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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ダンス・ハート

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0.オープニング

「…で?金は、あんのか?お前」
俺が言うと、男は懐から札束をポンとテーブルに投げやる。
「うわぉ」
苦笑しつつ拍手する俺。
これはまた、ど偉い金額を持ってきたもんだ。
金持ちの、お坊ちゃまか。
羨ましいこった。
「オーケー。じゃ、早速。家で待ってな。終わったら連絡すっから」
俺はジャケットを羽織りつつ、男に言う。
男は眉間にシワを寄せて。
俺を暫くジッと見やり。
ペコリと頭を下げて言った。
「よろしく頼む…」

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1.

ふーん。浮気調査かぁ。
武彦ちゃんも、大変だねぇ。
「すごいね。ここって、ちゃ〜んと興信所なんだぁ」
クスッと笑って言うと、武彦ちゃんは靴を履きながら笑って言う。
「そうですよ。ジリ貧ですけどね」
あはは。そんなの、所内を見れば一目瞭然だよ。
っていうかホント、冗談の通じるヒトだよね。キミって。
そういうトコ、好きだよ。
「おじゃましまーす」
ヒラヒラと手を振りつつ、所内へ入って行く僕。
武彦ちゃんは、僕を見やりつつ言う。
「おい。手伝ってくんねぇのか」
うんうん。お手伝いね。してもイイよ。今日は暇だし。
でもさ、情報収集が足りないと思うわけ。
…とか、どう?探偵っぽくない?
「まだ、中にいるんでしょ?ちょっと話したい」
調査を依頼してきた男、その御曹司クンってのが、
どんなヒトなのか。気になるんだよねぇ。
「いるけど…あっ、おい、ちょっと待て」



ふーん…。
興信所のリビングで、ソファに座る依頼人をマジマジと見やる僕。
うん、まぁ、嫌味ったらしくはないかな。
ブランド物も、上手にさり気なぁくファッションに取り込んでるしね。
けど、表情がねー…。
御曹司とは、思えないな。
そんな沈んだ顔してちゃあ、パパパーッと誘拐とかされちゃうかもよ?
「ね。このコとは、どこで知り合ったの?」
ピラッと写真を見せて、御曹司クンに問う僕。
だって、気になるじゃん。
財閥の御曹司と、フツーの女子高生だよ?
どんなドラマチックな出会いしたのかなーって。思うじゃん?
「…渋谷で偶然、由香…いや、彼女が声を掛けてきて…」
無表情のまま言う御曹司クン。
あっはははは。つまんない。
要するに、逆ナンされたって事ねー。
へー…このコが、ねぇ。
そんな事するコには見えないけど…ヒトは見かけによらず、って言うしね。
「で?このコとは、どこまでいったの?」
ニコリと微笑み、問う僕。
まだまだ、これからだよ?情報収集は。
少し戸惑いつつも、僕の質問に答えていく御曹司クンを見て、
武彦ちゃんは終始、苦笑いを浮かべていた。
うん、調査より、情報収集のほうが、断然面白いね。
こうやって、根掘り葉掘り聞けちゃんだもの。ははっ。

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2.

調査を始めて、ほんの一時間。
目の前で繰り広げられる、あっけなきクロの結末。
調査対象の女の子を尾行た結果、彼女の三股が発覚。
御曹司クン以外にも、恋人がいたんだねぇ。
で、今。彼女は、二人目とホテルから出てきた所、と。
「はぁ…」
結果に溜息を漏らす武彦ちゃん。
僕はクスクス笑って言う。
「まぁ、高校生なんだから、そういう盛りでしょー」
「…そうかもしれないけどよ」
「広〜い心で、許してあげればイイんだよ、御曹司クンは。ね、そう思わない?」
「…あんまり」
あはは。武彦ちゃんって、結構モテてるクセに、
そういうトコ、真面目だよねぇ。
だから、モテるのかなぁ?
「じゃあ、シメに行こっかぁ」
笑って言う僕を見て、武彦ちゃんはキョトン。
もう、これ以上調査を続けたって無駄でしょ。
だから、シメるの。
僕がナンパしてノってきたら、完全クロって事で、ジ・エンド。ね?




