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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


ローズヒップ・ダンス

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0.オープニング

「うっわぁ!すっごい!大っきい〜〜!!」
ピョンピョンと飛び跳ね、興奮する萌。
俺は腰元から銃を取り、構えて思う。
花と言えど…ここまでデカいと、不気味でしかないな。

異界の外れにある、植物研究所。
そこで事件発生。
花が、巨大化して研究所員達を襲っている。
被害者は既に二十人を越えた。
幸い、死者は出ていないものの。
このままでは、研究所が滅茶苦茶になる。
そこで、駆り出されたのが、俺と萌。
さっさと始末しちまおう。
俺達は不気味に蠢く巨大な花を前に、
あと一人、奴の到着を待つ。

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1.

シャワーから上がり、寝酒でも少し…と思った矢先、鳴り響く携帯。
ディスプレイには”萌ちゃん”の表示。
うーん…これは…。
私は頬を掻きつつ電話を取る。
ピッ―
「はいはい?」
『あっ、シュラインさん。すみません、夜分遅くに』
早口で言う萌ちゃん。…銃声が聞こえる。
探偵さんも一緒なのね。私はクスリと笑い返す。
「いえいえ。どうしたの?」
『えぇと…時間ないので、簡潔に言います』
「うん」
『巨大薔薇の討伐、協力して下さい〜!』
巨大薔薇…の討伐。こんな夜中に御苦労様ねぇ。
でも、何で私なのかしら?ムゥ、と眉を寄せる私。
ん…まぁ、いっか。
聞こえる銃声から察するに、のんびりしていられないっぽいし。
「どんな状況なの?」
『えっとですね…』
私の問いに、萌ちゃんはわかりやすく簡潔にまとめて答える。
ふむふむ、なるほど。
私は着替えを済ませつつ、研究所の無事な所員さんと直接話し、
標的の大きさや特殊能力、その他諸々の情報を聞き、最後に、
”液体窒素”が研究所にあるかを確認。
所員さんは弱々しい声で「一応、あります」と答えた。
まぁ、当然よね。植物研究所ですもの。
ない方がおかしいわ。

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2.

ガラガラガラガラ―
台車を押しつつ現場に向かう私。
目のあたりにする巨大な薔薇に、自然と苦笑が漏れる。
「これはまた…凄いわねぇ」
ポツポツと呟きながら、台車から液体窒素を下ろす私。
…足りるかな、これで。
「シュラインさーん!早かったですねー!」
パタパタと駆け寄ってくる萌ちゃん。
萌ちゃんの体には、無数の傷跡。
私は、しょんぼりしつつ萌ちゃんの頭にポフッと手を置く。
職業柄、仕方ない事だとは思うけれど。
やっぱり、嫌なものよ。
女の子が傷だらけになってるのって。
「これ、何ですか?」
キョトンとする萌ちゃん。
私はホースを持ち、答える。
「液体窒素よ」
はて?と首を傾げる萌ちゃん。
「ちまちまと凍らせていこうと思うの。花弁を落とし易いように」
「ああ!なるほどっ!えっと…じゃあ…」
「うん。二人は、いつも通りでOKよ。隙を見て狙うから」
「了解ですっ!」
可愛らしく敬礼をして、再び薔薇に向かって駆けて行く萌ちゃん。
萌ちゃんは探偵さんとすれ違い様に、身振り手振りを交えて何かを伝える。
発砲を一旦止め、こちらを見やる探偵さん。
私はヒラヒラと手を振り、こんばんはの挨拶と任せての意志を同時に伝える。
僅かに頷き、発砲を再開する探偵さん。
よぅし…やりますか。


狙う位置は、動く茎の付根や花柄。
それと、辺りを舞って軽い眩暈を引き起こす厄介な花粉を封じる為に、おしべにも。
萌ちゃんと探偵さんが花から離れ、
距離を保っている、数十秒の間を狙い。
私は窒素を噴霧。
ジワリ、ジワリと凍っていく薔薇の花。
動きが鈍くなっていくのが、ハッキリと見て取れる。
二人もそれを承知。
タン―
探偵さんの銃弾が。
パリン―
花弁を見事に割り落とし。
ドカッ―
萌ちゃんの蹴りが。
パリン―
花弁を見事に割り落とし。
残る花弁は、あと一枚。
どうやら、そこが核のようで。
「あぁ〜もぉっ!」
何度萌ちゃんが蹴りを入れても、落ちず。
「…ちっ」
何度探偵さんが撃ち込んでも、落ちず。
うぅん。しぶといわね。
ムゥッと眉を寄せつつ窒素噴霧を続ける私。
シュゥ…―
「あら…」
そこで費える、窒素。
何てタイミングかしら。
ホースを放り、苦笑する私。
そんな私に向けられる、二人の熱い眼差し。
わかってるわよ。もう、十分よね。
二人がくらわせたダメージで、僅かにヒビが入ってる。
もう、一息よ。
私はスッと目を伏せ、両耳に手をあてがって。
歌うように放つ。超音波を。
あぁ…とても切ない気持ち。
元々、こんな風に終わる花じゃなかったでしょうに。
見事に咲き誇り過ぎてしまったわね。
とても、とても鮮やかな紅なだけに。
とても、とても残念よ。
パキン―

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3.

「ふぅ…」
溜息を漏らし、その場に座り込む私。
「お疲れさまぁー!」
パタパタと駆け寄り、私に抱きつく萌ちゃん。
萌ちゃんは、ありがとう、助かった等々、感謝の言葉を並べる。
私は萌ちゃんの背中をポンポンと叩きつつ微笑む。
フッと顔を上げると、そこには、私を見下ろす探偵さん。
あなたも、感謝の言葉をくれるの?
悪戯に微笑み首を傾げる私。
すると探偵さんは、まだ僅かに濡れている私の髪を摘むように撫で、ポツリと言った。
「…風邪、ひくなよ」


事件を解決した私達は、研究所の所長さんに誘われて、お茶をする事に。
出されたのは、上質なローズヒップティ。
とっても綺麗な色と、良い香り。
話を聞けば、茶葉にする為に、あの薔薇を育てていたらしく。
だけど、入りたての新人所員が肥料を間違えた事で、
薔薇がガバーッと巨大化してしまったとの事。
うーん。その肥料の成分が、ちょっと気になる所だけど…。
私はクスクス笑いつつ、美味なローズヒップティに酔いしれる。
あぁ、そうだ。
落ちた薔薇の花弁の残骸。
もし、害がないようなら、少し持って帰りたいな。
乾燥させて匂袋にしたりとか。素敵じゃない?
武彦さんと零ちゃんにも、このローズヒップティ、飲ませてあげたいし。
だって、こんなに美味しいんですもの。
一人だけ味わうなんて、勿体ないわ。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / ディテクター / ♂ / 30歳 / IO2エージェント

NPC / 茂枝・萌 (しげえだ・もえ) / ♀ / 14歳 / IO2エージェント NINJA


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。よろしければ また お願い致します^^

2007/05/2 椎葉 あずま