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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


トラブル・ハグ

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0.オープニング

「ちょっと、離しなさいっ!」
ドカッ―
「うぐ」
鳩尾に私の肘が入り、その場に倒れこむ男性。
私は襟を整え、スーツをパパンッと払って溜息。
「はぁ…まったくもう。迷惑な奇病ね」
「編集長ー!大丈夫ですかっ!!」
「遅いっっ!!」
バシッ―
「痛ぁっ!」
頬に私のビンタをくらい、その場にしゃがみ込む、三下…さんした君。
私は腰に手をあて、見下ろして言う。
「集合時間は、とっくに過ぎてるわ!あなた、やる気あるの!?」
「す、すみません…。捨て猫が…」
「言い訳は聞きたくないわ。さっさと取材!」
「は、はいっ」

近頃、評判の奇病。
その名は”トラブル・ハグ”
迷惑な抱擁。その名の通り。
感染した者は、見境なく異性に抱き付く。
タチの悪い感染者の場合、チカラ任せに押し倒し、それ以上を要求する。
まったくもって、迷惑な奇病だわ。
女性の感染者より、男性の感染者が多いというのも、また問題よね。
編集部にも被害を受けた若い女の子が何人か居て。
随分と落ち込んでしまっているのよ。
仕事が手につかないくらい。
立派な勤務妨害だわ。とても迷惑よ。腹が立つわ。
だから、取材をしつつ、何とか出来ないものかと。
思っているんだけれど。

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1.

ドカッ―
「ぐふぁっ」
ドサッ―
「はぁ…はぁ…これで五人目ですわ…一体、どうなっておりますのっ?」
先程から立て続けに五回。
私は、見ず知らずの男性に言い寄られている。
言い寄ってくるだけならまだしも、
皆抱きついてくるのだから困ったものですわ。
不愉快極まりないっ。
「あっ!アレーヌさんじゃないですか!何やってるんです、こんな所で」
不機嫌な私に声を掛けてきたのは、三下さん。
こんな所で…は、私の台詞ですわ、と思ったけれど。
そうか。アトラス編集部が、すぐ近くにありますものね。
「別に何もしていませんわ。買い物帰りなだけです」
私が言うと、三下さんの隣でフゥと息を吐き、碇さんが言った。
「今、この辺りは奇病感染者がウロついてるの。別の道から帰った方が良いわ」
「奇病ですって…?」
もしや、と思い詳細を聞くと、予感は的中。
先程、立て続けに見ず知らずの男性に言い寄られた理由を、私は理解した。
「なるほど。そういう事でしたら、協力いたしますわ」
ブンとサーベルを振るい言う私。
「わぁ、何だか、頼りになりますね〜」
三下さんは、嬉しそうに言った。

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2.

「す、す…す…好きだぁっ!!」
背後から叫びつつ、抱きつこうと飛び掛ってくる感染者男性。
私は無表情でサーベルを男性の喉元に突きつけて言う。
「わたくしに抱きつこうなんて…一千年早いですわ」
「…ひ」
恐怖のあまり、その場から逃げ出す男性の背中を見やり、溜息を落とす私。
「感染源は、一体何なのかしらね…」
首を傾げつつ言う碇さん。
確かに。
これだけ多くの人が感染しているのだから、おそらく感染源は…。
むむぅ、と眉を寄せる私と碇さん。
と、その時。
「うわっ!うわぁあああっ!!」
三下さんの悲鳴。
私と碇さんはバッと同じ方向を見やり、そして…同時に溜息。
感染者女性に抱きつかれ、三下さんはとても嬉しそうに助けを求めている。
「…使えないですわね」
ポツリと私が言うと、碇さんはフンと鼻で笑って、
「まったくだわ。あんなの放っておいて、二人で調査しましょ」
そう言って私の手を引いた。

抱きついてくる感染者を、全てノシてしまっては、何の解決にもならない。
不快のあまり、それに気付くのが遅かった私達。
私は、抱きつこうとしてきた男性を逆に捕らえ、
一体どういう事なのか、何をして、いつからおかしくなったのか。
それらを聞き出した。


感染者から聞き出した情報から、
感染源は、とある行商人の売り歩く饅頭である事が判明。
私と碇さんは、デレデレの使えない三下さんを放り、
二人で、犯人である行商人を追う。

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3.

「お、お嬢ちゃん…可愛い顔して、そんなもん振り回しちゃイケないよ…」
引きつり笑いを浮かべつつ言う行商人。
私は無表情で告げる。
「余計なお世話ですわ。それより、さっさと私の質問に答えて下さる?」
「………」
「落としますわよ?地獄へ」
「か…かなわねぇな…参った…」
観念した行商人は、両手を上げて降参を示す。
その姿を見て、碇さんは待ってましたといわんばかりに行商人に詰め寄り、取材を開始。




翌朝、新聞の一面に踊り転がる”トラブル・ハグ”の文字。
碇さんが取材した記事によると、
行商人の目的は実験。
それは、迷惑極まりない話。
惚れ薬の開発に精を出しており、
自信ある出来に仕上がった為、試してみたかったのだそうだ。
碇さんの記事の横、
月刊アトラスの広告を目立たせるように掲載されている三下さんの写真は、
デレデレした表情で、何とも情けない。
「碇さんも、大変ですわね…」
私はミルクティーを飲みつつ、苦笑した。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

6813 / アレーヌ・ルシフェル (あれーぬ・るしふぇる) / ♀ / 17歳 / サーカスの団員・空中ブランコの花形スター

NPC / 碇・麗香(いかり・れいか) / ♀ / 28歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集長

NPC / 三下・忠雄 (みのした・ただお) / ♂ / 23歳 / 白王社・月刊アトラス編集部編集員


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
遅れてしまい、大変申し訳ございません。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/06/04 椎葉 あずま