「…あっ」
僕達を見るや否や、タタッと駆け寄ってくる女の子。
えーと、由香ちゃんだっけ。
由香ちゃんは、ニコニコと微笑みつつ、
武彦ちゃんの腕に絡み付いて。はい、言いました。
「お兄さん、カッコイイね。ちょっと、遊ばない?」
「あっははははは」
堪えきれず、吹き出してしまう僕。
面白いコだねぇ、キミ。
ついさっきまで、他の男と愛し合ってたのに、
もう、そうやって逆ナンできちゃうんだぁ?
「…いやいやいや」
由香ちゃんを引き剥がしながら言う武彦ちゃん。
僕は笑って言う。
「付き合ってあげればぁ?どーせ暇でしょー?」
「暇じゃねぇよ。何だ、そのイイ笑顔っ」
速攻で、そう返して僕の頭を小突く武彦ちゃん。
痛い痛い。冗談だよ〜。
僕達の遣り取りを見て、由香ちゃんはクスクス笑い。
ターゲット変更。
「あなたも、すっごくカッコイイのね」
そう言って、僕の腕に絡みついた。
うーん、すごいね。見境ナシかぁ。
見てる分には面白いけど、ちょっと、ね。
僕は由香ちゃんを少し乱暴に引き剥がして、
「残念だけど、キミみたいな軽いコ、大っ嫌いなんだよねー」
そう言って武彦ちゃんの手を引き、スタスタと歩き離れて行く。
諦め悪く、付いて来る由香ちゃんに。
「しつこいなぁ。そんなに骨抜きにされて、捨てられたい?」
極上の笑顔で、そう告げて。はい、終了。
いや〜。ホント、どうしようもないコだねぇ。
クロだよ、クロ。もう、漆黒だよ。ははっ。

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3.

「…そんな。…うっ」
調査結果を聞いて、顔を歪ませる御曹司クン。
結果を報告するのを、武彦ちゃんが随分戸惑ってるのを見て、
もしかして、とは思ったけど。
やっぱり、そうだったね。うん。泣いたね。っていうか、泣いてるねぇ。
御曹司クンは、パタパタと涙を落としつつ、
声を震わせて「どうして、どうして」と繰り返す。
どうしたもこうしたもないよ?
キミの彼女は、どうしようもなく軽く頭の悪いコで、
キミは彼女の暇潰しに付き合わされてただけって事だよ。
泣き通しの御曹司クンの背中を叩きつつ宥める武彦ちゃん。
あ〜…何か、イライラしてきたぁ。
「ねー。探偵って、アフターケアまでやるのぉ?」
僕が欠伸混じりに言うと、
武彦ちゃんは苦笑しながら、ヒラッと僕に手を振る。
何だよぉ。せっかく手伝ってあげたのに、さっさと帰れって?
それは。あんまりなんじゃないのぉ?
由香ちゃんも、かなーり頭の悪いコだったけどさぁ、
御曹司クンも負けてないよねー。
お馬鹿さん同士って事で、ある意味お似合いのカップルだったんじゃない?
まぁ。ヨリを戻す事は、ないと思うけど。




はーぁ。
武彦ちゃんは、御曹司クンのアフターケアに一生懸命。
つまんないなぁ。帰ろ。
暫く壁に凭れて様子を伺ってはいたものの、
変わりばえなく、平行線を辿るばかりの様子に飽き飽きしちゃった僕は、
ヒラリと手を振り、去り際、御曹司クンに告げる。
「泣く位なら、もっと見る目を養わなきゃ駄目だよ〜」
まぁ、そんだけ泣けちゃうって事は、
すっかり本気で惚れてたって事だよね。
あんなコに骨抜きにされちゃうなんて、男としてみっともないよ。
僕が、キミの価値観を丸ごと変えてあげよぉか?
まぁ、今は、それどころじゃないか。
また、今度。
機会があれば、ね。
じゃあ、僕は帰るよ。
武彦ちゃん、がんばー。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2562 / 屍月・鎖姫 (しづき・さき) / ♂ / 920歳 / 鍵師

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

NPC / 加賀谷・透 (かがや・とおる) / ♂ / 20歳 / 依頼主・加賀谷財閥御曹司

NPC / 杉本・由香 (すぎもと・ゆか) / ♀ / 17歳 / 女子高生・透の彼女


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           ライター通信          
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こんにちは。はじめまして!!発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/06/08 椎葉 あずま