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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ダンス・ハート

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0.オープニング

「…で?金は、あんのか?お前」
俺が言うと、男は懐から札束をポンとテーブルに投げやる。
「うわぉ」
苦笑しつつ拍手する俺。
これはまた、ど偉い金額を持ってきたもんだ。
金持ちの、お坊ちゃまか。
羨ましいこった。
「オーケー。じゃ、早速。家で待ってな。終わったら連絡すっから」
俺はジャケットを羽織りつつ、男に言う。
男は眉間にシワを寄せて。
俺を暫くジッと見やり。
ペコリと頭を下げて言った。
「よろしく頼む…」

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1.

バタンッ―
「…っうわ」
勢い良く開いた扉に驚き、一歩退く私。
そんな私を見て、扉を開けた人物、草間はヘラッと笑うと、
私の荷物をパッと奪い取り、靴棚の上に置いて、そそくさと扉を閉めた。
「…おい。何のつもりだ」
顔をしかめつつ言うと、
草間は懐から札束を出し、それに軽く口付けすると、
「お仕事ですよ。冥月さん」
嬉しそうに、そう言った。


仕事の内容を大まかに聞き、私はハァと溜息を落として言う。
「久々に普通の依頼じゃないか。自力でやれよ」
私の言葉に、草間はワザとらしく目を丸くして。
「浮気調査は、冥月の十八番だろ」
そう言った。
…いつから、そうなったんだ。
冗談じゃない。浮気調査なんぞ…くだらなさの極みだ。
「夕方から別の仕事が入ってる。無理だな」
目を伏せて言うと、草間は、そっと私の頬に触れる。
「…んなっ。何だっ」
パッと目を開き肩を揺らす私に、草間は優しく微笑んで言う。
「夕方までに終わらせりゃあイイんだろ。余裕余裕」
「…私が手伝えば、だろう?」
苦笑して言う私。
笑みが零れたのを見て、もう一押しだと思った草間は、
私の頭にパフッと手を乗せて呟いた。
「頼むよ。俺のパートナー」
「………」
いつから、私が、お前のパートナーになったんだ。
と思うも言い返せないのは、そう言われて悪い気がしないからだ。
勝ち誇ったような笑みを浮かべる草間。
夕方から仕事が入ってる、などという嘘は、とうにバレているのだろう。
はぁ…やられた。

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2.

「…すっげーな。何だこりゃ…目がチカチカする…」
何度も瞬きしつつ言う草間。
草間の目を傷めているのは、
手帳に踊るカラフルで、独特な筆跡の文字だ。
よくは知らぬが ”ぎゃる文字”と言うらしいな。
確かに、読み難い…。
こんな文字を好き好んで使うとは…。
近頃の学生は、理解できん。
依頼人の彼女は女子高生。
授業中なのを良い事に、
私は影を使って、彼女の手帳と携帯を手元に引き寄せたのだ。
「駄目だ。目が痛ェ。何か、掴めそうか?」
手帳を私に放り投げて言う草間。
私は携帯のメモリーと発信、着信履歴を手帳と照らし合わせて、
理解った一つの事実を告げる。
「今日…夕方五時に、頻繁に電話している依頼人以外の男と会う予定があるな」
草間は、目を擦りつつ言う。
「オッケ。尾行よう」




午後五時。
手帳に記されていた場所で待機していると、
ピッタリ時間通りに、調査対象の女は姿を現した。
着崩した制服に身を包んだ女を見て、草間はポツリと呟く。
「…いやぁ、何つうか、最近の女子高生って、エロいよなぁ」
私は呆れて。
「そういう目で見るから、そう見えるんだ。変態」
そう言って草間の頬をギュッとつねる。


「…こいつぁ、完全にクロだな」
苦笑して言う草間。
尾行た結果、女は待ち合わせ場で合流するや否や、
男と手を繋ぎ、速攻でホテルへ入って行ったのだ。
まるで、その為だけに会う約束をしたかのよう…いや、事実そういう事か。
私は呆れつつ、ホテルへ入って行く二人のポラロイドを懐にしまう。
すると草間は真顔で。
「よし。じゃあ、俺達も入ろうか」
そう言って、私の手を掴む。
「…はっ?」
目を丸くして言う私。
「だから、俺達も入るか、って」
草間は淡く笑って言った。
ボケなのか本気なのか、さっぱり理解らない。
気恥ずかしくなった私は、
みるみる赤くなっていく顔を見られぬようにと、鉄拳制裁。
ドカッ―




