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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


草間武彦のそっくりさん

●オープニング
 今日も閑古鳥が鳴く草間興信所。
 草間武彦は、パチンコ店『エヴリディヘヴン』の一件で草間零にこってり絞られ落ち込んでいたと思いきや…
「零が留守の今がチャンスだ。今しかない!」
 全く反省していない模様。勢い良くドアを開けた時、何がぶつかる音がした。
「何だ?」
 そぉっとドアを開けると、そこにいたのは武彦そっくりの男だった。
「いてて…」
 しかも、声も似ている。
「わ、悪い。ちょっと、俺の話を聞いてくれ」
 そっくりな男を興信所に上がらせ、草間はあることを話し出した。
「お、俺があんたの代わりをしろだってぇ!?」
「そうだ、ほんの数時間だけでいい。俺がいないと、帰ってきた妹が怪しむからな」
 言うことを聞かないと…と指をポキポキ鳴らし、半ば強引に男を身代わりにし、武彦は『エヴリディヘヴン』へと向かった。

「ただいま帰りました」
 買い物から帰ってきた零が帰ってきた。
「お兄さん、今日は大人しく興信所にいますね」
「あ、ああ…」
 ぎこちなく武彦の振りをするそっくりさん。
 だが、それも長くは持たなかった。夕飯時にボロが出たのだ。そっくりさんの嫌いなものがあったのだ。
「お兄さん、好き嫌いありましたっけ?」
「い、いや…」
 無理して食べるが、その途端、露骨にまずい顔をしたのだ。
「あなた、偽者ですね! 本物のお兄さんはどこですか!」
 そっくりさんを締め上げ、本物の武彦が『エヴリディヘヴン』にいることが判った零の顔は怖かった。

「お兄さん…今度という今度は絶対に許しません!!」

●協力者
 溜息坂神社のすぐ隣にある空木崎家で、空木崎・辰一(うつぎざき・しんいち)の式神である白黒ブチ猫の甚五郎、茶虎子猫の定吉の二匹がにゃあにゃあと鳴き、草間興信所に連れてけとせがむ。
「草間興信所で何かあるのかい?」
 空木崎がそう聞くと、コクコク頷く二匹。

「あなた、一体誰なんですか? 答えて下さい!」
 零に詰問されても、偽草間が黙秘している。
 二匹に急かされ草間興信所に行くと、零が偽草間を詰問している途中だった。
「すみません、チャイムを鳴らしても出ないようでしたので勝手にお邪魔しました」
「あ……すみません。この人に話を聞くのに夢中で」
 零の話によると、買い物に行っている途中、草間が偽者に摩り替わっていたのだという。
「空木崎さん、今日はどういうご用ですか?」
「僕ですか? この子達に無理矢理連れて来られたんですけど…」
 足下にいる甚五郎と、肩に乗っている定吉を指しながら説明する空木崎。
「あなたが偽者の草間さんですね? 一体何者なんですか? 事と次第によっては、ただではすませませんよ?」
 温和な空木崎にしては珍しい、やや強引な詰問である。

