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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ダウン・メロウ

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0.オープニング

いつも無意識に口へ運ぶ二つ。
煙草とコーヒー。
美味い、と思う気持ちがあるから。
もう、何年も。繰り返してきた。
だけど。
「いれさせておいて悪いけど…やっぱ、いらねぇ」
ベット横の棚に置かれた温かいコーヒー。
鼻をくすぐる、豆の香りが。
とても。そう、今は、とても不快で。
その隣にある灰皿には、ほんの少しだけ吸った煙草が数本。
ユラリと昇る、白い煙が。
とても。そう、今は、とても不快で。
欠かさず摂取し、依存してきたのに。
摂らないと、イラつくのは、理解っているのに。
どうして、こんなにも…。
「寝た方が良いですよ」
不安そうな表情で俺を見やり、コーヒーを片付ける零。

あぁ、もう。何だって…こんな小春日和に。
風邪なんて、ひいちまうかな。俺って奴は。

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1.

仕事の報告。
別に義務じゃねぇけど、一応な。
草間さんに回してもらった仕事だし。
ちゃんと、こなしましたよーって報告すんのは当然と思うワケだ。
しかし、アレだよなぁ。あの人って、ほんっと底なしのお人よしだよな。
自分だって生活シンドいだろうに、他人に仕事回してやるんだもんな。
まぁ、そういうトコが、あの人の魅力なんだろうな。
絶えず、人が寄ってくる…みてぇな。


ガチャッ―
鍵のかかっていない無用心な事務所。
ったく…ほんと、危ねぇなぁ。
女の子が居るんだから、もっと用心しねぇと。
俺は事務所にドカドカと入ると、脇目も振らずリビングへ。
…あれ。誰もいねぇ。おっかしいな。二階かな?
俺は頭を掻きつつ二階へ。

二階、草間さんの部屋の前で俺はピタリと足を止める。
部屋の中からボソボソと声が聞こえる。何やってんだ?
俺はバタンと扉を開き、よっ!と挨拶をして………呆気に取られる。
「あれ…浩介さん。こんにちは。いらっしゃいませ」
微笑んで言う零ちゃん。
俺はソロリと歩み寄り、ベッドでグッタリしている草間さんを確認すると、ボソリと言葉を漏らす。
「草間さんが、風邪ひいてる……」
俺の言葉に零ちゃんはクスッと笑って言う。
「やだ。ツチノコが昼寝してる…みたいな言い方」
いやいや、だって。かなりレアだろ。この状況。
あの草間さんがだよ?
グ〜ッタリしてんだよ?
レアだって。超レア。
ほへ〜っと草間さんの顔を見やっていると、
零ちゃんは身支度を整えながら俺に問う。
「あの、浩介さん。これから、何か用事とかありますか?」
「へ?俺?いや、何もないよ」
「じゃあ、少しの間、看病お任せして良いですか?」
「え?俺が?」
「はい。私、この書類を届けてこないといけないので…」
「あー。なるほど。わかった。いいよ」
「ありがとうございます。なるべく早く戻りますので」
「いってらっしゃい」
ペコリと頭を下げて部屋を出て行く零ちゃん。
…看病か。
これまたレアな事態になったなぁ。俺はケラケラと笑う。

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2.

…看病っつってもな。実際、どーすりゃいいんだろ。
とりあえず、タオルでも取り替えてみっかな。
そう思い、額の上のタオルに手をかけた時。
「…腹」
草間さんがフッと目を開けて呟く。
「…ハラ?」
首を傾げる俺。
「…美味い粥が食いたい」
あ。なるほど。ハラ減ったって事か。
って、美味いお粥?
…それ、俺に言ってんスか。草間さん。
作れるワケねーじゃんか。とりあえず、コンビニ行って…。
財布を取り出し、所持金を確認する俺。
その間、草間さんは俺の服の裾をずっと握ったまま、
「お粥、お粥」と呟き連呼。
あぁ…はいはい。わかったわかった。わかったから。うるさいッスよ。
もう、アレですか。妖怪、お粥男って呼んで良いッスか。
…つまんね。我ながら、つまんね。何だ今の。
えーと、お粥か。どうやって作んだっけ。えーと…。

