした。暗くて何も見えない。
「なんだこれ……」
 肉まんみてぇだと思いながらぐにぐにと触っていると、真下から「やめろ」と小さく聞こえた。
 ハッとして北斗は耳まで真っ赤になると慌ててそこから飛び退いて顔を逸らす。
「あっ、うわっ! ご、ごめん!」
「……気にするな。事故だ」
 フレアが起き上がる気配がする。するとすぐに周囲が明るくなった。彼女の指先に炎が小さく灯っている。
(ど、どうしよ〜……俺が赤くなってんのモロバレだよな……)
 そんなことを考えている北斗に構わず、フレアは落ちていた帽子を被った。
 部屋の中は狭く、何もない。歯車の音が近くから聞こえた。近く?
 ぎりぎりぎり……。
 ゆっくりと天井が降りてきているのに気づいて北斗は声をあげる。
「でっ、出口はっ!?」
 狭い部屋の中にはそれらしいものは何もない。フレアは立ち上がる。
「……壁の向こうに人の気配がする。
 おいっ! そっちに居るのは誰だ!」
 しばらくしてから壁の向こうから声が返って来た。
「無礼者! わらわはこの国の王女、ユティスなるぞ!」



 冬馬が覗き込んだ宝玉は確かに映していた。それはフレアだ。
 イスに腰掛け、病人のベッドの傍に居る彼女の姿だった。
 天井の隅からカメラで映したような構図のため、ベッドに横たわるのが誰かはわからない。フレアの表情も帽子で隠れて見えない。
 だがフレアは泣いていた。膝の上に握られた両の拳は震えており、微かに心電図の音が響く。
「ごめん……ごめんね……」
 何度も繰り返すフレアの呟きは微かで……。
 パリン、と宝玉が割れて砂になってしまった。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【5698/梧・北斗(あおぎり・ほくと)/男/17/退魔師兼高校生】
【6145/菊理野・友衛(くくりの・ともえ)/男/22/菊理一族の宮司】
【2711/成瀬・冬馬(なるせ・とうま)/男/19/蛍雪家・現当主】
【0086/シュライン・エマ(しゅらいん・えま)/女/26/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】

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■         ライター通信          ■
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 ご参加ありがとうございます、シュライン様。ライターのともやいずみです。
 ニアはやはり怪しかったようです……。いかがでしたでしょうか?
 少しでも楽しんで読んでいただければ幸いです。

 今回は本当にありがとうございました! 書かせていただき、大感謝です!