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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


ロスト・フェザー

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0.オープニング

飛べなくなった天使。
今、俺の目の前に居るのは。
間違いなく、それだ。
「…大丈夫か?」
言いつつ手を差し伸べれば、
天使は怯えた目で俺を見上げ。
躊躇いつつも、手を取る。
「あ、ありがと…ございます…」

大きな仕事を終えて疲労困憊の帰り道。
俺は、天使を拾った。

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1.

十二回目のコールで、ようやく奴は出た。
プツッ−
「おい。先程の報酬、私の取り分は…」
繋がったと同時に言う私。
『…丁度良かった。引き返して来い。今すぐに』
ディテクターはボソリと言った。
丁度良かった…?そこに若干疑問を抱きつつも、
私は言われたとおり引き返す。
私とした事が、報酬の話をせずに立ち去ってしまうとは。
少し、ボーッとしすぎだな…最近。




「………」
状況を察し、眉を寄せてディテクターを見やる私。
「まぁ、そういう事だ。お前が背負え」
淡々と言うディテクター。
そういう事だ、って。
また何の説明もナシか。
まぁ、大体わかるが…多少の説明があってもいいんじゃないか?
「お前が拾ったんだろうが」
顔を背け、素っ気無く言うも、
ディテクターは華麗にスルー。
…本当、勝手な男だ。貴様という奴は。
私は舌打ちしつつ、ディテクターの背中を睨みやり。
ため息交じりに少女を抱き上げた。
すると、それまですすり泣いていた少女がピタリと泣き止み。
「綺麗な人……」
少女は私の顔をジッと見やって言った。
天使も案外、口が上手いな。
私は苦笑しつつディテクターの後を追う。




「女を背負うのが恥ずかしいとは、意外とウブだな」
隣を歩きつつクスクス笑って言うと、ディテクターはクッと笑い、返す。
「お前の色気は天使にも通用するようだな」
「………」
口篭り、苦笑する私。
さっきの天使の言葉、聞いてやがったか。
どんな耳してるんだ、貴様は。
「ところで…アテはあるのか?」
何の説明もナシにスタスタと歩いているが。
一体、どこへ向かっているんだ?
天使というからには、住処は天上だったりするのではないか?
天上に帰す方法を…貴様が知り得ているとは思えん。
眉を寄せつつ不信な表情をする私にディテクターは一言。
「ない」
そう返した。
…やはりな。
そんな事だろうと思ったよ。
「…はぁ」
溜息を落としつつも、ディテクターの隣を歩く私。
また、面倒な事になったな…。
早く帰って眠りたいんだが。
寝不足なんだ。昨日も今日も。
近頃は、ずっと…。

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2.

アテもなく歩き続けて一時間。
案の定、路頭に迷う私達。
そりゃあ、そうだ。こうならないワケがない。
ディテクターが無鉄砲だというのも原因の一つだが、それよりも、こいつだ。
「おい…いつまで泣けば気が済む?」
私が言えど、腕の中で目を覆い隠し、
少女は「ごめんなさい」と何度も謝るも、一向に泣き止まない。
謝れ、と言ってるんじゃない。
泣き止め、と言ってる。
泣き止んで、質問に答えろと言ってるんだ…。
「どうしようもないな…」
溜息交じりに言うディテクター。
その口調からは”面倒くさい”が十分に感じ取れる。
散々歩き回って、放置する気か?それはナイだろう。
確かに、どうしようもない。
どこから来たのか、なぜ泣くのか、羽の傷はどこで負ったのか。
いくら聞いても、こいつは泣くばかりで答えないからな。
口の聞けぬ赤ん坊じゃないんだ。
何とかしてやろうと試みる私達に、少しくらい話してくれても良いだろう。
「そろそろ泣き止まんと、泣く事すらできなくするぞ」
冷たい眼差しで見下ろし、凄みを添えて言う私。
すると腕の中の少女は一瞬ピタリと泣き止んだ。
が、しかし、すぐに元通り。
「ふっ…ふぇぇぇ…」
叱られて怯える子供のように泣く少女を見やり、
ディテクターは頭を掻きつつ言う。
「更に泣かせてどうすんだ…」
「………」
こやつは本当…何もしてないくせに、生意気な口を聞きやがる。
私は目を伏せ、ピタリと立ち止まる。
「…どうした?疲れたか?」
同じく立ち止まり、振り返って言うディテクター。
「これ以上、アテもなく歩いても無意味だ」
私は、そう言いつつ辺りを見回し、古びたベンチを発見すると、
足早に移動して少女をベンチに座らせた。
痛みで泣いているワケではないと思うが、念の為。
傷が癒えれば、多少落ち着くかもしれぬしな。
そう思い、私は影から薬と包帯を取り出して少女の羽の治療にあたる。
「一応、応急処置はしといたけど」
煙草に火をつけ言うディテクター。
…これで、応急処置したつもりか。
まぁ、何もしていないよりかはマシだが。
お前は、少し無鉄砲すぎる。
このくらいの傷、確実に治療できる準備は常にしておくべきだ。
その内、お前自身が大怪我を負って酷い目に遭うぞ。
まぁ、そうなっても。
お前は後悔なんぞ、しないだろうがな。

