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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


クロノ・ラビット

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0.オープニング

おっかしいな。どこいっちゃったんだろ。
デスクの下に潜り込んで、目を凝らし床を見やるボク。
おっかしいな。ほんと、どこいっちゃったんだろ。
もう、何回も見たんだよな…この辺は。
バサバサバサッ―
「うわぁ」
デスクの上にあった書類がバラバラと頭の上に落ちてきた。
ボクは、む〜っと顔を膨らませつつ、
床に散らばった書類を拾い集める。すると。
ヒュッ―
突然、風のような音がしたのと同時に、目の前にポコッと穴が開いた。
物凄く見覚えのある、その光景に、
ボクは目を丸くして、穴をジッと見やる。
「あっ!やばっ…!」
ピョコンと顔を出して、すぐさま穴の中へ戻っていったのは。
うさぎ耳の少女。
えっと…。
少し、状況把握に時間を割いて。
ボクはハッと気付き、穴に向かって這いずり寄りつつ叫ぶ。
「ちょ、ちょっと待って!その時計!ボクのだよね!?」

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1.

編集長に用があったのに、離籍中とは。
タイミングが悪かったな。仕方ない。日を改めよう。
フゥと溜息を落としつつ、廊下を進んでいると。
ある一室で、見覚えのある姿が。
「何やってる」
グイッと桂の後ろ襟を掴み上げて言う私。
…この穴に飛び込もうとしてたな。何だ、この穴は。
穴を不審な目で見やる私。
首根っこを掴まれて子猫のような体勢で、桂は私を見上げて言う。
「あれ…冥月さん。どうしたんですか、また草間さんの お使いですか?」
「その言い方止めろ。どうしたか、と聞いてるのはこっちだ」
無愛想に言うと、桂はジタバタ暴れつつ言う。
「あぁっ!そうだっ!ちょっと離して下さいっ。ボクの時計がっ」
時計…?私は首を傾げつつ、事情を聞いた。


「大切なものを盗られ焦るのは理解るが、一人では危険だ。同行しよう」
私は穴の中に影を伸ばし、先に伝って降りつつ言う。
「い、良いんですか?何か用事があったんじゃ…」
「今日は無理だ。日を改める。故に暇だ。気にするな」
「あ、ありがとうございます〜」

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2.

随分と深いんだな…。
底に辿り着いた私は、影を操りつつ桂に言う。
「そのウサギ女の背丈は、どのくらいだ?」
「えっと…」
桂は腕を組んで、記憶を辿り、ポツリポツリとウサギ女について話す。
ふーん…本当に子供って感じだな。それだけ聞くと。
どれどれ…と暗闇の中、影を這わせウサギ女を探す。
間もなく影は、それらしき者を感知。
こいつか…?何だ、この弱々しい感じは。泥棒っぽくないな。まるで…。
もしや、何か訳有りか。よし、それならば…。
「別々に探そう。お前は向こうを」
私は桂に逆方向の探索を指示。
桂は素直に了解、と私が示した方向へ走って行く。
よし…。
私は影を操り、感知したウサギ女を近くまで引き寄せる。
「やぁぁぁぁぁ〜…」
ズリズリと影に引っ張られて、姿を現すウサギ女。
私はウサギ女の前にしゃがみ、問う。
「お前、その時計、何の為に盗ったんだ?」
私の問いに、カッと顔を赤らめて俯くウサギ女。
…なるほど。そういう事か。わかりやすい奴だな。
私はピンッとウサギ女の額を指で弾く。
するとウサギ女はムキになって。
「だ、だってだって!どうすれば良いかワカンナイんだもんっ!」
「だからといって、物を盗るのは、どうかと思うぞ」
「じ、じゃあ、どうすれば良いのよぅ…」
「…色恋は苦手でな」
苦笑して言う私。
ウサギ女はキョトンとして、言う。
「好きな人くらい、いるでしょ?」
「好きな奴なんて…」
無断でポンッと頭に浮かび上がる一人の男。
私は慌てて、それを払い、ウサギ女に言う。
「理由はわかったがな。大切なものを盗んだ相手を、普通は好かんぞ」
シュン、と垂れるウサギ女の長い両耳。
私はヤレヤレと溜息を吐き、助言する。
「なら、こうしよう。意地悪な女王が悪戯猫に、その時計を奪わせた」
「…う、うん?」
「それを、お前は奪い返したんだが、姿を見られ、つい逃げてしまった、と」
「…う、嘘つくの?」
私はクッと笑い、ウサギ女の頭をポンと叩いて言う。
「嘘は時折、最高のスパイスだ」

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3.

「ほら。桂が来たぞ。リラックスしろ」
パシッと背中を叩くと、ウサギ女はビクリと肩を震わせる。
「あぁ、そうだ。言い忘れていたが、急に告白では、桂も困るだろう」
…普通の人間ではなく、妖だしな。お前は。
「だから、友達から始めてみよう。な」
私が言うと、ウサギ女はコクコクと頷いた。


「あぁ…良かった。戻ってきて」
ウサギ女から時計を受け取り、ホッとした表情を浮かべる桂。
嘘の説明も、全く疑っていないようだ。よし。
「なぁ、桂」
「はい?」
「この娘は、東京に友達がいないそうだ。私達で友達になってやらないか」
ウサギ女の頭を撫でつつ私が言うと、
桂はニコッと微笑み、言った。
「そうなんですか?それは寂しいですね。はい、構いませんよ」
ウサギ女はピョンと、その場で飛び跳ね大喜び。
…まぁ、結果オーライ。だな。


「じゃあ、私はこのへんで。喧嘩するなよ」
クスクス笑い、その場を去ろうとすると、
ウサギ女は私の服を掴み、クイクイと手招きした。
何だ?と しゃがみ、耳を預けると、ウサギ女は嬉しそうに言った。
「次は、あたしが恋の相談に乗るからね」
私はバッと立ち上がり、
「い、要らんっ」
そう言って、足早にその場を去る。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / 桂(けい) / ?? / 18歳 / アトラス編集部アルバイト

NPC / ミト(みと) / ♀ / 14歳 / アヤカシうさぎ


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます!心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/04/13 椎葉 あずま