うん。出来た。確かに、紛れもなく。これは、お粥だ。
両手鍋一杯の、お粥だ。
…やべぇって。作り過ぎだって。
零ちゃんに怒られるよ…あぁぁぁ…。
不安は拭えぬものの、出来上がったお粥を草間さんはモリモリ食って。
「美味い…」
と何度も呟いた。
…何だろな。嬉しいモンだな。こう、褒められると。
女の気持ちがわかったような気がするよ。うん。


「草間さん、食ったらコレ…」
棚の上にあった粉薬を手に取り俺が言うと、
草間さんはモソリと布団を被ってしまう。
いやいや。薬飲んでおかねーと駄目じゃんよ。
「草間さん」
布団を剥がそうとする俺。
…剥げねぇぇぇぇ。
本当に病人なのか、あんたはぁぁぁ。
草間さんは、中で布団をグッと押さえつつボソリと言う。
「苦ぇんだよ…それ…」
一瞬呆け、愕然とする俺。
草間さん…あんた、一体何歳だ。
ガキじゃねーんだから…。
「鼻つまんで一気にいきゃあ楽勝ッスよ。気合気合」
ペシペシと布団を叩きつつ言う俺。
けれど布団の中から返ってくるのは。
「やだ。苦ぇ。それ、苦ぇ」
そればっか。あぁ、もう…わかったわかった。わかったから。
ゼリー状のオブラートね。それを買って来いって事ね。
ピンクの…可愛いクマさんがついたチューブのアレね。
あぁ…みっともねぇ。草間さん…。
今日のあんた、格好悪ィよ。
ハードボイルド、とか…ちゃんちゃら可笑しいよ。はぁ…。

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3.

イチゴ味のゼリー状オブラートに包まれた薬を飲み、
唸りつつ目を伏せている草間さん。
はぁ、やっと飲んだよ。
なんぼ苦戦さすんだ、あんたは。
ビミョーに汗かいちまったっつーの…。
タオルが温くなっている事にふと気付き、
再び替えてやろうとタオルに手を伸ばす俺。
すると草間さんは、グッと俺の手首を掴む。
「何スか。もう、薬は済みましたよ」
苦笑しつつ言う俺。
草間さんは掴んだまま手を離さず、トロンとした目で俺を見つめる。
ちょっと…草間さん…?
あの…ねぇ。痛いんスけど…。
ねぇ。イテテテテテ…。
痛みに顔を歪める俺。
すると、草間さんはポツリと呟いた。
「…好きだ。お前の事が…凄く…」
俺はハハハハハハハと乾いた笑みを浮かべ、返す。
「草間さん…俺もです…なんつって」
ハァ、と漏れる大きな溜息。
それに重なるように。
「…ぐぉ〜〜〜」
部屋に響き渡る草間さんの鼾。
…爆睡ですか。そうですか。
また、随分と唐突に寝るなぁ。
まぁ、いいや。はぁ…やっと寝たよ…。
何か、物凄く疲れた。喉渇いた。
飲み物でも買って来るかな…。
スッと立ち上がり、振り返る俺。
すると、そこには零ちゃんが。
「あれ。いつの間に…。おかえり」
頭を掻きつつ言う俺。
零ちゃんは目を泳がせつつ、頬を赤らめている。
………。
………。
………。
ちょ、ちょっと待ったぁぁぁ。
「零ちゃん?さっきの聞いて…いやいやいやいや!違うから!誤解だから!冗談だからぁぁぁぁ!!」

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

6725 / 氷室・浩介 (ひむろ・こうすけ) / ♂ / 20歳 / 何でも屋

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀ / --歳 / 草間興信所の探偵見習い


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           ライター通信          
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こんにちは。はじめまして!発注ありがとうございます!
いやぁ…お待ちしておりました。男性PCさんの参加!(笑)
浩介くんのようなヤンチャな青年、大好物…いや、大好きですので(笑)
とっても楽しく紡がせて頂きました。ありがとうございます^^

気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/05/2 椎葉 あずま