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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


プラネタリウム

 興信所のドアの前にユリが立っていた。
「……よし」
 一つ、決意を胸にノックをしてからドアノブを捻る。
「……こ、こんにちわ」
「あ、いらっしゃい」
 出迎えたのは零。どうやらまた、テーブルの上に家計簿を開き、頭を悩ませているようだった。
 ユリは彼女に軽く会釈して興信所の中を見回した。
 男連中がいない……。
 武彦がいないのは多分、珍しく仕事が入ったのだろうが、小太郎が居ないのは何故だろう?
 彼は今、確か謹慎中だったはずだが……?
「あ、小太郎さんですか?」
 零に尋ねられ、ユリは黙って頷く。
「小太郎さんは今、ちょっと出かけててまして……」
「……何処に行ったんですか?」
「お客様が見えられたので、屋上で話してくる、と言ってましたが」
 お客……? 武彦ではなく、小太郎に客が来るとは珍しい。
 だが、ユリは何処か安心していた。小太郎が居ない事に、何故だか少し安心してしまったのだ。
 そんな自分に気付き、頭を振ってそんな考えを取っ払う。
「……お客さんってどんな人でした?」
「確か、クラスメイト、だとか。女の子でしたよ」
「……し、失礼します!」
 それを聞いた途端、いてもたってもいられなくなり、ユリは階段目指して駆け出した。

***********************************

 屋上まで一気に駆け上がると、ドアに耳を当てて奥の様子を窺う。
 どうやら声は聞こえない。話している声が小さいのだろうか?
 ドアについている窓は曇りガラスになっており、外はボンヤリとしか見えない。
 これでは二人が居るかどうかすらわからない。
「……よし」
 ユリは興信所のドアの前に立った時のように、一つ気合いを入れる声を零し、ドアを開ける。

 するとどういう事だろう?
 屋上は何故か中学校になっていた。というよりは、ドアがワープ装置にでもなったかのように、ユリが校門の前に移動させられてしまったらしい。
 ユリは慌ててこの状況から一歩退こうとしたのだが、ドアはもう無くなってしまっており、退路は完全に断たれてしまっていた。
「……な、なんなの、これ……」
 多少混乱したものの、少し考えれば明らかに異能が働いた罠だと気付く。
 ドアがきっかけで何処か見知らぬ中学校に飛ばされてしまったのだ。そしてこの中学校も普通ではない。
 人の気配が全く感じられないのだ。この時間ならまだ、部活中の人間が残っていてもおかしくないはずなのに。
 それに、そこかしこから魔力が感じられる。この学校の敷地全体から魔力が発せられているようだ。
 予想するだに、小太郎ともう一人、彼に会いに来た女の子とやらも、屋上へのドアに仕掛けられていた罠に気づかず、ここに飛ばされただろう。
 小太郎の方は大丈夫だろうが、もう一人の女の子の方が気になる。もし、こういう事態に慣れて居ない娘ならば、早々に助け出さなくてはならないだろう。
「……学校の外には……どうやら出られなさそう」
 校門の外に手を伸ばしてみると、見えない壁のようなものに阻まれてしまった。
「……という事は、捜索範囲は学校内、ってことか」
 ユリは中学校の全体をザッと見て、一人でも回れそうな事を確認し、校舎に向かって歩き出した。

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 シュライン・エマが興信所の前まで帰ってくると、そこに見慣れた少女を見つけた。
「あ、魅月姫さん。こんにちわ」
 声をかけられた興信所の前に立っている少女、黒榊 魅月姫は軽く会釈してシュラインが近付くのを待つ。
「どうしたの? またお茶を飲みに来てくれたのかしら?」
「ええ、そのつもりでしたが……どうやら別件が待ってるみたいですよ」
 そう言って魅月姫が興信所へ続く階段を見やる。
 シュラインもそれに倣って階段を眺めてみたが、特に変わったところは無さそうだった。
 代わりに、階段を駆け上る足音が聞こえた。これは、ユリのものだろうか。
「ユリちゃんが来てたみたいね。……別件って彼女と関係が?」
「どうでしょうね。今の段階ではわかりかねます」
「そう……。あ、立ち話もなんだし、興信所に行きましょ」
 シュラインと魅月姫は二人で興信所に向かった。

