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<東京怪談・PCゲームノベル>


端故


●始

 草間興信所を訪れたササキビ・クミノは、入室と同時に発せられた「お願いします」の合唱に一瞬圧倒されてしまった。
 何事かと見れば、少年達がいっせいに草間に向かって頭を下げている。草間は「参ったな」と小さくつぶやきながら、頭をぼりぼりと掻いている。口に咥えた煙草の灰が今にも落ちそうになっているあたり、灰皿よりも目の前の少年達の方に意識が向いているのは一目瞭然である。
「どうした」
 クミノはそう言って、草間と少年達に問いかける。草間はクミノを見てほっとしたような表情をし、次に少年達に向かう。
「もう一度、説明してみてくれないか?」
「だったら」
 草間の言葉に、少年達は顔を見合わせる。不思議そうなクミノに、少年達は口を開いた。
 それが、件の廃ビルにて倒れた少年の話であった。
「……なるほど」
 話を聞き終え、クミノはそう答えて頷く。じっと黙って考え込んだクミノに、少年達はちらりと時計を見、申し訳なさそうに口を開いた。
「俺達、今からお見舞いに行くんだ。もし何かあったらさ」
「病院にいけばいいのだな?」
 クミノの返答に、少年達は嬉しそうに頷いた。そして、元気良く「それじゃ」と言って興信所を出て行った。
「中々、元気な面々だな」
 苦笑交じりにクミノが言う。少年達が出て行った興信所は、先程までの騒がしさが嘘のように静まり返っていた。この静けさこそが本来の興信所なのだが、あまりにもにぎやかだった為に、妙に静か過ぎるようにも感じられる。
「正直、助かった。引き受けるかどうかを考える間もなく、頭を下げられていたからな」
「引き受けるかどうか、迷っていたのか?」
「多少は。情報の少なさと、依頼のハードルの高さにな」
「なるほど」
 クミノはこっくりと頷く。
 目的は、二つある。被害に遭った少年の回復と、廃ビルの怪現象の沈静化である。それら二つはいずれも達成可能かどうかはかりきれぬ上、与えられた情報も少ない。
 少年達が行ったという廃ビルについて、得られる情報は限りなく少ない。廃ビル自身の事は、恐らく簡単に調べがつく。誰が持ち主で、前は何であったかといった、事務的なことは。
 だが、相手は心霊スポットだ。当然のようにたくさんの曰くがついて回る上、そのうちのどれが今回の件に該当するかどうかなどすぐに分かるとは思えないのである。
「情報が足りないならば、集めればいいだけだ」
 クミノの言葉に、草間は「それはそうだが」と苦笑する。
「同じように、こういう怪奇現象に詳しい場所があるだろう?」
「……あるな」
 草間は思わず苦笑する。確かに、ある。自分が怪奇探偵だなんていわれる所以となる事件が、同じくらい舞い込む場所が。
「問題は、もう一つの依頼達成のハードルが高い事だ」
 根本的な解決ができれば、少年の回復も廃ビルの怪現象沈静も可能だろう。最低限、章ねんの回復は達成しなければならない。
 だがしかし、この状況下でそれが達成できるかどうかは予測不可能だった。集めれば確かに情報は集まるが、その後解決できるかどうかはまた別問題なのだ。
 根本治療、根絶がクミノ個人だけでは為しえないと、重々承知しているのだ。
(生憎、私には妄執にとらわれた霊やあやかし、そして人を簡単に慰撫する便利な能力は持ってないからな)
 クミノは自嘲する。それがあればさぞかし楽だろうに、と。
「しかし、既に請け負ったからな。後は依頼達成か否かだけだぞ」
「分かっている。よって、草間にも覚悟しておいてもらいたいのだが」
「覚悟?」
 嫌な予感がする、と草間が眉間に皺を寄せる。クミノは気にすることなく、口を開く。
「廃墟そのものの破壊も視野に入れておいて欲しい」
「は、破壊だと?」
 うろたえる草間に、クミノはこっくりと頷いた。
「無論、穏やかな方法での解決こそが望むところではある」
「そうだな、ひとまずそれを目指してみて欲しい」
「だが現象解消の為には、付随的に施設や地場の破壊を伴わなければならない事もあるからな」
 クミノの言葉に、草間は「それはそうだが」と語尾を弱くする。分かってはいても、実際に「破壊するかもしれない」という可能性には納得し難いものがあるらしい。
「ともかく、情報を集めなければならないな」
 クミノはそういうと、くるりを踵を返す。
「なるべく、穏便にな」
 颯爽と歩いていくクミノの背に、草間が声をかけた。クミノはそれに、小さな頷きだけを返すのであった。


