コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


VS アクアスネーク

------------------------------------------------------

0.オープニング

「まぁ、今更だけどさ」
溜息混じりに あたしが言うと、少女はキョトンとして言った。
「はい?」
「物好きだよね。あんたって子は」
目を伏せ、クスクスと笑う あたし。
少女は、少しはにかんだ笑顔を返す。
自覚がないわけじゃあないんだよね。この子は。
まぁ、あたしも似たようなもんだし…強くは言えないけれど。
「さぁて…」
目の前でクネクネと動く不気味な巨大蛇を見上げ、
あたしは常連客リストをパラリとめくる。

誰に頼もうかねぇ…。

------------------------------------------------------

1.

「あらっ」
店の扉を開けた途端、目に飛び込んできた光景に思わず漏れた声。
わぁ…風変わりな蛇ねぇ。
水で構成されてるんだ。全部。不思議…。
綺麗だけど、まぁ、うん。わかるわ。
よしよし、良い子ね。って撫でたり出来る状況じゃないって事くらい。
触りたいんだけどね。ほら、蛇のお腹って感触がね。
プニプニしてて可愛いし。
「良い所に来たねぇ」
クスッと笑う蓮さん。
「うん。本当にね」
そう言って、前髪をかき上げつつ苦笑する私。
いつもの事だけどね。今、思ったの。
私って、こういう事件に引き寄せられているんじゃないかしら。
そういう体質って言うと、何だか”彼”みたいで可笑しくなっちゃうけれど。


えーと。どうしようかな。相手は水でしょ。って事は…。
「蓮さん、コードとかないかな?」
私が言うと、蓮さんは苦笑しつつ。
コトンと先の千切れたコードをカウンターに置いた。
あら。用意周到。…っていうか、何このコード。凄い千切れようね。
うん…まぁ、深くは聞かない。大変な目にあったのね、とコッソリ同情しておくわ。
「ありがとう。借りるわね」
コードを手に取る私を、不安そうな表情で見つめる少女が一人。
あなたにとって、大切な存在なのよね。この子は。
うん。大丈夫よ。一緒に聞いてあげましょ。
どうしてご機嫌斜めなのか。
私は、ポンと少女の肩に手を置き告げる。
「ちょっとだけ手荒だけど、許してね」

------------------------------------------------------

2.

スッと両耳に手を宛がい、人の耳には届かぬ音波を発する私。
震動で小刻みにユラユラと揺れる蛇の水面。
不快な感覚に、蛇は私を睨み付け体をくねらせる。
片目を瞑り、ごめんねと心の中で呟いて。コードをコンセントへ。
不愉快極まりない蛇は、私に向かって襲い掛かってくる。
バチッ―
水面を、体を、貫通するコード。
パリパリと蛇の体を包む電光。
蛇の動きが止まった、その瞬間。
その隙に。
私は知りえる限りの各国の言葉をポンポンと言い放つ。
少数民族間でのみ使われている言語から、今は絶えてしまった古代異国の言語まで。
知りえる限りの、全てを。
あの女の子が、普段何の問題もなく飼え愛でられているのだから、
おそらく、昔も人に飼われていた事があるんだわ。
風貌からして、日本の妖ではない。
きっと、どこか、異国の…。
そう判断した私は、異国の言葉を中心に。
まくしたてるように単語を放つ。
途中、ピタリと止まる、蛇の動き。
なるほど。
あの民族に仕えていた水蛇だったのね。
ほんの少しだけど、知ってた。
本で読んだ事があるのよ。
もう少し、早く気付いてあげられたら良かったね。
ごめんね。

------------------------------------------------------

3.

「よいしょっ…と」
大きなバケツを持ち、少しフラつく私。
「だ、大丈夫ですか」
少女が慌てて駆け寄り、手伝う。
「ありがとう。えっと…どうすれば良いのかしら」
ニコッと微笑み、首を傾げる私に、少女は言う。
「直接かけるんです。ザバッと」
「ザバッと…?そこらじゅう濡れちゃうんじゃない?」
苦笑すると、蓮さんは古書をパラリとめくって言う。
「問題ないよ」
あら。珍しいわね。店を汚すと、いつも凄く怒るのに。
でも、許可がおりたなら。よし。
「…えいっ」
バシャッ―
私は、躊躇う事なく、バケツに汲んだ綺麗な水を蛇にかけた。
蓮さんが問題ない、と言ったのを、私はすぐに理解する。
蛇にスッと吸い込まれ、水は一滴も床に落ちなかったのだ。
「へぇ…凄いのねぇ」
綺麗な水を纏って御機嫌な蛇を見上げ、私が言うと。
少女はペコリと頭を下げて感謝を告げる。
朝、必ず綺麗な水を纏わせてあげなくちゃならない。それも、毎日。
飼い愛で始めて2日目。知らなくて、理解らなくて当然よね。
言葉が、通じないんだもの。
良かったわ。知ってる言語で意思疎通が図れて。


「ねぇ、蓮さん。これ、買うなら…いくら?」
紙袋から取り出すレコード。
それは、今日返しに来た借り物。
蓮さんはフッと笑い、手をヒラヒラと振って。
再び古書に目を落とす。
私はニコッと微笑み、レコードを少女に手渡した。
「何ですか…?これ…」
「アクアリオス、っていう交響曲よ。その子に聴かせてあげて」
ほら。水だけに。
綺麗な音楽を聴かせてあげたら、結晶が整って。
穏やかに美しくなるかもしれないから。ね。

------------------------------------------------------


□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

NPC / 沢渡・ハルカ (さわたり・はるか) / ♀ / 12歳 / アクアスネークの飼い主


□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
           ライター通信          
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□


こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。

納品が遅れてしまい、申し訳ございません;
気に入って頂ければ幸いです。よろしければ また お願い致します^^

2007/04/06 椎葉 あずま