 興信所に入ると零がテーブルに家計簿を開いてウンウン唸っている。
 どうやらまた、興信所の財政は思わしくないようだ。
「ただいま、零ちゃん」
「お邪魔します」
 二人に声をかけられて、零はそちらに顔を向け、笑顔で挨拶する。
「おかえりなさい、いらっしゃい。すぐにお二人分のお茶を淹れますね」
 家計簿を閉じ、適当な場所にしまってから、零はキッチンへパタパタと走っていった。
 彼女がお茶を淹れている間に、魅月姫が声をかける。
「先程、ユリさんがここにいませんでしたか?」
「え? あ、はい。いましたよ。小太郎さんが屋上に居る、と教えたらすぐにそちらに向かってしまいましたが」
「小太郎くんが一人で屋上へ?」
「いえ、お客様が見えられて……クラスメイトの女の子だとか」
「小太郎くんにお客さん? 珍しいわね。どんな娘だった?」
「普通の娘でしたよ? ただ……ちょっと異能を持っているようでしたが。小太郎さんがあまりに警戒していなかったので、大丈夫だろうと思いました」
 シュラインの問いにもサラリと答えた零は、自分の持っている情報を全部吐き出し、紅茶をお盆に乗っけて戻ってきた。
 魅月姫とシュラインはお茶を受け取り、一口啜って思索を巡らす。
「三人が屋上にいるなら妙ね……。上から何の音も聞こえないわ」
「屋上からは妙な魔力も感じられますね。もしかしたらまた厄介事に巻き込まれているかもしれません」
「そうなると、早めに行った方が良いかしらね。ユリちゃんならすぐに追いつけるかも」
 今はもう、屋上付近にユリの気配は感じない。多分、小太郎ともう一人の女子の音や魔力が感じられないのと同様、何かあったのだろう。
 二人はお茶を飲み干し、
「ありがとう、美味しかったわ」
「これが終わればまた来ます。その時も美味しいお茶をよろしく頼みますね」
 と、零に告げて興信所のドアに手をかけた。……のだが、それはもう一人興信所にやってきた人物によって先に開けられた。
 その人物とは黒・冥月。いつもはピシッとした恰好をしているのだが、今回はフレアスカートなんかをはいて女性的だった。
「……どうしたの、その恰好?」
「ちょっとこの前の仕事の関係でな……。先に言っておくが、笑うなよ」
「わ、笑わないわよ。なんていうか、いつもとは印象違うけど似合ってるわ。ね、魅月姫さん?」
「ええ、とてもお綺麗ですよ」
 二人の賛辞に、冥月は居心地悪そうにフンとため息をついた。

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「なるほどな。小僧とユリ、そしてもう一人見知らぬ女子が屋上で失踪、か」
 二人から事情を聞いた冥月を含め、三人は屋上の前に来ていた。
 魅月姫はこのドアから既に魔力を感じ始めている。先に注意を呼びかけ、他の二人にあまり近付かないように言っておいた。
「随分大掛かりな術ですね……。膨大な魔力が感じられます」
 魅月姫がドアにペタリと掌をつけて呟く。どうやらドアが引き金になっているようだが、その術の部分的な場所からでさえ、全体を構築する魔力の大きさが感じて取れる。
「多分、この奥に小太郎くんたちがいるのよね?」
「おそらくはそうですが……屋上と言う場所ではなさそうですね。ドアの奥は異能で作られた空間があるか、若しくはドアにそこへ飛ばすような術がかけられていると思います」
 魅月姫の見立てにシュラインは一つ唸り、ポケットから携帯型ラジオを取り出した。
「……何をするんだ?」
「帰るときの道標になるかな、って。もしかしたら帰ってこれなくなるかもしれないじゃない? だったらドアを閉めないようにして、こっち側から音を流せば、その別の空間? だかに飛ばされた後もそれを辿ってここまで帰ってこれるんじゃないかと思って」
 言いながらシュラインはラジオの電源をいれ、音量を近所迷惑にならない程度まで上げる。
 後はドアが閉まらないように何かクッションでも興信所から持ってくれば準備完了だ。
「一番良いのは、ちゃんと帰り道が明示されてる場合なんだけどね」
「用心するに越した事はないと思いますよ。……では、行きましょうか」
「よし、ドアを開けるぞ」
 冥月がノブを回し、ドアを一気に開ける。

 三人がドアを潜った先は、中学校。一件何の変哲も無いが、第六感が普通でないと教えてくれる。
「そこかしこから魔力が感じられますね。やはり、ここは魔力で構築された空間でしょう」
「しかもこの中学校の敷地だけに区切られているらしい。外のモノは全く影が感知できないな」
 中学校に来たとほぼ同時に、魅月姫と冥月がこの辺りの様子を調べる。
 二人があまり警戒していないところを見ると、どうやら近くに敵は居ないようだが。
 シュラインも耳を澄まして辺りの様子を窺う。
「物音があまり聞こえないわね。グラウンドや校舎外には何もいないみたいだわ」
 誰も、でなく何も、と言ったのはそこに人外のものも含まれるからだろう。
 人妖の区別無く、それどころか虫や動物すらそこに感じさせない。完全に何もない空間だった。
「でも、校舎の中からは三つ、しっかり音が聞こえるわね」
「私のほうでも確認した。ユリと小僧、あともう一つ、初めて見る影もな」
 シュラインの情報を冥月が補強する。どうやら三人は校舎の中にいるようだ。
「ラジオの音のほうはどうだ? 何か聞こえるか?」
「……幽かだけど、何か聞こえるわ。今の時点じゃ何処からかまでは明言できないけど、でもやっぱり校舎の方からよ」
 どうやら小太郎たちを見つけるにしろ、ここから帰るにしろ、校舎に行かないと始まらないらしい。
 三人は頷きあって校舎を目指して歩き始めた。