●動

 まず、クミノは月刊アトラス編集部へと向かった。編集部ならば、何かしらの投稿がなされている可能性がある。うまくいけば、取材に立ち入っているかもしれない。
 ドアを開くと、相も変わらず編集員達が忙しそうに立ち回っていた。そんな中、クミノは辺りを見回した後に碇の姿を確認する。
「あら、クミノさんじゃない。久しぶりね」
 碇はそう言い、クミノに近づく。クミノは頭を軽く下げ、それに答えた。
「突然どうしたの?」
「先日、廃ビルに足を踏み入れた少年が意識不明になったのだが」
 クミノが言うと、碇の顔つきが変わった。目の奥を鋭く光らせ「廃ビル?」と聞き返してきた。
 場所と状況を簡単に説明すると、碇は数あるファイルの中から一冊を取り出してきた。
「その廃ビルならば、過去に何回か心霊スポットとして投稿があったわ。それでこちらも調査をしてみたんだけど、大した情報は得られなかった」
「廃ビル自体には、特に問題が無いということか」
「そうね、そう言って間違いないと思うわ」
 碇はそう言い、ファイルをクミノに手渡す。ぱらぱらとめくるが、なるほど、確かに廃ビル自体に問題があるとは思えぬ。
 心霊スポットとしての投稿を見るが、そちらもよくある怪談話と何ら変わらない。窓際に女の霊が見えるだとか、突如叫び声が聞こえてきただとか。その程度だ。加え、それらの情報は能力者たちによって虚偽であることが判明してあった。つまりは、特に問題にすべき点は無いのである。
「他にはないのか」
「あるにはあるけど」
 碇は語尾を濁しつつ、別のファイルから資料を取り出した。そちらのファイルの背には「未確認情報」と書かれている。
「未確認情報……つまり、真偽のほどが定かではない情報か」
「そういう事ね。裏を取ろうにも、投稿者の消息すら不明。現地に赴いてもそういった情報の源となりそうなものも無い。でも、確かにこうして投稿はある」
 碇はそう言い「ほぼ使えない情報ね」とも付け加えた。
「とにかく情報が少ない。どんな情報でも、あればありがたい」
 クミノはそういうと、受け取った資料に目を通す。すると、そこに「箱らしきものを見た」という記述があるのを発見した。
「どこから現れたのかも、中に何が入っているかも分からない。突如現れ、そして消えた。でも確かに、見た」
「……この情報は、一体」
「箱らしきものを見たという投稿ね。見間違いじゃないかとも取れるけど、その投稿者は確かに見たって言っているし」
 碇はそう言い、肩をすくめた。投稿者についての情報も、書いてはいない。匿名希望といっても、住所や本名くらいは書いてもいいところなのだが。
(しかし、こういった情報があるという事は頭に置いておいていいかもしれない)
 クミノはそう思い、情報だけを頭に入れる。
「有難う。もらった情報は、有意義に使わせてもらおう」
「それじゃあ、代わりに情報を提供してくれるかしら?」
 悪戯っぽく笑う碇に、クミノはこっくりと頷いた。もとよりそのつもりだったのだから、断るつもりもない。
 碇の「よろしくね」という声を背に受け、クミノは月刊アトラス編集部を後にするのだった。


