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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


ウィンド・シャックル

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0.オープニング

「はぁ。困ったな」
道行く人を眺めつつ溜息を漏らす。
皆さん、忙しそうですね…今日も今日とて。
わかってはいたんですよ。
そうそう居ないだろうな、って。
自分の事で皆さん手一杯。ここは、そういう場所ですから。
でも協力して欲しいんですよね。
折角覚えた、難易度の高い補助魔法。
実践しない事には、成功するかわからないですから。
え?あぁ、はい。自分には使えないんですよ。この魔法。
使えてたら、こんな所にいませんよ…。

ハァ、と溜息を漏らす。
もう、何度目だろう…。はぁ〜あ…。
一旦家に帰って、友人に手当たりしだい頼みなおしてみようかな。
と思い、よいしょっと立ち上がった時。
僕の目は、捉えた。
素敵な協力者を。
待ってました。あなたを。

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1.

「こんにちは。シュラインさん。良い天気ですね」
地図を見ながら歩いていた私は、突然声を掛けられて少し驚き、返す。
「こんにちは。ティースくん。そうねぇ、とっても良い天気ね」
ちっっとも良くないわよ?天気なんて。
今にも雨が降りそうだもの。それも、雷を伴って。
やたらと笑顔のティースくん。私は苦笑して地図を懐にしまう。
「どうしたの?何か、困り事?」
私の言葉に、ティースくんはニコッと笑い頷く。
うん。そうよね。君が、そういう顔をして話しかけてくる時は、いつも。そう。


「補助魔法のお手伝いかぁ…要するに実験台、って事よね?」
私が頬に手を宛がいながら言うと、ティースくんは笑って。
「うーん。そういう言い方をするとアレですけど、まぁ…そういう事ですね」
ふむふむ。まぁ、良いか。興味もあるし。
「良いわよ。協力しましょ」
「本当ですか。助かります」
「あっ、でも、ちょっと待って」
「はい?」
「電話。させてね」
「はい」
もしもの事、って。あるかもしれないじゃない?
だから、もしもの時は回収…迎えに来て。って。
補助魔法の実験台で、そんな心配しなくても良いかもしれないけれど。
たまには、ね。甘えても良いじゃない?
甘える範囲に入らないかもだけど…私が、こんな事言うの珍しいでしょ?
「…うん。じゃあ、よろしくね」
携帯を切り、ニコッと微笑む私。
「さてっ。早速、見せてもらおっかな」
私が言うと、ティースくんはフフ、と笑って言った。
「彼氏さんですか?仲良いんですね」
「やぁだ。おませさんね。ほらっ、いいから、早く見せて見せてっ」

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2.

「いきますよ〜」
少し離れた位置から、両手を振って合図するティースくん。
私も両手を振り、いつでもどうぞ〜と返す。
「サル・ヴァ・ハイネっ…!」
ティースくんが真剣な表情で詠唱。
わぁ…魔法だ魔法だ。見た事ないわけじゃないけれど、良いものよね。
何度見ても。カッコイイと思うわ。
ブゥン…―
「わ」
私の身体を包む、青く薄い膜。
内部から、そっと触れると、それは少しひんやりと冷たい。
水の結界…なのかな。でも…。
コツコツ―
うわ。凄い。硬いのね。見た目と違って。カッチコチ。
氷の結界…って言った方がシックリくる感じね。
結界に包まれたまま、私がパチパチと拍手すると、
ティースくんは、頭を掻いてヘヘッと照れ笑い。
凄いと思うわ。結構、役に立つと思うの、これ。
強敵と対峙した時なんか、特に。ね。
「ねぇ、他に何かないの?試してみたい魔法。攻撃系とか」
結界の中から私が言うと、ティースくんは少し考え、指で”1”を作って見せる。
一つ、あるのね。うんうん。オッケー。やってごらんなさい。
結界も張られてるし、大丈夫でしょ。きっと。

先程よりも、ずっと長い詠唱時間。
おっとぉ…?かなり強力なのをやるつもりね?
詠唱時間が長いからといって、全部が全部強力な魔法だとは限らないけれど。
何となく、そういうイメージがあるのよね。
微笑みつつ、詠唱するティースくんを見やる私。
こうして見ると、何だかカッコイイじゃない。
頼もしいっていうか。将来が楽しみだわ。なーんて。
ずっと目を伏せていたティースくんが、パチッと目を開く。
それは、詠唱・準備完了の合図。
私はコクリと頷き、どうぞと伝える。
「ルタ・ゼ・フォン…!!」
ティースくんが、真剣な表情で詠唱。
よほどの魔力というか精神力を費やすのか、
ティースくんは、その場にドシャッと座り込んでしまった。
ゴォォォッ―
目の前に出現する巨大な竜巻。
勢いを増しつつ、こちらに向かってくるそれは、物凄い迫力で。
私は結界の中、不思議なワクワク感に微笑みつつ、キュッと目を閉じる。
結界に包まれた私に、竜巻が覆い被さった、その時。
ビシッ―
鈍い音が響く。
「…え?」
フッと目を開くと、私の目は恐ろしい状況を捉えた。
けっ、結界にヒビがっ…。
ちょ、ちょっと…ティースくん…!?
バリンッ―
割れたっ!割れたんですけどっ!?
ゴォォォッ―
「きゃあああぁぁあああああっ」

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3.

「けほっ…ごほんっ…うぅ…」
その場にヘタリと座り込む私。
「シュ、シュラインさんっ。大丈夫ですかっ。わぁ!髪が凄い事に!」
ティースくんに言われ、私は自分の頭を触り、確認。
…本当だ。凄い髪型。まるで昔のビジュアル系バンドみたい…。
「す、凄いじゃない。ティースくん。ビックリしたわ」
なかなか戻らない髪を直しつつ、苦笑して言う私。
「は、はい。僕も成功するとは思わなかったです…」
困惑しつつも嬉しそうな表情。
うんうん。良いじゃない。成長してるって事よね。
いつも、一生懸命勉強してるもんね。努力した結果よ。
「これって、風量調節出来たりするの?」
「えぇと、はい。でも、難しいんですよ」
「ふぅん。それが出来れば、飛び道具を逸らしたり出来そうよね」
「あっ。なるほど。使えますね。それ」
「あっ。こんなのはどう?さっきの結界と組み合わせて…」
「ふむふむ」
「風量の強い所で移動に使うの」
「あぁっ!なるほど!凄い応用法ですね、それ!」
「でしょでしょ」
お節介、と言われれば。それまでだけれど。
好きなのよね。こういうの。
工夫する、とか応用する、とか。
私はティースくんに様々な魔法の話を聞いては、
出来るものは、その場で実践させて。
こんな応用はどうだ、とか。
こんな使い方もアリじゃない?とか。
そんな話に夢中になる。
時間が経つのも忘れ。没頭。

マナーモードの携帯が、ずっと着信していた事に気付いたのは、夜が更けてから。
電話をかけなおすと、すぐに、大丈夫だったのか?と心配する彼。
私はクスクスと笑いながら言う。
「ちょっとだけ、大丈夫じゃなかった」
何だよ、それ。と呆れ笑いする彼の優しさに顔が綻ぶ私を。
ティースくんは、ニコニコと笑いながら見ている。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / ティース・ベルハイム (てぃーす・べるはいむ) / ♂ / 14歳 / 見習い魔法使い


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。よろしければ また お願い致します^^

2007/04/06 椎葉 あずま