コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談・PCゲームノベル>


夜闇に鮮烈



 夜闇の中で、きらきらと輝くものが瞳に映った。
 ああ、あれは見たことある光だなと静修院刀夜は瞳を細めた。
 きらきら、銀糸。
「こんばんわ」
 知らずのうちの声をかけていたことに、あとから気がつく。
「……こ、こんばんわ……」
 ぴりぴりと、凪風シハルは警戒して、距離を置く。
 ある一定距離以上近寄らせない。
「そんなに警戒されるとさびしいよ」
「だって、今までいろいろ……」
 いろいろ、何かな? とにこりと笑むと、困ったような表情。
 そして彼女はそっぽを向いた。
「つれないなぁ……」
「私はいつも、こんな感じです」
 そう言って、彼女はどこかへ向かって歩み出す。
 ついでこないでくださいと言われても、ついていく。
 進んでいけばいくほど、道はより細く、暗くなっていく。
 その暗い合間に金色が閃いた気がした。
 一瞬現われた殺気。
 刀夜は反応する。
 でもそれは、自分ではなくシハルに向けられたもの。
 すぐに押し込められたソレだが、一度感じれば、気になる。
「なんだか熱烈なラブコールを送られたね」
「あれをラブコールというのならあなたはどこかおかしいです」
「からかっただけなのに」
「わかってます」
 そう言葉をかわしたあとに、高い高い、金属同士がぶつかる音。
「てめっ、受け止めんなよ!」
「……うるさいです」
 顔見知りのような二人。
 刀夜は、しばらく様子を見守ることにする。
 雰囲気は、とても最悪のようだが。
「仲良し、じゃあないが……楽しそうだ」
 刀夜の見立ては、二人は互角のような雰囲気だった。
 シハルの鎌と、相手の男の持つ刀が、重なっては音を響かせる。
「レキハ、あなたはどうしていつも、こんなに突然なんですかっ!」
「はっ! 俺とお前はいつでも敵同士だろうがっ!!」
「そう、でしたねっ!」
 戦いあいながらかわす言葉。
 シハルと闘っているものはレキハという名前で、敵同士。
 ここですぐにわって助けに入ってもいいのだけれども、刀夜はそうはしない。
 そんなことをしたらきっと、あとで不機嫌になるだろう。
 あの少女は。
 しばらく、見ていよう。
 闘ってう様子は待っているようで、その重なる得物の音でさえ音楽のようだ。
 金色、銀色。
 ずっと続くかのように。
 けれどもだんだんと、その響く音が鈍っていくようになる。
 勢いはあるのだけれどもキレがないような、そんな感じだった。
 鈍い鈍い音。
 そろそろ、割って入るタイミング。
 二人を追いかけながら、ずっとみていた。
 どちらも傷を負っているのはわかる。
 レキハ、という方は放っておいてかまわない。
 でもシハルは、放っておけない。
 割り込んで、おとなしく言葉を聞くかどうか。
 聞かないだろうなぁ、と思う。
 だから、それ相応の行動がとれるように準備もしっかりとした。
 ふっと、一足深く踏み込んで、二人の間に割って入る。
「あぁ!? なんだお前はっ!」
「退かないか、これ以上やっても無駄だと思う」
「のいてください、邪魔、しないで」
 背中からかかる声。息は少し乱れている。
 そして、無数の傷。
 刀夜は、それを見て、一度瞳を伏せた。
 そして、レキハの方を向く。
「どちらも互角だろう。闘いあって、何になるのかは知らないが、それでも今は、これ以上は意味がないと思う」
 だから止めに入った。
 目の前でこれ以上、傷を増やされるのを見るのも、いやだ。
「邪魔するなら、お前を、殺す」
 かちゃり、とレキハの刀が、向けられる。
 やっぱり言葉ではダメか、と薄く笑った。
 シハルを守るように立ち、視線で退きますと伝える。
 そんなことはいやだという視線が返ってきたが、無視。
 向けられた鋭い刀の切っ先を術を発動して受け止める。
 刀夜の、鼻先5センチ。
 そこから先以上には、刀は通らない。
「!!」
「ここから姿が見えなくなれば、その術は解けます。行こうか」
「え、ちょ……」
 シハルの手を取って、走りだす。
 嫌だと、体を意識的に重くするようなシハル。
 でも、連れていく。
 幾分か引きずるように連れて行き、やがてシハルも諦めたのか、歩調を合わせ始める。
「あの……手を」
「離したら逃げるだろう」
「…………」
 その通りなので言い返せない。
 いつの間にか、シハルは鎌をしまって、おとなしくついてくる。
 そしていつの間にか、刀夜の自宅に。
「……ここって」
「家だよ、上がって」
「いいです、私帰りますから」
「そんな怪我をしたまま、帰るなんてダメだよ。治療させて」
 いいだろう、と微笑まれたら、なぜだか拒めなかった。
 シハルはしぶしぶと家の中へと入る。
「お邪魔します」