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3.

傷の治療を終え、道具を影内に戻してフゥと一息つく私。
少女は未だ泣いてはいるが、
治療前よりは少し落ち着いたようだ。
今なら、話ができるかもしれんな。
そう思い、少女の目をジッと見やって再び問おうとした時だった。
フッと辺りを染める、影。
「ん」
パッと空を見上げる私とディテクター。
二人の目が同時に捕らえたもの。それは。
「探したぞっ!ミト!!」
額に汗を滲ませる、黒い羽の…悪魔だった。
悪魔は少女に駆け寄り、ギュッと少女を抱きしめる。
少女はポカポカと悪魔を叩きながら言う。
「遅いっ…遅いよぉっ…!」
少女の言葉に、目を伏せたまま「ごめん」と何度も謝罪する悪魔。
………これは。
「良かったな。迎えが来て」
クックッと笑いつつ言うディテクター。
目の前で繰り広げられる、臭く甘ったるい三文芝居。
「…これは、見なければならんのか?」
眉を寄せ小さな声で呟くと、
ディテクターは煙草を踏み消して言う。
「くだらんとは思うが、一応…な」
まったくだ。まったくもって、くだらん。
なんとなく状況は掴め読めるものの。
何て唐突なハッピーエンドだ。
ガキが読む絵本じゃあるまいし…。
目を伏せ溜息を落とす私。
そんな私を見て、ディテクターは苦笑しつつ懐から札束を取り出すと、
それで私の頭をパフッと叩き、言う。
「お前も、案外甘そうだがな」
札束を受け取り、首を傾げる私。
ディテクターはクッと笑い、続ける。
「…恋愛だ。恋愛」
恋愛…って、おい。
「だ、誰と誰が甘いって!?」
「…別に、誰と甘いかなんて言ってない」
「ぅ…」
「…顔、赤いぞ」
「て、訂正しろ!私は何もない!恋愛なんぞっ!」
「…うるさい」
「んなっ…」




いつかどこかで読んだ絵本のような話。
天使と悪魔の恋物語。
朧な記憶の中で、とても悲しい結末だったその物語は。
今、目の前で変化を遂げた。
「世話んなったな。ありがとよ」
天使を抱きかかえ、言う悪魔。
悪魔の腕の中で、申し訳なさそうにペコッと頭を下げる天使。
黒い翼で空を染め、高く舞い上がらんとする悪魔。
「待って」
私は伏せていた目を開き、彼等を見やって小さく呟く。
「死んだ人の魂は…」
どこへ行く?何か、知っているのではないだろうか。お前たちなら…。
知っているなら、聞かせてくれないか…そう言いたくも。
聞いたところで、何になる?
その想いに苛まれて。
私は口篭る。
「何だ?」
首を傾げて、私の言葉を待つ悪魔と、その腕の中の天使。
私はフイッと顔を背け、呟く。
「いや、いい。忘れてくれ…」

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / ディテクター / ♂ / 30歳 / IO2エージェント

NPC / ミト / ♀ / 15歳 / 天使・ガウルの彼女

NPC / ガウル / ♂ / 16歳 / 悪魔・ミトの彼氏


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           ライター通信          
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こんにちは^^
いつも発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
遅れてしまい、大変申し訳ございません。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/07/5 椎葉 あずま