 次に向かったのは、ゴーストネットOFFだ。インターネットを用い、ゴーストネットにアクセスする。いつも通り、多種多様な噂が飛び交っている。
 検索機能を使い、廃ビルについての情報を探った。すると、月刊アトラス編集部で得たよくある心霊スポットとしての情報が多数ヒットする。
「これらは既に、問題視しないな」
 クミノは苦笑しつつ、更に情報を探る。その際、未確認情報だという箱について書かれている記述を探す。
「……これか」
 ようやく見つけ出したところには、確かに「廃ビルにて箱を見た」という記述があった。続けて「なんとなく嫌な感じ」だったといい、更に「あっという間に消えてしまったので、見間違いかもしれない」と。
「箱、か」
 真偽のほどが分からないのは、この情報だけだ。他がちゃんと裏が取れている上に虚偽であったと分かっている為、頼りになりそうなのはこれだけなのだ。
「これ以上は、無理そうか」
 ゴーストネットで得られる情報がこれまでと見切りをつける。と、その時、突如としてそのスレッドにレスがついた。
「もしも箱を見つけましたら、こちらにご連絡ください」
 席を立とうとしたクミノははっとし、再び席に着く。そうして、そのレスに対して「何か知っているのか」と尋ねる。
 レスはすぐに返ったが、質問の答えとして妥当とは思えぬ「今の時点では何とも。ただ、箱というのが気になりまして」とあった。
「その箱とは、どういうものなんだ?」
「力を放出する箱です。通常の人が触れると、力の放出に耐え切ることができません」
 クミノはレスをじっと見つめ、ふむ、と一息つく。なるほど、可能性はあるかもしれない、と。
「もし見つければ、必ず連絡する」
 クミノはそうレスをつけ、ゴーストネットOFFを後にした。
 連絡先であるメールアドレスのメモを、しっかりと握り締めて。


●箱

 クミノは病院にたどり着く。件の少年が入院している病院である。
「確か、ここに彼らもお見舞いに来ているんだったな」
 ふむ、とクミノは考える。
(廃ビルで、誰かが何かを見ていれば良いんだが)
 たとえば、箱。月刊アトラス編集部で裏が取れていないのは箱の目撃情報だけだし、ゴーストネットで手に入れた情報にも箱があった。更に、箱について「見つけたら連絡して欲しい」という申し出まであったのだ。
(箱について、重点的に聞くのがいいかもしれないな)
 クミノはそう判断し、病室へと向かう。
 倒れた少年がいるのは個室で、そこからざわざわという声が聞こえてきた。見舞いに来ているという少年達が、まだいるのであろう。
 ノックもそこそこに病室に入ると、一斉にクミノの方に向いてきた。
「失礼する」
 クミノがそう言って見回すと、少年達が嬉しそうに寄ってきた。
「おばちゃん、さっき言ってた興信所の人だよ」
「絶対、この人がなんとかしてくれるよ」
 少年達の言葉に、母親が軽く戸惑いを隠せないまま頭を下げた。クミノは軽く頭を下げ返し、病床で眠る少年のところに近づく。少年は未だ、眠ったままである。
「こうして眠っているままか。それとも、何か変化があったのか?」
 クミノの問に、母親は首を静かに横に振った。クミノは「そうか」とだけ答え、再び少年達を見た。
「一つ、聞きたいんだが。誰か、廃ビルで箱を目撃した者はいるか?」
 クミノが尋ねると、少年達は互いに顔を見合わせながらこそこそと話をする。そうして、一つの結論が出る。
 誰も見ていないのだ。
「あ、でも」
 ため息を漏らしたその瞬間、一人の少年が声を上げる。「何だ」と尋ねると、少年は「ええと」と口を開く。
「見間違いかもしれないんだけど」
「構わない」
「こいつ、何か見てた。倒れた時、何かを」
 少年がそう言った瞬間、他の少年達が顔を見合わせた。そして、口々に「そうだ」「確かに」「そういえば」と言い合う。
「つまり、この少年は何かを見たのかもしれないのだな」
 クミノがそういうと、皆がこっくりと頷いた。クミノは「なるほど」と呟き、じっと考える。
 可能性が、一つ浮上してきたのだ。それも、恐らく一番真実味がある。
「廃ビルに行ってみたほうがよさそうだな」
 クミノはそういうと、紙とペンを少年達に渡し、大体どの辺で少年が倒れたか、何処の辺りを見ていたのかを記入してもらう。クミノは書いてもらった紙を受け取り、ゴーストネットOFFで記したメールアドレスのメモと共にしまった。
「それじゃあ、行ってみるか」
(破壊は、なるべくならば避けたいが)
 草間のおろおろした顔を思い出し、クミノは心の中で呟く。そして、病院を足早に後にするのであった。


