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□ 猫に小判、猫にお魚、猫にまたたび 〜にくきゅう大行進2〜 □
【 opening 】
寒い朝が漸く過ぎ去り、昼の日差しが地面を暖かくする昼時間。
猫たちはねこねこ集会の会場へ向かっていた。
新年になって初めての集会。
若い猫たちは集会で振る舞われる豪勢な料理を楽しみしていた。
「またたびビスケットが楽しみですにゃ」
「そうですにゃ、今日はまたたび酒が飲めるかも知れないのですにゃぁ」
「今年の目玉のお魚はどんなのですかにゃ」
黒猫と白猫のコンビ、ノアとブランが目をきらきらと輝かせ、二本足立ちで両手の肉球を合わせ、首を傾げてまたたび酒を思い浮かべる。
普段の集会に出されるまたたび酒とは違い、新年会の集会で振る舞われるまたたび酒は特別で、猫又一族のまたたび酒造りの匠、作二郎がこの日の為に仕込んだまたたび酒なのだ。
ただ、造られる量が少なく、ノアとブランにまで回ってくるかどうかが問題なのだった。
無くなれば、いつものまたたび酒になるだけなのだが、作二郎のまたたび酒が飲めるか飲めないかで、今年一年の運のつき具合が左右されそうな気分になるのだ。
猫たちにとって縁起の良い物が、作二郎のまたたび酒ということなのだろう。
猫たちは老猫、成猫、子猫、関係なく振る舞われ、文字通り無礼講となる。
「マーブル王子、王子〜?」
ノアが尻尾を揺らし、くるりと振り返り、後ろを歩いているはずのマーブル王子の姿が無いのを見て真っ青になった。
「にゃぁ〜〜ん!?」
「どうしたにゃ……、にゃぁ〜んとっ! あそこですにゃ!」
「王子〜、にゃっ!?」
ノアとブランが吃驚して、肉球の手で指さす。
空に浮かんだ宝船にマーブル王子が猫爪で張り付いていた。
王子は振り返ると、きら〜んと目を輝かせ何かを言った。
「今年は……、逃がさないぞ、大きな魚……にゃ?」
「ああっ、王子が宝船にっ。きっと恵比寿さまの鯛を狙っているのですにゃ」
「王子、お魚大きすぎるですにゃっ!」
下でノアとブランが降りてくるように言うが既に遅し。
マーブル王子の姿は空の彼方だった。
「というわけで、マーブル王子を探して下さいなのですにゃ……」
へにゃ、と尻尾を垂らしてノアとブランが草間武彦に頭を下げた。
「また、お前達か」
「ご近所のよしみでお願いしますにゃ」
【 1 大きな魚は特別 】
「可愛い依頼人ですね。僕は菊坂静です。よろしくお願いしますね」
菊坂静が、草間の前で状況を説明するノアとブランに話しかける。端正な面持ちに優しい笑みを浮かべた静に、ノアがくるりと身体全体で振り返り、喜色を浮かべ二足歩行で歩み寄る。
「ノアですにゃ。よろしくなのですにゃ」
「王子様は冒険心が強いのですね。お二人は大変そうですが」
「はいですにゃぁ……」
毎度毎度マーブル王子の冒険心に振り回されているノアはちょっと遠くを見てしまう。
「お茶淹れていたのですが、お好きな飲み物を淹れますよ? 興信所の給湯室は色々揃っているので、たいていのリクエストにはお応えできそうです」
「にゃ〜、では、ホットミルクをお願いしますにゃ」
「にゃ、わたしもお願いしますにゃ〜」
ブランが目をきらきらさせて、静を見上げた。
「ホットミルクを二杯用意しますね。少し待っていて下さい」
静はブランの肉球をにぎにぎして頷き、給湯室へと入っていく。
「あぁ〜、美味しそうです〜」
ぱたりと何かが落ちる音が聞こえ、草間は視線を向ける。
「シオンも協力してくれるのか?」
部屋の隅に据えられたノスタルジックな趣きのあるテレビを観ていたシオン・レ・ハイに声をかけた。
シオンは料理番組を観ていたらしく、口の端には涎が見えた。さっきの音は涎が落ちる音だったようだ。見た目は優しげなダンディおじさまなのだが、中身はとても素直な……要は騙されやすいタイプだった。今日も駅前で募金を呼びかけている人々に感動して、その時、持っていたお金を全部寄付してきたのだ。本当は持っていたお金で昼ご飯を食べる予定だったのが、つい寄付してしまったので、草間興信所で何か食べ物をいただこうと、カレーを食べた後、お茶の入った湯飲みを手にして、くつろいで居た所だった。
