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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


PCウイルス
「さぁ〜って。今日もネットサーフィンでもするか!」

とネットカフェに現れたのは瀬名雫だった。

瀬名はこの、「ゴーストネットOFF」というホームページの管理人をしている。

今日も書き込みがあるかをチェックしようと思い、電源ボタンを指でぐいっと押した。
するとパソコンはウィーン、ガガガといった起動音を鳴らす。

いつもならそろそろOSの画面が現れるはずだった。
しかし、うなり声はおさまることを知らず、
不規則な文字列を並ばせながらもその声はとどまる事を知らなかった。

「なんでぇ〜。いつもならここで画面が切り替わるのに。
 つか、クラッシュ?」

そこでふと画面が切れた。

その後、ありえない現象に出会った。


血が画面の上から流れてきたのだ。
やがて画面は真っ赤に染まり、不気味な赤い光が暗いネットカフェを照らしていた。

「なにこれ…オカルトに詳しいあたしですらわからない現象だわ」

瀬名はショックだった。
あの血が流れてきた不気味な出来事。
ネットカフェの店員が困っていたことなんて、瀬名の頭にはなかった。

「ああいう現象…他でもあるか調べてみないとね」

眠れぬ夜が過ぎ、気がついたら朝になっていた。
制服に腕を通し、着替えると元気よく学校へと向かった。
瀬名は学校で情報収集にあたろうと思っていたのだ。

まずは友達に話を聞いてみた。

「ねー。パソコンのウイルス対策とかしてる?」

本当はいきなり血みどろの話をするのがいいのかもしれないが、
まずはこういう当たり障りのない話題から真実を見出す方がいいと思ったのだ。

「それがね、ウイルス対策してたのにかかっちゃったの」
「なんかデータが消えたり、ネット上で流れたりした?」

「ううん」

その言葉を聞くと、瀬名はごくりと唾を飲み込んだ。

「血がパソコンの上から流れてきて、画面が真っ赤になって使えなくなるの」

それだ。それこそ瀬名のパソコンがやられたウイルスだ。

「ビンゴだぁ…」

瀬名は早くもあの現象の目撃者に出会えて驚きとともに興奮を隠せなかった。

「結構はやってるらしいよ、雫。あんたも気をつけたら」


瀬名は今までの事件の経験から予感していた。
これはただのウイルスではないと。



瀬名はパソコンが壊れた時のネットカフェに再び出向いた。

「いらっしゃいませ」

丁寧な口調で瀬名は店員に挨拶された。

「あの〜こないだウイルスか何かで壊れたパソコンなんですけど、
 あれどうなりました?」

瀬名は店員にたずねると、

「あれは修理に出しましたけど、ダメでしたね…」

と返ってきた。

「あの、あたし気になることがあるんで、調べさせて欲しいんですけど…」

と店員にお願いしたものの、パソコンをいじらせてもらえるわけがなかった。
そのパソコンはとっくに処分されていたからだ。

「じゃ、いいです。ありがとうございました」

瀬名はがっかりして店を出ようとした。

しかしそこで見かけたことのある人影と対面した。


「おーーあんたじゃないか。久しぶりだね」

血のような赤毛。金色の瞳。少し変わった外見の女性は瀬名にそう声かけた。

「日置さんじゃないですか!」

瀬名は日置がシステム屋であることを知っていた。

「日置さん、相談にのってほしいことがあるんです。実は…」

いいところに出会えたと思い、瀬名はつい相談してしまった。
血が画面上部から流れてきたこと。
真っ赤になり、パソコンが動かなくなること。

「…おかしいね、そりゃ。ちいとあたしにも手伝わせておくれな?
 まずはウイルスかどうか確認する必要があるね」

ウイルス…!
瀬名は先入観で呪いか何かだと思っていたが、
まずは単純にウイルスである可能性が高いのだ。

「クラッシュの前に何かおかしなリンク先・メールを開かなかったかい?」

日置は瀬名にそう尋ねたが、

「…ごめんなさい。ゴーストネットOFFの掲示板のカキコ以外にも
 いろいろ見たんだけど、よく覚えてないんです」

と、頼りない返事が返ってきた。
確かに瀬名はそれほど頭脳派で何でも覚えてるタイプではない。
中学生という年齢もあって、まだまだそういうことに関しては頼りないのだ。