 廃ビルは、昼間だというのにどこかしら薄暗い印象を与えてきた。妙な噂がたくさん飛び交っているのも、無理の無い話しだと思われる。
(しかし、そんな中で「箱」の噂か)
 クミノはじっと廃ビルを見上げる。ぱっと見た感じ、何も感じることは無い。
「ともかく、何かを見たという場所に行ってみるか」
 クミノはそういうと、廃ビルの中に足を踏み入れた。
 少年達の証言と、書いてもらったメモからおおよその場所を断定する。中も薄暗かったが、なんとか辺りを確認できる程度の光がどこからか差し込んできていた。
「ここだな」
 何かが転がったような跡と、無数の足跡を発見してその場にしゃがみこんだ。足跡の数と靴のサイズから、少年達のものに間違いなさそうだった。
「この部屋、ということか」
 クミノは再び立ち上がり、辺りを見回す。再びメモを取り出し、位置確認を行う。足跡と併せて考え、問題の少年が倒れた場所を特定する。
「……何も、無いが」
 少年が倒れる前に見たという景色に、箱の存在は無かった。場所が違っただろうか、と再び見るも、今クミノが立っている場所に違いなかった。
(既に消えうせたか、それとも)
 クミノがそう思った、その瞬間だった。突如どこからか、からからという音が鳴り響いてきたのである。
「何だ?」
 訝しげに辺りを見回すと、ころん、と何かが転がってきた。
 大きさは、5センチ四方くらいという小ささであり、色は赤。ふっと吹けば、吹き飛んでしまいそうである。
(あれが、箱、か?)
 クミノは恐る恐る箱に手を伸ばす。力を放出する箱と聞いてはいるが、実際にどういうものなのかを確認しなければ作戦も立てられない。
 そうして、クミノの手が触れるか触れないかといった瞬間に、箱から何かがあふれ出してきた。
 見た目には、何も出ているようには見えない。ただ、何かが箱から溢れてきているのは分かった。
 全てが分かる。全てが与えられる。
 知識も、思いも、願いも、理解も、人の世の摂理も……何もかもが。たくさんの力が。力、力、力、力が……!
 クミノは慌てて箱から距離を置く。
「今のは、何だ?」
 奔流と呼ぶに相応しき状態だった。それは、人ならば手にしてはならぬもの。神の領域と言ってもいい。
「確かに、回収しなければならないようなものだな」
 クミノはそういうと、すう、と大きく息を吸い込んだ。
 気持ちをしっかりと持たねばならない。箱から溢れる力に、飲み込まれてしまわないように。強く意思を持ち、奔流に負けてしまわないように。
(たかが、5センチ程度の箱じゃないか)
 小さな箱だ。簡単に壊せそうな、おもちゃのような箱ではないか。
 クミノは自分にそう言い聞かせながら、再び箱に手を伸ばした。
(もう、力に好き勝手させない)
 ぐるぐると回るように流れる。知識が、力が。無作法な、土足で踏み込んでくるかのような。
 でも、負けるわけには行かない。ここで立ち止まるわけには行かないのだ。
 クミノはなんども自らに叱咤し、箱に手を伸ばした。たかだか5センチ四方の、だが持っているだけで飲み込まれそうになる力を放出する箱を。
「……箱を見つけたら、連絡する約束だったな」
 クミノは箱を握り締め、メールを打つ。打ち終わると同時に、ばたん、とクミノはその場に倒れてしまった。
 遠くから声が聞こえた気がするが、体は動くことは無かった。


