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トーキョー・ラバー２
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０．オープニング
「お兄さぁん！！これ！！これ、見て下さい！ほらほら！」
背後から抱き付いてきて、一枚のチラシを見せる零。
「………」
絶句。
それは、見覚えのある。
「お前…どっから持って来るんだ。これ」
呆れつつ問うと、零はニコッと微笑み。
「近所の占い屋さんです」
あぁ、そう。お前って占いとか好きなの。
まぁ、女の子だしな。好きだろうな。そういうの。
って、そうじゃなくてさ。
「これに、また出ろってか」
「はいっ」
即答ですか。
苦笑しつつ、俺はチラシを見やる。
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【 第二回 東京ラバーコンテスト 】
来たれ！ラブラブカップル！！
バカップル歓迎！インテリカップル歓迎！
優勝カップルには賞金 五十万円 贈呈！
今回はコスプレ仕様！参加希望カップルは、
以下のコスチューム内、ひとつを選んで、
実行委員会までご連絡を！
★セーラー服と学ラン （学生気分をプレイバック！）
★揃ってセクシー水着 （スタイルに自信のあるカップルに！）
★執事とメイド （女性が執事を着る事も出来ますよ！）
★猫ちゃん＆ウサギさん （完全に狙ってみるカップルに！）
※コンテストで使用したコスチュームはプレゼント致します。
日時：3/10 サテラナ教会
主催：トーキョーラバー実行委員会 代表/工藤
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「…なぁ、零」
「はい？」
「無理だって」
「どうしてですか。楽しそうなのにっ」
いやいや。楽しそうって、そりゃあな。観客は楽しいだろうよ。
あのなぁ、考えてもみろ。このコスチューム。全部、狙ってんだろ。
俺が着るんだぞ。この内、どれかを。誰かと一緒に。
冗談じゃねぇ。恥だ。恥。人生の汚点だ。
賞金が前回より二十万円もアップしてる辺りからして、
第一回で、相当良い評価を得て味をしめたんだろうがな。
お前…コスプレ仕様って。馬鹿じゃねぇの。
何考えてんの。頭オカしいだろ。この、工藤って奴。
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１.
何をまた、この兄妹は言い合っているんだか…。
リビングで言い合う二人に呆れつつ、キッチンへ向かう。
二人の言い合いを聞き流しながら、買って来たコーヒーを瓶に詰め替えていると、
「冥月さぁぁん」
ガシッと背後から、零が抱きついてきた。
次に零が吐く台詞は、嫌でも理解る。
「出て下さい〜！前回のリベンジでっ！」
はい、きた。やっぱりな。
私はペシッと零の額を叩いて返す。
「無理」
「どうしてですか。楽しそうなのにっ…」
はいはい。それが本音か。だろうな。わかるよ。でもな、零。
「参加するのは私達だろう？残念ながら、楽しめるとは全く思えん」
「むぅ〜…」
「大体、何だ。その、コスチュームって。頭がイカれてるとしか思えん」
私の発言にクスクスッと笑う零。何だ、と見やると。
「お兄さんと同じ事言うんですね。息ピッタリじゃないですか」
「………」
いつからかな。お前は、少し生意気になったと思う。
溜息を吐きつつ、コーヒー瓶の蓋を閉めている間も、
瓶を棚にしまっている間も、軽く洗い物をしている間も。
零はしつこく、参加を勧めてくる。私は断固拒否。絶対に嫌だ。
その繰り返しが何度も続き、そろそろ諦める頃だろう、と思っていた時。
「じゃーん」
含み笑いを浮かべ、零は懐から一枚の写真を取り出して、私に見せた。
それは、紛れもなく私の写真で。あどけない寝顔で草間に寄り添っている…。
「っ！ちょっ…待て！」
バッと腕を伸ばし、写真を取り上げようとするが、零は軽やかなステップで、それを避ける。
そして、フフフと勝ち誇った笑みを悪戯に浮かべて言った。
「出ますか？」
何て奴だ。お前って奴は…。っていうか、いつ撮ったんだ。それ。
いや…この間のワインで酔い潰れた時だな。それ以外、思い当たる節が無い。…多分。
「…いつから、そんな生意気になったんだ」
ポツリと呟くと、零はエヘッと笑い、首を傾げる。
エヘッじゃないだろ…ったくもう…。
私はガックリと肩を落とし、小さな声で呟く。
「わかった。わかったから…それ、よこせ」
零はフルフルと首を左右に振って、チラリと草間を見やる。
