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<東京怪談・PCゲームノベル>


【SMN】Mission MO-3「Tear 'em apart」

依頼者:New Order
依頼内容:「Judgement」幹部の暗殺
タイプ:オープン

依頼詳細:
「Leaders」と「Judgement」の接近については、我々も憂慮しているところだ。
 今回に限っては敵だ味方だと言っている暇はない。
「Void」の者たちや、おそらく来るであろう「Peacemaker」の者たちと協力し、目標を確実に排除してもらいたい。
 確たる思想を持たぬ「Judgement」が「Leaders」に流されるようなことがあれば、彼らの「力による支配」が始まることは目に見えている。
 何としてでも成功させてくれ。

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「……それで、こちらの手勢はどれだけいて、誰がどこで何をするんデス?」
 デリク・オーロフの問いに、「レヴ」はまずこう前置きした。
「複数の敵拠点に仕掛ける関係上、どうしても一カ所に割ける人数は少なくなる。
 もっとも、攻撃目標の大半はあくまでフェイクで、本命は数カ所のみだが」
 次いで、最初のものよりやや範囲の狭められた、詳細な地図が取り出される。
「我々が攻撃するのはこの山間部の拠点だ。もちろんフェイクではなく本命となる。
 ここに少数の先遣隊で攻撃をかけ、出てきた敵を先遣隊と合流した本隊が迎撃、その隙に別働隊が再び拠点を奇襲する。
 これでどうにか標的をいぶりだして、出てきたところを仕留める、という寸法だ」
 なるほど、作戦についてはだいたいわかった。
 そうなると、次に気になるのは肝心の標的である。
「幹部と言ってもピンキリでショウ。標的はどんな相手なんデス?」
「現在の『Judgement』の戦力に不満を抱いている武闘派だ。
 カリスマ性があるというほどではないが声がでかく行動力もある。そして何より潰しやすい」
 確かに危険そうな相手ではあるが――最後の一言はどういうことだろう?
「潰しやすい、というノハ?」
「拠点ごと落とすとなるとそれ相応の兵力もいるし時間もかかる。
 拠点の奥に篭もるタイプより、血の気が多く自ら迎撃に出てきそうなヤツの方がまだマシだ、ということだ」

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 黒榊魅月姫(くろさかき・みづき)が目的の場所に辿り着いたのは、逢魔が時と呼ばれる頃だった。
「Void」にそう何度も何度も手を貸す気はなかったが、おかしな勢力が出来て、その矛先が自分の方にも向けられる可能性があるとなれば、さすがに手をこまねいているわけにもいかない。

「私は暗殺者ではありませんから、陽動か援護で構いませんね?」
 そう念を押した上で、他の部隊とは独立して動くという条件も呑ませた。
 あとは、合図を待って仕掛けるのみ――そう思った矢先のことだった。

 突如、複数の箇所で爆発が起こった。
 こんな話は聞いていない以上、「Void」ではあるまい。
 とはいえ、「New Order」がやったにしても、これはあまりに乱暴すぎる。
 だとすれば、考えられることは一つしかない。





 同じ頃。
 敵の退路を断とうと待ち伏せていたデリクは、謎の大爆発を不審そうに眺めていた。
 少なくとも、彼の知る限りではこんな爆発が起こるはずがない。
 他の組織の関与が疑われるところだが、これではいたずらに騒ぎを拡大するだけで、戦果につながるかどうかは怪しいところだ。
「状況が見えまセンね。一体何が起こっているんデスか?」
 念のために、本隊にいる「レヴ」に連絡を取ってみると、彼の苛立った声が帰ってきた。
『「Terrors」の連中だ! 全く連中は何を考えているのか理解できん!』

「Terrors」。
 IO2や虚無の境界が分裂した際、その混乱に乗じてただひたすらに暴れ回り、全組織から敵視されるようになったという無法者の集団である。
 確たる理想も、組織全体をまとめる中心人物も存在せず、組織として機能しているかという面でははなはだ怪しいが、それでもその戦闘能力だけは侮れない。
 この血に飢えた狂犬の乱入で、事態の先行きは一気に不透明になった。

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「近づくな」。
 しばしの後に「Void」が出した結論は、その一言だった。
「Terrors」にとっては、自分たち以外は全て敵であり標的である。
 そんな危険な存在がうろついている以上、下手に出て行っても巻き込まれて無駄に消耗する可能性が高い。
 ならば、「Terrors」を含む他勢力を潰し合わせ、混乱が下火になったところで電撃的に仕掛けて標的を潰すより他ないだろう。