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 校舎の入り口、一応来客用玄関に来てみた時点で、冥月が首を傾げる。
 なんとも、この校舎の形に見覚えがある気がしてきた。
「ここは……小僧の中学か?」
「冥月さん、小太郎君の学校に来たことあるの?」
「ああ、野暮用でな。まさかこんな形でまた足を踏み入れるとは思わなかったが」
 色々はっちゃけた思い出があるため、もうこの学校には来るまいと思っていたのだが……。
「間違いないの? 小太郎君の学校?」
「ああ、多分な。ここが作られた空間だとしたらあてにならんが、外観は間違いないはずだ」
「……とすれば、この空間を作り出したのはその学校に造詣が深い人物かしらね?」
「だろうな。でなければ、ここまで細かく作れまい」
 冥月が影を探るが、校内までかなりディテールに拘って作られている。多少探りにくい所や、適当に作られたような場所はあるが、それ以外はほぼ完璧と言えよう。
 これほどまでの完成度は事前に下調べをしたのだとしても、三次元でここまで作り出そうとすると相当学校を熟知していないと無理だろう。
「その点、この学校に通っている人物なら有利ですね」
「そうだな。一番に怪しむのは小太郎に会いに来たという女子か」
 小太郎に空間生成能力は無いはず。ユリにもそれは言える。
 だとしたら、一番怪しいのは余ったもう一人だろう。
「第三者の介入、ってのは考えられないかしら? 目的はわからないけど、何故か小太郎くんを攫う必要があったとか」
「だとしたら屋上に罠を張るのはおかしいでしょう。小太郎さんはあまり一人で屋上に行きませんしね」
「それに小太郎を攫うのが目的なら、ヤツを閉じ込めた時点で屋上のドアに仕掛けた術を解くはずだ。私たちのように小太郎を探しに来るようなやからが入ってきたら、おそらく困るだろうしな。ともかくプロの仕事ではないな」
「そうね。内部から破壊できるような人間も、興信所には良く出入りしているしね」
 魅月姫なんかが良い例だ。魔法に精通した人間ならば、どうにか解呪する術も持っているだろう。
「そうなると、やっぱりその娘が怪しいかしらね」
「これだけの術を小太郎さんと同年代で扱えるとなると、その娘は金の卵ですよ。細かい所の術式は拙いですし、やろうと思えばぶち破れない事もありませんが……全体的に見れば整合性の取れた、しっかりした世界構築です」
 校舎の壁をなぞりながら魅月姫が呟く。
 近くで見るとなんだかわからないが、ちょっと退いて全体的に眺めると何が描いてあるかわかるモザイク画のような感じだろう。
「中も危険は無さそうですね。とりあえず入ってみましょう」
 魅月姫に言われ、三人は玄関から校舎の中へ入っていった。

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 校舎の中にも特に変わったところは無い。普通の来客用玄関だった。
「この事務室……やはり中身も、小太郎の中学校らしいな」
 冥月が玄関の壁についている小窓を見て呟く。この小窓の奥は事務室になっており、冥月が中学校を訪れた時、ここの事務員に止められた覚えがある。
「じゃあここは冥月さんに案内してもらえば大丈夫そうね」
「頼られても困る。私だってこの中を歩いたのはこの玄関から小太郎の教室までだ」
 しかも最短距離で行ったので、そこまでの道程しか知らない。影を探ればそれなりに地理情報は伝わってくるが。
「案内云々は置いておいて、とりあえず早めに三人を探しましょう。近くにユリさんがいるらしいので」
 魅月姫が魔力を探ってユリの場所を割り出す。
 冥月とシュラインも、それぞれ影や音を探り、ユリの場所を確認した。
「この上の階かしらね? パッと移動できれば早いんだけど……」
「この空間自体がよくわからんからな、場所移動術の類は控えた方が良いだろう」
「そうですね。間違って次元の狭間なんかに落ちてしまうとまた面倒です。この空間に貼ってある結界をしっかり崩してからの方が無難ですね。歩いて探した方が良いでしょう」
 と言うわけで、徒歩でユリの元まで向かう事となった。

 二階。特別教室が並ぶ階だ。
 どうやらユリが教室を出入りしているらしく、ガラガラとせわしなく扉の開閉の音が聞こえる。
 その音を頼りに廊下を歩けば、すぐにユリとぶち当たった。
「……わっ、み、皆さん、どうしたんですか? 何故ここに?」
「ユリちゃんを探しにきたのよ」
「ついでに小僧たちもな。大方、お前もそのつもりでここに来たんだろ?」
「……え、ええ、まぁ。それに、小太郎くんと話がしたくて」
 そう言って俯いたユリは拳を硬く握り締めた。
 まだ少し、心の傷が小太郎との対面を拒否しているのかもしれない。
 その姿を見て、シュラインはユリの肩にやさしく手を置き、冥月と魅月姫は悲しそうな彼女の顔を見ないように視線をそらした。