「ねこねこ集会と、恵比寿さまの鯛が食べられるのかが気になります。きっとお腹いっぱい食べても、まだまだありそうですよ。焼き魚に、お造りに、鯛飯に、あぁ、思いつくだけでも美味しそうです」
うっとりと妄想中のシオンをそのままに、草間は開いた扉を見た。
双子の守崎兄弟、守崎啓斗と守崎北斗だ。
じっと聞いていた啓斗は、一緒に聞いていたノアとブランに目をやる。
「……あの鯛は食えたのか? 実物よりはあまりにも立派だからって、てっきり俺は張りぼてなんだって思ってて……。まぁ、食べ物を前にして反応してしまうのを見るのは慣れているからな。ん、引き受けよう。しかし、鯛の骨って大きいから猫には不向きなんだが、よほどの憧れだったんだろう。食べ物の執念ってものは、何にも勝る時があるからな、ホントに……」
どこか遠い目をした後、隣にいる北斗を見て溜息をつく啓斗。
が、直ぐに啓斗の表情がにっこりととてもイイ笑顔に変わる。北斗は啓斗の表情の変化に気づかないまま、大きな鯛にドリームを抱いていた。
「なんて羨ましいんだっ! ……ってか、あの恵比寿様、鯛に猫がぶら下がっても気付かねぇのかな。ノアとブランが見た時はまだ船の船体に張り付いている所だった訳だけどさ。いつも大きな鯛ぶら下げているから、気にならないのか……。ってことはだ、食欲旺盛な高校生が一人もいっちょおまけに増えても気にならねぇんじゃねぇかな……あー、腹一杯食いてぇ。……はっ! 兄貴っ」
北斗は啓斗がにっこりと笑顔般若で見ているのに気付き、慌てて手を振る。
「何だ、北斗」
「大丈夫っ、鯛は我慢するからっ!」
「本当か」
啓斗の顔には笑顔が張り付いたままだ。
「ハイ、ガンバリます」
しおらしく、とはいえどこか嘘くさく返事してしまった北斗に、啓斗は両手で北斗の眉間をぐりぐりとした。
「……いってー!」
床にしゃがみこみ、身もだえする北斗。
「くうっ……あぁ、鯛、美味しそうだよなー。久しぶりに刺身食いてぇ、刺身。いやいや、我慢だ我慢。王子捕まえたら、にゃんこ玉貰えるんだし。新年早々、欲にまみれちゃいかんよな……それに後は集会で飲み食い出来るんだし、鯛は忘れてるんだ」
北斗は自身に暗示をかけるように、呟く。
「シュラ姉?」
ノアの肉球のぷにぷにした手をにぎにぎとして、シュライン・エマはうっとりとした表情を浮かべていた。
ちょっぴり何処か遠くのお花畑にトリップしていたようだ。
「え? どうしたの北斗」
「にゃ〜?」
触られて気持ちよさそうにしていたブランが北斗を見上げる。
「いやー、肉球の魔力に取り憑かれてるなぁ……って思って」
「だって、こんなに愛らしくて気持ちがいいんだもの。あぁ……目が線になって和んじゃう。いけないいけない、つい気持ちよくて。王子の救出ね。宝船かぁ……、お正月から縁起がいいし、ね、武彦さん」
「まぁ、福が来るならいいんだけどな……」
どこか諦めている風な草間。毎回、貧乏くじを引いている感のある草間は、神頼みでもどーにもならないんじゃぁないかと思っているようだ。
「可愛いらしいにゃんこ玉が集まれば何になるか興味もあるし、喜んでお手伝いするわ」
新たに現れた2人にノアとブランは嬉しそうに尻尾を揺らす。
「お、冥月。王子がまた騒動を起こしたらしくてな、助けてやってくれないか」
黒冥月はノアから、話を聞き、呆れた表情を浮かべる。
「お前達の王子は落ち着きが無いな……」
「お願いしますにゃ?」
「にゃ?」
と、ノアとブランに両側から肉球で冥月の手に添えられると、あまりの気持ちよさと見上げる可愛らしい顔に釣られて引き受けた。
「相変わらず、可愛いなお前達は」
ノアとブランの頭を交互に撫でる。
「何だ草間、その目は?」
草間は机の上に置かれたにゃんこ玉8個をじっと見つめ、その内の1個を冥月にすすっと無言で差し出す。草間の分のにゃんこ玉だ。