 そして、「New Order」もほとんど同じことを考えていた。
 今回に限っては利害は一致しているとはいえ、所詮は敵同士。
 なるべくならば自軍の消耗を抑え、相手をより消耗させつつ目的を達成したいと考えるのは当然のことであった。
 まして、全く計算が立たない「Terrors」が関与してきたとなれば、なおさらである。

 両軍が遠巻きに拠点を包囲する中で、「Terrors」と「Judgement」の戦闘は続き――やがて、ついに標的が姿を現した。

「これはまた……なかなかすごいものが出てきまシタね」
 遠目にもわかる「それ」の姿に、デリクは息を呑んだ。
 二機のブラスナイトを従えた、一回り大きな蒼い機体。
 側面に眼帯をしたサメのエンブレムの描かれたそのブラスナイトこそが、今回の標的である幹部の専用機だった。
「で……あれをどうやって仕留めるんデス?」
『「みんなでかかれば怖くない」、だ』
 二人がそんなことを話している間にも、三機のブラスナイトは連携のとれた動きで「Terrors」を撃破していく。
「……何の策もなくみんなでかかっても、屍の山を築くだけの気がしマスが」
『そうだな……まずは、あの残り二機をどうにかする必要があるか』

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 いずれにせよ、ブラスナイト三機の出現によって、戦況は一気に動いた。
 大きく数を減らされた「Terrors」の面々が、不利を悟って撤退を開始する。
 彼らとて、さすがに無駄死にしたいわけではないのだ。

 そして、標的が出現し、「Terrors」も撤退したことを受けて、残る「Void」と「New Order」が一気に動いた。

 まるで舞踏会で使われるような仮面で顔を隠した魅月姫が、遠距離から衝撃波による攻撃を仕掛ける。
 実際の威力よりも見た目に派手になることを重視して、固いブラスナイトではなく拠点の壁などに撃ち込むことで、主に拠点周辺の敵の目をこちらに引きつけることに成功した。
 バスターズが撃ってくるキャプチャービームを素早くかわし、接近戦を挑んでくるNINJAと手にした闇の刃をもつ大鎌で切り結び、そして切り伏せていく。
 こちらも見栄えを意識し、意図的に派手な立ち回りを演じるその姿は妖しくも美しく、さながら優雅に舞う死神のようであった。

 そちらに注意が向いているうちに、「New Order」が切り札としてもってきたドヴェルグ二体を起動させ、ブラスナイトたちに向かわせる。
 その隙に今度は「Void」が拠点入り口付近に攻撃を集中させ、中からの増援を阻止し始めた。

 あとは、ブラスナイトもろとも肝心の幹部を撃破するだけ、なのだが。
 残念ながら、数の上でも、性能の上でも、そして操縦者の技量でも、ドヴェルグよりブラスナイトの方が上回っていた。
 魅月姫が隙を見て衝撃波を飛ばして戦闘に関与しているため、一方的にやられることだけは避けられていたが、このままではいつになっても目標を撃破できそうな感じはない。
「まずいな……」
 戦況を見て、「レヴ」が一言呻く。





 その時だった。

 不意に、横合いから一条の光線が放たれた。

 それは、通常のものより遙かに出力を高めた大口径のキャプチャービーム。
 その直撃を受けて、蒼いブラスナイトが動きを止める。
 その隙を逃さず、二機のドヴェルグが渾身の一撃を叩き込んだ。

 キャプチャービームは本来IO2に由来する技術であって、虚無の境界由来の「New Order」や「Void」では使用されていない。
 それ故に、敵もまさかこんな攻撃を受けることは想定していなかったのだろう。
 不意打ちを受けて、蒼いブラスナイトは大破し――しかし、パイロットを殺すには至らなかったらしい。
「Void」の攻撃をかいくぐった装甲車がブラスナイトの前で止まり、ブラスナイトを降りた幹部がそれに飛び乗る。
 ドヴェルグたちがそれを追おうとしたが、その前には残る二機のブラスナイトが立ちふさがり――。

