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<東京怪談・PCゲームノベル>


子供になった翁のお話。


 気がつけば、公園で倒れていた。
「うわ、なんだ? この姿わ!?」
 裏返る声。
 別に酔っ払って、ぶっ倒れたわけでもないし、そうそう倒れるわけではない。
「む、原因が分からないし、此処はどこだ?」
 彼はキョロキョロ辺りを見る。
 大鎌の・翁。本当は、大鎌のアーティファクトだが、こうして一時だけは人型になる素体を手に入れていた。が、何か様子が違う。
 先ず、視点、視界。伏せで物を見ている感じだった。
 あと、体が何となく軽い。
 自分の体を見る。
「なんということじゃ……。」
 推定年齢で5歳ぐらいの幼児になっていたのであった。着ている着物はもう泥だらけ。しかも大人の物だから着物に埋もれている状態だ。
「コレでは不味い。一刻を争うかもしれぬ。」
 翁は、着物を引きずりながらこの公園をでようとした。
 しかし着物が重いために上手く動けない。何度もこける。
 不思議なことにこの公園は誰もいなかった。それだけが幸いか、不幸か?
「こまったものじゃ。」
 と、一つのベンチを見つけた。
「あ、これは、茜と義明が……。」
 宿主の記憶を蘇らせる。
 長谷神社の近くにある公園だ。
「急ごう。うお!」
 走ろうとしてまたこけた。


 なんとか、長谷神社の境内までたどり着くも、着物はもうすり切れて、また彼もかなりの怪我を負っていた。
「た。たどりついた……。」
「? だれ? キミ?」
 庭の掃除をしているのは長谷茜。
 近づいて、座る。
「迷子? もしかして虐待で逃げてきた? 名前は?」
 と、心配そうに尋ねてくる。
「いや、全然違うぞい。翁じゃ。」
 と、むすっとして答えた。
「……だましたのね? 全く冗談にもならない。」
 巫女さんは子供をジト目で見る。
「まて、そんな馬鹿なことでだますか。」
「あんたが、秘術の研究するような性格でもないしねぇ。静香――。大変――。」
 ため息混じりに茜は契約している精霊を呼ぶのであった。
「どうしましたか? 茜……。 お、翁様!」
 ふわふわと飛んできた綺麗な精霊、静香は、翁の悲惨な姿を見て、驚きを隠せなかった。

 自宅の縁側で、3人が腰をかけている。とりあえず、和菓子にお茶。
 温かいお茶のはいった湯飲みを両手に持って、翁は事情を説明するのだが、
「いつ、どこで何がどうなってと言うことが儂にも見当がつかないし、気がつけばこういう状態なのじゃ。静香と茜に助けてもらいたいのじゃがのう、原因が全く分からない以上、無理か?」
「流石にねぇ。過去視で、原因の究明は可能だけど、常人だと狂気に陥っちゃう。」
 茜はため息をついた。
「なぜ? あ、そうか。」
 そう、過去視で原因を調べようとすると、状況に依って、見なくてよい物まで見えてしまう。宇宙の真実までみたり、彼方の果てまでみたり、しかも、翁は“世界樹の末端の人格”普通に彼の過去をのぞき込むと発狂確定だ。規模は違え、帰昔線の世界樹と同じような物である。時間系占術を使える茜は、危険は侵したくないのだ。
「この姿のままで、本体の鎌に帰れない。すまぬが、一日だけでも良い、泊めてくれぬか?」
「翁様がおこまりでしたらそう計らいますが。茜は良いの?」
 静香が悲しそうに茜を見る。
 茜は、翁の子供の姿を見て、何か考えているが、
「エロじじぃだけど、困っていちゃ仕方ないからね。いいよ。」
 茜はため息をついて言った。
「すまぬの。」
 しかし、茜は難しい顔をして、
「でも、汚いので、お風呂入らないと。泊められない。」
「な、何!? わ、わいしゃ風呂が嫌いじゃ!」
「だめー! 郷に入れば何とやら! 絶対に入れる!」
「いやじゃー! と、まった。お主らのどっちかが一緒に入ってくれれば、入っても良いぞ。」
 つまり、裸の付き合いをしろと翁は言うが、
「いいよ、んじゃ決定。」
「わたくしも戴きましょうか。」
「え゛?」
 あっさり承認。
 しかもダブル。
「はい、一緒に入りましょうねぇ。ボク」
 と、茜は翁を抱える。
「ま、まてー、わしはわしはー!」
 翁は抵抗しても鍛えている茜の腕力には勝てない。
 儂は人格はあっても所詮は植物なのか、恥じらいとかその辺はないのか!? とかいろいろ屁理屈を言いたかったが、茜は笑いながら、はいはい、ボクはおませさんだねー。と、子供扱いする。実は翁はこういう事になると緊張するのかもしれない。


