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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


トラブル・ハグ

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0.オープニング

「ちょっと、離しなさいっ!」
ドカッ―
「うぐ」
鳩尾に私の肘が入り、その場に倒れこむ男性。
私は襟を整え、スーツをパパンッと払って溜息。
「はぁ…まったくもう。迷惑な奇病ね」
「編集長ー!大丈夫ですかっ!!」
「遅いっっ!!」
バシッ―
「痛ぁっ!」
頬に私のビンタをくらい、その場にしゃがみ込む、三下…さんした君。
私は腰に手をあて、見下ろして言う。
「集合時間は、とっくに過ぎてるわ!あなた、やる気あるの!?」
「す、すみません…。捨て猫が…」
「言い訳は聞きたくないわ。さっさと取材!」
「は、はいっ」

近頃、評判の奇病。
その名は”トラブル・ハグ”
迷惑な抱擁。その名の通り。
感染した者は、見境なく異性に抱き付く。
タチの悪い感染者の場合、チカラ任せに押し倒し、それ以上を要求する。
まったくもって、迷惑な奇病だわ。
女性の感染者より、男性の感染者が多いというのも、また問題よね。
編集部は被害を受けた子…要するに感染者で大混乱。
で、まるっきり仕事にならない。
立派な勤務妨害だわ。とても迷惑よ。腹が立つわ。
だから、何とか出来ないものかと。
思っているんだけれど…。

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1.

中国の、さる非モテな若い研究者が歪な人口政策をシミュレートした結果。
結婚超氷河期の到来を憂慮。
その対策として研究者は、それを打ち消す特殊な人口曲線を放射。
その結果事例は、世界各国で様々な形で報告されている。
勘違いしてはなりません。
これは病気なのではなく、是正現象。
男女比を是正せんとする、人工的な現象です。

「あ、綾子さんっ…申し訳ないんですけど、さっぱり理解りませんっ」
私の説明を理解できず、困り顔で嘆く三下さん。
理解りませんか…できるだけ理解り易く説明したつもりなのですが。
…私、説明下手なのかもしれませんね。精進します。
「とにかく!さっさと何とかしないと、とんでもない事になるわっ」
額に汗を滲ませ、抱きついてくる男性を引き剥がしながら言う碇さん。
そうですね。
このままでは、ここ、アトラス編集部だけでなく、
東京全体…果てには日本が丸ごと混乱に貶められてしまう。
自然現象ならば、いた仕方ないと認め、事実を受け入れるでしょうが。
人工現象ならば、放っておくわけにはいきませんよね。

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2.

カチャン―
ライフルにセットする特殊な弾。
見慣れぬそれを見て、碇さんは顔を顰めて言う。
「ちょっと…それ、何なの?」
私はライフルを天井に向けて構え、淡々と返す。
「Y染色体破壊ウィルス、噴射します」
「えっ!?ちょ、ちょっと…!!」
見境なしに異性に抱擁する人が皆、口にしたもの。それは饅頭。
その饅頭の正体は”プラズモン”
波長がずれた二つの波は、重なると数珠繋ぎのように見えます。
個々の数珠の部分は、仮想的な一つの粒子と看做す事が可能。
その波が、饅頭状のプラズモン粒子となって、日本に到来したのです。
研究者も、良く日本を理解しているわ。
日本人で饅頭が嫌いな人なんて、あまりいないもの。
けれど、対策が打てないわけじゃない。
ひとまず、波を、どちらか一方に隔たらせてみるの。
それにより、研究者は何かを仕掛けてくるはず…。
「ちょ、うわっ!うわぁあああああっ!!」
ウィルスにより、編集部は女の子だらけに。
三下さんは、ウィルスを摂取しないように逃げ惑いつつ、
女性に追い掛け回される羽目に。
「ちょっと、あなた!こんな事して何になるの!?余計、混乱しちゃってるじゃない!!」
大声で叫び散らす碇さん。
落ち着いて。大丈夫。
これは、宣戦布告なのです。
すぐに元に戻すことが出来ます。
けれど、すぐに戻してしまっては意味がない。
もうすぐ…おそらく、もうすぐ…。
ガシャァンッ―
来たっ!!!
編集部に怒涛の如く押し寄せる饅頭売りの車。
研究者が異変を察知し、仕向けてきたのです。
自らの是正現象を正当化する為に。
あぁ…何て独りよがりな研究者。
ガシャコンッ―
私はライフルを構え、不敵に笑う。
あなたのような身勝手な者を許すわけにはいきません。
科学者の、卵として。
ダダダダダダ…―
唸るライフル。
下れ、制裁。

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3.

翌朝、新聞の一面に踊る”トラブル・ハグ”と”プラズモン”の文字。
私は、ライフルの調整をしつつ新聞に目を通して苦笑する。
随分と面白可笑しく書いているけれど、
実際、笑い事じゃなかったんですからね。
まぁ…解決したから良いんですけど。
ピンポーン―
鳴り響くチャイム。
あらあら、こんな朝早くから、一体どなたかしら?
私はライフルを持ったまま玄関に赴き、
扉の先にいる二人を確認すると、ニコリと微笑んで扉を開けて言う。
「おはようございます」
私の言葉に碇さんは笑って。
「おはよう。お礼を言いに来たわ。あなたの御蔭で、今月はとても良いものが出来そうよ。ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」
微笑んで返すと、三下さんはスッと紙袋を差し出して言う。
「これ、お礼です。どうぞ」
受け取った紙袋の中には、とても綺麗な饅頭。
苦笑する私に、三下さんは慌てて言った。
「これはプラズモンじゃないですよ!僕、味見しましたからっ!」

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

7061 / 藤田・あやこ (ふじた・あやこ) / ♀ / 24歳 / 女子大生

NPC / 碇・麗香(いかり・れいか) / ♀ / 28歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集長

NPC / 三下・忠雄 (みのした・ただお) / ♂ / 23歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集員


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           ライター通信          
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こんにちは。発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
遅れてしまい、大変申し訳ございません。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/06/04 椎葉 あずま