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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


ブレイク・ニクス

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0.オープニング

「よいしょ…っと」
ドンッ―
カウンターに大きな壷を置いた行商人…太助。
もはや、何を言わんとしているか手にとるように理解る。
「これはまた…大物だねぇ」
苦笑して言うと、
太助は続けて、懐から小さな剣を取り出した。
「何だい…?今度は小物な…短剣?」
言うと太助はフルフルと首を振り、
妖しく笑いつつ言った。
「違うんですよ。蓮さん。こっちの短剣が大物なんです」
「ん?」
首を傾げる私。
太助はフッフッフッと勝ち誇ったように笑いつつ、
壷と短剣の説明と、
いつもの”お願い”を始めた。

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1.

「呪いは専門外だ」
早々に溜息を落として言う私。
私の言葉にムキになって。
「やってみなきゃ、わかんないッスよ」
言いつつ、私の背中をパシパシと叩く行商人、早川。
まったく、お前には呆れる。
毎度毎度、飽きもせずに面倒事ばかり持ってきやがって。
退屈を嫌う蓮にとっては、喜ばしい事だろうがな。
「まぁ、やるだけやってみたらどうだい?」
妖しく微笑みつつ言う蓮。
人事だと思って…。
私はハァと溜息を落とし、
カウンターに乗せられた巨大な壷を見やる。
銀色の鎖がグルグルと巻かれたそれは、あからさまに怪しい。
早川の情報は決してアテに出来ないが、中には”宝”が入っているらしい。
本当に”宝”なのか怪しいもんだが、宝か…。
フッと脳裏に浮かぶ奴の顔。
…そうだな、多少は興信所の足しに…。
…いやいや。違う。小遣いだ。私の小遣い。


問題は、どうやって鎖を切り、中身を取り出すかだな。
影を使えば、鎖なんぞ切らずとも取り出せる。容易く、いとも簡単にな。
けれど、それは言わない。
取り分の為に。
「仕方ない。困難だが、やってみよう」
腰に手をあて、私が言うと。
「そうこなくっちゃ!」
早川はパンと両手を合わせて嬉しそうに言った。
思ったとおりの反応だな。
私は苦笑しつつ続ける。
「だが報酬は高いぞ。私が6で、二人は2ずつだ」
「えぇぇー…そんなぁー…」
困り顔の早川。
「交渉決裂か?」
クッと笑って私が言うと、早川は真顔で。
「僕が6でしょう。持ってきたのは僕なんですから」
がめつい要求をしてきた。
「…いいだろう。その代わり、探偵業に役立つ品を何か一つよこせ」
私が言うと早川は少し考え。
苦笑を浮かべつつ頷いた。
私と早川の商談を見やりつつ、楽しそうに微笑む蓮。
私は、それを敢えて無視して腕をまくる。
よし。それじゃあ、さっさとお宝拝見といこうか。

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2.

「…取れんな」
鎖を思い切り引っ張りつつ言う私。
「力任せじゃ駄目ッスよ。呪いを解かないと。これで」
小さなナイフを渡しつつ言う早川。
こんな小さいナイフで何が出来るっていうんだ…?
まさか、これで鎖を切れというまいな。
ナイフを受け取り、少し睨みやって。
「どうやって解くんだ?」
問うと早川は二マリと笑った。
「何だ…気持ち悪い」
眉を寄せつつ言う私に、早川は楽しそうに言う。
「こうやってナイフの上で手をハートの形にして”カモン・マイ・スター・ハニー”って叫ぶんですよ”」
ピクリと引きつる私の眉。
「貴様…ふざけるなよ」
冷たい眼差しで言うと、
早川は怯え、蓮の背中に隠れて言う。
「本当ですって!!」
「いい加減に…」
苛立ち言う私に、蓮が目を伏せ呟く。
「やらないのかい?」
グッと息を飲む私。
そんな恥ずかしい事できるか!と投げやるのは簡単だ。
けれど…ここで引き下がるのも、何だかシャク。
今更、影を使えば簡単に中を取り出せると白状するのも…何だかな。
「お願いします!冥月さんっ!」
両手をあわせ、必死に乞う早川。
私はハッと気付き。
「お前が、やればいいだろう」
そう言ってナイフを早川に差し出す。
しかし早川は首を左右に振って。
「駄目なんすよ。ハタチの女性がやらないと」
そう言った。
ふざけるな…。
そんな都合の良い話が…って、その条件があったから私が呼ばれたのか。
「はぁ…わかった。やるよ。やればいいんだろ」
観念し、ナイフをカウンターに置く私。
早川は嬉しそうに微笑み言う。
「頑張って下さいっ!」
「うるさい」




