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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


誓いの銃 -ロスト-

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0.オープニング

まぁ、何度見た所で、状況は変わらない。
俺は、溜息混じりで煙草に火をつけ、天井を見上げる。
ソファに凭れて、目を伏せ辿る記憶。
規則正しく時を刻む針音が、鮮明に聞こえる。
…お前が知ったら、どう思うかな。
フッと脳裏を過ぎった懐かしい声。
あぁ、そうだな。お前は、きっと。こう言うだろう。
”何やってんのよ”
そう、呆れた顔で。頬を膨らませて。
理解ってるよ。俺の不注意だ。弁解の余地はない。
けれど、謝る事はしない。
何故って?
必ず、この手に。取り戻すからさ。

コツコツ―
扉を叩く音で、ハッと我に返り。
俺は来訪者を出迎える。
誰かと確認する事なく。
ガチャッ―

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1.

「こ、こんにちは」
急に開いた扉にドキドキしつつ、私は扉を開けた部屋の主に挨拶を。
「何だ…お前か」
フイッと顔を背けて言う探偵さん。
…気の所為かしら。ううん、そんな事ないわよね。
人の変化に敏感なの。私って。自分で言うのも何だけど…ね。
「何か、あったの?」
私が問うと、探偵さんは頭をワシッと掻いてポツリと呟く。
「盗られた」
「盗られた…って、何を?」
「…銃」
そう呟き、ヒラリと自身のジャケットをめくる探偵さん。
いつも腰元にある、彼のトレードマークと言っても過言ではない、それが。
見当たらない。
「いつも肌身離さず持っているのに、珍しく置いていたの?」
探偵さんの顔を見つつ言う私。
探偵さんは、ハァと溜息を落とし、クイッと室内を親指で示す。
ん?と中を覗き見やる私。
映るは、豪快に割れた窓ガラス。
うわぁ…大胆な手口ね。

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2.

「ここに置いてたの?」
トン、とベッド横の棚に手を置き私が言うと、
探偵さんは、ソファに座り目を伏せたまま頷いた。
「どの位?ここに置いてた期間は」
「…昨晩からだ。けど、朝はあった」
「朝、って…今も朝だけど…」
「なくなっていたのは、お前が来る、ほんの十五分程前」
「つい、さっきじゃない」
「シャワーから上がってきたら…このザマだ」
うぅん…エージェントの部屋に何の躊躇もなく、
こんな大段に入り込むなんて、只者じゃないわね。
とりあえず、時間経過がまだ少ないから、付近に聞き込みしてみましょうか。
こんな大段な手口なんだもの。きっと、誰かが怪しい人を見てるはずよ。
うん、と頷き行動に移そうと、
ソファに座る探偵さんに私が歩み寄った時。
バタンッ−
「ディテクター!!」
突然、部屋の扉が開き、バタバタと萌ちゃんが入ってくる。
「あんたが大切にしてる銃に、すっごい似たのを持ってる女の子をさっき…って、あれ。シュラインさんだ。こんにちはっ」
ペコリと頭を下げる萌ちゃん。
私は挨拶を返しつつ言う。
「こんにちは。ねぇ、今の話…どういう事?」
「あ、そうそう!すごい似てたんだよ。ねぇ、ディテクター、あの銃って、この世に一つだけだったんじゃないの?」
探偵さんに詰め寄って、まくしたてるように言う萌ちゃん。
良かった。おそらく、犯人は、その子だわ。
萌ちゃんが発見者だと、色々と助かるわね。
よし、萌ちゃんに色々聞きましょう。
その子が、どこに向かって行ったか、とか。その子の特徴なんかも。
丁度、今日は地図を持って来てるから、追跡に役立つはず…。
懐から地図を取り出そうとした時。
グイッ−
「きゃ!?」
探偵さんが、私の手を引いて、ダッと駆け出す。

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3.

「ち、ちょっと待って。ねぇ、探偵さん、一体どうし…」
「悪い。ちょっと付き合え」
走りつつ言う探偵さん。
私は手を引かれつつ、彼の険しい表情にクスッと笑う。
「ねぇ、そんな調子じゃあ見えるものも見落としちゃうわよ。落ち着いて」
少女が銃を持っていた、という情報を聞いた途端、あなたは駆け出した。
迷いのない足取りから察するに、
もう、犯人の目星がついてるのよね。
気持ちは理解るわ。急いてしまうのも、苛立つのも。
でも、落ち着いて。いつものペースを取り戻さなきゃ、ね。
「独り言、歓迎よ」
私が微笑んで言うと、探偵さんは一瞬私を見やり、
苦笑して「悪いな」ただ一言、それだけ言って再び前を見て駆ける。
それは、なぁに?
深くは言えない、って事に対しての謝罪?
それとも、付き合わせてゴメンネっていう謝罪?
前者なら気にしないで、って言うけれど、後者なら水くさいわ。
盗られた、って聞いた時点で、私は協力する気だったんだから。
もう少し、頼って頂戴な。


部屋を飛び出し、駆けて十分。
私達は、今にも崩れそうな廃墟に辿り着いた。
ずっと掴んでいた私の手を離し、廃墟を見上げる探偵さん。
私も、つられるように見上げる。
何の躊躇いもなく、ここに来たわね。
萌ちゃんが見た、っていう少女が此処に居るっていう確信があるの?
ねぇ、探偵さん。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / ディテクター / ♂ / 30歳 / IO2エージェント

NPC / 茂枝・萌 (しげえだ・もえ) / ♀ / 14歳 / IO2エージェント NINJA


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます!心から感謝申し上げます。
納品が遅れてしまい、大変申し訳ございません; 連作第一話をお届けします。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/04/13 椎葉 あずま