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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


ブレイク・ニクス

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0.オープニング

「よいしょ…っと」
ドンッ―
カウンターに大きな壷を置いた行商人…太助。
もはや、何を言わんとしているか手にとるように理解る。
「これはまた…大物だねぇ」
苦笑して言うと、
太助は続けて、懐から小さな剣を取り出した。
「何だい…?今度は小物な…短剣?」
言うと太助はフルフルと首を振り、
妖しく笑いつつ言った。
「違うんですよ。蓮さん。こっちの短剣が大物なんです」
「ん?」
首を傾げる私。
太助はフッフッフッと勝ち誇ったように笑いつつ、
壷と短剣の説明と、
いつもの”お願い”を始めた。

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1.

「そうなの。また早川さんらしくて」
『いいように使われてんなぁ』
「っふふ。やぁだ。やめてよ。気にしてるんだから」
『はは。まぁ、頑張れ。何かあったら、すぐ電話よこせよ』
「うん、了解」
『じゃな』
「うん」
ピッ―
武彦さんへの連絡を済ませ。
私は携帯をパチンと閉じて向かう。
蓮さんの店へ。
さてさて…今日は、どんな”お願い”かしら。




「早川さん…一つ、聞いてもいいかしら」
カウンターに置かれた壷とナイフを見やり言う私。
「どうぞ?」
キョトンとしつつ返す早川さん。
「普段、ちゃんとした仕事も入れてるのよね?」
「はい?」
「トラブルの時だけ、呼ばれてるのよね?私」
苦笑して言うと、蓮さんが足を組み直して笑う。
「心配されてるよ。あんた」
蓮さんの言葉にアッと気付き、頭を掻く早川さん。
うそぉ…それが、返し?
ほんとにもう…大丈夫なのかしら。
不安げな表情の私からパッと目を逸らし、
早川さんは”お願い”を切り出す。
私と蓮さんは顔を見合わせ、揃って苦笑。


「ふぅん…宝、ねぇ」
壷をマジマジと見やる私。
申し訳ないけど、ものすご〜く胡散臭いわ。
だって、ほら、まぁ、仕方ないじゃない?その辺は。
早川さんって、すっかり”トラブル運輸”って感じだもの…。
それに、危険な香りがプンプンよ。これ。
ここまで厳重に鎖が巻かれてるんだもの。
何が入ってるか、わかったものじゃないわ。
「やめておいた方が、良いんじゃない…?」
神妙な面持ちで私が言うと、
早川さんは、プゥと頬を膨らませて言った。
「えぇ〜…せっかく、目の前に宝があるのに…ですかぁ?」
…やぁだ、もう。何て顔するのよ、この人。
子供じゃないんだから…もう。
呆れてクスクス笑う私。
すると、早川さんに便乗するように蓮さんが呟いた。
「ここで引き下がるのも、どうかねぇ…」
うーん。蓮さんまで、そんな事言うの?
仕方ないなぁ…。
この二人、似てるかもしれないわね。危険好き…みたいな所が。
「何かあったら、責任とってね」
私はフゥと息を吐き、二人に交渉を取り付ける。
まぁ、本当にマズイ状況になったら、
”王子様”を呼べばいいわよね。
なーんて…ちょっと緊張感なさすぎかなぁ?

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2.

