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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ファイブ・コール

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0.オープニング

今宵も鳴り響く、深夜零時の迷惑電話。
取ればいつも、同じような内容。
嫌がらせのように変体発言を飛ばしてくる。
電話の向こうにいるのが女なら、
妙なプレイがお好きで、ってなもんだが。
残念ながら、電話から聞こえてくるのは男の声。
何だかなぁ。
一体、何だってんだ。
俺に、どうしろってんだよ。

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1.

深夜零時にかかってくる、おかしな電話。
凄く迷惑だって事はないんだけど、
疲れて仮眠を取ってる武彦さんにとっては、迷惑な話よね。
それにしても、変な現象。
一度、零ちゃんに色々見てもらって”人”の仕業ではない事はわかったんだけど。
毎晩毎晩、よく飽きないなぁ。
とくに害を及ぼす妖ではないようだけど、
ちょっと悪戯が過ぎるわね。

「じゃあ、おやすみなさい。頑張ってください〜」
目を擦りながら言う零ちゃん。
私と武彦さんはヒラヒラと手を振り、
口を揃えて言う。
「おやすみ」




さてさて。
今まで放置してきたけれど、今日はそうもいかないわよ。
電話の子機をテーブルに置き、それを睨みやりながらムゥと眉を寄せる私。
「…お前が取んのか?今日」
苦笑しつつ武彦さんが言った。
「うん。まだ取った事ないもの」
返すと、武彦さんはソファにコロンと寝転がり楽しそうに笑う。
…何よ、その笑い方。引っかかるなぁ…。
RRRRR―
そんなことを考えていると、問題の電話が。
時計を見やり、時刻を確認。
きっかり、零時。
チラリと武彦さんを見やる私。
コクリと頷く武彦さん。
五回目のコールで取る受話器。
ピッ―
「はい。草間興信所」
私が言うと、受話器から咳払いのようなものが聞こえた。
…いつも武彦さんが取るから、ちょっと驚いたのかしら?
「もしもし?」
武彦さんとアイコンタクトを取りつつ言う私。
すると受話器から甲高い声で。
『お…お姉さん、今日は何色のブラジャーしてんの?』
下品な質問が飛んできた。
何これ、気持ち悪い…。
顔をしかめる私に、小声で武彦さんが問う。
「何て言ってる?」
「…ブラジャー、何色?って」
顔をしかめたまま私が返すと、
武彦さんは笑いを堪えてクッションに顔を押し付ける。
私はパシパシと武彦さんのお尻を叩きながら、
受話器に向かって無愛想に返した。
「黒よ。それが何か?」
ブツッ―
突然切れる電話。
…何なのよ。
聞いてきたから教えてあげたのに、その態度。
何か、不愉快だわ。


「また明日、取ってみましょ。もう暫く様子を見た方が良さそう」
電話をテーブルに置きつつ私が言うと、
武彦さんは頷きつつ笑って。
「黒なのか。今日」
そう言った。
「んもぅ、馬鹿っ」

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2.

深夜零時までの待機時間。
零ちゃんが部屋で眠りについて。
リビングで武彦さんと二人きり。
かかってくるのは変な電話だけど。
この待機時間、楽しくて嬉しい。
武彦さんにペタリとくっついて電話を待つ私。
大きな欠伸をする武彦さん。
眠そうね…不安気に見上げて思う。
RRRRR―
今夜もきっかり零時に。その電話は鳴り響いた。
電話をとろうとする私の手を押さえ、
自分が取ると合図する武彦さん。
ピッ―
「はいよ。草間興信所〜」
頭を掻きながら言う武彦さんに頬をペタッとくっつけて。
私も聞き入る。
すると甲高い声は、少し躊躇って言った。
『ふ…二人の下着の色は?』
一緒に聞いてる、ってのは把握できてるのね。ふむふむ。
「また下着かよ」
苦笑して言う武彦さん。
うん、確かに。
昨晩も、そういう質問だったわね。
下着好きの妖なのかしら。やぁねぇ。
私はクスクス笑って言う。
「似通った発言は、減点対象ね」
私の言葉に武彦さんが続く。
「あぁ。五点マイナスだな。あーあー…」
私達のダメ出しのような発言に、
甲高い声は暫く黙って。
『………くそぅ』
その台詞と舌打ちを残して電話を切った。
ケラケラと笑い転げる私と武彦さん。
勝った!みたいな感覚。ちょっと、気分いいわね、これ。




ダメ出しをして、舌打ちを返された。
もう、かけてこないかも。なーんて、安心感を覚えたのは大きな間違い。
その次も、その次の晩も。
妖からの電話は続いた。
何が目的なのか、もうさっぱりわからないけれど。
ひとつだけ、確かな事がある。
この妖は、負けず嫌いだって事。
毎晩かけるも「聞き取りにくかった」とか「独創性がない」とか散々なダメ出しをくらって。
悪戯電話をやめる所か、発言を修正してくるようになったのだ。
様子見から一週間が経つ頃には、内容は一変。
ただの変態電話から、たどたどしいポエム電話に変化を遂げた。
いつからか妖は一方的に電話を切る事を止め、
発言の後、数秒待って感想を待つ。
おかしな関係。
その関係も暫く続くと、普通の会話が成り立つようになっていった。
『キミの為に華になる…』
「ふむぅ」
『ど、どうだ…?』
「”キミ”より”あなた”の方が良いと思うわ。柔らかくて。あとリズム的にも」
『な、なるほど…』
深夜零時のおかしな会話。
果てには妖相手に詩集を朗読しだす私。
武彦さんは苦笑しつつ、毎晩言った。
「…よくやるよなぁ。お前も」
だって、素直なんだもの。この妖ってば。
向上心もあるし。
語学者のはしくれとして、こういうの放っておけないのよ…。

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3.

妖との、おかしな関係も、かれこれ一ヵ月半。
世間話までするようになった間柄。
武彦さんは、妖相手に心を許しすぎだって文句を言うけれど、
私は、妖の相手をやめない。
私が席を外している時、
武彦さんが電話を取ると、妖が「彼女は?」と言ってくる始末。
電話を受け取る私に、小声で「何かムカつく」と武彦さんがボヤくのも、
いつしか”あたりまえ”になった。

迷惑をかけたいわけじゃなくて。
この妖は、話し相手が欲しかっただけ。
まだ姿を見せてはくれないけれど。
いつかは、姿を見せてくれるんじゃないかしら。
私は、深夜零時のいつもの電話で。
ハッと気付き、妖に告げる。
「あのね、明後日は仕事で朝早いの。だから、明日は電話遠慮してね?」
私の言葉に妖は素直に返す。
『そうか。わかった。じゃあ、明後日の夜ならいいのか?』
「ふふ。いいわよ」
『うむ。わかった!』

ほらね。聞き分けの良い、いい子なの。
武彦さんは、面白くなさそうだけど。
こう考えてみたらどうかしら?
家族が一人増えた、って。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ (しゅらいん・えま) / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂ / 30歳 / 草間興信所所長、探偵

NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀ / --歳 / 草間興信所の探偵見習い

NPC / 電鬼 (でんき) / ♂ / ??歳 / 電波を纏った小さな妖


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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/07/18 椎葉 あずま