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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


加登岬の遺産 導入編 零とそっくりさん

 草間零は備品や夕食の買い出しを終えて帰宅しているところであった。
 彼女が、角にさしかかるときに、目の前からいきなり人が現れた。
 お互い止まるタイミングを失ってぶつかって、お互い餅をついてしまった。
「いたた。大丈夫? ごめ……、」
「いたた、ごめんなさい。だい……、」
 零がぶつかった人に謝る。相手も同時に謝ろうとしたが、お互い目を丸くしていた。
「あ……。」
 鏡で自分を見るように、目の前に“自分”がいたのだった。
 思わず、その場でパントマイムのような仕草をしてしまう。
 そっくりさんも驚いている。
「居たぞ!」
「ああ! 逃げなきゃ! こっち!」
 と、そっくりさんが起きあがって、零と一緒に逃げ始めた。
「え? え? えええ?」
 混乱する零。
 
 路地裏に隠れ、謎の追っ手を捲いたのち、少女と零は顔を見比べていた。
「似ている……。」
 ユニゾンするが声も同じ。
 違いは服。
 首は隠されている。
 こんな事があっても良いのだろうか?
「あ! お、お願い! わ、私を、た、助けて!」
「は?」
 そっくりさんが言うのだった。

 草間興信所にて。
「ただいま、お兄さん。」
「帰ってきたか……れ……?」
 草間は新聞越しから零を見て、驚いた。
 くわえていた煙草を落とす。その煙草は床を転がっていくが、拾える距離で止まった。
「……。」
 急いで拾うことすらも出来ない草間。
 服装は違うが、零と全く似ている少女を。
 首についている“印”を隠せば完璧だ。
 そっくりさんはゴスロリで、首を隠している服装である。
「詳しいことをお話ししますね。えっと、彼女、お金持ちのお嬢さんなのですけど、実は色々込み入ったことがあって、身を隠したいそうなんです」
「ほう。で、零と入れ替わって、事件を解決しろという事か?」
 と、草間は長年探偵をしているため、先が読める。
 零とそっくりさんは頷いた。
 ――零なら、まあ、力などは問題ないだろうが、お嬢様知識はないぞ? だいたいは頭の中は戦前の兵士なんだからなぁ。
 そこを何とかするのが所長の腕だ。人脈で何とかするのだ。

 そっくりさんは、深々とお辞儀をした。
「おねがい! 私を助けてください!」
 この事務所で草間を冷やかすためにたむろしているか、何らかの仕事の助っ人で来ているあなたは草間を見た。
「これは仕事の話になるな。報酬はいくら出すんだ?」
「500万出します。私の命もかかっていますので。……ある、大事な人も探し出してください。」
「良し。分かった。何とかしよう。詳しく教えてくれ」
 草間、即答。

 彼女は今の生活に嫌気がさしていることもあるが、何より親族で醜い争いが始まったそうだ。
 つまり遺産相続で、祖父の死後全財産が自分に入るという遺書が出たこと。それを不服として、彼女を亡き者にしようとする親族。
 または、おこぼれに預かろうとする者。
 追いかけてきた護衛も信用できない。
 唯一信用できるのは、祖父の死直前に行方不明になってしまった従兄だというのだ。何か関わりがあるのかも知れない。

「此処で零として変装し、零は一族の所であんたの身代わりか。よし。あんたの護衛を引き受けよう。」
 草間は胸から煙草を取り出し、紫煙を上げた。

 ――落とされた煙草は煙を上げながら、存在を主張していた。

 かくして、大事件に巻き込まれることとなったのである。


■遺書の内容
遺産についての概要は以下の通り。
 遺書の抜粋
 1.遺産の45%は、加登岬澪に譲る。40%は桑波篤志に残りの5%は信頼の置ける支援団体に寄付する。残りを家族に分割するものとする。
 1.ただし、澪が何らかの理由で死亡、辞退した場合、85%は桑波篤志に譲ることとなる。
 1.どう転んでも結果的に、澪と篤志に莫大な遺産が転がり込むようなシステムになっている。
 1.例外は、澪、篤志が死亡や行方不明と断定されて居なくなった場合、新しい頭首が一族会議によって選ばれ、そのものが遺産を継ぐ。