 ――こうなったら、あの人にお願いするしかないですね…。

 電話の受話器を手にすると、零はある場所に電話した。
「もしもし、草間興信所です。は……いらしゃいますか? …ええ、すぐにお願いします」

●偽者は誰?
 しばらくして、興信所のチャイムが鳴った。
「あ、いらしたようです」
 零がドアを開けると、白い虎、白虎・轟牙(びゃっこ・ごうが)が目の前にいた。
 偽草間が「と、虎っ!?」と驚いたが、空木崎は平然としている。
「零さん、その白虎は……」
「サーカス団に頼んで、呼んでもらったんです」
 轟牙の訪問に驚いた偽草間は、命乞いをしながらペラペラと本当のことを話し始めた。
「なるほど……草間さんにばったり会い、身代わりを押し付けられたのはいいですが、夕飯でボロが出た、というワケですね。零さん、夕飯は何でしたか?」
「肉詰めピーマンと野菜サラダ、コンソメスープです」
「お、俺はピーマンが大嫌いなんだっ!!」
 どうみても30を超えた男が何を言うか…。怯えている間に、偽草間の臭いを嗅ぐ轟牙。
『轟牙はん、臭い嗅いでどないすんねん?』
 轟牙の頭にちょこんと飛び乗った甚五郎が聞く。
『こいつの臭いをたどれば、本物に会えるだろう』
 零には「にゃあ」と「ガルル…」にしか聞こえないが、甚五郎の言葉が理解できる空木崎は一人で納得していた。
「零さん、轟牙さんは臭いを頼りに本物の草間さんを探すようです。草間さんが良く行きそうな場所、ご存知ありませんか?」
「兄さんは今、『エヴリディヘヴン』というパチンコ店にいるはずです!」
 零は、兄をお説教すべ燃えていた。
「ガル…(訳:怖いな…)」
 その気迫に、一歩後ずさる轟牙だった。
 その前に、偽者が誰だか問い詰めた。彼は会社帰りのサラリーマンだった。

●草間確保
 零の案内で『エヴリディヘヴン』に辿り着いた二人と二匹、いや、正確には一人と三匹。
「騒がしい場所ですね…」
 耳を塞ぎながら、空木崎は入店した。普段、静かなところにいるため、大音量に耐性が無いに等しい。
「あれ? 轟牙さんは?」
 店内に入るなり、轟牙の姿が消えた。
『轟牙はんなら、客の影に潜り込んだで。影を転々として、ほんまもんの草間はんの影に潜り込むんやって』
 甚五郎の答えに「器用ですねぇ」と呑気に言う空木崎。
「今日は空いているようですから、草間さんを見つけるのは手短にすむでしょう」
「私は手前のほうを探します。空木崎さんは奥のほうを探してくれませんか?」
「わかりました」
 二人は二手に分かれ、草間を探し始めた。

 その頃、本物の草間はというと…。
「リーチ! 7来い、7!」
 零達が探しにきたことなど露知らず、久方振りの大当たりの予感に興奮していた。
 動きがゆっくりになり、右側の数字が揃おうとしたその時、足下から獣の鳴き声が聞こえた…気がした草間。
「今はまだ動けん! 7! 7!」
 草間の願い虚しく、出た数字は4だった。
「台を変えるか…」
 そうしようとした途端、またしても足下から声が聞こえた。
「何だ…?」
 草間が足下を見た瞬間、轟牙がいきなり出現!
「うわああああ!!」
 突然のことに腰を抜かした草間。これにより、店内は虎が現れたと大パニック!
 轟牙は、素早く草間の影に潜り込んで姿を隠した。

「見つけましたよ、兄さん!」
 腰を抜かしたままの草間の前で、腕組みをして仁王立ちしている零。
「草間さん、見つけましたよ。零さんを欺こうとしたようですが無駄でしたね」
 いつの間にか、零の隣にいた空木崎は「零さんにたっぷりお説教されてください」と付け加えた。
 草間は逃げようとしたが、影に潜む轟牙に監視されているので逃げられない状況だ。

 帰宅後、零は草間と偽草間にたーっぷりとお説教をした。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2029 / 空木崎・辰一 / 男性 / 28歳 / 溜息坂神社宮司
6811 / 白虎・轟牙 / 男性 / 7歳 / 猛獣使いのパートナー

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■         ライター通信          ■
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 氷邑 凍矢です。
『草間武彦のそっくりさん』にご参加くださり、ありがとうございました。
 偽者の正体は、詳細不明になっていますがその辺りはご容赦願います。

>空木崎・辰一様
 お久しぶりです。今回は甚五郎に轟牙様の通訳をしていただきました。
 あまりご活躍させられなくてすみませんでした。
 大音量に耐性が無い、と決めましたが宜しかったでしょうか?

>白虎・轟牙様
 はじめまして。当依頼にご参加くださり、ありがとうございました。
 草間をスムーズに見つけられたのは、轟牙様の能力のおかげです。
 動物PC様を書くのは初めてでしたので、曖昧な描写もあるかもしれません。
 お気づきの点がございましたら、遠慮なくお申し出ください。

 またお会いできることを楽しみにしております。

 氷邑 凍矢 拝