…ほぅ。なるほど。ちゃんと参加確定させて来い、と。なるほどな。
私は零の巧みな作戦にノせられ、渋々…草間の元へ。
「おい。出るぞ。コンテスト」
やぶからぼうに言った私に、草間は苦笑して返す。
「嫌だ」
あぁ、そうだろうな。私だって嫌だ。断じて嫌だ。でもな…。
「仕方がないんだ」
ポツリと私が言うと、草間はジッと私を見上げ言った。
「仕方ない？何が？」
「はっ？い、いや。別に何でもない。いいから、とにかく出るぞ」
「嫌だって」
ポロリと零れた愚痴を慌てて隠し、必死に誘う私。
何をやってるんだ。私は…っ。
キッチンでヒラリヒラリと写真を揺らしながら、こちらを見やる零。
「しまえ、しまえ！」とジェスチャーを飛ばしながら、私は誘う。必死に誘う。
けれど、こいつも強情だ。私が、何て言おうと断じて首を縦に振らない。
理解るさ。嫌だという事くらい。それは、もう十分。
でもな、でもな、でもな…草間、このままじゃあ、あの写真がお前に見られて…。
「…たっ、頼む！お前と出場したいんだ！！」
それは、焦りとヤケになった心から出た言葉。
私はハッと気付き、慌てて草間から目を逸らす。
キョトンとしていた草間だったが、結果オーライ。
「そこまで言うなら、仕方ねぇな」 と満足そうに頭を掻いて、草間は言った。
結果オーライ。結果オーライ。無問題。
…いやいやいやいや、無問題じゃない。何を言い出すんだ、私はっ…。
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２．
「…で。どれにすんだよ」
ぶっきらぼうに草間が言った。
「何でも良い」
私は周囲を見回しながら返す。
前回より、参加者が異様に多いな…何なんだ、これは。皆、頭がイカれているのか。
大丈夫か。東京…。
「じゃあ、これで。はい」
草間は私にメイド服を渡す。
…これか。何でこれなんだ。深い理由なんてないのかもしれないが。
まぁ、良い。何でも。とにかく、さっさと終わらせてしまおう。
更衣室で手早く着替え、ステージ袖に向かう私。
たくさん人がいるというのに、奴の存在は、いつでもすぐに捉える事が出来る。
探してなんかいなくても、自然と。奴が視界に飛び込んでくるんだ。困った事に。
「あぁ〜…。期待外れ」
私を見やって言う草間。…大方、あのフリフリヒラヒラしたメイド服に身を包んで欲しかったんだろう。お前は。
残念ながら、私が纏ったのは、お前が手渡したメイド服じゃない。
体のラインを締めて際立たせる、黒基調の上品なものだ。
あんなメイド服、誰が着るか。ふざけるな、まったく。
「533番のカップル様、ステージへ御願いします」
進行アシスタントであろう女に促され、私達はステージへ向かう。
ブツブツと文句を言う草間を小突きながら。
『さぁさぁ、盛り上がって参りました！次のカップルは、どんなコスチュームかなっ！？』
聞き覚えのある、司会の声と。奴の放った言葉にギャーギャーと騒ぎ立てる観客の声。
まだ上がらない幕を前に、私は苦笑しつつ。
ダラしない執事の、曲がっている蝶ネクタイに手を伸ばす。
「あ。新婚っぽいね」
ポツリと草間が呟いた途端、バッと幕が上がる。
「たわけ」
私はギュッと蝶ネクタイをきつく締めた。
「うぇ…」
観客の目には、幕が上がった途端、メイドに首を絞められている執事が映るわけで。
「あっははははははははは！」
「だっせー！だっせーぞ！執事ー！」
観客は口々に、笑って言った。
ゴホンと咳き込み、草間は私の肩をガシッと掴んで言う。
「…殺す気かっ」
少し涙目の草間が、妙に滑稽で、私はクスクスと笑う。
その時、フッと視界に零の姿が飛び込む。
最前列。私達を見つめる、零の笑顔。
私はピン、と思いつき、草間に耳打ちする。
草間はハハッと笑い、了解、と頷いた。よし。それじゃあ、早速。
「きゃあああ！ちょっ、ちょっと何するんですかっ、冥月さんっ」
突然影内に引き込まれ、身包み剥がされる零。
私はフッ、と勝ち誇った笑みを浮かべつつ、迅速に零の着替えを済ませる。
ツインテールに真っ白なドレス。淡く化粧をして、唇に桃色を。よし、こんなもんか。
ドサッ―
影から解放された零は、ステージ上で人形のように座り込む。
「え？え？え？」
戸惑い極まりない零の表情。
私と草間は見合ってクッと笑い、演技を始める。
「大丈夫ですか。お嬢様。ダンスもロクに踊れないとは、困ったものです」
零の腕を引き、立ち上がらせながら草間が言った。
私もクックッと笑いつつ、続く。
「お嬢様は作法がなっておりませんわ。まったくもって」
零はキョトンとして私達を見やっていたが、事態と状況、私達の意図を察すると、
プゥ、と頬を膨らませて言った。
