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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


フレグランス・チョイス

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0.オープニング

紅い、リンゴ型ボトルの香水か。
蒼い、魚型ボトルの香水か。
黄色い、星型ボトルの香水か。

どれでも好きなのを持っていきな。
遠慮する事はないよ。
在庫処分だしね。

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1.

「どれにするんだい?」
カウンターに頬杖をつき微笑する蓮さん。
私はカウンターに並べられた三つの香水を前に、むぅっと悩む。
貰えるのなら、ありがたく頂戴するわ。
でも、なぁんか怪しいなぁ。蓮さん、何か企んでるんじゃないかしら。
なぁんて。考えすぎかな?
「どんな香りがするのか。確かめても良い?」
私が言うと、蓮さんは目を伏せて「どうぞ」と促した。
私はカウンターに凭れつつ、それぞれの香水に鼻を近づけて確認。
紅いリンゴ型ボトルの香水は…爽やかな香り。
蒼い魚型ボトルの香水は…甘い香りね。
黄色い星型ボトルの香水は…うーん、スパイシー香り。かな?
それぞれ変化に富んだ個性的な香り。
どれも魅力的だなぁ。それに、どの香水もボトルが可愛い。
部屋に飾ったら、なんだか嬉しくなっちゃいそうね。




暫く悩み、私は決断。
「じゃあ、この紅いのを頂くわ」
私はリンゴ型ボトルの香水を手に取り微笑む。
すると蓮さんは、頬杖をつく腕を左から右に変えて言った。
「つけてみなよ」
怪しげな笑み…私は苦笑しつつも、蓮さんの勧めるとおり香水を自身の首下に吹き付ける。
柑橘系の爽やかな香り。
どんなシーンにも合わせやすそうな万能的な香り。
鼻につかない好みの香りに目を伏せて満足する私。
うん。気に入ったわ。

私が香水を吹き付けて数分後、店にお客さんがやって来た。
カランカラン―
「おーっす、蓮さん。毎度ぉ〜〜」
店内に入ってきたのは二十五歳くらいの男性。
私は初めてお会いするけれど、口調から蓮さんとは親しい仲である事がわかる。
「あぁ、セイジョ。丁度良いところに来たね」
男性を見やって笑い、意味深な事を言う蓮さん。
「へ?何かあるんスか?」
キョトンとする男性同様、私も首を傾げる。
そして、私はすぐに。
蓮さんの放った言葉の意味を理解する事になる…。

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2.

「何だか…暑いわね」
フゥと息を漏らし、胸元を緩めてチラリズム。
うなじの後れ毛をかき上げ、ピンで留めつつ歩み寄って。
下から上へ、ゆっくりと視線を上げて、ご挨拶。
「はじめまして、ね」
「…へっ。あっ、ああ、はい。は、はじめまして」
一瞬呆け、すぐに目を泳がせて返す男性。
ふふっ、なぁに?照れてるの?…可愛い。
クスクス笑いながら、男性に腕を絡めて上目遣いで。今度は…自己紹介。
「私、シュライン。シュライン・エマよ。あなたの…お名前は?」
右手人差し指が伝う、首筋。
男性はガチガチに硬直して小さな声で返す。
「セ、セイジョです」
固く目を閉じ必死な男性の姿に覚える…。
”いぢめたい” 衝動。
「彼女は、いるの…?」
耳元で囁けば、ビクリと体を揺らして。
「い、いません」
男性は返す。
「じゃあ…キスした事は?」
「いや…あの…」
遠慮がちに目を開いて、頬を赤らめる男性。
「ねぇ…どうなの?」
困惑する男性に追い討ちを。
伏せ目で至近距離。
唇が触れ合うまで、もう少し。
あと二十センチ…あと十五センチ…あと十センチ…あと、五センチ…。
甘い悪戯と感触に溺れる前に。
「うわぁぁぁぁーーー!」
男性の戸惑いの叫びが店内に響く。




「…あら?」
夢から醒めたようにキョトンとする私。
それも当然。
見知らぬ男性に腕を絡ませているんだもの。
「ご、ごめんなさい」
わけもわからずパッと男性から離れて謝る私。
私が離れた途端、男性は その場にしゃがみ込んで。
「うぁー…ビックリしたー…」
そう言い頭を左右に振った。
男性の頬は赤らんでいる。わぁ…耳まで真っ赤。
私は首を傾げて言う。
「あの…一体、何が?」
私の言葉に男性は顔を上げ。
私を見上げて困り顔。
さっぱり事態を把握できない私に、蓮さんはケラケラ笑って言った。
「説明してあげるよ。詳しく、ね」

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3.

蓮さんから”詳しい説明”を聞いた私は、お腹を抱えて大爆笑。
そんな事したんだ、私。
全く覚えてないんだけど。
私はクスクス笑いながら、しゃがみ込んだままの男性の頭に手を乗せ言う。
「ごめんなさいね」
男性は顔を上げ、蓮さんを見やって。
「勘弁して下さいよ〜…もぉ…」
そう言って大きな溜息を漏らした。



普段からは想像できない自分の行動だからこそ、色々勉強になったわ。
”せくしぃ路線”なんて、自分には縁のないものだと思ってたけど、
けっこうイケちゃうのかも…なんて、ね。
それにしても、この香水。どんなプレイを考慮して調合したのかしら。
多分、三つ共、同一人物が調合したのよね。
まったくもう。面白いけど、ちょっと呆れちゃうわ。
でも、これ…使えるかもしれないわね。
捕り物系の依頼とか、仕事で活用できそう。
役に立つ保証や確信はないけど、持ってて損する事はないと思うの。
そう思った私は、蓮さんに他二つの香水の効果を確認。
それを聞いてヒィーと頭を抱える男性と、笑いの止まらない私。
「三つ共、貰っても良いかな?」
私が言うと、蓮さんは微笑して頷き。
何だかイヤラシイ口調で言った。
「貧乏探偵に使うのかい?」
私はプッと吹き出す。
そんなつもりは、全くなかったんだけど。
武彦さんに使ってみるの、楽しそうね。
効果を説明した上で「どれ使って欲しい?」なんて聞くのも楽しそう。
…って、やだ。違う違う。
そんな目的で貰ったんじゃないもん。
…本当よ。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

NPC / セイジョ・カート (せいじょ・かーと) / ♂ / 25歳 / アンティークショップ・レン常連客


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           ライター通信          
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気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

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2007/07/13 椎葉 あずま