草間の言いたい事を悟った冥月は、
「煙草と交換してやろう。それでいいな?」
「気前がいいな。成立だ」
草間は上手く交換成立させて、ご機嫌だ。小さな幸せというやつだろう。
よっ、男前、と草間がぐっと指を立てるのに冥月はぱしっと当てる。
「誰がだ!」
弓削森羅は、草間の机の上に並んだにゃんこ玉を見て、美味しそうだと思った。
「報酬は美味しそうだし、集会の宴会も楽しそうだし、良いこと尽くめだな。俺も依頼受けるよ。よろしく頼むな、ノアとブラン」
一匹ずつ握手を交わすと、森羅はにっこりと笑った。
【 2 マーブル王子捕まえられる 】
本格的に探す前に、思い思いに必要だと思う物を調達してくると行動を開始した。
「まずは宝船を探す所からだよな」
森羅がう〜んと唸る。
「宝船……空飛んでいるのよねぇ、確かによじ登ってみたくはなるかも。楽しそうですものね」
七福神が宝船に乗って移動していたら、思わずどんなものなのか見ては見たくなるだろうと思うのだ。
「思うだけで、やらないけれどね」
シュラインと森羅、啓斗と北斗、冥月とシオン、静と草間は興信所の屋上に上がり、上空を見上げた。
「万が一落ちてきたときのための準備は万全ですよ」
シオンが網と凧を広げている。
「凧って何に使うのですか?」
静が、ふと疑問に思い、シオンに訊ねる。
「宝船を見つけた時に、止まって貰う時のメッセージボード代わりにどうかと思いまして、用意してみたんです。網は……、恵比寿様の鯛が落ちてきたらいいなーと少し希望が。切実なんです、食費……」
最後はシオンの期待が入っていたり。
「僕はマタタビと猫じゃらしを用意してきました」
近所のペットショップで購入してきた2つのアイテムは王子の気を惹きつける前に、ノアとブランの心を鷲づかみにした。
「にゃぁ〜ん!」
袋から出された猫じゃらしに飛びつくブラン。
袋の側でごろごろと身をくねらせるノア。
「気持ちよさそう……。これなら、王子にも効きそうですね」
猫じゃらしにじゃれつくブランで遊びながら、静は笑みを浮かべた。
「ってことはこれもいけそうだな」
啓斗が袋から出したのは猫まっしぐらになるという、かりかりペットフードだ。
ついでに興信所の給湯室から借りてきた陶器の皿に幾らか入れてみた。猫缶はもう1缶ある猫缶でカンカンと鳴らす。猫じゃらしは、静が検証済だったので、出さないでおいた。
「かりかりタイムですにゃー!」
集会前でお腹を空かせていたノアとブランは、きらーんと目を輝かせて皿に近づいてくる。
「あっ、兄貴ずるっ。猫缶にかりかりかよ」
どこにそんなお金が……っ! と思うのは欠食児童な北斗。
「宝船、普通の人には見えないんだよな。聞き込みも薄そうだし、毎年同じコースを通るのなら、ある程度は予測できないかな。王子は毎年通るその道を知っていたみたいだし、ノアとブランはしらないか?」
かりかりを両手一杯にしている二匹に聞く。
「もぐもぐ……そうですにゃぁ……」
「んぐ……そうですにゃ。去年、王子はこの辺りにある綺麗な硝子窓のある洋館まで行って戻ってきたですにゃ!」
「綺麗な洋館か……。興信所の近くってなると、高峰心霊研究所だな」
冥月が答える。
「だいたい場所が分かれば、更に絞れるな。王子のよく使っている品物とかあればいいんだけど、何か無い?」
森羅が、能力を使うのに媒体となる物があればと訊ねる。
「あるですにゃ」
ノアがごそごそと背負っていた小さなリュックから、王子が愛用している座布団が出てくる。座布団の大きさとリュックが反比例しているのは猫又一族の不思議だ。
「座布団か」
森羅は座布団を手にして集中する。ゆっくりと像を結び、マーブル王子の様子が分かるようになる。
そして、ありゃ〜と呟いた。
「あ〜〜。王子、鯛の尻尾辺りの身食べちゃったみたいだ」
「えぇぇ! やっぱ食えるんじゃん!」
「食べてしまったのはしょうがないです。謝って、その鯛を貰えるように交渉しましょう」
「食べちゃったのね……」
