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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


クロノ・ラビット

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0.オープニング

おっかしいな。どこいっちゃったんだろ。
デスクの下に潜り込んで、目を凝らし床を見やるボク。
おっかしいな。ほんと、どこいっちゃったんだろ。
もう、何回も見たんだよな…この辺は。
バサバサバサッ―
「うわぁ」
デスクの上にあった書類がバラバラと頭の上に落ちてきた。
ボクは、む〜っと顔を膨らませつつ、
床に散らばった書類を拾い集める。すると。
ヒュッ―
突然、風のような音がしたのと同時に、目の前にポコッと穴が開いた。
物凄く見覚えのある、その光景に、
ボクは目を丸くして、穴をジッと見やる。
「あっ!やばっ…!」
ピョコンと顔を出して、すぐさま穴の中へ戻っていったのは。
うさぎ耳の少女。
えっと…。
少し、状況把握に時間を割いて。
ボクはハッと気付き、穴に向かって這いずり寄りつつ叫ぶ。
「ちょ、ちょっと待って!その時計!ボクのだよね!?」

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1.

あらら。あの後姿は…間違いない。桂くんだわ。
デスクの下に頭を突っ込んで…何やってるのかしら?探し物?
私は歩み寄り、声を掛ける。
「何してるの?」
「っうわぁ!?」
ビクゥッと肩を揺らし、ソローリと振り返る桂くん。
私の顔を見て、ホッとした表情を浮かべ、桂くんは言う。
「時計を…盗られてしまったんです」
「時計?あぁ、いつも持ってる、あの銀色の?」
「はい…」
しょんぼりとする桂くん。
うぅん…最近、大事なものを盗られる人が多いなぁ。身の回りに。
偶然かもしれないけどねぇ…。うん、まぁ、とにかく。
盗られたまんまには、しておけないわよね。
桂くんにとって、あの時計は必要なものだし。
私は、桂くんの隣にしゃがみ、言う。
「この中に、いるの?」
「はい。チラッと見えただけなんですけど、ウサギの妖っぽいんですよね…」
「ふぅん。ちょっと待って。探ってみるから」
「あ、ありがとうございます〜…」
私は目を伏せ両耳に手を宛がい、探る。
僅かに揺れる、少女の呼吸と鼓動に。耳を澄ませて。
「見っけ」
「早っ!!」

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2.

穴の中に降りた私と桂くんは、辺りをキョロキョロと見回す。
何だろ。ちょっと妙な感じ。どうして、そんな近くに…。
「っと、うわぁ!」
ドシャッ―
「わっ。大丈夫っ?」
暗闇の中、何かに躓き、その場にうつ伏せで倒れこむ桂くん。
やぁだ…まるで、漫画みたいな転び方。
私はクスクス笑いつつ、桂くんを起こす。
すると。
僅かな変化を、私の耳がピクリと捉える。
変化。それは、紛れもなく変化。
ここから、さほど離れていない所にいる、”犯人”の鼓動が高鳴った。
ドキ、ドキ、ドキ、ドキ。
規則正しく、少しずつ早く。
それだけじゃない。
私達に近寄ってみたり、すぐまた離れたり。
変よね。やっぱり。
追いかけてきてる事には、気付いてると思うの。
でも、一目散に逃げたりしない。
様子を伺ってるような…。泥棒、なの?本当に、これ…。
「どうしたいの?」
ポツリと呟く私。
「へ?」
キョトンと私を見やる桂くん。
「あ、ううん。何でもないわ」
私の呟きを聞き、犯人はサッと姿を隠し、遠くへ逃げようとする。
うーん…話にならないわね。これじゃあ。
私は苦笑しつつ。両耳に手をあて、「ごめんね」 そう呟いて。
超高音域の音を放つ。
感度良好な、ウサギ耳へ向けて。
感じ取る、ウサギのフラつく足取り。
「こっちよ」
私は桂くんの手を引き、犯人のもとへ。


「…はぅ」
しゃがみ込んで丸くなるウサギ耳の少女。
その姿は泥棒なんていう大それたものじゃなくて。そう、ただの…。
「ちょっと、待ってて」
私は桂くんに、そう告げて少女の隣にしゃがむ。
「………」
ウサギ耳を垂らし、俯いたままの少女。真っ赤な、ほっぺ。
…うん。間違いないわね。
私はクスッと笑い、小さな声で言う。
「素直に、謝ろ?」
ビクッと揺れる、少女の肩。
わかるけどね。怖いのも、恥ずかしいのも、申し訳ないのも。
でもね、大事なものを盗った人に好意を抱くっていうのは、なかなか…ね。
よほどの変わり者さんじゃないと、ないと思うの。
盗ったのは、良くない事よ。
あなたは、それを理解してる。うん。
良くない事、だけど。キッカケには、なるわ。
素直に謝って、そこから。そこから始めてみたら、どうかしら?ね?
ニコッと微笑むと、少女は、ゆっくりと顔を上げ、
数秒間、私の顔をジッと伺うと、コクリと小さく頷いた。

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3.

「ご、ごめんなさいでした」
何度も頭を下げつつ、桂くんに時計を返す少女。
桂くんはクスクス笑い、時計を受け取ると。
「もう、いいですよ」
優しく、そう言った。
ほら。ここからよ。さぁ。頑張って。
私は、ポンッと少女の背中を叩き。
ゆっくりと、その場を離れつつ、微笑む。
ピンと立ったり、左右に揺れたり、クタッと垂れたりする、少女の可愛い耳に。
わかりやすいコね。何を話してるのか、手に取るようにわかっちゃうわ。


さてさて…。二人は仲良くなったようだし、邪魔者は退散しますか。
はぁ…しかし、まぁ、恋愛って、本当…人それぞれねぇ。
皆、一生懸命なのは同じだけど。
色んな恋があるよね。うんうん…やっぱり、素敵だわ。恋って。
そんな事を思いつつ。私は携帯で連絡を入れる。
五回コールの後、いつもの声。
無愛想に、遅い、腹減ったって言う、いつもの声。
何だか、それが、とっても嬉しくて。
私の心は、恋を覚えたばかりの少女のように踊る。
「ねぇ、凄く可愛い事件をね。解決したの。うん。あのね…」

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 桂(けい) / ?? / 18歳 / アトラス編集部アルバイト

NPC / ミト(みと) / ♀ / 14歳 / アヤカシうさぎ


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます!心から感謝申し上げます。
納品が遅れてしまい、大変申し訳ございません;
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/04/19 椎葉 あずま