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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


カリー・カリー・カリー

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0.オープニング

「うわっ…」
テーブルの上に並べられた食材の山にギョッとする俺。
「あ。おかえりなさい。お兄さん」
満面の笑みで迎える零。
何だ…この嫌な予感は。
苦笑しつつ、俺は問う。
「どうしたんだ。これ。もしかして今夜は御馳走か?」
言いつつ考えるが、思い当たる節がない。
俺の誕生日でもないし、何かのイベント日って訳でもない。
記念日…なんて、特にないしなぁ。
考えていると、零は恐ろしい言葉を口にした。
「お兄さん、闇鍋って知ってますか?」
「………」
絶句。
どこで覚えてきたんだ。それ。
「お兄さんの、大好きなカレーでやってみようと思って」
語尾にハートマークが付きそうな勢いの口調。
駄目だな。これは止めても無駄だ。
完全にウキウキしてやがる。
いや、うん。カレーは好きだよ。かなり。大好物さ。
零の作るカレーなんて、特にな。上手いし、あの微妙な辛さが。
けど、それはあくまでも「普通のカレー」の場合だ。

「…はぁ」
テーブルに並ぶ食材を適当に手にとりつつ溜息。
胃薬、用意しておかなきゃな。っていうか。
誰だ。零に、こんな恐ろしい事教えた奴。出て来い。今すぐに…。

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1.

「邪魔するぞ〜い」
カラカラカラッと窓を開け、所内へ入る我輩。
いやぁ、アレじゃなぁ。相変わらず。
「臭いのぅ。ここは〜」
左手で鼻を押さえ、右手で窓を閉めつつ言うと。
「キャーーーー!!!」
女性の悲鳴が、所内に響く。
おぉ〜。これはまた、えらく べっぴんサンじゃ〜。
我輩はトコトコと女子に歩み寄り、足元に擦り寄って挨拶をば。
「初めましてじゃなぁ。お前さん、アレか?もしや、武彦の女か?ん?」
我輩の問いに、女子は答えず。パクパクと口を金魚のように動かすのみ。
その様を見て、武彦が苦笑して言った。
「残念ながら、違うよ。沙織は、俺の幼馴染だ」
幼馴染か。ほほぅ。まぁ、アレか?今の所は、って感じか?ん?
しかし、沙織さんか。名は体を現す、と言うが。本当じゃなぁ。
可憐で美しい。花のような御方じゃ。
こんな女子が幼馴染とは。つくづく、お前さんは恵まれとるな。
あ〜不快じゃ。世の中腐っとる。不公平じゃ。まったく。
「あっ。団長さん、いらっしゃいませ〜」
プンスカと不愉快そうに頬を膨らませる我輩に、
零が駆け寄って来て微笑みかける。
おぉ。零。お前さんも、相変わらず可愛いのぅ。
エプロン姿が、また、たまらんのぅ。
「ほれほれ。持って来たぞ。食材。これで良いか?」
我輩は、首から ぶら下げていた袋を零に差し出す。
零は、それを受け取り、中を見やると。ちょっと ひきつった笑みを浮かべた。
「おーい。何、入ってんだ?」
棒読みで武彦が、零に問う。
零は首を傾げつつ笑って、食材の入った袋を武彦等に見えるように広げた。
「………」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ……」
絶句する武彦と、青褪める沙織。
何じゃ。お前さん達。失敬じゃな。
人が厳選して持って来た食材をに何だ、その態度はっ。
イナゴ、スズメバチ、サソリ、ムカデ、蛾の幼虫、カイコの蛹。
それだけじゃあ、何じゃな、と思ったもんで。
薬味代わりに、シロアリとザザ虫も追加したんじゃぞ。
御馳走ではないか。これだけで十分。
「…あの。団長さん、他のサーカス団の皆さんは?」
零の言葉に、我輩はピョンとテーブルの上に飛び乗り、フォッフォッと笑って返す。
「誘ったんじゃが、嫌がってな。逃げられてしもうた!完敗じゃ!」
我輩の言葉に、武彦が目を伏せ嘆いて言う。
「零…何で、こいつを誘ったんだよ」
ムカッ。何じゃ、その言い草はっ!
まるで我輩なんて呼んでくれるな、と言わんばかりではないか!腹立つのぅ!
「この失敬な若造がっ!成敗してくれるわぁ!」
ガタンッ―
「うぉぁっ!ちょ、痛ぇっ!いてててててて!!」

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2.

