コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ブラザー・ソウル - 前編 -

------------------------------------------------------

0.オープニング

覗き込む部屋の中、
部屋中に服を並べて思い悩む妹の姿に。
複雑な感情を抱くのは、兄として当然の事。
どんだけ悩むんだよ。
そんなに悩む必要なんて、ねぇだろ。
適当でいいじゃねぇか。
何を、そんなに気合入れちゃってんだよ。

------------------------------------------------------

1.

買い物から戻ってきた私の目が真っ先に捉えたもの。
それは、零ちゃんの部屋を、おかしな格好で覗く武彦さんの姿。
私は紙袋を抱えてクスクス笑いつつ武彦さんに歩み寄る。
「何やってるのよ」
小声で声をかけると、武彦さんはビクッと肩を揺らして。
私の顔を見やると、クイクイと部屋を親指で示した。
「…?」
なぁに?首を傾げつつ、そっと覗き込むと。
そこには、大量の服を前にムムゥと眉を寄せる零ちゃんの姿が。
…なるほど。
昼食時から、何か様子がおかしいなぁとは思ってたけど。
そういう事だったのね。
いいじゃない。デート。応援してあげなくちゃ。
「協力してこいって事ね?」
悪戯に微笑んで言う私。
「ぅぉぃ」
すかさずツッこむ武彦さん。
私はクスクス笑って、紙袋を武彦さんに渡す。
わかってるわよ、あなたの気持ちは。
心配なんでしょ?気になって仕方ないんでしょ?
出来ることなら、行かないで欲しい…とまで思ってるかもね?
でも、残念。
私は、零ちゃんの味方よ。
というより、姉として当然。
デートに着て行く服に悩む妹君を救う義務が、私にはあるもの。
「じゃ、行ってくるわ。それ、冷蔵庫にお願いね」
ポンと肩を叩いて言うと、武彦さんは顔をしかめて。
「…うぉーい」
不安そうにうな垂れた。


そっと扉に手をかけ、ゆっくりと開きながら私は言う。
「悩んでますねぇ」
バッと振り返る零ちゃん。
部屋に入ってきたのが私だとわかると、ホッと安堵の表情。
そんなにビクつかなくても良いじゃない。
気持ちは理解るけど、武彦さんに遠慮してちゃあ、
いつまでたっても、決められないわよ?

------------------------------------------------------

2.

「うーん。そうねぇ…これなんか、どう?」
並べられた服の中から、涼しげな水色のワンピースを取る私。
「あっ…わ、私も、それ良いかもって思ってたんです」
嬉しそうに微笑む零ちゃん。
私はウンウンと頷きつつ言う。
「どこに行くの?」
「えっと…今日は銀鐘公園に」
公園かぁ。なるほどなるほど。
そうね、今日は暖かいし。散歩には、うってつけね。
遊園地とか、動く場所ならワンピースだと、ちょっとアレなんだけど、
それなら、大丈夫ね。うん。
「ちょっと着てみてくれる?」
私が言うと、零ちゃんは素直にサッと着替えて照れくさそうに言う。
「ど、どうですか?」
「うん。可愛い」
ニコリと微笑んで言う私。
零ちゃんって、結構どんな服でも似合うのよね。羨ましいなぁ。
スカート丈、もうちょっと短くても良いんだけど。
あんまり短いと、武彦さん、うるさそうだもんね。
私はクスクス笑いつつ、零ちゃんに問う。
「彼の好きな色は?」
「えっと。白です」
「了解」
私は微笑みつつ零ちゃんの髪を低い位置で二つに結い、
鏡の前にあった白い花のついた可愛いピンで、前髪を少し斜めに留める。
「おっ…おでこ出すの、恥ずかしいです」
両手で額を押さえて恥ずかしそうに俯く零ちゃん。
うわぁ、どうしよう。
すごく可愛い。抱きしめたい。
ギュゥッ―
「うにゅっ…シュ、シュラインさん〜〜?」
って。もう、抱きしめちゃってるけど。


透き通るような白い肌、頬に淡くピンクを入れて。
や〜〜ん…お人形みたい。
施すメイクのハマり具合に、笑みが止まらない私。
みるみる変わっていく自分の姿に、零ちゃんも楽しそう。
そうなのよねぇ。
相手の事を想っての御洒落って、楽しいのよね。
悩んでる時間も幸せだったり。
私も、ちょっと気が張るお出かけ、増やそうかしら。
御洒落の勘が鈍りそうだもの。
講演会で服選ぶのも、楽しかったしね。
動きやすい格好は大好きだけど、たまにはねぇ。
デート用に気合を入れて…といきたいところだけど、
実際、難しいわよね。
いつもの格好で、いつもの居酒屋デートも楽しいんだけど、
そういう所に気張って御洒落して行くっていうのは、ちょっと違うしね。
誘ってみようかな?たまには、私から。
なぁんて、ね。
御洒落に夢中な零ちゃんを見て、感化されちゃったかな?

------------------------------------------------------

3.

「じゃあ…い、行ってきます」
深々と頭を下げて言う零ちゃん。
私は零ちゃんの頭を撫でて見送る。
「楽しんで来てね」
ちょっと緊張しすぎかもしれないわね。
もう少し、楽に構えていけたら良いのだけど。
まぁ、難しいか。
零ちゃんを見送った私は、そそくさと自室へ。


零ちゃんが興信所を出て十分後。
コツコツ―
自室の扉を叩く音。
私はクスッと笑って言う。
「どうぞ」
ガチャッ―
部屋にノソノソと入ってきた武彦さんは、やぶからぼうに言った。
「どこ行くって言ってた?」
「銀鐘公園」
微笑みながら私が返すと、武彦さんは頭を掻きながら。
「行くぞ」
何の躊躇いもなく言った。
やっぱり来たか。予想通りだわ。
動きやすい服に着替えを済ませて準備していた私は、
クスクス笑って武彦さんに従う。
「はいはい」

気乗りはしないわよ。勿論。
でも、武彦さんって頑固だから。
言っても聞かないのよ。
私に出来る事は、一つだけ。
武彦さんがデートの邪魔をしないよう、見張る事。
さぁて。頑張りますかっ。

------------------------------------------------------


□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□


【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / 草間・武彦 (くさま・たけひこ) / ♂

NPC / 草間・零 (くさま・れい) / ♀


□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
           ライター通信          
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□


こんにちは。いつも、発注ありがとうございます。心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです。また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/07/20 椎葉 あずま