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LIVE
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正直、何でこんなにイラついてんのか、わかんねぇ。
わかんねぇ自分にイラつく。
「…ちっ」
舌打ちして煙草を灰皿に押しやれば、
山盛りになった吸殻がダラリと崩れてテーブルの上に零れる。
持って来た缶コーヒー三本は、既に全部カラ。
俺は、零れた吸殻を、そのままにして缶コーヒーを取りに一旦自室を出る。
ガチャッ―
「きゃっ」
勢いよく扉を開けば、そこにはシュライン。
ムッと眉を寄せる俺に、シュラインは言う。
「持って来たわよ。コーヒー。入ってもいい?」
「…いいけど」
まるでヤケ酒のように、グビグビと缶コーヒーを飲む俺。
シュラインは俺の隣にストンと座ると、
暫らく様子を見、やがて首を傾げて言った。
「彼に、会わない方が良かった?」
「…いや。別に」
会わない方が良かったとは思わない。
どんな奴なのか、すげぇ気になってた。
一度は会ってみたい、会っておきたい。
口には出さなかったけれど、そう思ってたさ。
けどな、実際会ってみると、これがまた…。
カラになった缶コーヒーを、コンとテーブルに置いて溜息を漏らすと、
シュラインは、ついさっきまで、あいつと話していたという事を、
話していた時の、あいつの嬉しそうな表情を真似しつつ楽しそうに伝えた。
あいつ…そんなに嬉しそうに話すのか。
っていうか、最近あいつと二人きりで話していないな。そういえば。
そんな事を思いつつ煙草に手を伸ばすと、
シュラインはパシッとその手を掴み 「吸い過ぎよ」 そう言って笑う。
頭をガシガシ掻く俺。
シュラインは手を離して小さな声で呟く。
「愚痴なら、幾らでも聞くわよ」
俺はハッと笑い、ソファにズルズルと凭れて。
「じゃあ、聞いてもらおうか。長ぇよ?」
そう言って、心に溜まった愚痴と言う名の不満をブチまけた。
そうだよ。不満なんだ。俺は、不満。面白くねぇんだよ。
ちょっと前までは俺にベッタリだったのに、急に離れて行きやがった。
電話してる時の楽しそうな声も、
さっき四人で茶を飲んでた時の照れ臭そうな顔も。
見てらんねぇんだよ。
頭では理解ってんだけどな。目を逸らしちまうんだ。
一気に想いを吐き散らかしてフーッと息を吐く俺。
シュラインはクスクス笑いつつ言った。
「寂しいのね」
「うっせ」
「…何なら、家族増やそうか。手伝うわよ?」
「…そういう事、冗談で言うなよ」
クックッと笑う俺の手を取るシュライン。
妙にギクリとする俺に、シュラインは優しく微笑んで言う。
「大丈夫。見えない所で、ちゃんと繋がってるんだから。大丈夫よ。ね?」
「…繋がってる、ねぇ」
「うん…まぁ、自分に言い聞かせてる部分もあるんだけどね」
シュラインの、その言葉を聞いて俺はハッとして。
部屋に入ってきてから一度も見ていなかったシュラインの顔を見やる。
散々、俺の愚痴やら不満やらを聞いてた良き理解者が、何て顔してやがんだ。
今にも泣きそうなシュラインの頭を、俺は撫でる。
するとシュラインはエヘヘと必死に笑って、
”寂しくなってたのは、私の方なの”
”だから、安心できる巣穴に潜り込んで来ちゃったんです”
と照れ臭そうに小さな声で呟いた。
俺はシュラインの肩を抱き寄せ言う。
「こんな男の腕で安心できちまうのか。お前は」
「うん。意地悪さんだけどね…」
何も話さず、数分が過ぎた。
肩を寄せ合う、イイ歳こいた男と女。
それはまるで、家出して路頭に迷った子供のようで。
俺はハハッと笑って言う。
「揃って妹離れ出来てねぇって、みっともねぇな」
俺の言葉にシュラインはフフッと微笑んで返す。
「うん。本当…困ったものね」
シュラインは勿論、俺だって。
付き合い、仲良くなる事に反対なんてしない。
良かったなぁ、とも思う心も。
喧嘩すんなよ、と思う心も持ち合わせてる。
端から見れば、ただのシスコンコンビかもしれない。
でも、違う。
そんなんじゃねぇんだ。
こう、上手く言えないけれど。
上手く言えない事が、もどかしくて仕方ないけれど。
ただ。ただ、一つだけ。
理解って欲しい。
俺達が、どんなに、お前を。
愛しているかを。
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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵
著┃者┃通┃信┃
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
シチュノベ発注ありがとうございます!!お待ちしておりました!(笑)
『リトル・ラヴ』の続編的シチュノベ、二本目(武彦サイド)を御届けします。
こちらも普段と少し違うスタイルで紡いでいるので、不安がありますが、とても楽しかったです^^
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ 宜しく御願い致します^^
2007/05/05 椎葉 あずま
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