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『行ったぞ』

「レヴ」からその連絡を受けて数分後。
 件の装甲車を、逃走経路で待ち伏せしていたデリク率いる別働隊が包囲した。

 敵は四人。
 問題の幹部一人の他は、いずれもエージェント級と思われる。

 そんな彼らに、デリクはこう語りかけた。
「その人の事、本当は心良く思ってないでショウ?」
 答えはない。
 けれども、デリクは気にせずなおも続ける。
「一緒に手を汚しませンか。
 あなたはこの場にいなかった……その人の死は私のせいにしてしまえばイイ」
「何をバカなことを」
 幹部が嗤う。
 運転手も、そしてその隣に座る男も。
 しかし、最後の一人だけは嗤わなかった。
 その長髪の男の目を見て、デリクはハッキリとこう言った。
「秘密は口外しまセンよ」

 と。
 長髪の男がそっと前の二人の肩に手を置き……次の瞬間、何かが弾けるような音がして、二人ともそのまま動かなくなった。
「何を……!?」
 驚く幹部に、彼は軽く微笑みながらこう尋ねた。
「剣を把る者は剣に滅ぶ。そう思いませんか」
 そして、男がそっと手を伸ばし――もう一度先ほどと同じ音がして、全てが終わった。





「どうしてわかった?」
 車を降りて、長髪の男は怪訝そうにこう尋ねてきた。
「ただのブラフでスよ。
 本当にそうならそれもよし、違っても動揺させられればよし、でシタから」
「かなわないな」
 デリクのネタばらしに、男は小さく肩をすくめてこう名乗った。
「『Judgement』の――いや、『Peacemaker』のミルティースだ。
 次に会う時は敵同士だろうが、とりあえず今回のことについては礼を言っておこう」
 それだけ言うと、男はくるりときびすを返し、こう一言言い残して森の中へと姿を消した。
「『Leaders』の援軍がこちらに向かっている。それもえらくゴツいのがな。
 命が惜しけりゃとっとと引き上げた方がいい。今すぐに、だ」





「Leaders」のシルバールーク改Dによる遠距離砲撃が行われたのは、それから数分後のことだった。
 デリクの情報で速やかに撤退した「New Order」はほとんど被害を受けなかったが、撤退の遅れた「Void」はある程度の損害を受けたという。

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 それから数日後。
 魅月姫のところに、件の知人から連絡があった。
「では、例の話は白紙に戻ったのですね」
『ああ。表向きには、「Peacemaker」が思い直すように交渉した結果、ということになっている』
 ほとんど全ての組織が関与した戦闘だったのだから、今さら表向きもなにもあったものではないような気もするが、それでもやはり建前は必要らしい。
「『Peacemaker』といえば、やはりあのキャプチャービームは?」
『「Judgement」の誰かというセンもあるが、ほぼ間違いないだろうな。
 まさかあんな形で首を突っ込んでくるとは思わなかったが、まあ連中らしいと言うべきか』

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From: 「レヴ」
Subject: 感謝する

 思った以上に厄介な相手だったが、おかげで作戦を成功させることができた。
 最後の避難も間に合ったし、考え得る限りでは最上の結果と言えるだろう。

 これも君のおかげだ。感謝する。

 追伸:
 シルバーキーを送っておく。また何かあったらよろしく頼む。

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結果:標的の抹殺に成功(目標達成)

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 4682 /  黒榊・魅月姫  / 女性 / 999 / 吸血鬼(真祖)/深淵の魔女
 3432 / デリク・オーロフ / 男性 /  31 / 魔術師

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■         ライター通信          ■
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 撓場秀武です。
 この度は私のゲームノベルにご参加下さいましてありがとうございました。
 また、ノベルの方、大変遅くなってしまって申し訳ございませんでした。

 今回は六つの勢力全てが戦闘に関与する形となったため、やや混沌としてしまいましたが、たまにはこんな感じの戦闘もいいのではないかと。
 もう少し参加者が多ければ(そして、直接戦闘希望の方がいれば?)ブラスナイトではなくシルバールークを持ち出す予定だったのですが、今回の状況でそれはさすがに収拾がつかなくなりそうなのでヤメにしておきました。

・このノベルの構成について
 このノベルは全部で八つのパートで構成されております。
 そのうち、一、二、八番目のパートにつきましては、それぞれ違ったものになっておりますので、もしよろしければ他の方に納品されているノベルにも目を通してみていただけると幸いです。

・個別通信(デリク・オーロフ様)
 今回はご参加ありがとうございました。
 デリクさんの描写の方ですが、こんな感じでよろしかったでしょうか?
 もし何かございましたら、ご遠慮なくお知らせいただけると幸いです。