「このナイフで鎖を…切るの?」
ナイフを手に首を傾げて問うと、早川さんはコクリと頷き、返す。
「そうです。そのナイフでしか切れないらしいんですよ」
「ふぅん…」
こんな小さなナイフで、ガッチガチの鎖を切るなんて、物理的に無理な感じよねぇ。
むぅ、と眉を寄せつつ、とりあえずナイフを抜こうとする私。
「…んっ。…あれっ。…抜けないけど」
ナイフが鞘から抜けない。
むむむっと力を込めて必死にナイフを抜こうとする私に、蓮さんは言った。
「それにも封が為されているんじゃないかい?」
ははぁ、なるほどぉ。…って封印、厳重すぎじゃない?
本当に、大丈夫なの?これ。
募っていくばかりの不安に苛まれつつ、私は試行錯誤。
引いて駄目なら押してみろ。
抜かずに鞘を入れてみるのは………駄目かぁ。
あっ、実は柄の方が鞘だったり………しないみたいね。
「うーん。困ったなぁ」
声を掛けてみたり、撫でてみたり、
果てには”開けゴマー”なんて言ってみたり。
色々と試してはみるものの、ナイフは一向に抜けない。
もうちょっと詳しく調べてから持って来て欲しかったなぁ…なんて思いつつ、
ナイフを四方八方から見やる私。
すると、私の目が興味深いものを捉える。
柄に書かれた文字。
よぉく目を凝らさないと気付けない程小さな文字のそれは、
見覚えのある異国の古代文字。
丁度昨晩、とある御老人の依頼で解読にあたったものと同じだ。
暗号みたいな文体で、ちょっと厄介だけど…。
少し時間を貰えれば、読み上げる事が出来るわ。




文字の解読を終え、眼鏡を外して溜息を落とす私。
「何て書いてあるんですか?」
興味津々、目を輝かせて言う早川さん。
私は苦笑しつつ、異国の古代文字のメイン箇所を読み上げる。
”失刃の紫で、神の風を封ず”
「…どういう事です?」
首を傾げる早川さん。
私は手に持つナイフを揺らしつつ言う。
「要するに、このナイフは刃を持たない。そういう事だと思うわ」

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3.

「じゃあ…やってみるわ。覚悟はいい?」
私が言うと、早川さんと蓮さんは揃ってコクリと頷いた。
確信は持てないけれど、きっと、こういう事だと思うの。
刃を持たないって事は…。
コツッ―
私はナイフで壷に巻かれた鎖を叩く。
何度も何度も。
すると、少しずつ少しずつ、鎖が欠けていく。
「おぉー!なるほどぉ!」
その光景を見て、感心する早川さん。
呑気なものね…。
私も、そんな風に気楽に構えていられたら良いのだけど、そうはいかないわ。
すごく、不安なのよ。
”神の風”って…一体どんな…。
ドキドキしつつ、最後の一叩き。
これで鎖が切れる。
カシャン―
嫌な予感っていうのは、不思議と当たる。
千切れた鎖がカウンターに落ちて五秒後。
私は、そう実感した。
ゴォォォォォッ―
「うぉわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「きゃーーーー!!」




数十秒のストーム。
目を開いて映る光景は”無惨”
いくつもの棚から落ちた商品と、
粉々に砕けた壷とナイフ。
私はコホンコホンと咳をして、ゆっくり立ち上がり乱れた服と髪を整える。
神の風。
壷に封じられていたそれは、その名のとおり”風”で。
鎖が切れ、封が解けた事により、一気に外へ吹き出した。
その威力は、まさに”神”
風は、物凄いスピードで店内を縦横無尽に駆け巡り。
様々なものを破壊してしまった。
「…片付け、手伝っとくれよ」
目を伏せ、ちょっと不愉快そうに言う蓮さん。
当然だわ。
つい最近、店の大掃除と模様替えを済ませたばかりだもの。
私は風に裂かれて出血する、
早川さんの頬の傷を手当てしつつ苦笑して言う。
「これで、そろそろ懲りてくれるかしら?」
傷の痛みに顔を歪めて、うな垂れる早川さん。
散々な目に遭ったけど…結果、これで早川さん暫く大人しくなるんじゃないかしら。
私は呆れ笑いと共に何度も溜息を落とす。

その後、店の掃除・後始末にクタクタになった事は、言うまでもない。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

NPC / 早川・太助 (はやかわ・たすけ) / ♂ / 25歳 / 行商人


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます!心から感謝申し上げます。
少し遅れてしまい、大変申し訳ございません;
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/07/10 椎葉 あずま