 そして、脱衣所。そこには女性2人に男の子1人。
 茜と静香の2人は、着物の帯を緩め、恥じらいもなく、着物を脱いでいく。その布が肌のすれる音が、翁には天国と地獄の境目にいるような、複雑な物だった。ちなみに翁は隅っこで、彼女たちの服を脱ぐ姿を見ないでいる。
「ボクー、何照れてんのー?」
 茜がにやりと笑っていた。
「な、なにも照れて! ftgyふj!」
 思わず振り返って言い返すところに、裸の女性が2人が目に入る。意外にウブな翁は硬直してしまった。 鍛えられてもその筋肉質さには見えない女性的な体つき、健康的な茜と、滅多に見ることもなかった、静香の幻想的な美しさ。
「思念対の端末が、恥ずかしがらないの。」
「うわ、なにする、やめろー!」
 茜はまだ着物を着ていた翁を脱がす。
 実のところ、裸を見られたくないほうが強かったかもしれない。
「はい、ボク、あたまからどばーっと。」
「うぎゃほげむっぎょ。」
 打ち湯をして、思いっきり洗われる翁。もう抵抗もできない。
 シャンプーされて、体も現れ泡だくになる。
「茜の方が、上手ですからね。」
 静香は、湯船に浸かり、本当にリラックスしていた。
「まあねぇ。まだ小さいときはよしちゃんと入っていたけどねぇ。あのときを思い出すなぁ。」
 茜は、翁の背中を洗っていた。
「私が代わりましょう。」
「ウンお願い。」
「おい、まて、静香!」
「これぐらいさせてくださいな。」
 静香は少し悪戯っぽく笑っていた。
 その笑顔反則です。とか、翁は思った。
 一緒に湯船に浸かってもう子供扱いされて、さんざんな翁であったが、更に恐ろしいことが一つ。
 女物のパジャマを着せられたのである。
「男物はないのよねー。でもかわいいねー。」
 茜はここぞとばかりに、彼で遊んでいた。
 男子物のパンツなどは、あの幼なじみがさっくり買ってきてくれそうである。しかし、茜は普通の子供用の服は隠している。茜、何という外道。
「……。」
「はいはい、拗ねないのよボク〜?」
「な、す、すねてない!」
 顔まで真っ赤な翁。
 色々恥ずかしい思いをしたのであるわけで、子供っぽいったらありはしない。
「翁様、ごめんなさいね。」
 既に綺麗に着替えた、静香が彼を抱きしめた。
 彼の頭が胸にうずくまるように。
「お、おい、し、静香。」
「昔はこうして茜や、平八郎、義明様を抱いていたことがあります。懐かしい。」
「……。」
 茜は、二人っきりにするためにゆっくりとその場を去っていく。
 そして、静香は翁を膝枕して、頭を撫でる。心地よいシャンプーの香り。そしてほのかに静香の香りがする。
「儂は元に戻るのかのう?」
 膝枕をされた翁は、静香に訊いた。
「分かりません。しかし、何か原因はあるはずです。いまは考えずにお休みなさいませ。」
「……ああ、そうさせて……。」
 翁は、ゆっくりと眠りについた。


 春の風が、木々を優しく撫でていた。

END

■登場人物■
【6877 大鎌の・翁 999 男 世界樹の意識】

【NPC 長谷・茜】
【NPC 静香】
【義明やら平八郎やら(名前だけでてきた)】

■ライター通信■
こんばんは、滝照直樹です。
 はい、ご希望に添えて、静香と茜と一緒に入浴シーンでございます。翁さんが恥ずかしがり屋さん(ただの風呂嫌いは、風呂自体以外に何かあるのではと推測)と言うことは、私としては予想外でしたが。いかがでしたでしょうか?
 なにか、まだ続くそうですがどうなるのでしょう?

 では、またどこかで。

滝照直樹
20070423