「一つだけ言えるのは、メールではないってこったな。
 ネットカフェでメールボックスを開く事なんてないだろう」

「あ…それはそんなことないですよ。あたし、フリーメールのボックスを開きました」

「何だって!?」

これでますます原因がわからなくなってしまった。
日置は考えた。どうすればこの状況を打破できるか。

「そうだ。あたしのスタンドアロン型のテスト用PCを使って
 同じ現象が出るか再現してみようかね。
 何も無ければまた別の方法を探して、
 血が流れれば大方の目星は付くさな」

そういうことで、日置はテスト用のパソコンを用意し、瀬名にその時と同じように
作業をした。

「何もなかったですね」

「とりあえず電源を消して、もう一度つけてみておくれ」

一通り作業を済ませて電源を入れた。


すると画面の上部から血が流れてきた。

「あ!これです。あたしが見たのは」

「これが例のウイルスかい」

やがてそのパソコンは画面が真っ赤になって使えなくなってしまった。

「これはウイルスに何か呪物が仕掛けてあるのかもしれないね?
 そういうのは詳しい人に聞いておこうさね。それからどうすれば無効化できるかもな」


そうやって呪物に詳しい者に調べてもらうことにした。
その者はとある路地を入ったところに占いの店を構えていた。
日置はその者に壊れたパソコンを見てもらった。

「うーん。これは呪いの類ではないですねぇ」

怪談好きの瀬名はそれを聞いて少しがっかりした。

「けどねぇ…なんか感じるんですよ。こう、怨念みたいなのがね」

「怨念!?」

瀬名と日置は同時に声を出した。

「こりゃ放っておけないね
 無効化する方法が分かれば、アンチウィルスソフトを作って流す…
 と同時に、発信元を辿ってみよう。ハッキングは得意じゃないんだが…
 ハッキングツールを使えば何とかなるか?」

日置はそう思い立って、無効化する方法を探ってみた。
呪いの類ではなく、ただのウイルスであるなら、
日置にとって無効化する方法を探る事も、アンチウイルスソフトを作る事も
不可能ではなかった。

作業は長期間に渡った。
しかし、なんとか無効化する方法を突き止めることができたのだ。
そして、その情報を元にアンチウイルスソフトを作成していった。

「やーっとできたよ!」

無効化する方法を知るのに時間はかかったものの、
それほど複雑なウイルスのプログラムではなかったため、
簡単にアンチウイルスソフトを作る事ができた。

「あとはハッキングだね。うまくいくといいけど」

そう言い出すと、日置はハッキングツールを使い、
キーボードをカタカタと鳴らし始めた。
最後にEnterキーを押すと、相手のパソコンの中身が表示された。

「日置さんやった!」

瀬名はハッキングが成功したことに思わず喜んでしまった。

「さて、何が出てくるかな?」

日置はマウスを動かし、どんなファイルがあるか探ってみた。
するとそこで発見した「日記」と書かれたファイルが気になったのだ。

「瀬名。これクリックしてみるよ」

日置は「日記」と書かれたファイルを開いてみた。
そこにはこう書かれていた。


私はインターネットでブログを書いていた。
私は現実世界で友達がいなかったから、友達が欲しかっただけなのだ。
なのに次々と書き込まれるのは誹謗中傷の嵐であった。
彼らは匿名掲示板で私の悪口を書くだけでは飽き足らず、
私のブログにも悪口を書き出したのだ。
私はそんなに悪いことを書いていたのだろうか?
匿名で汚い言葉を吐く連中が憎たらしい。
いっそのこと私がウイルスを作り出し、
匿名掲示板を使っている連中にウイルスを感染させてやる。
そして誰にも相手にされない私は、
首を吊って死んでやる。


「あーあたしが時々、その匿名掲示板を利用してるから感染したのかも」
 だってそこは誹謗中傷であふれてるところだから」

それを聞いた日置は手を置いて、

「雫はそんなところ見るのかい?あたしにはよくわかんない行動だねぇ」

と言いながら、いつの間にか日置は誹謗中傷のある掲示板を眺めていた。
あふれてる誹謗、中傷の嵐。

「匿名による誹謗中傷か…。ネット社会の病んでいる部分だねぇ」

日置はそう言い残して、パソコンの電源を落とした。




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【4412 / 日置・紗生 / 女 / 37歳 / システム屋】


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■         ライター通信          ■
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初めてのご依頼だったため、慣れていない部分もあるかと思いますが、
お客様の納得のいく出来になっていればいいなと思います。
ご依頼、ありがとうございました。