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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


フレグランス・チョイス

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0.オープニング

紅い、リンゴ型ボトルの香水か。
蒼い、魚型ボトルの香水か。
黄色い、星型ボトルの香水か。

どれでも好きなのを持っていきな。
遠慮する事はないよ。
在庫処分だしね。

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1.

カウンターに並ぶ三つの小さな香水。
それを前に、首を傾げて私は言う。
「くれると言うなら、全部もらうが」
私の言葉に蓮は苦笑して。
「貧乏性ってのも、伝染るもんだねぇ」
そう言いカウンターに頬杖をつく。
蓮の言葉をスルーし、私は香水を一つ手に取って言う。
「どうせ怪しいものだろう?効果は?」
私が手に取ったのは、紅いリンゴ型ボトルの香水。
蓮は、香水を見やりつつ答える。
「紅という色のとおりさ。情熱的に異性に迫る」
「情熱的…?」
「まぁ、わかりやすく言えば色っぽく迫るって事さね」
「…なるほど。いつもいつも男だ何だとからかう奴に効くかもしれんな」
香水をマジマジと見やりつつ言う私に、蓮はクックッと笑って言う。
「おやおや。誰の事だい?それ」
「うるさい」
わかっているくせに、聞くな。
私は呆れつつ、何の気なしに香水を一吹き。
身を包む、さわやかな香り。うん、悪くない。
しかし、聞いた症状とは真逆の香りだな…。
そんな事を思いつつ、他二つの香水の効果も聞こうとした時。
カランカラン―
「おーっす、蓮さん。毎度ぉ〜〜!」
来客。
見た事のない男だが、口調から察するに、蓮とは親しい間柄のようだ。
二十四・五であろう、その男と目が合った瞬間。
私の鼓動は早くなり、同時に意識が朦朧とした…。




さぁ、効果発動だ。どんな変化を遂げるのかねぇ。
私は冥月を見ながらクックッと笑う。
トロンとした目で、ゆっくりと瞬きする冥月を見て、
予定通りに店に来た、古くからの知人である男、セイジョは言う。
「お、先客か。見た事ないコだなぁ。はじめまして、セイジョっス!」
手を差し出し名乗るも、冥月は何も応えない。
そのかわりに…。
「はじめまして…」
冥月は、上着を脱ぎつつセイジョに歩み寄る。
「んがっ!?えっ…ちょ…えぇっ?」
肌を露出し、ジリジリと近寄ってくる冥月に困惑するセイジョ。
私はバンバンとカウンターを叩きながら笑う。

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2.

「ちょ…れ、蓮さんっ。どういう事ですかっ、これっ」
冥月に抱きつかれ頬を赤らめながら言うセイジョ。
「なぁに、ちょっとした実験さ」
「じ、実験って」
「効果を解くには、この二つの香水を同時に、その子に吹き付けるんだよ」
カウンター上の蒼い香水と黄色の香水を示しながら言う私。
困惑の真っ只中のセイジョは、
慌てて私の言うとおり、二つの香水を同時に冥月に吹き付ける。
それが事態を悪化させるだけの嘘だと知らずに。



二つの香水を浴びた冥月は、まさに豹変。
元の性格と香水の三つの効果が重なり…。
さしずめ、スーパーセクシーツンデレ、とでも言おうか。
豹変した冥月はセイジョにギュッと抱きつき、頬を膨らませて。
「離れてよっ。ばかぁっ」
何度も、そう言う。
言ってる事と、やってる事が逆だ。
そりゃあ、セイジョも困ってしまうさね。
「あ、あなたが抱きついてるんですよっ」
耳まで真っ赤に染め、指摘するセイジョに。
「寒いんだもん…」
説得力皆無な言い訳をする冥月。
今日は黙っていても汗の滲む、真夏日だってのに。
「でも…あなたが離れてって言うのなら、離れるわ」
俯き、ゆっくりとセイジョから離れる冥月。
セイジョも男だ。困惑していても、女に抱きつかれて嬉しくないはずがない。
少し残念そうに頭を掻くセイジョ。
どうやら、離れたのも計画の内だったようで。
冥月は、ズイッとセイジョに顔を近づけて言う。
「ホントに…イヤ?」
傾げる首の角度、潤んだ目での上目遣い。
すぐにでも口付ける事のできるギリギリの距離。
セイジョの理性が吹っ飛ぶのが先か、
香水の効果が切れるのが先か。
私はケラケラ笑いつつ二人を見やる、傍観者。

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3.

ハッと我に返った時。
目の前には見知らぬ男の唇。
「うわぁっ!?」
私はバッと男から離れる。
ドンッ―
勢い余ってカウンターに腰を強打してしまい。
「…いった…」
私は顔を歪めて腰を撫でやる。
どういう事だと困惑したりはしない。
原因が理解っているから。
けれど、理解っているからこそ。
羞恥に苛まれる。
何をしたのか、それは全く覚えていないが。
一つだけ、確かな事がある。
あと一秒、我に返るのが遅かったら、私はキスをしていた。
こんな、見知らぬ男と。
「か、帰るっ!!」
私は無駄に大声で、そう言って。
カウンター上にあった三つの香水を乱暴に手に取って逃げるように店を去る。
怪しい香水の所為だとはい理解っていても。
何て事をしでかしたんだ、私はっ…。




「…何か、後悔してる自分がいるッス」
ポツリと呟くセイジョ。
私はクックッと笑い、返す。
「馬鹿だねぇ。遠慮なんてしないで、しちまえば良かったんだよ」
「いやいや、もう…何かパニックで。でも、ほんと、勿体無い事したなぁ」
「何だい、あんた、ああいうのがタイプかい」
「黒髪美女に弱いんスよ。俺」
「へぇ、そりゃあ初耳だ」
長い付き合いであるセイジョのタイプが理解る、
という意外な収穫も得られて。私は大満足。
面白い事になるだろうと踏んで実行したけれど、
ここまで楽しませてくれるとは。
やっぱり、冥月は弄り甲斐があるよ。
満足気に微笑む私に、セイジョは問う。
「蓮さん。彼女…普段はクールなんスか?」
「ん?…まぁ、そうだねぇ」
「じゃあ、さっきのは全部香水の効果だったって事ッスね〜」
複雑そうに笑って言うセイジョ。
「いや…案外、さっきのが素だったりするかもしれないねぇ」
別にセイジョを喜ばせたり、
妙な期待を持たせたりするつもりは、ない。
ただ、素直に、そう思ったんだ。
理解らないけどね。実際は。
…貧乏探偵にでも、聞いてみようかねぇ?ハハハッ。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

2778 / 黒・冥月 (ヘイ・ミンユェ) / ♀ / 20歳 / 元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒

NPC / 碧摩・蓮 (へきま・れん) / ♀ / 26歳 / アンティークショップ・レンの店主

NPC / セイジョ・カート (せいじょ・かーと) / ♂ / 25歳 / アンティークショップ・レン常連客


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           ライター通信          
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2007/07/13 椎葉 あずま