〈先ず零をどうにか〉
 シュライン・エマは顎に手を当てて、無いやら考え込んでいる。そして、草間の足下に転がっている煙草を拾って、草間に手渡した。草間は無言でシュラインに礼を言った。
 加登岬家については今のところよく分かっていない。目の前にいる零のそっくりさん、澪から訊いたぐらいである。しかし、遺書の概略を聞くと、不思議であるのだ。
「直径などで考えて、伴侶や子供達など生存者っていないのかしら?」
 と、遺書に書かれている相続の内容から察するにコレは酷いと彼女は思うのである。
「いいえ、私の親は健在ですし、ほとんどの伯父叔母はほぼ健在です。ただ、篤志兄さんだけ両親を失っています。」
 と、加登岬澪は紙におおざっぱな系図を書いてくれる。
「其れは酷いわね。フォローも何もなく危険に追い込むような状態に、此処まで贔屓しているなんて。」
 シュラインは、むむむ、と唸る。
 澪は其れを私に言われても困ると言う顔をするが、事実そうなのだから、仕方ない。
 民法を紐解けば、だいたい分かるが、遺産相続などはおおざっぱに伴侶句に半分、子供に等分されるシステムである。子が抜けていても、孫がいればその孫に権利が引き継がれる。一件平等性を感じさせるモノだが、血縁関係が複雑化していたり、分割すると価値の下がるモノなど、セットで真の価値があったりで、問題が起こるとかあるそうだ。
「零がある程度、お嬢様出来るよう、助っ人を頼んだ。練習をある程度すれば、うん、大丈夫だろう。」
 草間が電話を置く。
「何時に着くの?」
 シュラインは尋ねる。
「さほど時間はかからない。」
 と、草間は答えた。
 此処のコーヒーがおいしいので下手な喫茶店に行かないでコーヒーを飲みに来ている、と聞こえは悪いが、実際のところ、なにか手伝えることはないかと興信所に来ている、菊坂静は考える。彼の目にはこのやりとりを静かに聞いていたのだ。そして、やおら立ち上がって。
「僕もお手伝いしたいですが良いですか?」
「ぬ? まあ、かまわないが。コーヒータダ飲みで来るとは、良い度胸だからな。」
「そんな、事していませんよ。手伝いできるかなぁっておもったわけですし。」
 草間の嫌味に苦笑している静。
「零さんと行動して、僕は僕なりで、館から情報を得ようと思いますけど。」
「そうか。その辺はお前に任せた。」
 

〈助っ人〉
 殺人ブザーが鳴る。中にいた全員は、耳をふさいだ。
「もう、いい加減ブザー買い換えましょう?」
「なにをいう。この、いかにも“客だ!”と知らせてくれる怨霊が良いんじゃないか。」
 シュラインの文句に、草間は言い返す。
「たぶん、呼び出した奴らだな。」
 草間がドアを開けると、そこには2人立っていた。
 顔面蒼白で目に隈を作っている、長身長髪の青年と、まだあどけなさが残るも大人いている少女であった。
「だいじょうぶかよ?」
「私から見ても大丈夫じゃなさそうです。」
 少女が答えるも。
「ご心配なく、大丈夫ですよ。ご無沙汰しています、草間さん。手伝って欲しいと言う事ってどういったことでしょう?」
 と、青年が尋ねる。
「まあ、見てくれ。宮小路。」
 宮小路と呼ばれた青年は、草間が指さす方向を見る。
 彼は、財閥子息宮小路皇騎である。いい加減、次男でもいて、そっちが継いでくれるならどれほど楽かとか思ったとか何とかで忙しいようだ。
 服は違うが、まったくの零が2人いた。
「ああ、皆さんが行っているように疲れているようです。零さんが2人に……。」
「いや、違う。未来から来たのでもないし、帰昔線から湧いてきたもないし、妖怪変化が、変身しているわけでもない。正真正銘の零のうり二つの他人。ゴスロリっぽい服を着ているのがそっくりさん、加登岬澪。加登岬財閥ご令嬢だ。」
 そこまで疲れているのは、苦笑するしかない。
 此処で、突っ込みにて叩けば、倒れそうな疲労感を漂わせているのだから。
「あ、そういうことなのですか。財閥というと、遺産か何か問題でも?」
 目をこする宮小路は、疲れていても、聡明な頭脳を持っているので、直ぐに理解した。
「察し良いな。」
 反応に満足する草まであった。
「呼び出していて、のけ者にされている感じなんだけど? 草間さん?」
 少しふてくされ気味の少女が言う。
「お、忘れていた訳じゃないんだ。宮小路がくだらないぼけをするから、長引いた。すまん。」
 頭をかく草間が謝る。
「ボケとは何ですか。」
 今度は宮小路が拗ねる。
「まあまあ、この2人は付き合いが長いから。そこに立ってもなんだから、こっちに入って、皇さん。」
 皇と呼ばれた少女は、シュラインに呼ばれ、「こんにちは」と挨拶し、ソファに腰掛ける。
 皇茉夕良。クラッシック音楽関係では、名の通っている名家のご息女。最も勝手に決めつけられた許嫁問題で家出している問題児でもある。興信所に来るのはおそらく、バイトのつもりなのだろうか。
「本当にそっくり。驚いたわ。」
「ホント。見たときどっちか零ちゃんか分からなかった。」
 皇とシュラインは
「「そう、私たちもびっくりしてます。」」
 零と澪が、同じびっくりした動作と発言をする。
「そこ、ユニゾンするな。同じ動作もするな、本当に零が2人に見える。」
 草間が尽かさず突っ込む。
 零にある首の印がなければ絶対に誰も分からないぐらい、似ているのだ。
 零とシュラインが、コーヒーを人数分用意している間に、草間とこの助っ人達が、落ち着くまで(正確には、宮小路の疲れがある程度とれるまで)、雑談をしていた。
「で、大まかな状況を、もう一度話してくれないか? 加登岬。」
「はい。主観的なことしか話せませんけど……。」
 咳き一つ。加登岬澪は、淡々と状況を話し始めた。