北斗とシオンが、鯛が食べられるものだと分かった途端、嬉しそうに反応する。
シュラインは、食べちゃった鯛、どうしようと思案する。
「場所は……、高峰心霊研究所上空で滞空しているみたい。どーも、王子見つかったみたいで、どうするか困っているみたいだ」
「それなら、迎えに行けばいい」
冥月が、屋上から高さを恐れもせずに屋根伝いで、高峰心霊研究所の辺りまで移動し始める。
「零ちゃん、お願いできないかしら」
シュラインは草間零に宝船の元に連れて行ってくれるように頼む。
「はい、シュラインさん」
零は、シュラインを軽々背に乗せると、宝船の元へ飛んでいく。
「北斗、行くぞ」
「了解」
啓斗が北斗を伴い、屋上から地面へと飛び降りる。二人は忍びであるから、動作は慣れた物だ。タンデムでバイクに跨ると走っていく。
「僕たちも向かいましょうか」
静が、シオンと森羅に声をかける。
猫じゃらしやまたたびを袋に入れて、一階へと降りる。途中、シオンが渦巻き模様の風呂敷になにやら品物を包んで再び現れた。興信所から駆り出してきたらしかった。
「見つかったら、直ぐに集会場所に向かいそうですからね」
他の調査員の用意した物もきっちりと包んできたらしい。
「他人の物をとろうって性根はこってり絞らなきゃいけなきゃだけど、その執念は見上げた物ね。二年越しだもの。七福神さま達にお話しして、分かって貰えるといいけれど。鯛を囓っちゃったから、新しい鯛を釣って許して貰えるかしら……」
食べちゃった鯛の分は、釣って返せないかと思うのだ。それに囓りあとのついた鯛を持ったままというのは、何だか気が引けた。
宝船の側に到着したシュラインは、屋根の上にいる冥月に手を貸すと、宝船に乗り込んだ。
零の背から降りると、しっかりと恵比寿様の鯛を持ったマーブル王子の姿が目に入ってきた。
「王子」
冥月が影を操り、マーブル王子だけを捕らえ、手繰り寄せる。
「にゃー!」
恨めしげなマーブル王子の声。
「ごめんなさい、恵比寿さま。マーブル王子が鯛を食べてしまって……」
シュラインが釣り竿を持った恵比寿さまに頭を下げる。
「ん……、あぁ、そんなに気に病まなくとも大丈夫じゃ。また、釣れば良いのだしな」
冥月に捕獲されたマーブル王子を見て、笑う。
「にゃー、鯛食べたかったのにゃ……」
「鯛一匹買ってやるから、あの鯛は諦めろ」
「それも欲しいにゃ、でも、あの鯛も食べたいにゃ!」
「欲張り王子め」
冥月の前に吊られた王子が、未練たらたらで大きな鯛を肉球の手で指す。
「おや、下にいる者達は、おぬしたちの仲間かの」
大黒さまが船の下を覗き込んでいう。
「あ、北斗たちだわ」
「ふむ、それなら……」
恵比寿さまが、釣り竿で下にいる北斗と啓斗、静と森羅、大荷物をもったシオン、ノアとブランを連れた草間を引き上げる。
静は尻尾辺りを囓られた鯛を見て、謝る。
「すいません、大切な鯛を囓ってしまって。マーブル王子、その鯛を食べるのが憧れだったみたいで……」
二年越しである事や、食べたくて仕方なかったと王子の気持ちを説明する。
「もし、よければなんですが……、その鯛を譲っていただくことは出来ないでしょうか……?」
シオンが、駄目もとで聞く。折角なら、シオンも食べてみたかった。
「うむ……、まぁ、良いじゃろう。囓り跡もついておるし」
「ありがとうございます!」
シオンは恵比寿さまの大きな鯛を受け取ると、マーブル王子に嬉しそうに見せる。
「おおぉ〜でっけぇな〜!」
北斗が舌なめずりをしながら、鯛を眺める。次々と思い浮かぶ鯛料理。
「にゃ〜!」
冥月に解放されたマーブル王子が、鯛に飛びつく。
「恵比寿さまの鯛無くなるけど、代わりに釣ろうか?」
森羅が、鯛を手に持っていない恵比寿さまにいう。
「そうじゃのう……、釣り竿をいくつか持っている者もいるようじゃ、頼むかの」
釣り竿を持っているシオンと北斗は、恵比寿さまの鯛を釣る事に。
「この場所を借りて、鯛を捌いては駄目かしら」
広さがちょうどいいのだけれど。
「別にかまわんが、これだけあれば、この人数で食べ切れそうにないが……」
