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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


マジカル・アスク - ヒトメボレ -

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0.オープニング

最近、ちょっと零が おかしい。
いや、別に体調が悪いとか、そういうんじゃなくて。
まぁ、見れば理解る。
カチャッ―
扉を開けて、零の部屋へ。
フワッと舞う、甘い香り。
香炉で灯る火が、薄暗い部屋を、ほんのりと照らしている。
部屋の中心には、正座して目を伏せ、
手を組んでブツブツと何かを言っている零。
「おーい。零」
声をかけるが、反応ナシ。
零の足元には、紫色の紙がある。
そこには、妙な文字が円状に綴られていて…。

何つったっけな、あれ。えーと。
あぁ、そうだ。「魔法陣」
占い師に教えてもらったらしいんだけどな。
最近、ずっと こんな感じでよ…。
まぁ、没頭できる趣味があるってのは、良い事なんだけど。
怪しいだろ。これ。どう見ても。
何か、ロクでもない事が起こりそうな気がすんだよ…。

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1.

零の様子がおかしい、しかも、何か嫌な予感がする。
留守電に入っていた、草間からのメッセージ。
私は携帯を閉じ、乱れた髪を整えつつ影を解放する。
何せ、異界から戻って来たばかり。
あのクソガキの所為で、髪も服も酷い有様だ。
…奴の留守電の口調から察するに、少し、急いだ方が良さそうだな。
仕方ない。零の部屋で着替えよう。
私は影を伝い、興信所、零の部屋へ。


ストン、と降り立つ零の部屋。
いつもと違う甘ったるい香り。何だ、この匂いは…。
顔を歪めつつ、辺りを見回すと。
「だ、大胆な登場だな」
バチリと草間と目が合う。
一瞬呆け、ポカンとする私。
ハッと気付き、乱れた衣服である事を思い出した私は。
「きゃー!!」
ドゴッ―
「ぶっ」
目の前に居た草間をブッ飛ばして、その場にしゃがみ込み、毛布を引き寄せ。
それで身を包みながら言う。
「な、何でここに居るっ!?」
私の言葉に、草間は頬を擦りながら答え、教え、伝えた。現状を。


成る程な。私は、そそくさと零を抱き上げ、ベッドに寝かせ。
嫌な笑みを浮かべる女、死神女に。
「さっさと帰れ」
そう言い放って、一旦影の中へ身を隠す。

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2.

「ふぅ…」
影内で着替えを済ませ、再び部屋に戻って来た私。
その私の目が捉えるもの。それは、死神女に抱擁されている草間の姿。
ピクリと動く、己の眉。
私は腕を組み、言う。
「嬉しそうだな」
「ちょ…おいおい。どう見りゃ、嬉しそうに見えんだよ」
苦笑しつつ返す草間。
私はツカツカと二人に歩み寄り。ベリッと草間から死神女を引き剥がす。
ムッとした表情で私を睨む死神女。
死神女は、やたらと長身で、私よりも背が高い。
私は、見上げる体勢で睨み返す。
ふん…気の強そうな女だ。
私と死神女が睨み合って数秒。
私の肩にポンと手を置き、草間は「付き合え」ただ一言ポツリと、そう言うと、
グイッと私を抱き寄せ、死神女に言った。
「さっきも言ったけど、俺、もう彼女いるからさ」
草間の、その言葉を聞き”付き合え”の意味を理解した私は、フッと笑い言う。
「そう。こいつは、私にベタ惚れなんだ」
草間は、一瞬ギョッとしたが、肩を竦め笑いながら話を合わせる。
「そうなんだよ」
「片時も離れたくないんだよな。お前は、私から」
「そうなんだよ」
一時的な…演技とはいえ、こうも素直に返されると、照れ臭いな…。
少し俯く私。すると、草間はギュッと強く私を抱きしめ、まとめに入った。
「まぁ、こういうわけだから」
私もパッと顔を上げ、死神女をジッと見やって言う。
「わ、私の男だから、ゆ、譲れんなぁ」
目の前でそんな事を言われ、不快にならないワケがない。
死神女は、物凄く悔しそうな顔で私を見やると、舌打ちしつつ、襲い掛かってきた。