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「……ユリちゃん」
 シュラインがユリの肩に手を置くと、彼女の肩がぴくんと跳ねた。
 ユリはすぐに握りこぶしを解き、なんでもなかった風を装った。
「……な、なんですか?」
「小太郎くんの事、怖かったかしら?」
 訊かれてユリは俯く。答えないのは肯定だろうか。
 シュラインは小さく苦笑して、言葉をかける。
「小太郎くんは確かに、ああやってちょっと暴走しちゃったけど、大人になったって感情の制御は難しいものだわ」
「……わかってる、つもりです」
「うん、それなら良いの。他人を完全に理解するのは無理だけど、わかってあげようとする事はできるわ」
 読心術的な異能がなければの話だが。
 普通人は他人を全て理解する事は出来ない。そう思っているのは完全な驕りだ。
 だが、自分を理解しようとしてくれる人が居るのは、その人にとっても救いであり、安らぎだ。
「ユリちゃんが小太郎くんの事を怖いと思ったことだって、多分、小太郎くんも理解しようとしている。そしてきっと、次はどうすれば良いか、考えてるはずだわ」
「……そうでしょうか?」
「小太郎くんの事、信じられない?」
 その問いに、ユリは必死に首を横に振った。疑問に思ったのは自分に自信が持てないからだろう。
「……あの人を信じられないわけではないですけど……私は、ちょっとでもあの人を怖がってしまった」
「それを負い目に感じる事は無いわ。今も言ったように、感情の制御って言うのは難しいものだもの。誰にだって何かを怖いと思うことはあるし、ユリちゃんがそう思えるようになったなら心が豊かになった証拠だと思う」
「……心が豊か、ですか?」
「ええ。こう言っちゃなんだけど、昔のユリちゃんならあまり怖いとは思わなかったんじゃない?」
 最初出会った頃はあまり表情もなく、感情の起伏も感じられなかった。
 だとすれば、今回恐怖を覚えた事は大きな進歩だ。
「……言われてみると、そうかもしれません」
「それは良い事だと思うわ。人を好きになることだって、一筋縄じゃいかないもの。そういう経験は良い判断材料になるし」
「……判断材料……」
「そう、これからながーい人生を生きるのに、経験は道標になるわ。色んなことを思って、色んなことを感じて、そうやって人は大きくなるんだもの。これからユリちゃんが大きくなるのに、そういう経験が役に立ったりするわ、きっと」
「……だったら、この怖い思いも無駄じゃないし、恥じる事も無いんですか?」
「まぁ、欲を言えば、その怖さを引きずるようじゃまだまだね。もっとおおらかに事を見て、たまにはそれを許したりするのも必要だと思うわ。小太郎くんも、最後の一歩は踏み越えなかったわけだし」
 不良を本当に殴らなかったのは小太郎の最後の抵抗。あの壁は踏み越えてはならないボーダーラインだったのだろう。
 あの暴走した小太郎がそれを踏み越えなかった事は、とりあえず一定の評価は出来る。
「これからも色々知って、色々分かり合って、そうしてそれを選択肢として捉えるのもアリよ」
「……覚えておきます」
 答えたユリは、先程よりも幾分、晴れやかな顔をしていた。

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「さて、これからどうするかだけど」
 ユリの心のモヤモヤも幾らか解消できた所で、次どうするかを考える。
「小太郎ともう一人は多分、屋上に居るはずだ」
「屋上へは階段を上っていくしかないみたいですね」
 すぐ近くに階段はある。すぐに小太郎の所へ行くなら今から階段へ向かえば良い。
「でも出口の事も心配よね。この空間から帰れなかったら困るわ」
「……それなら、私がこの空間自体を吸収する事もできます。この空間を構成しているモノは純粋な魔力らしいですから」
「とは言え、この空間全てを吸収しきるのは心配だな。一部だけを吸収してそこから穴をこじ開けてそこから元の世界へ帰る道を作るってのはどうだ? 脆くなった空間魔法ならもっと楽にぶち破れるんじゃないか」
 そう言って冥月が魅月姫を見やると、彼女は何も言わずに僅かに頷いた。
 どうやら可能ではあるらしい。
「だったらその脆くする場所も選んだ方が良いんじゃないかしら。その方がユリちゃんの負担も魅月姫さんの負担も減ると思うし」
「そうだな。だったら先にそのポイント探しも悪くない」
「……あ、あの」
 そこにユリが割って入る。
「……こ、小太郎くんに会いたいです。出来るだけ、すぐに」
 頬を少し染めながらもキッパリという。
 ここまで気持ちをハッキリ言われると拒否もし辛い。それに、どっちが先だろうと構わないのなら、そちらを優先するのも別に構わない。
「よし、じゃあ決まりね」
「では階段へ向かいましょうか」
 と言うわけで一行は屋上へ向かう事となった。