 そこに座っていて、と指示を出して刀夜は救急箱を持ち出す。
「……こんなに綺麗で可愛いのに……もったいない」
 呟いて、てきぱきと治療をしていく。
 傷は深くはない。
 けれども数は多い。
 一つずつ丁寧に傷を拭って、薬をつけていく。
「なんで私を助けるんですか」
「『女』だから」
「殺そうとしたのに」
「それでも」
 あらかた、見える場所は治療した。
 あとは、何発か体にもらっていた殴打。
「服、脱いで」
「え!?」
「やましいことはしない。殴打を受けていただろう」
 早く手当てをしないと、あとできっとひどいことになる。
 言っていることを理解して、見ないでくださいねと何度も何度も念を押すしはる。
 大丈夫だと、笑いを向けられた。
 ぺろっと服をめくれば、そこには痣がしっかりとあった。
 痛々しいそれも治療する。
「終わりです」
「ありがとうございました……じゃあ私はこれで」
「待て、まだだ」
 刀夜は呼びとめて、一枚の符を取り出す。
 それは治療符。
 言葉を唱えて、かざす。
「これで治癒能力は高まる。だけれども、できるなら一晩ここにいろ」
「……」
「傷は癒えていない。まだ外にはレキハもいるかもしれないから」
 心配なんだ、とつぶやかれる。
「……わかりました。でも変なことしたら帰りますからね」
「そう、それはよかった。ところで変なことって、どんなこと?」
「え、えっと……その……」
 わかっていて、刀夜は問う。
 帰る言葉はもにょもにょと、言葉になっていない。
「はっきり言わないと、シハルの言う変なことをしてしまうかもしれない」
 そんなのは駄目、でも言うのは恥ずかしい。
 悶々とするシハルをただみて、刀夜は笑んでいた。
 過ごす夜は、まだ長い。





 静修院 刀夜と、凪風シハル、そして空海レキハ。
 今の関係は、微妙な距離感、完全敵視?
 これからリスクを背負うけれどもそれがどう転がるかわからない。
 次に出会う時、この関係がどうなっているのかは、まだ誰も知らない。
 知るわけが、無い。



<END>



□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】

【6465/静修院・刀夜/男性/25歳/元退魔師。現在何でも屋】


【NPC/凪風シハル/女性/18歳/何でも屋】
【NPC/空海レキハ/男性/18歳/何でも屋】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

 静修院・刀夜さま

 お久しぶりです、今回は無限関係性二話目、夜闇に鮮烈に参加いただきありがとうございました。ライターの志摩です。
 二話目は一話目で出会わなかった方とも遭遇しております。だけれども、やはり大人の余裕です、余裕です。さらっと扱ってお持ち帰り(違いますよ)です。
 シハルさんもどきどきだったことでしょう!
 今回のお話でどこかお好きなところが一つでもあると嬉しいです。
 ではでは、またお会いできれば嬉しく思います!