静まり返る店内。
向けられる、期待の眼差し。
…くっそ。何で、こんな目に…。
私は耳と頬を真っ赤に染め、意を決して言葉を放つ。
「カ…カモン…マイ・スター…ハ、ハニー」
まるで変化の起こらないナイフと壷。
眉を寄せる私に、早川はダメ出しをする。
「声が小さいですよっ。あと、どもっちゃ駄目です!」
このやろう…後で覚えてろよ。
私はワナワナしつつ、目をキュッと閉じて。
手を見事なハート形にし、大声で叫ぶ。
もう、どうにでもなれ。
「カモン!マイ・スター・ハニー!!」

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3.

羞恥から、その場にガクリと膝から落ちる私。
放った言葉に反応し、キラキラとナイフは輝いて。
一人でに鞘から抜け、壷に巻きつく鎖を切り裂いた。
カシャン―
カウンターに千切れた鎖が落ちた瞬間。
辺りを包む、眩い光。
「っうわ…」
私達は一斉に目が眩む。
光が静まり、ゆっくりと目を開いた時、
視界に飛び込んだ”宝”に、私は脱力。




「ピィ、ピィ」
可愛らしい泣き声にそぐう、赤面物の愛らしいルックス。
壷から出現した夜色の小鳥は私の肩に乗り、
これまた可愛らしく首を傾げる。
つぶらな瞳に、ハートの模様。
何て恥ずかしい成りをしてるんだ。お前は…。
追い討ちをかける羞恥にうな垂れるばかりの私。
「良かったじゃないか。懐かれて」
クスクスと笑いつつ言う蓮。
言い返す気力もない…。
ガックリと肩を落とす私の前にしゃがんで憐れみの笑みを浮かべ。
早川は指輪を差し出した。
「………」
ジッと指輪を見やる私に早川は笑って。
「高価なものです。受け取って下さい」
そう言って私の手に指輪を無理くり収めた。




「欲張るからだよ」
ケラケラと笑って言う蓮。
本当に…嫌な女だな、お前は。
床に手をつき溜息を落とす私。
蓮は続けて言う。
「待ってな。今、呼んでやるから」
「はっ?誰をだ…?」
顔を上げキョトンとする私に。
蓮はニヤリと笑って自身の携帯を見せる。
ディスプレイに表示される”送信しました”の文字が消えた瞬間。
嫌な汗がブワッと浮かぶ。
蓮は草間に私の写真を送ったのだ。
手をハート形にして真っ赤な顔で、あの台詞を吐く私の姿を。
RRRRR―
すぐさま鳴る、蓮の携帯。
蓮は携帯を取り、楽しそうに話す。
「お疲れさん。あぁ、そうだよ。立てないみたいだから回収にきてやっとくれ」
今更悔やんでも無意味。
それは理解っている。
わかっているさ…。
「…し、死にたいっ」
私は声を震わせ呟いた。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

NPC / 早川・太助 (はやかわ・たすけ) / ♂ / 25歳 / 行商人


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます!心から感謝申し上げます。
少し遅れてしまい、大変申し訳ございません;
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/07/06 椎葉 あずま