〈澪からの話〉
 加登岬・澪、18歳、加登岬財閥の一人娘にて某県内の女学院に通う。親との関係は良いのだが、親戚の付き合いは、多少ぎくしゃくしているようだ。
「私の、祖父はとても良い方でした。幼い頃からとても良くしてくれて。厳しくもあったけど本当に優しかったのです。私が悪戯して、悪いことは悪いと叱ってくれたり、良いことをすれば大きな手で頭を撫でてくれたり……、本当に大好きで……。」
 と、涙ぐみそうな澪だった。昔を思い出して閉まったのだろう。
 シュラインが、ハンカチを手渡すと、ありがとうの会釈をして、涙をぬぐった。
 そして、気を取り直し続けた。
「ただ、いきなり祖父の急逝の報を知らされ、悲しみ、驚きました。当然、親族会議にて相続について話し合われます。顧問弁護士さんが持ってきたのは、遺書が一通だけ。遺書として通じる方法として、弁護士は読み上げました。そこから、親族と私の戦いは始まったようなモノなのです。」
 ここで、一度話を止める。
「一通。おかしなモノよね……、質問はまた後でするわ。つづけて。」
 シュラインが澪に言った。
 頷いて話を進める。
「従兄の篤志兄さんも、祖父に良くしてくれて一緒に遊んでいたことが良くあります。ただ、伯父伯母にきいて、愕然としました『あいつは、おじいさんが亡くなった直前、いなくなった』と。祖父の死は心筋梗塞と言われています。ただ、私は医者から聞いたわけではないので、本当のことなのか……。事故死や、事件であるなら、いなくなった兄さんに何かあると言うことは誰にでも分かるのですが、なぜ……。」
 と、澪は、しゃべり疲れたのか、そこで言葉を止めた。
「だいたいのことは分かった。」
 草間が、紫煙をあげ、事情を聞いていた。
 灰皿には沢山の吸い殻が押しつぶされている。
 茉夕良は、澪の話に悲しそうな顔をして、
「私ができる事があるならば、お手伝いするわ。」
 と、言った。
「僕もやります。さっき言ったけど。」
 菊坂静も頷いた。
 家系図をみると、祖父の死去、その伴侶の祖母も他界しているが、数名の異母兄弟として親戚がいる。祖父は、2回結婚している。おおざっぱな系図なので、澪自体の知っている範囲だけでも、以下に記されたものになるのだろうか?

 祖父には2人の伴侶がいた。前妻の死去の後に、後妻を迎え入れたというが、それほど。親戚間に問題はなかったそうだという(最も澪が生きている前の話だから実際そうではないだろうが)。前妻の子供は3人、後妻の子供は2人で、多少、血のつながりが無くても、それなりに上手くいっていた大家族。篤志は前妻の子からの孫、澪は後妻からの孫という形になっているのだ。祖母の違いはあるが、従兄妹同士と考えても差し支えないと此処では考える。
 ここまで、大家族になっていると、やはり相続問題は起こりえるべくして起こったのだ。とも感じ取れるが、基本的な相続方法をとれば、問題は些細なことで済んだはずだ。

「篤志さんという従兄が、お爺さんが亡くなる直前に、いなくなったことに何か手がかりがあるというわけかしら?」
「はい。」
「では、まずは澪さんが知らないことを知るために、情報を集めないと行けないですね?」
 菊坂が言う。
「班分けと言うことで、考えよう。」


