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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


誓いの銃 -ロスト-

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0.オープニング

まぁ、何度見た所で、状況は変わらない。
俺は、溜息混じりで煙草に火をつけ、天井を見上げる。
ソファに凭れて、目を伏せ辿る記憶。
規則正しく時を刻む針音が、鮮明に聞こえる。
…お前が知ったら、どう思うかな。
フッと脳裏を過ぎった懐かしい声。
あぁ、そうだな。お前は、きっと。こう言うだろう。
”何やってんのよ”
そう、呆れた顔で。頬を膨らませて。
理解ってるよ。俺の不注意だ。弁解の余地はない。
けれど、謝る事はしない。
何故って?
必ず、この手に。取り戻すからさ。

コツコツ―
扉を叩く音で、ハッと我に返り。
俺は来訪者を出迎える。
誰かと確認する事なく。
ガチャッ―

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1.

バタンッ―
突然、何の前触れもなく開いた扉。
扉を開けた部屋の主は、私の顔を見てフゥと息を吐いた。
私は苦笑し、言う。
「相手くらい確かめろ。私が敵だったらどうする」
…まぁ、私が、お前の命を狙う立場なら扉なんぞ使わず進入して殺すがな。
部屋の主、ディテクターは、ごもっとも、と肩を竦めてボソリと問う。
「…何の用だ」
「あぁ、あの貧乳娘が行ってみろとウルサくてな。桜の時の礼とか何とか…色々と」
クッと笑いつつ言う私。すると。
「だぁれが貧乳だぁっ!」
どこからともなく沸いた萌が、いきり立ってヒュッと蹴りを放つ。
ヒョイッとそれを避け、私は言う。
「事実だろう?紛れもなく。というか、お前、どこから沸いてくるんだ」
「私は、まだ発展途上なのっ!これからこれから!」
「その兆しは微塵も…」
苦笑しつつ言おうとして、私はハッと気付く。
萌の蹴りを避けた際に、思いの外ディテクターに密着していたからだ。
ドクンと激しく波打つ脈。
な、何だ、これは。意味不明な現象に私が戸惑っていると、
萌が、フルフルと頭を振って言う。
「っていうかディテクター!あんたが大切にしてる銃に、そっくりなのを持った女の子がいたんだよ、さっき」
萌の言葉にピクリと動くディテクターの眉。
…銃?少し首を傾げて見やる、ディテクターの腰元。
いつも、そこにあるはずの銃が、ない。
もしや…と思いジッと見やって すぐに、その予感が当たった事に私は気付く。
何て、険しい顔だ。

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2.

グイッ―
「…っと」
突然、私の手を引いて、タッと駆け出すディテクター。
ディテクターはボソリと呟く。
「…少し、付き合え」
手を引かれ駆けつつ、私は返す。
「何にだ?」
「…探し物。得意だろ?」
「まぁ、確かに得意だが、犯人の目星は…」
「…ついてる」
一問一答のように、淡々と進む会話。
普段から寡黙で、余計な事を決して言わない。
お前は、そういう奴だ。
けれど、そんな顔は、初めて見る。
真剣且つ思いつめ、少し憂いを含んだ表情。
その表情…とても、よく似ている。
”本気”になった時の、あいつに。
とても、よく似ている。
…だから?だから何だと言うんだ。
それ故に、今、掴まれている手が熱を帯びている、と?
それ故に、今、鷲掴みされたように胸が高鳴っている、と?
馬鹿な事を。何、くだらない事を思っているんだ。私は。
己を戒め、同時に呆れ。
フッと笑みを浮かべる私。
そんな私を見て、横を駆ける萌がニタッと笑って言う。
「ねぇ、何か顔、赤いよ?」
「!」
私は慌てて掴まれていた手を払い、萌からパッと目を逸らす。
「気のせいだ」


「じゃあ、私は報告してくるね」
軽く手を上げ、ディテクターに言う萌。
ディテクターは何も言わず、煙草に火を点けつつ頷く。
「誰か、向かわせたほうが良い?援護」
「…いや。必要ない」
「了解。んじゃ、また後でね」
ヒラヒラと手を振り、一人、違う方向へタタッと駆けて行く萌。

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3.

二人きりになり、私は辺りを見回す。
人気のない路。舗装はされているが、
酷くひび割れていて、とても車が行き交う事など出来ない。
ディテクターは、迷う事なく、ここへ駆けて来た。
脇目も振らず。一目散に。
似た銃を持った少女を見た、という、ただ、それだけの情報で。
犯人の目星がついている、と言っていたな。…こんな所にいるのか?
そんな事を思いつつ、私は影を解放し周囲を探索。
ディテクターは煙草をふかしながら、淀んだ空を見上げている。
周囲を探った結果、似たような型の銃を三つほど感知。
その内二つは、すぐにでも影で奪う事が出来るが。
一つだけ。
一つだけ、それが出来ない銃がある。
その、在り処は―…。
影を消し、私はポツリと言う。
「ここから少し北の…廃墟にあるな」
すると、ディテクターは煙草を踏み消し、
正解、とばかりに頷き苦笑した。
私の影が、奪えない。それだけで十分に理解る。
只者ではない。
一体、どんな奴だ。
私は、スタスタと先を歩くディテクターの後を追う。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / ディテクター / ♂ / 30歳 / IO2エージェント

NPC / 茂枝・萌 (しげえだ・もえ) / ♀ / 14歳 / IO2エージェント NINJA


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます!心から感謝申し上げます。
納品が遅れてしまい、大変申し訳ございません; 連作第一話をお届けします。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/04/17 椎葉 あずま