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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ダンス・ハート

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0.オープニング

「…で?金は、あんのか?お前」
俺が言うと、男は懐から札束をポンとテーブルに投げやる。
「うわぉ」
苦笑しつつ拍手する俺。
これはまた、ど偉い金額を持ってきたもんだ。
金持ちの、お坊ちゃまか。
羨ましいこった。
「オーケー。じゃ、早速。家で待ってな。終わったら連絡すっから」
俺はジャケットを羽織りつつ、男に言う。
男は眉間にシワを寄せて。
俺を暫くジッと見やり。
ペコリと頭を下げて言った。
「よろしく頼む…」

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1.

はぁ、なるほど。浮気調査、ですか。
依頼詳細が記されたメモを見ながらウンウンと頷く私に、
武彦様は笑って言う。
「気乗りしねぇ〜って顔だな」
私は淡く笑って、返す。
「いいえ。そんな事ないです」
確かに気乗りはしません…こういうの、あんまり好きじゃないですから。
メモを返すと、武彦様はそれをサッと懐にしまい、
私の頭をパフッと撫でて。
「まァ、社会勉強っつー事で」
そう言い、歩き出す。
社会勉強、ですか。
…はい。そうですね。
その位の心構えで参ります。
でも、お仕事ですから、しっかりとこなしますよ。
あなたの役に立てるように。頑張ります。




「最近の女子高生ってのは、みんな似通ってんなぁ…」
調査対象である女性を尾行つつ、ポツリと言う武彦様。
「似て…ますか?」
後を追いつつ私が言うと、武彦様は笑って言った。
「格好とか口調とか、同じだと思わねぇか?」
「…そう言われてみれば、そうかもしれませんね」
「まァ、必死なんだろうけどな。はみ出さないように、って」
はみださないように…。
そういえば、そんな内容の番組を、この間テレビで拝見しました。
学生特有の連帯感がどうこう言ってましたが…。
こうして目の当たりにしても、いまいちピンときませんね。
私には、理解りかねますから。
大勢でワイワイと楽しく行動する行為、そのものが。
「お。別行動だ。追うぞ〜」
友人等と別れ、一人別の方向へ歩いていく女性。
心なしか、急いでいるような…?
「随分と携帯電話を気にしていますね」
私が言うと、武彦様は笑って。
「間違いなく、男と会うな。あれは」
自信たっぷりに、そう言った。
「どうして、わかるんですか…?」
「カンだよ。カン」
カン、ですか…。さすがですね…。
私は感心しつつ、武彦様の後を追う。

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2.

「おいおい…浮気っつーか、三股かよ…」
結果に苦笑する武彦様。
調査対象の女性は、尾行た時間、およそ六時間の間に、
異なる二人の男性と会い、
その両方と会ってすぐさま、如何わしい宿泊施設に入っては、
二時間程で出て来る事を繰り返した。
それが何を意味するか、中で何が行われていたのか。
それが理解らない程、私は無知じゃない。
「…最低ですね」
宿泊施設から出て、男性と別れ一人で歩く女性を見つつ低い声で私が言うと、
「キレないでね。頼むから」
武彦様は、そう言って煙草を踏み消した。




依頼人の指示通り、調査を終えた私達は、
直接、調査対象の女性と接触。
こういう理由で、今まで尾行て調べさせてもらってました、と報告。
わざわざ報告なんてしなくても良いのでは、と思うけど。
依頼人の指示なので、仕方ない。
「…マジ、サイテーなんだけどぉ」
自分が調査されていた事を知り、不快そうに眉を寄せる女性。
最低なのは、あなたです…。
苛立ち、私も眉を寄せる。
「まァ、そういう事だから、ありのままを報告させてもらう。問題ないな?」
頭を掻きつつ武彦様が言うと、女性はアハッと笑って。
「いいよ、別に。飽きたし。その代わり、お兄さん…私と付き合ってよ」
そう言って、武彦様の腕に絡みついた。
チュイン―
「きゃぁっ!?」
女性の頬を掠める実弾。
「ま、待て待て待て待て!!セヴン!!」
慌てて私に駆け寄り、銃を下ろさせる武彦様。
「あぁ、すみません。間違えて引き金を引いてしまいました」
冷たい眼差しで真っ直ぐに女性を見やりつつ言う私。
「落ち着けって」
耳元で、何度も武彦様が呟くも、私の怒りは治まらない。
あなたのような下品な女性は、武彦様と不釣合い。
自分が、武彦様に相応しいとでも思っているのですか?
そうだとしても、軽々しく言っただけでも。
どちらにせよ、不愉快です。
不快、極まりない。
チャキッ―
「だァから、落ち着けってぇぇ…」

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3.

「そうですか…やっぱり…」
証拠写真と、口頭での報告に俯く依頼人。
やっぱり、とは言うものの、ショックは拭えないようで。
その後、依頼人は全く言葉を発さなくなった。
「他に女探せよ。お前なら、いくらでも見つかるだろ」
慰めつつも諭す武彦様。
依頼人は、武彦様の言葉に頷きつつ、肩を震わせた。
「…うっ…うぅ…」
漏れる、悲しみの声と。
落ちる、悲しみの結晶。
「…泣ァくなよ」
苦笑しつつ言う武彦様。
私はクスッと笑い、依頼人の隣に座ると、
ハンカチを差し出して言う。
「どうぞ」
依頼人は少し顔を上げて。私の顔を見やる。
「すぐに、素敵な恋人ができますよ。きっと」
微笑んで言う私。
その途端、依頼人は壊れた玩具と化した。
「うぅぅ…うぁぁぁ…うぁぁぁぁ!」
結果を聞く前の冷静でクールな表情とは全く別の、
子供のような依頼人の姿に、武彦様は苦笑しつつ言った。
「お前の笑顔で、何かが弾け飛んだんじゃねぇか」




あんなに下品で、人の気持ちをもてあそぶような女性に、
どうして、好意を抱くのか。
どうして、涙を落とせてしまうのか。
理解に苦しみますが…。
人を好きな気持ちは誰にも止められないもので、
また好みも人それぞれ、なんですよね。
不快な思いはしましたが、良い社会勉強になりました。…多分。

あなたに、今度は素敵な恋人ができますよう。
私は依頼人の背中を優しく撫でつつ、心から願う。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

4410 / マシンドール・セヴン (ましんどーる・せぶん) / ♀ / 28歳 / スペシャル機構体(MG)

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

NPC / 加賀谷・透 (かがや・とおる) / ♂ / 20歳 / 依頼主・加賀谷財閥御曹司

NPC / 杉本・由香 (すぎもと・ゆか) / ♀ / 17歳 / 女子高生・透の彼女


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/06/21 椎葉 あずま