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 階段へ辿り着いた時、殿を歩いていた魅月姫がふと立ち止まる。
「……どうしたんですか?」
「いえ、少し気になることが」
 魅月姫は壁に手を触れ、フムと唸る。
「どうやらここに来て、誰かさんから妨害策が講じられたみたいですね」
「どういうことだ?」
「この階段、空間が捻じ曲げられていますね。いくら上っても上の階に着く事すら出来ないでしょう」
 傍目には変わった所は見られないが、魅月姫が言うならそうなのだろう。彼女が嘘をつく理由も無いだろうし。
「それをどうにか元に戻すのは出来そうなの?」
「出来ない事はありませんが、少し時間がかかりそうですね。やはり、私たちを小太郎さんたちの許へは行かせたくないようです」
「じゃあユリちゃんには悪いけど、屋上へ上るのは後回しにするしかないか」
「……いえ、構いません。仕方ないですから」
「では、先に出口の方を探すか。魅月姫に魔力を探ってもらえば早そうだな」
 冥月が提案するが、しかし魅月姫は首を横に振った。
「構築の拙い所を探す事は難しそうです。全体的に見てもほとんど差異はありませんし、階段の妨害策と同時に魔法に対してジャミングもかけられ始めたみたいですね」
「だったら手がかりは、シュラインの耳しかないか」
「まだラジオの音は聞こえるわ。でも妙なのよね……そこかしこから聞こえてくる。放送室って生きてるのかしら?」
 シュラインが言うには学校全体から響いているように聞こえるらしい。
 もしかしたら放送室からスピーカーを通して聞こえてくるのかもしれない。
「とりあえず、放送室に行ってみない?」
「まぁ、今やれる事も少ないからな。行ってみるのも悪くないだろう」
 冥月の同意に誰も反発せず、一行は放送室へ向かう。

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 二階にあった放送室。他の教室とは違い、防音設備が整っているだけ、ドアが重い。
 後でここから出る時、また開け直すのも面倒なので、開けっ放しで放送室に入る。
 中に入ると、そこは今までの校舎と比べると完全に異空間だった。
 部屋が放送室として構築されていないのだ。そこかしこにあるモノが小学生の発表に使う舞台の大道具よりも拙い。
「これは……どういうことかしら?」
「おそらく、この空間を作った人間が放送室についてあまり知らないのでしょう。ですが厄介な事に、これだけ適当に作られておきながら、魔力強度は他と変わりありませんね」
「とりあえず、放送部の人間でない事だけは確かだな」
 この様子を見れば一目瞭然。
 今まで精巧な模型のような校舎とは比べ物にならない。これでは放送機材も生きてはいまい。
「放送室が死んでいるとなると、校舎全体から聞こえてくる、と言うのはどういうことだ?」
「それについて気付いたんだけど……さっきからこの部屋の中からは音が聞こえてこないのよね」
 シュラインが耳を澄ましながら首を傾げる。
「この部屋に入った瞬間から全くラジオの音が聞こえない……もしかしたら、この空間が完全に元の世界と切り取られた……?」
「そうなると帰り道も辛そうだな」
「いえ、もしかしたらこの部屋だけかもしれません。外に出てみてはどうですか?」
 魅月姫に言われてシュラインは放送室の外へ出る。
 と、その途端に音が戻ってきた。幽かながらラジオの音が聞こえてくる。
「どういうことだ? 放送室の防音設備が邪魔したわけではあるまい」
 一応、ドアは開けっ放しで放送室の中を物色した。だったら外の音が聞こえてもおかしくは無い。
「ちょっと待って……そのドアから音が聞こえてるみたい……」
 シュラインが放送室のドアに耳を近づける。
 すると、確かにドアから音が発せられているようだ。
「ドアから音が聞こえていて、ドアの奥に入ると音が聞こえない……という事は外側からなら元の世界に繋がってるってことかしら」
「……放送室のドアに限った事なんでしょうか? もっと大きい音が聞こえる場所があるかも」
「そうね。入り口がビルの屋上だった事を考えると、この学校の屋上も怪しいかもしれないわね」
「だが、今はまだ屋上には行けないぞ」
「ええ、階段無限ループです」
 犯人によるものであろう妨害は未だに続いている。魅月姫に解呪を頼むのも手だが……。
 と、その時、突然大声が聞こえてきた。
「な、何、この声?」
 人一倍耳の良いシュラインが苦悶の表情を浮かべる。
 彼女でなくとも、この声はなんとも耳に障る。
「……こ、小太郎くんの声ですよね?」
「だろうな。それに、どうやらこれは歌ってるつもりらしい」
 聞こえてくるのは間違いなく小太郎の声。その声は微妙にメロディをつけて歌詞をそれに乗せている様だが……正直聞くに堪えない。
 どこぞのガキ大将ばりの音痴っぷり。知らなくても良い小太郎の一面が露わにされた瞬間だった。
「し、師匠さん、小太郎くんにボイストレーニングもさせてくれる?」
「音とか声ならシュラインの方が詳しいだろ。任せた」
 廊下を反響してまで聞こえてくるこの声に、この場にいる全員は自然と眉根を寄せてしまう。
「調子外れなバラードですね……雰囲気も何もありません」
「……小太郎くんとカラオケに行くのはやめといた方が良さそうですね」
 魅月姫もユリも不快感を前面に押し出している。それほどまでに酷い歌声だった。
 それが丸々一曲分終わると、また別の曲を歌い始めた。
「小僧の声が潰れるのが先か、私たちの耳が壊れるのが先か」
「その前に止めないと。これは公害の域だわ」
「そうですね。この歌声の所為かどうかはわかりませんが、階段にかけられていた妨害魔法も解除されたみたいです」
「じゃあ早いところ、苦情を言ってやりに行かんとな」

