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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


スカイ・ウィッシュ

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0.オープニング

随分と久しぶりだ。
彼に会うのも…何年振りだろうか。
もはや、思い出す事すら出来ない。
長い、長い時間。
誰にも平等な時の流れの中で。
あの人は、変わらず。
今も、変わらず。
夢を追っているのだろうか。
随分と唐突だけれど。
不意に気になったんだ。
あの人がくれた、指輪を見つけてしまって。
それからというもの。私の心はモヤモヤ。
別に、何を期待して行くわけじゃないさ。
ただ…ただ、元気なのかと。気になっているだけさ。
「さて…と」
カタンと席を立ち、鏡で化粧をチェックして。
私は店を後にする。向かうは、夢見る。
あの人の所。

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1.

普段から、素敵な女性だとは思っていたけれど…今日は格別。
そんな姿で街を歩いたら、きっと何度も男の人に声を掛けられて大変でしょうね。
彼氏…か、どうかはわからないけれど、想い人なのは確か。
そういうのに敏感だから。私ってば。
うーん…邪魔しちゃ悪いわよね。
そうは思うんだけど、ね。
綺麗に着飾った格好に表情がそぐわないのよね。
何となくだけれど、不安そうっていうか…。
その表情から、ほんの少しだけ。
背中を押す力が必要なんじゃないかって感じたの。
だから私は、タタッと蓮さんに駆け寄って。
「こんにちは。どこか、出かけるの?」
満面の笑みで、そう言った。
蓮さんは一瞬ギョッとしたけれど、
すぐにいつものように笑って頷く。
私は、蓮さんの腕に絡み付いて言う。
「ねぇ。私も興味ありそうな行き先?」
蓮さんは少し考えて。
「まぁ、そうかもねぇ」
ホッとした表情で言った。
ごく自然に。私は、蓮さんに同行。
「楽しみだなぁ。どんな所かしら」
「あんまり期待しない方が良いよ」
やだなぁ、蓮さん。
期待なんてしてないわよ。
それより、ドキドキして仕方ないの。
だって、蓮さんの、そんな表情…初めて見るんだもの。

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2.

少し小高い丘の上。青い屋根の小さな家。
蓮さんは、扉を開けるのを躊躇っている。
気が気じゃない。
何なんだろう、このドキドキ感。まるで、自分の事のように…。
散々躊躇って、心を決めて。
ようやく開けた扉の先は…。
紙の山。
それに埋もれるように、机に噛り付いている男性が一人。
私達が来た事に気付いていないみたいで。
男性は、本に目を落としては窓の外を見やる事を、ひたすらに繰り返す。
床に散らばった紙を一枚拾い、目を通せば。
彼が、何をしているか、どんな人なのか。瞬時に理解った。
スカイ・フィッシュ。
空飛ぶ、幻の魚。
以前仕事で、同じような人と接した事があるわ。
そっか…蓮さん。
あなたの想い人もまた、夢見る人だったのね。


私達に気付いたものの、男性は素っ気無くて。
薄いコーヒーを慌しくいれると、また机に噛り付いた。
旗から見れば、ないがしろにされてる感じ。
こんな人の、どこがいいの?って、何も知らない人は言うでしょうね。
でも、私は。そう思わない。ううん。思えない。
紙屑だらけの部屋の中、出された薄いコーヒーを嬉しそうに飲む蓮さんの顔を見たら。
そんな事、思えるわけがない。
蓮さん…可愛いなぁ。思わず、顔が綻んじゃう。
彼には夢を追い続けてほしいけど、自分の事も見てほしいと感じる、その切なさ。
でも、夢中な彼の背中を見ると、そんな事言えなくて…。
あぁ、もう。駄目。他人事じゃないわ。胸にくる…。
熱くなる目頭を押さえて、ペチンと自身の頬を叩く私。

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3.

柱時計の音が鮮明に聞こえる部屋。
もう、どの位こうして黙ったままだろう。
蓮さんも、男性も、私も、何も言わない。
けれどピリピリしているわけじゃない、何とも不思議な空間。
空を流れる雲を見やっていると。
その不思議で柔らかな空間を、男性の声が壊した。
「ああああっ!!!!」
ガタンと席を立ち、身を乗り出して外を見やる男性。
フッと視界に飛び込む、雲とは違う白い影。
…空を泳ぐ、スカイ・フィッシュ。
それは紛れもなく、色んな本で目にした幻の魚。
「綺麗だねぇ…」
男性に寄り添い、嬉しそうに言う蓮さん。
男性も嬉しそうに笑って言う。
「あぁ…」
願いを叶えてくれる、スカイ・フィッシュ。
この魚は、彼の夢。
そして、彼を想う蓮さんの夢。
寄り添う道に戻るか、距離を保ったまま想い合う関係を続けるか。
選ぶのは、あくまでも彼等の心。だからこそ。
私は願う。
彼らの互いへの想いが、優しいもののままでありますように。
お願いよ。スカイ・フィッシュ。
彼等を優しく、包み込んで。


寄り添う二人に気付かれぬよう、そっと部屋を出た私は帰路について思う。
武彦さん達へのお守りが欲しくて店に行ったんだけど。
今日は…仕方ないわよね。
また今度、店に行くから。
その時は、とっておきの幸せな話聞かせてね、蓮さん。
え?自分の?
私の お守りは、ね…。
ここ。
左手薬指に。
彼が用意してくれるでしょ。
…甲斐性に期待しつつだけど。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

NPC / 神野・壮平 (かんの・そうへい)/ ♂ / 29歳 / スカイフィッシュ・ウォーカー


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
遅れてしまい、大変申し訳ございません。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/05/30 椎葉 あずま