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<東京怪談ノベル(シングル)>


ラヴ・ドラッグ - obedient -

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「ほらー!見て下さいっ!凄いでしょ?これ、全部勝ち取ったんですよー!」
戦利品…という名の食材を前に、自慢気に言う零。
「毎度毎度、大したもんだ。主婦の敵だな」
いつもの光景に私は微笑みつつ零を褒め称え、食材を手に取る。
しかし凄い量だな。小分けにして…と。
今日は肉じゃがか。あいつの好物だな。
…こう考えると、あいつって好物多いな。


じゃがいもを慣れた手つきで次々と剥いていく私。
見事な包丁捌きを見やりつつ、零は突然呟いた。
「ねぇ、冥月さん。好きな人とは、何をすれば良いんですかね」
「何だまた急に」
微笑んで返す私に、零は続ける。
「冥月さんは、今まで、どんな事したんですか?」
ゴトッ―
「うわっ」
持っていたじゃがいもをまな板の上に落としてしまう私。
どんな事…って。
いやいや、零は、そんな、そういう意味で聞いてるんじゃないだろう。
何を考えてるんだ、私は。
「ふ、普通にデートや食事で良いんじゃないか?」
じゃがいもを再び手に取り言う私。
「ふぅん…なるほど。やっぱり、冥月さんとお兄さんをお手本にすれば良いんですね」
「ち、違う!」
「え?違うんですか?」
「あのな、男女の仲は一緒に何をするか、じゃないんだ」
「え?じゃあ…」
「一緒にいる為に、何かをする関係だ」
「わぁ…かっこいいですね…」
「好きな人となら、何をしてたって楽しいさ」
「そういうもんですか…」
「私は傍にいて安らげるなら、ただ座ってるだけで満足だ」
「なるほどぉ。だから、よく来てお兄さんの仕事手伝ってるんですね」
ニコリと微笑んで納得した、と頷く零。
「違うと言ってるだろう。何度言えばわかるんだ」
私は苦笑しつつ、剥き終わったじゃがいもを零に渡す。


もうじき完成だな。あと五分程煮込んで…。
鍋の蓋を開け、様子を伺い味見する私と零。
零は小皿を持ったまま、私を見上げる。
「何だ?美味くないか…?」
キョトンとして言う私に、零は言う。
「惚れ薬で、お兄さんがどうなったのか、そろそろ教えて欲しいんですけど」
「………」
うっかり、頬を赤らめてしまう私。
目を逸らす私をジッと見やりつつ、探りを入れる零。
「微妙な反応…どう解釈すべきなんでしょうか…」
「う、うるさい。何もない何もない。何もなかったぞ」
まくしたてるように言う私。
鍋の火を止め、逃げるようにリビングへ向かう最中も、
ソファに凭れて雑誌を読んでいる間も。
零は「嘘だー嘘だー」と何度も繰り返した。
あぁ、うるさい。
ピーピーピーピー…ヒヨコか、お前は。




「本当に、何もなかったんですかぁ?」
兄が帰宅するまで、まだ少し時間があるから、と零は紅茶をいれ、それを私に差し出す。
それを受け取り「しつこい」と一蹴する私。
「冥月さんも、惚れ薬飲んでパッと告白しちゃえば良いのに」
「何をだ!」
少々ムキになりつつ返して、紅茶を喉に落とす私。
その瞬間。
焼けるように熱くなる喉と、ビクンと震える体。
「お前…」
ピリピリと痛みの走る喉から声を絞り出して見やると、
零はクスクス笑いつつ、リビングを出て行く。
焦点の定まらぬ目。眩暈を覚える…。
まずい、このままでは。
そう頭では理解っていても。
体が、鉛のように重く動かない。
やがて、まずいとさえ思わなくなった私の耳に。
バタン―
興信所の扉が開く音と、聞き慣れた足音が届く―……。


惚れ薬を入れ替えた時、こっそり分けておいたんです。
バレたら…というか正気に戻ったら、きっと酷く叱られてしまうけれど。
じっとしていられなかったんです。
あなたの言葉には、いつもトゲがあって。
下手な事を言うと、すぐに危険なトゲ付きの言葉を差し向けてきますけど。
そのトゲを、いつからか、怖いと思わなくなったんです。
私だけじゃなく、お兄さんも、そう感じてると思います。
ねぇ、冥月さん。
どういう事か、理解りますか?
これが、どういう事か、理解りますか?
余計なお世話かもしれないけれど。
こうでもしなきゃ、あなたは、いつまでも…。
少しだけ。少しだけ。
ほんの、少しでも良いから。
素直になってみて下さい。冥月さん。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀


著┃者┃通┃信┃
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
物凄く遅れてしまい、大変申し訳ございません。。。。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ 宜しく御願い致します。

2007/05/28 椎葉 あずま