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「スカートって言うのは、やはり動き辛い物だな。着替えてから来ればよかったか」
「穿きなれちゃえば結構余裕なモノよ? それに似合ってるんだし着替えるなんて勿体無いわ」
「冥月さんはそれを普段着にしたら良いじゃないですか。すぐ慣れると思いますよ」
「……そうするともっと可愛い口調をですね……」
「お前ら好き勝手言うな」
 と、そんな会話をこなしながらやっと辿り着いた屋上。
 あれから何も妨害策は無く、屋上の扉の前までやってこれた。
 とは言え、ずっと聞こえてくる小太郎の破滅的ボイスは妨害に含まれるか否かを尋ねられると閉口してしまうが。
「さて、開けるぞ。直で聞こえてくる小僧の歌声に対する覚悟は出来たか?」
「半々って所かしらね」
「聞き流せば良いだけの話です」
「……むしろ、早く止めた方が賢明だと思います」
 全員の答えを受けて、冥月が扉を開けた。

 ガコン、と鉄のドアが鳴って殺人リサイタルの舞台への道が開かれた。
 それに気付いた小太郎ともう一人、彼の隣に立っていた女子が一行に目を向けた。
「あ、あれ、みんな、どうしたんだ!? 何でここに!?」
 ユリとほぼ同じ反応をされて、苦笑せずに入られなかった。
「お前を探しに来たんだよ。あと、その凶器になりうる歌声を止めにな」
「うぉ! 聞いてやがったのか!?」
「聞くなと言う方が無理だろ。あんな大声で歌っておいて」
 冥月の返答を受け、小太郎は顔を真っ赤に染めた。
 どうやら自分が音痴なのは承知で、更に他人の前で歌うことに少なからず羞恥心を覚えているようだ。
「まぁ、とにかくみんな見つけられて良かったわ」
「……小太郎くん」
 ユリが一歩、小太郎に近付く。まだ少し恐怖が残っているのか拳は握り締められ、足元も僅かに震えている。
 だが、二歩目を踏み出したところで、ユリと小太郎の間に女子が割って入る。
「ちょーっと待った。なんなのよアンタたち。人の空間に勝手に入り込んで、何様なわけ?」
 勝気な態度の女子に魅月姫が小さく笑って返す。
「よく言いますね。自分から招待しておいて……あの階段の邪魔をしたのも、それを取り払ったのも貴女でしょう?」
「……ふぅん。それがわかる奴もいるんだ? ちょっと侮ったな」
 挑戦的に細められた目で、女子は魅月姫を見る。
 その魅月姫に、ユリが近寄って尋ねた。
「……ど、どういうことですか?」
「あの娘が今回の黒幕という事です。この世界を構築している魔力と彼女の魔力は一致しますし、何より彼女の魔力キャパシティが半端じゃありませんね。それだけで十分証拠になりえます」
 とは言え、この空間を作るのに随分魔力を消費してしまったようで、彼女の魔力はほとんど空になっているが。
 手荒く屈服させて事の次第を吐かせるまでも無い。このままの状態でこちらが圧倒的に有利だ。あの魔力では自分で作ったこの空間に干渉する事すらできまい。
「さて、では色々聞かせてもらおうか」
「アンタ……その風貌、もしかして何時ぞや学校に来た小太郎のオネーサンかしら?」
 女子が冥月を睨みつける様にして言う。そこに慌てた様子の小太郎が弁解に入る。
「おま、馬鹿! それは違うと何度言ったら……!」
「小太郎は黙ってて。邪魔よ」
 だが女子に一刀両断され、小太郎は渋々ながら黙った。