ガキンッ―
バシッ―
死神女の爪を平然と受け止め、払う私。
「うぉい!何で、そーなんだよっ!!」
頭を掻きつつ、私達を見やる草間。
…まぁ、こうなるだろうとは思った。
女の色恋沙汰の恨み憎しみは、必ず女に向かうからな。
私は、草間の腕を引っ張り後退させる。
「おい。冥月」
「大丈夫だ。どうせ、大した事ない」
私の言葉にカッとなった死神女。
「生意気なっ…」
ブワッと辺りを包む、黒い風。
矢のようなものへ姿を変えていくソレを見つつ、私は思う。
…ほぅ。少し、私の能力と似ているかもしれんな。
飛んでくる黒い矢を影に全て吸収すると、
死神女はクッと笑い言う。
「へぇ…なかなか出来るねぇ。あんた」
「それはどうも」
微笑を返す私。
効かぬならば、と死神女は爪をギラリと輝かせ向かってくる。
ガキンッ―
バシッ―
死神女の爪を受け止めては影で払う。
物凄い速さで繰り広げられる、その攻防。
…この女、やたらと戦い慣れしている。
がむしゃらに爪を振るっているわけじゃない。
全て、仕留めようと狙い定めて振るっている。
私の喉を、掻っ捌こうと。
「ちっ…」
漏れた舌打ちは、もどかしさから。
こちらからも攻めたいのは山々なのだが、その暇がない。
死神女の猛攻を、抑え留める事で精一杯だ。
くそ。少し、身体が鈍ったか。情けない…。

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3.

「冥月!伏せろっ!」
突如、背後から飛んでくる草間の声。
私は振り返り確認する事なく、反射的に、その言葉に従ってバッと伏せる。
ボスッ―
「きゃぁっ!?」
死神女にヒットする、零のお気に入りのクマのぬいぐるみ。
顔面に当たった事により、死神女は少しフラつく。
今だ。
私は心を沈め磨いだ美しい影矢を死神女の太股目掛けて放つ。
ドスッ―


「何つーか…おっかねぇなぁ。女って、ほんと」
魔法陣が描かれた紙をビリビリと破きながら言う草間。
「何を今更」
死神女の爪が掠り、僅かに傷付いた腕を、しゃがんで擦りながら言う私。
草間は苦笑しつつ、私の頭を撫でる。
お前が、言い寄られてすぐに無理だ、とキッパリ断っていれば、
あの女も少しは大人しくなったかもしれないのに。
それが出来ない時点で、お前はヘタれ確定だ。
逆に相手の神経を逆撫でしてしまうのだからな。全く。
…まぁ、それは、私も協力したから強くは言えないが。

「草間」
「ん?」
「一応、礼言っておく」
「何で」
「お前の御陰で隙をつく事が出来たからな」
…どうしたものかと思っていたんだ。実際。
正直、押されていなかった、とは言えぬ状況だったからな。情けない事に。
「目ぇ、覚まさねぇなぁ」
微笑んで、零の顔を覗き込みつつ言う草間。
苦しそうな素振りは見せぬし、呼吸も落ち着いている。
おそらく、もう暫らくすれば目を覚ますだろう、とは思うが。
私は、疑問に思っていた事をポツリと口にする。
「何故、そんな…心が落ち着く魔法陣なんぞに縋っていたんだ。零は」
私の呟きに、草間は苦笑するだけで、何も言わない。
何か意味あり気な事は十分に理解るが…。
零が何故、こんなものを必要としたのか。
その全てを私が知るのは、また数日後の話…。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀ / --歳 / 草間興信所の探偵見習い

NPC / レア・ノクタンス (れあ・のくたんす) / ♀ / ??歳 / 死神


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
納品が遅れてしまい、大変申し訳ございません。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/04/11 椎葉 あずま