〈行動開始 あと、草間のこだわり〉
 澪の振りをして、館に入る零の訓練を、草間が呼び出した、財閥御曹司宮小路皇騎と、女性お足し並みについては知り尽くしているはずの、皇茉夕良に数日間、特訓することになるのだが、
「時間がないがどうすんだよ?」
 と、当然の話。
 今此処には時間を操れる超常能力者なんていない。
 白銀のサーバーの時間比率は1:1だし、幻影学園は既に消失している。草間と零、宮小路は、長谷神社のことを思いついたが、たしか、影斬が皇をこういうゴタゴタに巻き起こしたくないことで避けているのもあって、頼むことは難しいし、其れだと探偵の守秘義務違反となる。
 時間がない。でも、ああ、そうか。と菊坂が手を叩く。
「なに、今の状況では、ガードマンからも逃げ出すぐらい険悪というか、緊張しているし、命どうこうというせっぱ詰まったところでも、澪さんの我が儘をやんわりとした方向で言えば、2〜3日大丈夫じゃないかな?」
 と。
「それに、私の部下にその情報操作をすれば問題ないと思います。」
 宮小路が言うと、草間が渋い顔をした。そして、宮小路を奥の方に引っ張っていく。その行動に首をかしげる人多数だが、シュラインは苦笑していた。
 後は小声で怒鳴る。
「確かに、助っ人を頼んだ。しかし、そこまで大きな部隊を出すな! 宮小路!」
「え! ど、どうしてですか!?」
「あのな? 探偵等位卯の花、少ない人数で以下に情報を引き出し、追尾し、危険があったら己のサバイバルで乗り切るっていうのがスタンダードなんだ。なんだ、その警察や秘密結社の……。目立ってどうするんだ! 怪奇現象で手も足も出ないというなら、ともかく! コレは俺の仕事で、ああ! つまり本音を言ってやる!」
「なんですか?」
「500万を配分したときお前の取り分多くなるだろ! 人件費バカにならない!」
 と、あさっての方向にマジになっている草間に、聞こえているシュラインは苦笑した。
「人件費などはともかくとして、今回は一人で一人のスキルを使って、やるべきじゃないかしら入れ替わり調査だし?」
 シュラインが小声で溜息をついた。
 普通護衛だけで、10万、情報収集なら経費だけでかなりかさばる(特に旅費)。
「宮小路家全体が動くと、加登岬家が乗っ取られるとか他の親族がおののくぞ? 其れこそ財閥間での問題が発生してややこしくなる。」
 と、言うことで宮小路家の威を借りるのは、最終手段だ。いまはお前の部下は動かすな。個人の力で手伝ってくれと草間は宮小路に言うのだった。

「どこで零を訓練付けるほうがいいのかな?」
 皇茉夕良が、唸る。 
「あ、テーブルマナーなどは何とか、でも澪さんの家って、昔ながらの武家屋敷?」
 そう、文化が違うと作法も違ってくるのだ。難儀な世界だ、ブルジョアジー。
「いえ、西洋寄りです。離れなどにはたしかに日本家屋などありますが、どちらかというと。」
「服装からすればそうだよね。ゴスだし。和風ありなら、そこで、探偵講座を無理矢理聞かされている人に頼めば何とかあるかな?」
 と、茉夕良は勝手に頷いた。
「私、頑張ります!」
 と、身代わりになる零はガッツポーズをとるのであった。

 色々ゴタゴタがあった結果、保護というか友達になって遊び倒していましたという方向で、菊坂静と皇茉夕良、宮小路皇騎が零とともに動くことになり、草間武彦、シュライン・エマ、加登岬澪が、澪の護衛を兼ねて、様々な捜査に乗り出すことになる。
「いや、なぜ宮小路がそっちにいく?」
 草間がむすっとしていた。
「え? それは簡単なことだと。身分は隠しますが、財閥関係のごく一般的なしきたりは精通していますし。」
「まあ、それならいいけどな。」
 草間はまた煙草を吸う。
 部下の使用禁止を出したので、後は可能な範囲での、宮小路の自由にさせるべきかと考えた。
「零ちゃんが心配だけど、でも、全員屋敷に入ってお邪魔しますとか言うと、おかしいし、外での情報をあたしがするわ。篤志さんの足取り調査は、外でないと出来ないモノ。」
 と、シュラインは色々鞄に詰め込んでいる。この先どうなるか分からないためのいつでも出かけられるよう旅行の準備だ。
「では、私と皇さんで零さんの作法訓練をして、しばらくは、澪さん、零さんの振りをして頂ければ。」
「はい、分かりました。」
「その前に、家族の方……カード万かしら? が心配するから、一応、連絡付けていつどこで落ち合うとかしておきましょ?」
 と、いきなりいなくなって逃げた理由やら、待ち合わせ場所なども今いる全員で考え話し合った。捜索願を出される前に、手を打つのである。
「信用できなくても、ガードマンは仕事のポリシーで動いているだけかもしれませんし。そのへんはおかしいけど零が謝ってもらいますか。」
「あう。少し嘘着いているようで、心苦しいですが。」
「敵か味方か分からない、状況ですし。フォローはしっかり、私と茉夕良さんがします。零さん。」
 宮小路が、零を元気付けていた。
「そうそう、澪さん。今篤志さんの写真などあるかしら?」
「あ、写真ならプリクラや財布のカードホルダーにも。」
 澪はシュラインにその写真を手渡した。
 早急にその写真を、デジカメで撮り、フォト印字する。
「音声入りのモノなどが館で手に入ったら、こちらに届けてくれると助かるから、お願いね。」
 シュラインは、潜伏組に伝えると
「はい、探して見せます。」
 菊坂が良い返事をした。