「あの…出来ましたっ」
コトンと鍋をテーブルの上に置く零。
「おぉ。やっと出来たか。待ちくたびれたぞ。我輩。腹ペコじゃ」
スプーンを持って、ウキウキと鍋の蓋を取る我輩。
鍋の中のカレーは、これまた見事な出来栄えで。
我輩は、その美しさに ホゥ と溜息を漏らす。
「…か、帰りたい」
ポツリと呟く沙織。我輩はピョンと沙織の膝上に乗って言う。
「今更何を言い出すんじゃ。お前さんは。さぁさぁ、食べよう。一緒に」
零が白米を盛ってくれたカレー皿を高々と掲げて言う我輩。
武彦は我輩の首根っこを掴み、持ち上げて元の位置に戻すと、
煙草の煙を我輩に向けてムハ〜ッと吐き出しながら言う。
「ちょっと、おとなしくしてろ。エロ猿が」
「何じゃとぅ!?」
カッと頭に血が上る我輩を、零が宥める。
「ま、まぁまぁ。と、とりあえず…食べましょう。美味しいかもしれないですし」
零の言葉に、ただ一人、ノリノリで賛同する我輩。
「そうじゃな!いやいや、かもしれない、ではないぞ、零。確実に美味じゃ。こいつは」
ガバッと白米にカレーを かける我輩。
レードルから、トロリと零れ落ちるムカデの美しいの何の。たまらんのぅ。

コリコリとした食感。うむ。これは、スズメバチじゃな。
おぉ。このザラザラした食感。こっちは、サソリじゃ。
いやぁ、しかし。驚いたのぅ。
カレーとは、素晴らしい料理じゃ。
これらの食材を、ここまで活かしてしまうのだから。
「はっはっはっ!美味いのぅ!」
我輩が御満悦で言うと、零はニコリと笑って返す。
「そ、そうですね」
おやおや。そう言う割に、食が進んでおらんではないか。
いかんぞぉ。そんな事では。
若い女子は、たくさん食べねば。
ダイエットなんぞ、する必要などないぞ。
女子はな、少しポッチャリしてる位が一番可愛らしいんじゃ。
む?いや…スレンダーな美女も…良いがのぅ。フォッフォッ。
「…!?武彦!何をやっとるんじゃ、お前さんはっ」
視界に飛びこんだのは、カレーに手をつけずコーヒーをガブ飲みする武彦の姿。
事もあろうに、沙織も同じ行動をとっている。
お前さん達、酷いぞ。何がって、零が可哀相じゃないか。
皆で楽しく食事をしようと、この場を設けてくれたというに…。
「零!我輩が全部食うぞ!おかわり!おかわりじゃ!」

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3.

あぁ、眩暈がする。
あぁ、サーカス団の皆が、手を振っておるわい。
切ない話じゃ。何とも切ない話じゃ。
我輩の人生…もとい、猿生は、ここまでだというのか。
こんな終わり方、ないじゃろう。
あぁ…でも幸福な事なのかもしれんのぅ。
可愛い零が作った、美味なるカレーで絶命。
そして、傍には、これまた美しい女子が…。
ギュッ―
「きゃぁぁぁ!!」
バコッ―
あぁ、痛い。
あぁ、サーカス団の皆が、手を振っておるわい。
切ない話じゃ、何とも切ない話じゃ。
我輩の人生…もとい、猿生は…。
「こいつ、起きてんじゃねぇのか?」
「いえ…。寝てると思います」
「はぁ〜…。もぅ!ビックリしたっ!」
「しかし馬鹿だな。まぁ、自業自得っちゃあ、そうなんだけど」
「本当に全部食べるとは、思いませんでした…」
「大丈夫かしら…すっごい顔色だけど」
「ほっとけ、ほっとけ。馬鹿は、そう簡単に死なねーよ」
あぁ、本当に失敬じゃな。お前さんは。
我輩に向かって、馬鹿とは。何だる無礼か。
ここは、褒め称えられる所ではないのか?
見事だった、とか…何て優しいんだ、とか…。
あぁ、それよりも、これが良いのぅ。
”思わず、惚れてしまった”
あぁ、良いのぅ。それ、良いのぅ。たまらんのぅ。
「…ねぇ、何か笑ってるんだけど」
「ホントだ。幸せそうです…」
「馬鹿だ馬鹿。真の馬鹿だ」

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

6873 / 団長・M (だんちょう・えむ) / ♂ / 20歳 / サーカスの団長

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂

NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀

NPC / 高坂・沙織 (こうさか・さおり) / ♀


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           ライター通信          
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こんにちは。はじめまして!発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。

何というか…団長さん、ただのエロオヤジっぽくなってしまいました(笑)
茶目っ気のあるプレイングが面白くて、悪ノリしてしまったかもしれません(笑)
最終的にバッタリ倒れる、という定番のオチではありますが、
優しい(+ちょっとエッチな)団長さんを表現できていれば、と思います^^

気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/03/21 椎葉 あずま