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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


VS フラッシュタイガー

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0.オープニング

「いやぁ…すみませんねぇ」
頭を掻きながら言う男。
あたしはクッと笑って返す。
「まだ、請け負うとは言ってないよ」
あたしの言葉に参ったな、と笑う男。

まぁ、前回とは、少し状況が違うね。
前回は、店に来るなり早々に厄介事を引き起こしたわけだけど。
今回は、事前にアポイントが入ってる。
依頼内容は、至って簡素。
”虎を大人しくさせてくれ”
ただ、それだけさ。
男が、コトンとカウンターに白いクリスタルを置いた。
はいはい。これに、その”虎”が封じられてるんだね。

さぁて、どうしようか。誰に頼もうか…。

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1.

RRRRR−
カチャ−
「はい。草間興信所…あら。蓮さん?」
久しぶりに鳴った事務所の電話は、
残念ながら”探偵さん”への依頼ではなく、私への依頼だった。
「なるほどね。わかったわ。すぐ向かうから」
電話を落とし、フゥと一息つく私。
虎か…以前、事務所の依頼で使ったアレ、どこやったっけ。
私は自室へパタパタと向かい、ガサガサ棚を漁る。
あったあった。効果あるかはワカラナイけれど、一応持って行きましょ。
見つけたソレを持ち、私はサクサク蓮さんの店へ。
あ。皆が帰ってきて、事務所がモヌケのからだとビックリさせちゃうから、
書置き…しておかなきゃね。えーと…。


「おじゃましまぁす」
カランカラン−
店内に入った途端。ビカッと閃光。
「うわぁぁぁっ!!」
大騒ぎしている男性が視界に飛び込む。
…あら。この間も見たわね。あなた。
私はツカツカとカウンターに歩み寄り、蓮さんに告げる。
「こんにちは」
眩しさから目を守るように、掌で顔を隠しつつ、蓮さんは返す。
「早かったねぇ」
「急用、なんでしょ?これ」
クスクス笑いつつ、目を伏せたまま返す私。
男性は、見当違いの方向に向かってガバッと頭を下げ叫ぶ。
「お願いします!奴を大人しくさせてくれぇ!」
私はトン、と男性の肩を叩いて微笑む。
「私は、こっちですよ」

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2.

眩しさから目が解き放たれ、男性は目をウッスラと開く。
そして、私を見やって少し驚いた顔で言った。
「あ、あんた…目つぶしされてんのに、よく俺がこっちに居るってわかったな」
私はフッと目を開け、微笑んで返す。
「日頃、視覚より聴覚に頼ってる部分大きいから、あまり困らないんです」
「へ、へぇ…」
ビカッ−
「うっ!!」
再び、店内を包む、白い光。
よし。じゃあ、サクッと大人しくさせちゃいましょうか。
私は目を伏せたまま、光を放つ虎と対峙。


さっきから思っているんだけど、このコ、どうも獰猛って感じがしないのよね。
光で目潰しはしてくるものの、その間にガバッと襲ってきたりしないし。
もしかして、アレかしら。怯えていたりするだけ、とか。
ありえるわよね…。
そんな事を思っていると。
ビカッ−
虎は再び光を放ち、店内が真っ白になった隙に。
「ガウッ!!」
「わっ」
私に向かって飛び掛ってきた。
ドカッ−
ガシャンッ−
パリンッ−
私が避けた事で、虎はカウンターに突っ込み。
カウンター上に載っていたものが次々と床に落ちた。
うん…勘違いだったわね。怯えているだけかも、だなんて。
虎ですものね。そんな甘い考え、捨て置かなきゃ。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
何やら、男性が叫んでいるけれど、今は構っていられないわ。
このコを大人しくさせるのが先。
私は両耳に手をあてがい、人の耳には届かぬ不快な音波を放つ。
「ウガッ!?」
その場で右往左往する虎。
隙だらけっ。
私は事務所から持ってきたものを懐からサッと取り出し、虎の鼻先に噴きつけた。

「ガルルルゥ〜〜ン…」
床にコロコロと転がりつつ、甘えた声を出す虎。
私は、その愛らしい姿にクスクス笑う。
凄いわ。効果覿面ね。
「あ、あの…それ、何だい?」
男性が私の持つものを指して言う。
「またたびスプレーよ」

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3.

「ガルルルゥ〜…」
「あははっ。くすぐったいっ」
大人しくなった虎は、私に擦り寄って甘えてくる。
まるで、大きな猫だわ。
恐怖心とか危機感とか、そういうものが払われた事で、
虎は、いとも簡単に大人しくなった。
「で…大人しくなったワケだけど。このコ、どこに戻すの?」
虎を撫でつつ私が言うと、
男性はションボリとして、私に粉々になったクリスタルを見せる。
「あら…」
あららららら。さっき、カウンター上にあったやつよね。それ。
ありゃあ…それに戻すんだったのね。困ったわね。戻せないじゃない。


「ねぇ…このコって、食事はどうしてたの?」
私が問うと、男性は俯いたまま返す。
「たまに肉を与えてくれ…って言ってたよ。俺は、与えた事ないけどさ…まだ」
ふぅん。こんなに大きいのに、経済的なのねぇ。
どこで買い取ったのかは知らないけれど、
聖獣とか、そういう立場だったりするのかしら。
それなら、頷けるのよね。経済的なのとか、この人懐っこさとか。
「このコ、引き取っても良いかしら?」
私が言うと、男性はギョッとして。
「いや、それは…あぁ、でもな…もう商品はないしな…」
ガックリと肩を落として言った。
可愛いんだもの。ふにふにした、この肉球も。
うっとりするような毛並も、ふかふかで気持ちよさそう。
ブラッシングのし甲斐もありそうでワクワクしちゃう。
それに、光を放つわけでしょ。そこは、ほら。
…電気代節約!とかに繋がるかもしれないじゃない?なーんて。


「うんうん、そうなの。すっごい可愛いのよ〜」
何度も何度も、虎の愛くるしさを絶賛して伝える私。
電話の向こうの彼は、駄目だ無理だって最初は言っていたけれど、
”電気代節約”に心が揺らいだのか、仕方ないな、と渋々承諾した。
ピッ−
「よしっ。じゃあ、そういうわけなので、連れて帰るわね」
携帯を切り、ニコッと微笑む私。
蓮さんはクッと笑い、言う。
「そんなに大きいと、邪魔じゃないのかい」
う。うーん…確かに。大っきいのが、ちょっとね。
事務所、狭苦しいし…外で飼うわけにもいかないし。
窮屈な思いさせちゃうかな。それは、ちょっと可哀相よね。
むぅ、と私が考え込んでいると。
「ガル……」
虎は頷くように、小さく鳴いて。
自身の体を小さく、小さく…変化させた。
そこらじゅうにいる猫より、ほんの少し大きい、程度に。
「わぁ、凄い。そんな事も出来るのね。キミ」
ヒョイッと虎を抱き上げ、微笑む私。
うん、これなら大丈夫。
ふかふかの虎を抱きつつ、私は満面の笑みで店を後にする。

名前、つけてあげないとね。何が良いかな?

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

NPC / 早川・太助 (はやかわ・たすけ) / ♂ / 25歳 / 行商人


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます!心から感謝申し上げます。
納品が遅れてしまい、大変申し訳ございません;
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/04/13 椎葉 あずま