いや、それは大丈夫です、と北斗は言いたかったが、啓斗の目もあり黙ったままだ。
「ねこねこ集会があるのですにゃ」
ノアが、ねこねこ集会に向かう途中にマーブル王子が鯛に突貫したのだと説明する。
「王子がご迷惑かけたので、お詫びといってはなんですにゃけど、七福神さまもいかがですかなにゃ?」
ブランが七福神をねこねこ集会に誘う。
「それは楽しそうじゃな、どれ、お邪魔するかのう」
鯛を釣っている間、シュラインは啓斗と共に大きな鯛を捌く。手伝うのは森羅と静だ。
お皿やら、包丁までシオンは風呂敷に包んで持って来ていた。もしかして、鯛を頂けるかもという希望があったからだ。
マーブル王子が囓った所は、先に切り取って王子の口に入っている。
一足先に満腹になって、ノアが持ってきた座布団の上で伸びをしていた。
「そろそろ、鯛も捌き終わるから、集会場所へ向かいましょうか」
集合場所へと冥月が降り立つと、シオンの持っていた凧を着地点の目印にする。
「ここだ」
宝船は大きかったが、普通の人に見えないだけあって、建物を突き抜けても、何も異常はないようだった。
【 3 にゃんこ達、またたび酒で宴会 】
「乾杯ですにゃ〜ん!!」
月が天に上がった頃に、ねこねこ集会は始まった。
色とりどりの料理に、王子が囓り付いた鯛料理、またたび酒の樽が山と積まれている。猫御用達のかりかりに猫缶もあった。
またたび酒のおつまみにスルメやおかきが用意されている。
「なんで、こんな姿なんだ。しかし、これが流行の萌え姿というやつか……」
冥月は勢いに任せて飲まされた飴玉を半分食べてしまい、黒猫耳に黒猫尻尾の猫娘姿だ。
「似合っているぞ」
笑いを含んだ草間のフォローに冥月は猫パンチを草間に繰り出す。が、猫又姿の草間は身軽にかわす。
シオンは、集会にこたつセットを設置し、猫まみれで堪能していた。
「ふふ、猫はこたつで丸くなると聞いた事があったのです。大成功です!」
机の上に、ペットの白兎ちゃんとシオンの身体に沿うようにぬくぬくと丸くなる猫たちに幸せを感じていた。
「おや」
白兎ちゃんの側にやってきたスリムな黒猫は、こたつの暖かさが感じられる机の上にそっと腰を下ろす。
机の上にも猫がいて、シオンは早めにご馳走を食べ終えていた。
「これはどうでしょう」
ふさふさの猫じゃらしを、鼻先で振ってみる。
「猫じゃらしには釣られませんよ……っ、はっ!」
釣られないといいながら、身体が動いてしまう。
「静さんですか」
シオンは抱き上げると、胸元で顎の辺りを撫で撫でする。
「にゃぁ〜んっ……」
くすぐったいのに、気持ちよさに為すがままになってしまう。喉は特に弱点だったらしく、鼻先が微かに赤かった。
「眼鏡なしの武彦さんも新鮮ね。猫姿も稀だけど」
毛の長い黒猫になったシュラインは、茶色っぽい猫になった草間にそっと寄り添う。
側にはまたたび酒の入ったコップがあった。気持ちよさそうに、すりすりと身を寄せている。
「随分酔ってるな、シュライン」
「そうかしら〜」
作二郎のまたたび酒をゲットできたシュラインは、草間と共に飲んでいた。
人間の時と猫又姿の時では、酒の良い具合が違うのか、シュラインはかなり酔っていた。にゃ〜ん、と歌い出すくらいに。
歌の上手いシュラインの声に合わせて、森羅が気分良く踊り出す。手には猫じゃらしをを持っている。森羅は茶虎の猫姿だ。
「猫缶もなかなかいけるのな。鯛の刺身もうめぇ」
茶の部分が多めな三毛猫になった北斗は、人間の時と変わらない勢いで料理を攻略していた。
またたび酒よりも食い気の北斗だ。
同じように、茶の部分の多い三毛猫になった啓斗は、北斗が平らげていく皿を纏めていく。集会の料理を食べきらないようにと祈りながら、啓斗は鯛の刺身に緑茶を注ぎ、鯛のお茶漬けにする。
「兄貴、俺も俺も」
「分かった。他の参加者も居るんだ、食べ尽くさないようにするんだぞ」
「大丈夫だって、まだこんなにあるんだからさ」
「そうか……?」
かなり疑問符を付けながら、積み上げた皿を見る啓斗。