●結

 再び目を覚ましたとき、目の前には真っ白な空間が広がっていた。ゆっくりと起き上がると、白に包まれた世界が病院のものであったことに気付いた。
「ここは……病院だな」
「ああ。奇遇にも、依頼人達が見舞いに来ている病院と同じだ」
 声がしたほうを見ると、草間がクミノを見てほっとした表情を見せていた。少年達に詰め寄られ、困っていた時とはちょっと違ってはいたが。
「私は、倒れていたのか」
「らしいな」
「らしい?」
 伝聞系で話す草間に、クミノは尋ねる。草間は「ああ」と言ってから、クミノの携帯を指差した。
「お前が倒れていたのを見つけてくれた人が、連絡をくれたんだ。自分が興信所から派遣されている者だって言ったんだろう?」
「それは、確かに」
 クミノは自分が打ったメールの内容を思い出す。
『箱を見つけた。今興信所より依頼されているものの原因と判断し、回収する』
「メールを受け取った人が、駆けつけて驚いたらしい」
「そうか」
(私は確か、箱を手にして……)
 そこまで考え、はっとする。倒れる前に握り締めていた箱の存在を思い出したのだ。
「そうだ、箱は」
「箱だったら、回収していったぞ。その連絡してくれた人が」
「しかし、それでは少年が」
 回復しないのではないか、といおうとするクミノの言葉を、草間は「大丈夫だ」という言葉で遮った。
「お前が箱を見つけたことによって、少年を回復させることが出来るとか言って、治療していった」
「……一体、何者だ?」
 箱を回収し、回収することによって壊れてしまった少年を回復させる。クミノでさえ倒れてしまったというのに。
「箱の回収を行っている者だそうだ」
「それは想像がつく。私が言いたいのは、そうではなく」
 クミノがそういうと、草間は苦笑交じりに「その内会えるさ」と答える。
「この業界、案外狭いからな。嫌でもまた会うことになるさ」
 草間の言葉に、クミノは「そういうものか?」と尋ねる。草間は迷うことなく、こっくりと頷いた。
「まあ、ともかくお前が廃ビルを破壊しなくて良かったぜ」
「覚悟をしていなかったのか?」
「していたから、安心してるんだよ」
 肩をすくめる草間に、クミノは「そうか」と言って頷いた。
(そういえば、情報提供を約束したんだったな)
 背中越しにかけられた「よろしく」という言葉を思い出す。月刊アトラス編集部に、借りた資料を返すついでに情報を提供しなくてはならない。
「……情報が、いまいち少ないかもしれない」
「え、何だ?」
「いや、碇に約束したのだ。情報を提供する、と」
 クミノの説明に、草間は「ああ」と納得する。
「やはり、廃墟そのものを破壊したほうが、情報的には大きかったかもしれない」
「いろんな意味で大きくなることを、ちゃんと覚えておけよ」
 びしっと突っこんで来る草間に、クミノは「冗談だ」と返した。明らかに冗談を言っているようには見えない真顔だった為、草間は「本当だろうな」と念押しをしてきた。
「当然だ。私は、穏やかな解決を望んでいたのだから」
 クミノはそう言い、ぼふ、と布団に横になった。
 窓の外に見える夕日は、廃ビルで見た箱の如く真っ赤に染まっているのだった。


<赤き光に目を細めつつ・了>

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 1166 / ササキビ・クミノ / 女 / 13 / 殺し屋じゃない、殺し屋では談じてない。 】

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■         ライター通信          ■
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 お待たせしました、コニチハ。霜月玲守です。このたびは「端故」のご発注、有難うございます。如何でしたでしょうか。
 この「端故」は、クリエータチーム企画である「MYSTIC−CITY」を題材とした、外伝的な位置づけとなります。よって、本格的に始動した際に今回のノベルと多少の矛盾が出るかもしれません。よって、タイトルも「端(外伝)故に、何か矛盾があるかもしれません」の意味と、要となっている「箱」をかけていたりします。
 ササキビ・クミノ様、再びご参加いただきまして有難うございます。廃墟破壊、個人的にはやっていただきたかったので、ぎりぎりまでどうしようかと迷いました。でも、今回は穏やかな方法での解決が望ましいということで、本当に穏やかな感じにさせていただきました。
 ご意見・ご感想など、心よりお待ちしております。それではまたお会いできるその時迄。