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<東京怪談ノベル(シングル)>


誤解暴走

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念入りに化粧をして、綺麗で且つ可愛らしい格好をして、
普段はかけないシャレた眼鏡をかけて、甘い香水をつけて、出かけて行った。
妹から聞いた情報を思い返しつつ、ソファで煙草をふかす。
二日前…あいつの部屋に辞書を借りようと赴いた時。
僅かに開いた扉の隙間から、ウットリと何かに聞きほれるあいつを見た。
何を聞いていたのかは、わからずじまいだが、ただ一言。
”好きだ”
という男の声だけは、今もハッキリと覚えてる。
辞書を貸してくれなんて、とても言う気になれなくて。
俺は、あの日、不快感と不信感を胸に抱きつつ自室に戻った。
あれから二日。
俺達は、最低限の言葉の遣り取りしかしていない。
だって、仕方ねぇだろ。
何聞いてたんだ?って聞くのも、
喋ってたの誰だ?って聞くのも、
嫌なんだよ。聞きたくねぇんだ。
どう接していいか、わかんねぇんだよ。
「…どうしろってんだ」
ボヤきながら見やる時計。
時刻は、深夜一時半。
明日は仕事で、早起きしなきゃなんねぇってのに、俺は起きてる。
灰皿は吸殻で山盛り。
コーヒーは八杯目。
テーブルの上には見もしない仕事の書類が山済み。
別に、待ってるわけじゃない。
ただ、眠れないだけだ。
眠くないだけ。
ガチャガチャッ―
カチャン―
「!」
鍵の解ける音。
次いで扉の開閉音。
そして、コツンコツンと二回ほど響く、聞きなれぬ足音。
…やっと帰ってきた。






「あれっ…まだ、起きてたんだ」
リビングに入ってきて、イヤリングを外しながら言うシュライン。
「…おぅ」
窓の外を見やりつつ、俺は返す。
「煙草、吸い過ぎよ」
コーヒーをいれつつ言うシュラインをチラリと見やり、苦笑する俺。
誰のせいだと思ってんだ?
カタン―
キッチンにある食事用のテーブルについて頬杖をつき、
フゥと息を漏らす姿に、ほんのり憤り。
何で、そっちに座るんだよ。
いつもなら……思いかけて、やめた。
いつももクソもねぇよな。そうだよな。


「ねぇ。ちょっと…話していいかな」
目を伏せ言うシュライン。
俺は少し考えてから「どうぞ」と告げる。
話していいかな、という言葉の通り。
シュラインは一方的に話した。
今夜のお相手だった”彼”の人柄の良さ。
言葉遣いの優しさや素晴らしさ、その全てに感激した。
行って良かったと、心から思う、と。
思い返すように目を伏せたまま。
時折、優しく微笑んで。
いかにして喜びを上手に伝えようかと言葉を選びながら、ゆっくりと。
これがノロけじゃないのなら、
どれがノロけだってんだ。
聞くに堪えず、俺はスッと立ち上がり、頭を掻きながら言う。
「…寝る」
聞こえるか聞こえないかの小さな声で。
酷く無愛想に。
「あっ、ごめんね。つい、夢中になっちゃって」
…夢中になって、ごめん?
何だそれ。
ふざけんな。
「あ、ねぇ。明日は何時に起こせばいいの?それと、依頼人の情報書類、見せて」
俺に歩み寄り言うシュライン。
いつもと違う雰囲気。
いつもと違う香り。
まるで別人のようなシュラインの、いつもと変わらぬ柔らかな声が。
耳に、体にまとわりついて。
覚えるのは。不快感。
「いらねー。あと、ついて来なくていい」
俺は顔を背けて、そう言って。
リビングを去った。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 草間興信所所長、探偵

著┃者┃通┃信┃
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。

悩んだ結果、ここで切る事にしました^^
続きも書いたのですが、ここで切った方が面白…いえ、盛り上がると思いました。
武彦が誤解暴走した結果、何だかいつものラブラブな二人じゃなく、
険悪な雰囲気に(苦笑)何の!愛し合う二人に喧嘩は大事なスパイスです!(笑)
オーダー時に、お任せ頂いたので、この状態を、
既にオーダーして頂いている『フォレスト・ラビリンス』の冒頭に繋げます^^

気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ 宜しく御願い致します。

2007/06/22 椎葉 あずま