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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


VS フラッシュタイガー

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0.オープニング

「いやぁ…すみませんねぇ」
頭を掻きながら言う男。
あたしはクッと笑って返す。
「まだ、請け負うとは言ってないよ」
あたしの言葉に参ったな、と笑う男。

まぁ、前回とは、少し状況が違うね。
前回は、店に来るなり早々に厄介事を引き起こしたわけだけど。
今回は、事前にアポイントが入ってる。
依頼内容は、至って簡素。
”虎を大人しくさせてくれ”
ただ、それだけさ。
男が、コトンとカウンターに白いクリスタルを置いた。
はいはい。これに、その”虎”が封じられてるんだね。

さぁて、どうしようか。誰に頼もうか…。

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1.

平穏な午後。小春日和。
ゆったりとした時間。
少し苦めのコーヒーに酔いしれ、目を伏せる。
久しぶりだ。こんなに、ゆったりとした午後は。
RRRRR−
フッと目を開け、鳴り響く携帯を取り、
ディスプレイに表示される、見慣れぬ番号に首を傾げる私。
誰だ…?
ピッ−
「はい」
『あぁ、冥月かい?ちょっと、手伝っとくれよ』
「………」
蓮だった。
つっこみ所は満載だ。
何故、お前が私の番号を知っているのか、とか。
手伝いなんて、御免だ、とか…。
せっかく久々にくつろげる午後だったというのに。
蓮は、まくしたてるように早く来いと催促する。
嫌だ、と断れば、色々とチクるよ?と返し…。
目に浮かぶようだ。あの、嫌な笑みが。


「ほぉ…これはまた、立派な虎だな」
店内で閃光を放ちつつ威嚇する巨大な虎を見上げ言う私。
「ちょ、あんた…目ぇ大丈夫なのかっ!?」
目をおさえつつ言う、見覚えのある男。
「無問題だ」
むしろ、影のみで”感じた”方が、より周囲を把握できる。私の場合はな。
さて。こいつを大人しくさせるのか。
どれ…先日、死神なんぞに手こずった事だし、
腕試しに、この手でカタをつけてみるとするか。

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2.

「ガルルルッ!!」
ガキンッ−
光による目潰しをしつつ、爪と牙で相手を攻める。
ふん…単調な攻め方だな。
私は虎の爪をバシッと払い、脇腹に一撃。
ドスッ−
「ガフッ…」
ザザッと後退し、私を睨み付ける虎。
対峙し、睨み合った時点で、わかるものだ。
相手の強さも、勝者が、どちらかも。
そう、わかるものだ。いつもなら、このように。
ヒュッ−
ギンッと鋭い眼差しで虎の眼を真っ直ぐ見やり、
私は殺気のこもった一撃を。
虎の眉間、ギリギリで寸止め。
獣の本能。負けを悟る潔さ。
私は、その潔さ、嫌いじゃない。
ゴロンと仰向けに寝転がり、腹を見せて降参を示す虎。
私はフッと笑い、しゃがんで、虎の腹を撫でやる。
すると、虎を大人しくさせてくれと頼んだ男は、
私の見事な解決っぷりに大喜びし、その場でガッツポーズを決めた。
ドカッ−
パリンッ−
男の肘は、カウンターにヒット。
男は、ビリビリと痺れる肘を押さえつつ、
床に落ちて割れたクリスタルらしきものを見てサァッと青褪めた。
おい、まさか。
予感は的中。
男は無様な醜態を晒して、その場を転げ回る。
「あぁぁぁぁぁぁ…!!!!」
…馬鹿だな、こいつ。
完全なる、馬鹿だ。


すっかり戦意が失せ、体を摺り寄せ懐いてくる虎。
私は虎を撫でつつ、ポツリと呟く。
「割れたのなら、商談とやらはナシだな」
「うぅ…」
ガックリと肩を落とす男。
「じゃあ、問題解決の報酬は、この虎で良い」
私が言うと、男は慌てて返す。
「いやいや!お客さんは、大人しくなった虎を封じた物を所望なんだよ。だから、何か別の物に封印し直し…」
「それは手伝わんぞ」
私がキッパリと言うと、
「ガルルルル!!」
虎も、そうだ、と言わんばかりに吼える。
男は、余程惜しいのか一歩も引かず。
何とかして虎を再封しようと言う。
しつこい男だな。諦めの悪い奴め。
もう、わかった。そんなに大金が欲しいのなら、くれてやる。
私は男の荷物からスッと一つを手に取り、告げる。
「これ、いくらだ?十倍で買ってやる」

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3.

「太っ腹だねぇ」
クックッと笑う蓮。
私はフイッと顔を背け言う。
「暗殺者時代の報酬が腐る程あるんでな」
「はははっ。その金、貢げば良いじゃないか。彼に」
「ふん。奴は貧乏なくせにプライドが高いから受け取らん。そもそも貢ぐつもりもない」
淡々と言う私。
蓮はニタリと笑って言う。
「心を貢ぐ女なんだねぇ、あんた」
「うっ、うるさいっ!!」


「ほ、本当に良いので…?」
おずおずと金を受け取る男。
私は「しつこい」と一蹴し、男から買い取った品をまじまじと見やる。
紫色の小瓶。中には、何やらトロッとした液体が入っている。怪しい…。
「…今更だが、これは何だ?」
私が問うと、男はヘヘッと得意気に笑って言った。
「惚れ薬でさぁ。効果は保障しますぜ」
「………」
絶句。
惚れ薬とは…。
ケラケラと笑い「彼に使うのかい」と愉快そうな蓮。
私は「うるさいっ!」と叫び、影内に虎を取り込んで、そそくさと店を後にする。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

NPC / 早川・太助 (はやかわ・たすけ) / ♂ / 25歳 / 行商人


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます!心から感謝申し上げます。
納品が遅れてしまい、大変申し訳ございません;
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/04/13 椎葉 あずま