「それを知ってるって事は、小太郎に会いに来たクラスメイトと言うのはお前で間違いないんだな?」
「大当たり。私は小太郎のクラスメイトよ。叶 希望(かのう のぞみ)って言うの。よろしくね」
 チラリと小太郎を見やると小さく頷いている。どうやら嘘ではないらしい。
「アンタ、小太郎とどんな関係なわけ? まさか恋人同士ってワケじゃないでしょ?」
 希望の問いに冥月は悪戯っぽい笑みを浮かべ、ツカツカと小太郎に近寄った。
 そして彼に後ろから抱きつき
「こたくんは私のモノよ」
 と言って退けたのだった。
 その発言に驚いたのは希望やユリだけではない。
 シュラインと魅月姫も少なからず驚いたようだ。
「み、冥月さん? どうしたの、その言葉? ……こ、こたくん?」
「服装だけでなく、根底からのイメージチェンジですか?」
 動揺したような仲間の問いに、冥月は黙して答えず、代わりにユリを手招きで呼ぶ。
 ユリが手の届く範囲に来ると、彼女をつかんで小太郎に預ける。
 不意打ちながらも、久々に小太郎とユリが物理的に触れ合ったのだった。
「この娘はこたくんの大切な人。つまり私の大切な人も同然ね」
「……み、冥月さん!?」
「どうしたんだ、師匠! また悪いモンでも食ったのか!?」
 そんな小太郎とユリの声もガン無視し、冥月はチラリと希望を見る。
 するとわずかだが悔しそうに表情をゆがめていた。どうやら効果アリらしい。これは面白い三角関係予備軍である。
 とは言え、ギャーギャーとうるさい子供二人をこのまま手元においておくのも面倒になったので、冥月はすぐに二人を放した。
「と、まぁ冗談はさて置き、だ」
 咳払いを一つ置いて、冥月が調子を戻す。
 それにその場に居たほとんどの人が安堵のため息をついた。あのままのキャラで突っ切られたらどうしようかと……。
「小太郎をここへ連れて来た理由を知りたいものだな。悪意があったならそれなりに対応するつもりだが……」
「ちょ、ちょっと待った! 師匠、希望は悪くない」
 冥月の質問中に小太郎が割って入る。
 その無礼さにゲンコツを喰らわせようとしたが、とりあえず話を聞いてみることにする。
「俺が無理言って希望に連れて来てもらったんだよ」
「何のために? 小太郎くんはここへ来て何をしたかったの?」
 シュラインからの尋ねに、小太郎は数瞬言い難そうに口をパクパクした後、小さな声でつぶやくように応える。
「……歌を、歌いに」
「歌を歌いに? こんな所まで来て?」
「気晴らしがしたかったんだよ。最近、ちょっと考え込む事多かったし。一区切りつけたかったんだ。それで、ここに来れば誰も来ないと思って。希望に聞かれるぐらいはどうって事無いけど、他の人に聞かれるとなると……」
 聞く所によると、カラオケに行こうとしても、部屋からもれるちょっとした声も聞かれたくないらしい。
 そこまで歌声にコンプレックスを持っているとは意外だった。
「だから、希望は悪くないんだ。無理言ったのは俺なんだよ」
 なるほど、とりあえず今回の事件の成り行きはわかった。
 つまり今回の件は大した事件ではなかったわけだ。ただ小太郎が大袈裟に鬱憤を晴らしたかっただけらしい。
「ならば、ここはもう私たちの出る幕ではないな」
 ため息をついて冥月は小太郎から離れ、そっとユリの背中を押した。
 それにユリは頷いて答え、小太郎に向き直った。

