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<東京怪談ノベル(シングル)>


ラヴ・ドラッグ - release -

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「見た事ない煙草が売っててよぉ、これ…って、あれ?」
買い物から戻り、煙草を袋から取り出しつつ言うも、リビングに人がいねぇ。
何だよ…思いっきり独り言じゃねぇか。かっこわる…。
ってか、どこ行ったんだ、あいつら。
頭を掻きつつ、いつも座る居心地の良いソファに向かう俺。
と、その時。
「おかえり…」
「うぉぁっ!?」
ソファでムクリと起き上がり冥月が言った。
「何だよ、いるならいるって言えよ。ビックリしたわ」
笑いつつ、向かいにある小さなソファに腰を下ろすと。
冥月はジッと俺を見やって言った。
「…好き」
「は?」
即座に、そう返す俺。
そりゃあ、そうだろ。
だって今、好きって聞こえたぞ。
何つー幸せな耳してんだ。俺ァ。
「あ、うん。ごめん。でも、何か言わなきゃ…と思って」
冥月は苦笑する俺を真っ直ぐ見やって言った。
…はい?いや、もう一回「は?」と返すべき状況ですよね、これ。
でも、さすがに二回もそんな事言ったら、キレられるよな。
ちゃんと聞け!とか言って。
いやいや待て待て。ちゃんと聞いてんだよ、俺は。
聞いた上で、聞き返すの。
参ったね。マジで耳、イカれた?
耳をホジりつつ眉を寄せる俺に、冥月は続ける。
「私…お前の事好きだよな?…うん。好き。好きだ。それで合ってる。間違いない」
少し俯いて自問自答するように言う、その様は、
普段とは全く違う…もはや別人だ。
酒でも飲んだのか?
と思い辺りを見回すも、それらしきものは見当たらない。
でも、頬がほんのり赤いし、目もトロンとしてる…。
普段は絶対に口にしない事を、ここまでポンポン言うって事は、
冥月の体に、何かが起きてるって事だ。
ソレが何なのかは、さっぱりわかんねぇけど…。
せっかく、こうして素直になってんだ。
付き合ってやんのが、俺の使命だろ。…なんて。




「…何で、お前なんか好きになったんだろう」
ポツリと呟く冥月。
あららら…次は、どんな甘い事言ってくれるのかワクワクしてたってのに。
そっち行っちゃうんですか。
「時間にルーズだし、整理整頓できないし、煙草臭いし、頼りないし…」
…そこまで言わなくても良くない?苦笑する俺。
「でも…傍にいると嬉しくて、安心する。雰囲気しか似てないのに…一緒にいたいと思うんだ」
はい、きた。甘いの、きた。
ボロくそに言った後に、その台詞。
もう確信犯の手口ですね。それ。
そいつがさ、どんな奴なのか俺は全く知らないけど、
雰囲気が似てる、それだけで意識するのに十分なんじゃねぇの?
まぁ…口にはしないけど。そう思うよ。俺は。
似てるから好き、ってのは正直ちょっと切ない気もするけど、な。
「ね、何かして欲しい事ある?おなか、空いてない?」
優しく笑って言う冥月。腹か…。
「ちょっと空いてるかな。でも、まだイイよ」
俺が言うと、冥月は頷いて言う。
「さっき、肉じゃが作ったの。後で食べてね、あっ、じゃあ お風呂…も、後で一緒に入ろ?」
あらららら、おいおいおいおい。大胆発言ですよ。
いや、大歓迎ですけどね。
クスクスと笑いつつ何度も頷く俺に、
冥月は自身の膝をトントン叩いて言う。
「こっち来て」
右手に持つ神器、耳かき。
マジっすか。俺は笑いつつも嬉しくて、素直に冥月の言うとおりに。




膝枕で耳掃除…いやぁ、やっぱイイもんだ。
王道だけど、こんなに心地良いんだからなぁ。
そりゃあ、王道にもなるわ。
目を伏せ心地良さに酔いしれていた俺だったが、
パタパタと頬に落ちてくる涙にパッと目を開く羽目に。
「…どした?」
体を起こして問うと、冥月は俯いて小さな声で呟く。
「あんな事があって、もう恋なんてしないって思ってたのに…」
「………」
「でも、もう良いよね?彼も、許してくれるよね?」
必死に笑うも、頬を伝う涙。
俺は冥月の涙を指で拭う。
何だろうな。この感じ。
お前は切なくて泣いてるのに。
ムカついてんだ。俺ァ。
こんなにも、お前の心を縛り付けている男に。
会った事もない奴に。
「ね…好きになって良いよね…?」
冥月の言葉に、俺は淡く笑って返す。
「いいよ」
「…うん。…愛してる」
小さな声で言った冥月の肩が震えている。
俺は、それが妙に切なくて。
抱き寄せ、深く。長い口付けを。





心地よい風に頬を撫でられ、フッと目を開く。
暖かい、初夏の日差し。
今日も、良い天気なんだな…。
そう思い体を起こそうとして、私はギョッと目を丸くする。
な、何で草間が隣で寝てるんだ?
っていうか、何、抱きついてんだ、私はっ。
バッと離れ、
「な、何だっ。これはっ!?」
そう言うと、草間が目を覚ます。
ふ、服!服!服…は、着てるな。
ホッとする私。
草間は目を擦りつつ言う。
「今日は帰りたくない…って言ったから、泊めた」
「はっ!?」
「何もしてないよ。っつーかスヤスヤ寝やがって、コノヤロー」
待て待て。ちょっと待て。
私が、そんな事を?
…まったく覚えていないんだが。
昨日…昨日は、あいつに呼ばれて肉じゃがを一緒に作って…。
それから…。
記憶を辿り、そこでハッと気付く私。
…あれだ。
何て事を…いや、覚えてないけど…。
恥ずかしくて俯き、深呼吸する私に、草間は言う。
「っていうか、言い忘れてた」
「な、何をだっ」
頬を押さえつつ返す私。
「おはよ」
微笑んで言う草間。
何の変哲もない、朝の挨拶が。
状況一つで、ここまで辱めるのか。
「う、うるさいっ」
私は顔を背け、キュッと両目を閉じた。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵


著┃者┃通┃信┃
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。

もう、何といいますか。…楽しかったです(うっとり。笑)冥月ちゃん、可愛い(笑)
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ 宜しく御願い致します。

2007/06/14 椎葉 あずま