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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


ローズヒップ・ダンス

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0.オープニング

「うっわぁ!すっごい!大っきい〜〜!!」
ピョンピョンと飛び跳ね、興奮する萌。
俺は腰元から銃を取り、構えて思う。
花と言えど…ここまでデカいと、不気味でしかないな。

異界の外れにある、植物研究所。
そこで事件発生。
花が、巨大化して研究所員達を襲っている。
被害者は既に二十人を越えた。
幸い、死者は出ていないものの。
このままでは、研究所が滅茶苦茶になる。
そこで、駆り出されたのが、俺と萌。
さっさと始末しちまおう。
俺達は不気味に蠢く巨大な花を前に、
あと一人、奴の到着を待つ。

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1.

「いったぁぁぁい!!んもぉー!!」
上空から降り注ぐ、薔薇の棘。
それを額にくらい、ご立腹の萌と。
「…うるさい」
その隣で冷静なディテクター。
私は微笑しつつ二人に歩み寄り言う。
「頑張ってるな」
目が合う、私とディテクター。
ディテクターは、すぐさま標的に視線を戻し発砲を再開。
呼ばれて来てやったんだ。一言くらい、何か言え。まったく。無愛想な男よ。
「おっそい!冥月、おっそい!!」
私に駆け寄り、喚き立てる萌。
萌の頭を片手で押さえつつ笑う私。
「何笑ってんのっ!手伝ってよぉ!」
額だけじゃない。
腕や足にも、薔薇の棘が掠めた痕。
まるで、やんちゃ盛りの少年のような姿。
「威勢が良いのは結構だが、戦闘中に敵に背を向けるのは論外だな」
私が言うと、萌はハッと気付き、パッと振り返る。
目前に迫る無数の薔薇の棘。
「うわっ」
慌てて防御体制を取る萌。
遅い。手遅れだ。
私はクッと笑い、左手から影を解放すると、
それを鞭の形に変え、萌に迫る薔薇の棘を一つ残らず叩き落とす。
「あ…ありがと」
頬を掻きつつ言う萌。
私は萌の額を指でピン、と弾き。
「感謝しろよ。発展途上娘」
そう言って、標的に向かって駆け出す。

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2.

やけに強い薔薇の香りにムッと眉を寄せる私。
薔薇は好きだが、香りが強すぎると不快だ。
どうやら、奴が降り舞わせている花粉が原因のようだな。
私はスッと影を伸ばし、ひとまず花粉の舞を封じる。
これだけ香りがキツイと、酔ってしまう。
そうなっては、迅速な解決が難しい。
私は棘を飛ばしつつ蠢く薔薇を見上げ、思う。
…しかし、ここまで大きいとアレだな。
見た目、ラフレシアより卑猥で不気味だ。
早く片付けてしまおう。


さて。どうするべきか。
実際、一瞬でカタは付く。
影刃で全てを切り裂き、花弁を落としてしまえば良い。
だが、それだと、ちょっとな。
奴等が楽を…じゃなくて。奴等の仕事を奪ってしまう事になるからな。
よし…。全力で。今日は全力で、支援役に回ろう。
私は影刃を這わせ、無数の棘を全てこそぎ落とし、
周囲に残り待っている花粉を影内に吸い込み。
鞭のようにうねる茎は、周囲から伸ばした影で固く縛り動きを封印。
「ナイス!冥月、ナイスー!」
嬉しそうにはしゃぎつつ、花弁を蹴り落とす萌と、
満足気な表情で花弁を撃ち落とすディテクター。
少し、支援し過ぎたか。二人は容易に花弁を次々と落としていく。


「あと一枚っ!私が落とすよー!」
残り一枚になった花弁を見上げ、楽しそうに言う萌。
ディテクターは相手にせず、スッと銃口を花弁に向ける。
「あっ!こらっ!ちょっと待てっ!トドメは私が差すんだー!」
ディテクターの銃を押さえ、ブーブーと文句を言う萌。
二人の馬鹿馬鹿しい遣り取りに苦笑しつつ、
私はヒュッと影刃を放つ。花弁へ。
スパン―
「あぁぁぁぁぁぁ…!!!」
「………」
見事に両断された花弁を見て、二人は怒りを露わにした。

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3.

「…お前なら、一瞬で倒せただろう」
煙草をふかしつつ言うディテクター。
私は、地に落ちた巨大な薔薇の花弁をグリッと踏みつけてニヤリと笑う。
「冥月のバカぁぁぁ!美味しいトコだけ持ってくなんて反則だよぉ!」
余程トドメを差したかったのか、萌はポカポカと私の背中を叩く。
「あぁ、もう。うるさい」
私は苦笑しつつ、影に吸い込んだ花粉を少量手に取り、萌に浴びせる。
「うっ…わ…」
ドタッ―
フラリと立ち眩み、その場に座り込む萌。
私とディテクターは、その姿にケラケラ笑う。
「バカぁ!二人ともバカぁ!笑うなっ!」


携帯を開き、時刻を確認。
…そろそろ、向かわねば間に合わぬな。
いや、別に待たせる事に罪悪感なんぞないが。
文句を言われると、ちょっとムカッとくるからな。
「じゃあ、私は、この辺で。後始末は任せたからな」
そう言って手をヒラリと振り、その場を去ろうとすると。
研究所の所員達が、一斉にそれを阻む。
「いや、是非お礼をさせて下さい」
「お茶を飲んでいかれませんか」
「貴女のような美しい方に、是非飲んで頂きたい」
口々に言う所員。
ムッと眉を寄せつつも話を聞けば、
どうやらこの研究所、名前こそ植物研究所などと大それてはいるが、
実際の所、あらゆる茶葉を収穫する為の施設らしい。
ニコニコと微笑みながら茶葉を差し出す所員。
それは、ローズヒップティ。
私は苦笑し「馬鹿か。お前等は」そう言って、
影内から自慢の中国茶を取り出す。
テーブルに置く、少々ザラついた黒い茶壷と茶呑。
茶壷から注がれる湯で、茶呑の中で乾実が踊る。
「わぁ…良い香り〜…」
ユラユラと茶呑の中で揺れる乾実を目で追いつつ、香りに酔いしれる萌。
私はクスクス笑いつつ、その場にいる奴等に、いれた茶を差し出し言う。
「姫花茶だ」
茶を受け取った連中は、揃って香りと味に酔いしれ、
皆、フゥと息を漏らす。
ほんの数十分前まで、危機的な状況だったというのに。
何だ。この優雅な雰囲気は。
茶を喉に落としつつ、フッと微笑む私。
そんな私に、聞こえるか否か程の小さな声で。
ディテクターが呟いた。
「…水仙、か?」
私は、少し驚き、ディテクターの隣に腰を降ろして言う。
「そうだ。よくわかったな」
「…わかるだろ。この位」
「味もそうだが、匂いが良いだろう?」
「…あぁ。良いな。纏わりつかない、この花の香りが」
「ふふ。どこぞの馬鹿と違い、情緒を理解ってくれて嬉しいよ」
苦笑しつつ言う私に。
「どこぞの馬鹿って、だ〜れ〜??」
ヒョコッと近くに突然現れて言う萌。
私は萌の額をピンと弾き、目を伏せて、返す。
「さぁ。誰だろうな」

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / ディテクター / ♂ / 30歳 / IO2エージェント

NPC / 茂枝・萌 (しげえだ・もえ) / ♀ / 14歳 / IO2エージェント NINJA


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。よろしければ また お願い致します^^

2007/05/10 椎葉 あずま