シュラインの歌に釣られて、マーブル王子が森羅の元に行き、一緒に踊る。
手にはスルメを持っている。王子の目が半分閉じているのは、またたび酒を飲んで心地よくて眠いのだろう。だが、眠くても楽しい所には居たいお年頃。
楽しそうな様子に釣られて、静も恥ずかしがりながら仲間に加わる。
伴奏をつとめるのはねこねこ楽団を編成(?)したシオンと愉快な猫たち+白兎ちゃんだ。
賑やかな音を魚に冥月はまたたび酒を飲む。
何となく猫たちの親分猫のようだ。
福を授ける七福神も混ざり、それは賑やかな一夜となったのだった。
End
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【受注順】
【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
[にゃんこ玉×2]
【6608/弓削・森羅/男性/16歳/高校生】
[にゃんこ玉×1]
【0554/守崎・啓斗/男性/17歳/高校生(忍)】
[にゃんこ玉×1]
【0568/守崎・北斗/男性/17歳/高校生(忍)】
[にゃんこ玉×1]
【2778/黒・冥月/女性/20歳/元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】
[にゃんこ玉×4]
【3356/シオン・レ・ハイ/男性/42歳/紳士きどりの内職人+高校生?+α】
[にゃんこ玉×1]
【5566/菊坂・静/男性/15歳/高校生、「気狂い屋」】
[にゃんこ玉×1]
【公式NPC】
【草間・武彦】
【草間・零】
【NPC】
【マーブル王子/男の子/猫又一族の王子・白黒斑猫・冒険心旺盛】
【ブラン/男の子/猫又一族の白猫・苦労猫】
【ノア/男の子/猫又一族の黒猫・苦労猫】
【作二郎/おじちゃん/猫又一族の長毛猫/またたび酒の匠・今回は名前だけ】
【七福神ズ/かみさま/鯛を狙われた後、ねこねこ集会に参加】
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■ ライター通信 ■
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初めましてのPC様、再び再会できたPC様、こんばんは。
竜城英理と申します。
今回、ノベルが遅れてしまいました、申し訳ありません。
今後、このような事が無い様、気をつけます。
猫に小判、猫にお魚、猫にまたたび 〜にくきゅう大行進2〜にご参加ありがとうございました。
にゃんこ玉を皆様にアイテム配布しております。
集まると何かになるらしいです。
文章は皆様共通になっています。
では、今回のノベルが何処かの場面ひとつでもお気に召す所があれば幸いです。
>シュライン・エマさま
草間さんと一緒に猫又化していただきました。
猫又になるとお酒に弱いのかな〜とか。
>弓削・森羅さま
初参加ありがとう御座います。
賑やかな宴会ムードメーカーになって頂きました。
にゃんこ玉は5個集めると何かになります。
>守崎・啓斗さま
これで、北斗君の食費が随分浮いたかも知れません。
終わった後の片づけを手伝って下さったと思うのです。
にゃんこ玉は5個集めると何かになります。
>守崎・北斗さま
宴会が終わった後の料理まで食べ尽くして、かなりお腹は満たされたかと。
にゃんこ玉は5個集めると何かになります。
>黒・冥月
後1個でにゃんこ玉が集まりますね!
猫又たちの親分さんみたいだと、にこにこしていました。
>シオン・レ・ハイさま
初参加ありがとう御座います。
猫と兎さんで周りはどうぶつ王国になってしまいました。
にゃんこ玉は5個集めると何かになります。
>菊坂・静さま
初参加ありがとう御座います。
王子の代わりに謝って頂きましたが、どうも王子は懲りていない様子です。
にゃんこ玉は5個集めると何かになります。
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