その場で、すぐにクロだと決定し依頼人に報告する事も出来たが、
何となく嫌な予感というか、決定打が、まだ残っているような気がして。
私達は、その後二日間に渡り、調査を続行。
予感は、案の定的中。
女は、依頼人の他に二人の男と同時に付き合い、
その全てと肉体関係を持っていた。
呆れて言葉も出ない、というのは、まさにこの事だ。

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3.


「もう一度言う。奴と別れるのであれば、この事は報告しない」
腕を組んで言う私と対峙する、依頼人の彼女である女。
女はクスクス笑って返す。
「どーして、あなたに、そんな事言われなきゃなんないのよぉ?関係ないでしょぉ?」
「…お前のような下品な女に振り回されている奴が、不憫で仕方なくてな」
クッと笑って言うと、女は草間に駆け寄り言う。
「いいわよぉ。別れても。あいつツマンナイし。でも、そのかわり、あなたが欲しいな」
「…かわりって」
苦笑しつつ言う草間。
…まったく。本当に救いようのないアホだ。
こんな女の、どこが良いんだ…?
理解に苦しむ私をジーッと見やって。
「欲しいんだってさ」
草間は言った。
何で私に振るんだ。
「好きにすれば良いだろう」
私が言うと、草間はクックッと笑う。
そんな草間を見て、女はフフッと笑いつつ言う。
「奪われたくないくせに。おねぇさんも、意地っ張りねぇ」
その言葉に。
私はツカツカと女に歩み寄り、
グッと女の襟を掴み上げて、氷のような眼差しで睨みつけ言う。
「小娘が粋がるなよ」
「やっ…ちょ…痛っ。離し…」
「私は裏切りや浮気が大嫌いでな。今後、お前の色恋は全て潰してやるから、覚悟しておけ」
私は、そう告げて。
その場を一人、足早に去る。




「…という訳で、結果はクロだ。残念だったな」
掴んだ証拠を突きつけて、私は依頼人に躊躇う事なく事実を報告。
回りくどく言った所で、こいつの為にはならないからな。
「…やはり、そうでしたか」
無表情のまま、淡々と言う依頼人。
こいつは…依頼に来た時から、結果を知り得ていたのかもしれない。
全て理解っていて。それでも。
もしかしたら、勘違いかもしれないという淡い期待を抱いていたのかもしれぬ。
「一応…仇はとってやったからな」
見ていられず、目を逸らして、そう言った瞬間。
「うっ…うう…」
結果を聞いてもクールに構えていた依頼人の表情が歪み。
そして、崩壊。
「好きだったのにっ…本当に大好きだったのにっ…僕は…僕はぁっ…」
依頼人のあまりの変わりように、それまで静観していた草間がギョッとする。
私は苦笑しつつ、依頼人の頭を撫でて言う。
「女は、あいつだけじゃないさ」
「うっ…うううううー……」
ギュッ―
「わっ!?」
依頼人は、私に抱きつき。
胸に顔を埋めて号泣。
…これは、しばらく治まらないな。
普段なら殴り飛ばしている所だが…今回は特別だ。
哀れすぎて、そんな気にもならんしな。
ポンポン、と依頼人の背中を叩きつつ宥める私。
「…死ねっ」
ポツリと草間が言った。
私は、それを聞こえぬフリをして 「ん?」 と首を傾げる。
「何でもねぇよ〜」
草間は顔を背けて、子供みたいに言った。

やれやれ。
子供っぽい男ばかりだ。
…困ったものだな。
私は笑う。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

NPC / 加賀谷・透 (かがや・とおる) / ♂ / 20歳 / 依頼主・加賀谷財閥御曹司


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/06/06 椎葉 あずま