***********************************

「……こ、小太郎くん。お話があります」
「おぅ、なんだ?」
 気負っているようなユリに対し、いつもどおりの小太郎。
 そのギャップに多少不服を感じながらも、ユリは言葉を続けた。
「……私、こないだの事ね、よく考えてみたんですけど……」
「あ、俺もずっとその事を考えてたんだ。うん、俺もそれで話したい事がある」
 そう言った小太郎はユリの目を強い視線で見る。
 見られたほうのユリは言葉を呑んでしまった。
 こないだの事、と言うのはやはり、小太郎が暴走したあの時の事だろう。
「あれからずっと考えてたんだが、俺は……俺はまだ弱い。誰かを守れるような器じゃなかった」
「……そんな、小太郎くんはいつも私を守ってくれました!」
「俺もそう思ってた。でもそれは俺の自惚れだった。実際、こないだはユリを守ってやれなかったしな。……だからこれからは」
 そこで一旦、言葉を切った小太郎は奥歯を噛み締めたように見えた。
 彼自身、この決断は辛かったのかもしれない。
「これからは、俺じゃない別のヤツを頼ってくれ」
「……こ、小太郎くん!?」
 小太郎の言葉に目に見えて動揺するユリ。それはそうだ。今の台詞は深読みすれば別れ台詞である。
 だが、そんな雰囲気を悟った小太郎は慌てて言い直す。
「いやいや、別にユリを守る事を諦めたわけじゃない! 俺が強くなって、しっかりユリを守れるようになった時、また迎えに行くから……身勝手な話だが、それまで待ってて欲しい」
「……な、なんだ……ビックリした……」
 彼の真意を聞いてユリは胸を撫で下ろした。どうやら今生の別れになるわけではないらしい。
 安心したユリは反動でちょっと涙眼になった。
「……うん、待ってるよ。だから、絶対迎えに来てよね」
「ああ、絶対だ」
「……その時には、きっと私も強くなってるよ。もしかしたら小太郎くんに守られる必要も無いかもしれない。……うん、私も強くなるって決めたの」
 ユリの話とは詰まるところそれだ。
 前回の件で自分の弱さを知った。だから、小太郎の枷にならないぐらいに強くなりたいと思ったのだ。
「……皆さんに励まされてばかりじゃ、かっこ悪いですしね」
 今まで素で喋っていた事に気付き、少し頬を染めながらユリが言う。
「はいはい、二人の世界はそこまで」
 突然、小太郎とユリの間に希望が割って入った。
「……な、なんです?」
「なにすんだよ?」
「人前でラブラブしすぎなのよ、アンタたち」
 ストレートに指摘されて小太郎もユリも顔を真っ赤にした。
「大体何よ、小太郎のクセにカッコつけちゃって。何が『待っててくれ(声色)』よ。いつも私に弱音ばっか吐いてるようなヤツが」
「っば! お前、今そんな事言わなくても」
「……弱音、吐くんですか?」
「そりゃあもう。私の前じゃ可愛いもんよ? 泣きついてきた事もあったっけね?」
「ねぇよ! 微塵もねぇよ!」

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「さて、あとは帰り道ね」
 小太郎とユリのお話が終わった所で、シュラインがポンと手を叩いた。
 全員無事に見つけられたのだ。もうこの空間に用は無い。
「お帰り? ああそう。じゃあ気をつけて帰ってね。出口は教えないけど」
 そう言って希望はふわりと身を浮かせる。
「小太郎、じゃあまた明日にでも学校でね」
「お、おぅ。無理言ってすまんかったな」
「今度何か奢らせるから覚悟しておきなさい」
 それだけ言うと希望はそのまま空に掻き消えた。
 自分が支配している空間だけあり、出入りも自由なのだろう。
「さて、私たちも帰るわけだけど、小太郎くん、出口の場所とか聞いてない?」
「残念ながら、全く聞かされてない。何度かアイツが作った空間に入った事はあるけど、その度色んな所に出口があった」
「では予定通り、私たちが無理矢理こじ開けるしかなさそうですね」
「シュライン、音はどうだ?」
「思ったとおり、屋上のドアは一番音が大きいわ。ここが一番元の世界に近いのかも」
 シュラインがドアに耳を寄せて音を拾う。
 このドアは放送室のドアのように内側も外側も関係ないらしい。
「じゃあ魅月姫さん、ユリちゃん、お願いね」
「わかりました」「……わかりました」
 二人で頷き、ユリがドアに近付いて力を吸収し、そこに魅月姫が影をぶつける。
 歪んだように見えたドアはその影に穴をあけられ、それを押し広げられて大きく口を開けた。
「ラジオの音がよく聞こえるわ。これは成功みたいね」
「だったら早く帰りましょう。この空間、崩壊が始まってます」
 どうやら支配者である希望が居なくなった所為で、世界を維持できなくなっているらしい。
 ありがちな魔王の城である。
「端の方から崩れ落ちてますね。ここに至るまでにはまだ時間がかかるでしょうが、余裕があるうちに退避した方が良いでしょう」
「よし、じゃあすぐに帰るぞ。遅れるなよ、小僧」
「わかってるよ!」
 冥月の言葉に返事をしながら、小太郎はユリの手を取って走り出した。
 その時、ユリの心には恐怖なんてものは欠片も無かったのだった。
 それが嬉しくて、ユリは小さく笑みを零した。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / 女性 / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒】
【0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / 女性 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【4682 / 黒榊・魅月姫 (くろさかき・みづき) / 女性 / 999歳 / 吸血鬼(真祖)/深淵の魔女】

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■         ライター通信          ■
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 シュライン・エマ様、シナリオに参加してくださり、本当にありがとうございます! 『この作品に暴力的な表現は含まれておりません』ピコかめです。
 いつものような荒事が皆無でちょっと調子が崩れそうになった。うぉぉ、ギブミーバイオレンス。

 言い聞かせるのではなく、心の選択材料として語りかける……って、難しいですね。
 考えてみれば、今までそういう雰囲気を意識して会話を書いた事って無かった気がする。勉強になりましたわ。
 そんな拙い俺ですが、これからもお付き合いいただければ嬉しいです。
 では、気が向きましたら次回もよろしくどうぞ!