「屋敷で堂々とイチャつく、貴方達よりはマシですっ」
イチャついてない！と叫びそうになる私の肩をポン、と叩き草間が抑える。
おのれ、零…。そんな反撃をしてくるとは。本当に生意気になった…。
零の妙な方向への成長に改めて呆れる私。
まぁ、可愛いから良しとするか、と思ったのは束の間。
「私、知ってるのよ」
零は腕を組んで、私達を見やって言う。
「何をです？」
苦笑しつつ返す草間。まさか、零。あの写真を…。
「あなた達、この間、二人っきりで出かけて、破廉恥な事したでしょ」
ガクンと膝から落ちそうになる私。
写真じゃない。写真じゃなかった。零が言ってるのは、アレだ。
先日、草間と私が行った、ドライブの事だ…！
何だって、ここで、その話題っ…。
っていうか、破廉恥な事なんて、してない！
してない！してない！してないっっ…！！
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３．
「職場恋愛は禁止なんだけど…そうね。あなた達の愛の証を見せてくれたら、見逃してあげるわ」
フフッと笑って言う零。私は草間に支えられたまま目を丸くする。あ、愛の証だと…？
「おー！いいぞー！やれやれー！」
「見せてみろよ〜御両人〜！」
「お嬢様の御命令だぞぉ〜！！」
一斉に湧き立つ観客共。ちょ、待て。何だ。何だ、この展開。
違うだろう。私は、無理矢理このコンテストに参加させた零に、ちょっとしたお仕置きを、と思って。
それなのに、何故っ。こんな展開になってるんだ…！
騒がしい観客の声と、勝ち誇った笑みを浮かべる零に、ピクピクと引きつる眉。
どうしろっていうんだ…妙な冷や汗を額に宿らせる私に、草間はポツリと。
「残念ながら、お嬢様の勝ちだわ」
そう言って、私の耳に優しく口付けした。
「…！！」
「あはははははっ！楽しかったですねー！参加してみるのも中々」
お嬢様スタイルのままの零が、嬉しそうに はしゃいでいる。
それは、辛うじて理解る。理解るんだが…。
「おい、冥月。大丈夫か？」
ヒョイッと顔を覗き込む草間。私はパッと顔を背けて返す。
「大丈夫だっ」
大丈夫じゃない。まったく大丈夫じゃない。
突然すぎる。あんな口付け。突然すぎる。まったく予想していなかった事態。
戸惑わないわけがない。…戸惑う？いやいや。戸惑ってなんかいない。
そう、ちょっと疲れたんだ。疲れただけだ。気疲れだ。
「でも、凄いですよね！まさか優勝しちゃうとは思わなかったです」
「俺も」
私だって…思っていなかったさ。優勝するなんて。
あんなバタバタしたパフォーマンスが優勝とは…。このコンテスト、基準がわからん…。
「煙草煙草。とりあえず１ヶ月分確保な」
「駄目ですっ！もっと有意義な使い道がありますっ」
「ちっ…。例えば？」
「冥月さんと話し合いして決めます〜。ねっ、冥月さん」
ニコッと可愛らしく笑うお嬢様…零に、私は呆けながら苦笑を返す。
まったくもって、お前達には振り回されてばかりだよ…。
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登場人物（この物語に登場した人物の一覧）
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【 整理番号 / ＰＣ名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
2778 / 黒・冥月 （ヘイ・ミンユェ） / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵＆用心棒
ＮＰＣ / 草間・武彦 （くさま・たけひこ） / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵
ＮＰＣ / 草間・零 （くさま・れい） / ♀ / --歳 / 草間興信所の探偵見習い
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ライター通信
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
零を引き込むプレイングに、テンション上がりました（笑）
バタバタとした楽しさが伝われば良いなぁ、と思います＾＾
随所で戸惑う冥月ちゃんですが…何はともあれ！優勝おめでとうございますｖ（笑）
気に入って頂ければ幸いです。よろしければ また お願い致します＾＾
2007/03/27 椎葉 あずま
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