〈そして〉
 草間とシュラインは、ネットや人混みのなかで聞き込みと、ネットでの加登岬家に関する情報をさがしている。もちろん、澪は零の独特の服とつぎはぎウサギぬいぐるみをもって変装し、そうじをしている。若干零の性格から離れてはいるモノの、片方が抜けれ無ければならない状態の時は、こっそり座敷わらしの草間五月と赤い猫が護衛している。比率的にはシュラインとの行動が多い。
 出かける前に、茉夕良が零に扮装している澪に尋ねた。
「この先をどうしたのかしら?」
 と。
「全てが平和に解決する。篤志兄さんが無事であって、あの遺書通りではなくてもいい、また仲が良かった家族でいたい……。信じていないとはいっても、まだお父さんとお母さんが悪い訳じゃないし、なにか。なにかあるのだと思うんです。」
 と、答えた。
 嘘偽り無い意志を持っているが、結局今は、無力な自分に押しつぶされそうな澪をみて皇は、
「……。わかったわ。最善を尽くすから。」
 と、彼女手を取ったのである。

 それから数日後。
 基本的な作法を身につけた、零は、“友人”として、宮小路皇騎と皇茉夕良、菊坂静をつれて、澪の館に向かっていた。少しタイプは古いが高級車に乗せられて。
「お嬢様お帰りなさいませ。ご心配しておりました。」
「いきなり離れてごめんなさい。私は、東京に来たとき、本当は黙っていきたかったところがあったモノだから。我が儘言いたかったけど……。この時期に其れは通じなくても……。」
「ご無事でなり寄りです。」
 と、零の変装は、なかなか堂に入っていた。
 フォロー3人は、ドキドキしていたことは言うまでもない。
「この方は東京での“友達”です。意気投合して、色々東京について教えて頂きました。」
「はい、そうですか。では、お客人、お上がりください。」
 潜入は成功した。
 ここからが始まり。
 未だ真相を探し出すための、物語が始まる。どうなるのだろうか?


2話:迷宮案内編に……

■登場人物■
【0086 シュライン・エマ 26 女 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【0461 宮小路・皇騎 20 男 大学生・財閥御曹司】
【4788 皇・茉夕良 16 女 ヴィルトゥオーソ・ヴァイオリニスト】
【5566 菊坂・静 15 男 高校生、「気狂い屋」】

■ライター通信■
 滝照直樹です。
 こんにちは、もしくはこんばんは。
 導入編と言うことで、だいたい出しても良いという情報と、状況を描写し、探偵として、どうなのか云々を草間に喋らせてみました。草間からすれば500万は大金です。が、経費面として宮小路さんの部下に色々させると、空っぽになってしまいます。其れを危惧している事もありますし、少数精鋭で、信用のおける人物が良いわけという、草間の判断です。後における諸問題の増加も防ぎたいこともありますし。
 正直全員が変装零の友人で館にはいると言う状況になると、草間さん大変だったろうな。と冷や汗ものだったのは内緒にしてください(なってない)。シュライン・エマさん、捜索担当にあたってくださり、本当にありがとうございます。
 皇茉夕良さんと、菊坂静さん、宮小路しっかり、零ちゃんを護ってください。茉夕良さんと静さんが如何に、館で聞き出すかが見物です。皇騎さん、一度部下の力を使わず、己の力のみでやってみるのも一つの手だと思います(長谷茜に良いところ見せる/聞かせることが出来るかも? 見えないところでですがー)。
 とりあえず、2話以降の予定として、超常現象要素はあまりないので(幽霊とか悪魔とか)、神の剣や蒼天恋歌並みのパワーバトルはないでしょう。

 では、2話「迷宮案内」でお会いしましょう。

滝照直樹
20070521