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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


スカイ・ウィッシュ

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0.オープニング

随分と久しぶりだ。
彼に会うのも…何年振りだろうか。
もはや、思い出す事すら出来ない。
長い、長い時間。
誰にも平等な時の流れの中で。
あの人は、変わらず。
今も、変わらず。
夢を追っているのだろうか。
随分と唐突だけれど。
不意に気になったんだ。
あの人がくれた、指輪を見つけてしまって。
それからというもの。私の心はモヤモヤ。
別に、何を期待して行くわけじゃないさ。
ただ…ただ、元気なのかと。気になっているだけさ。
「さて…と」
カタンと席を立ち、鏡で化粧をチェックして。
私は店を後にする。向かうは、夢見る。
あの人の所。

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1.

「あのねぇ…何度も言うけど、付いて来たって楽しくないよ」
溜息を交えつつ言う蓮さん。
私はニコリと微笑んで、
「行ってみないとわからないじゃないですか」
蓮さんの背中をパシパシ叩きながら返す。
普段から綺麗な女性ではあるけれど、今日は格別。
綺麗に加えて、色っぽい。
そんな蓮さんを見てピンときたんです。
これは、面白い、と。
何となく、そんな気がするだけで。
根拠はありません。
でも、予感というものがピッと当たると、とっても心地良いのです。
その良い思いを。できるかもしれないという事で。
申し訳ないですけど、付いて行かせて頂きます。えぇ。ノリノリで。



「へぇ〜…これはまた、素朴な家にお住まいですねぇ」
少し小高い丘の上、ポツンと建つ青い屋根の小さな小屋。
私が感想を漏らすと、蓮さんはヤレヤレと首を振りつつ扉を開けた。
小屋の中に入った途端、妙なデジャヴ。
床を埋め尽くす紙と本。
それに囲まれて机にかじりついている男性が一人。
そう、まるで自室を見ているかのようで…。
「もしや、彼、研究者ですか?」
私が目を輝かせて言うと、蓮さんは苦笑しつつ返した。
「…追求者だよ」

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2.

ふむふむ、なるほど。
スカイ・フィッシュ。
空を飛ぶ魚。
一目見れば、願いを叶えてくれるという、魔法の魚。
形状は二等辺三角形で、色は白。
鳴き声は、人の耳には届かぬ超音波の領域…と。
床に散らばる紙を拾い上げては目を通し、ウンウンと頷く私。
「蓮…この子、何なんだ」
男性は眼鏡を上げつつ、蓮さんに言った。
「…付いてきても面白くないって言ったんだが、聞かなくてね」
窓を開けつつ返す蓮さん。
男性は、真剣に本や書類に目を通す私を見て、クッと笑って問う。
「何だ。興味でも湧いたかい?」
私は、本の上にポンと手を置いて返す。
「あなたは、決して常温では結晶しないニトロを、ある学者が執念で結晶化させた事をご存知ですか?」
「はっ?」
キョトンとする男性。
私は目を伏せ続ける。
「その例を引用して、たちまち世界中の学者等が…」
「おい、蓮。この子、本当に何なんだ?」
ペラペラと喋る私に呆気に取られつつ言う男性。
「科学者の卵…らしいよ」
蓮さんはクスリと笑って言った。
「科学者…ねぇ」
私を見やり、苦笑する男性。
私はバン、と机を叩く。
「うぉっ!何だっ?」
驚く男性に、私は真剣な顔で告げる。
「現世には、人の想いを形にし、伝える形態共鳴場というものが存在します」
「はっ?はぁ…」
「だから、頑張って!いいえ、頑張ってみましょう!」
私は窓の外、青く澄んだ空をキッと見据えて言った。
「…蓮。この子、本当、何者なん…」
「だ〜から言っただろう?あんたの夢を否定しない、科学者の卵さ」

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3.

認識する行為。
それは存在確立とイコールで繋がる。
念じれば、通じる。
量子学では、そう証明されている。
だから、ほら。
その結果。スカイ・フィッシュは姿を現した。
これは紛れもなく、あなたの想い。
あなたの想いが生み出したもの。


長年追い求めたスカイ・フィッシュの姿に大喜びする男性と、
そんな男性を見て、未だかつてない程淡く優しく微笑む蓮さん。
…うん。つまんないですね。
というか、この雰囲気。
この甘〜い雰囲気。苦手っ…。
私は、非常に良い雰囲気の二人を放り、一人帰路につく。
見上げ、空を泳ぐスカイ・フィッシュを目に捉え。
私はフッと笑い。
「まぁ…良いものが見れたわ。帰って、レポート作んなきゃ…」
そう呟きつつ足早に自宅へ急ぐ。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7061 / 藤田・あやこ (ふじた・あやこ) / ♀ / 24歳 / 女子大生

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

NPC / 神野・壮平 (かんの・そうへい)/ ♂ / 29歳 / スカイフィッシュ・ウォーカー


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           ライター通信          
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こんにちは。はじめまして。発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
遅れてしまい、大変申し訳ございません。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/06/04 椎葉 あずま