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<東京怪談ウェブゲーム あやかし荘>


お留守番
気がつけばヒマワリが咲いているあやかし荘。

そこには実に数々な住人がいる。
しかし、その大半が霊的なものらしいという噂だ。

そんな霊が嫌いなくせに管理人をしている者がいた。
因幡恵美だ。

恵美以外の人間は天王寺綾、三下忠雄のみ。
人数が少ないので、3人とも仲間意識が強い。

「アンタも大変やなぁ」

そう言ったのは天王寺綾だった。

「ウチにできることはこの『あやかし荘』を支えるお金をやることしかないけど……」
「でも、ここに住んでる人間は私を含めて3人でしょう」
「3人もおるやんか!でさ、本題に入りたいんやけど」
「本題?」
「ウチ、明日から3泊4日で海行くんよ」
「えぇ!」
「どうしたん?恵美」
「私もその日に友達と旅行するんですよ」
「ええ〜〜〜!!」

驚いた綾は、

「早速代わりの者を手配するわ」
「待って。まだ三下くんがいるじゃない」
「あぁ、おったなぁ。影の薄い奴。電話してみよっか」

綾は三下の携帯ではなく、編集部に連絡した。

「もうすぐお盆でしょう。お盆進行が地獄で帰らせてもくれません」

編集部って大変なんだね……そう二人は思い、電話を切った。

「じゃあウチが代わりのものを急遽手配するから、安心せぇ」
「ありがとう。天王寺さん」

数日後、現れたのは不思議な少女だった。
薄い白のサマードレスに純白のビキニを着て、そして気になったのは長い耳。

「その子人間なの?」
恵美はおもわず聞いてしまった。

「いいえ。エルフです。人間じゃないとダメだったのでしょうか?」
不安気に話すエルフの女の子。

「いやいやいや。そんなことないですっっ」

と恵美は冷や汗がだらだらと流れていた。

「藤田あやこです。よろしくお願いします!」
「いえいえ。こちらこそよろしくお願いします」

しばらくあやかし荘を見て、あやこは
「なんだか楽しそうな場所ですね」

と言った。

次の日、綾と恵美はあやこに全てをまかせてあやかし荘を出た。

「まずは干し泥棒釣りでもしようかなー」
そう思ったあやこは肌着をふりふりに縫って、紅茶の染みをつけてみた。
そしてわざとらしく、

『泥棒さんいらっしゃい』

と言いたくなる場所につけた。
あやかし荘のようなところでも泥棒も行きにくいもので、なかなかくいついてこない。
昼ごろからかけていた染み付きの肌着は、まだ誰も取ろうとしない。
気がついたら夕暮れになっていた。

「あーあ。じゃあ違う遊びでもしようかな」

そう言い、あやこは防音の結界を張って、この屋敷にいる幽霊に問いかけた。

「ボクも参加していいかな?」

と狐の妖怪である柚葉がやってきた。

「えぇ。妖怪でも幽霊でも参加していいのよ。なんといっても音楽祭ですもの」

すると美しい着物を着た黒髪長髪の美人がここにやってきた。
「……」

そこには歌姫がいた。歌うこと以外はしゃべることができないので、
右人差し指を鼻のあたりに置いた。

「恵美さんに聞いてるわ。あなたの歌が絶品だって」

そしてあやこと柚葉と歌姫と名前のわからない幽霊たちとラップ音と歌姫の歌で
ミニコンサートが始まった。歌姫の美しい歌声は私たちの下手なラップ音を
さらに輝かせるように響いていく。そうしている間にラップ音は小さくなっていった。

「……やこ、あやこ」

あやこはハッとした。歌姫の声に聞き惚れて自分の楽器演奏を怠って
しまったからだ。

あやこは歌姫に近づいてこう言った。

「すばらしい歌声ね」

すると歌姫はしゃべることなく、涙を流してくれた。

「こんなに美しい声で歌えるのにしゃべられないなんて」

そしてあやこはあることを思い出した

「あー。肌着泥棒のこと忘れてたー」

と、現場にいくと既に盗まれたあとだった。

「がーん。最高の不覚だわ」

でもそんなことで落ち込んでいられない。
あやこは別の遊びを思いついた。

「ミス・妖怪コンテストー」
妖怪の中で一番可愛い子を当てるというのだ。
たくさんの可愛い子や美人な人を集めてあやこが審査するものだ。
実は集めるのに苦労した。歌姫や柚葉は出てくれたのだが、
あとは知人の妖怪に出てしまうしかない。
そんな中、意外な人物が出てくれることに。

「ミス・妖怪コンテスト!優勝者は……」

緊張が走る。

「ごめんなさい。高峰・沙耶さまの美しさにはかないません」
「そうでしょうね。私は様々な美人コンテストを総なめにしてたから」
「あ、でもみんな可愛かったです。選ぶのに苦労するくらい」
「ボクも可愛かった?」

と聞いてきたのが柚葉だった。

「もちろん柚葉も可愛いよ」

となんとなくフォローをいれたが、本当に可愛いとあやこは思っていた。

――気がつけば恵美や綾が帰ってくるのが明後日になってしまっていた。

「はーい。今日は人魂をそうめん流ししまーす」

と朝からあやこは元気いっぱいだった。

「なんで朝からそんなこと言うの?」
と柚葉は思った。

「何言ってんのよ。今から竹を探しに行くの!柚葉はなんかいいところ知らない?」
「それなら知ってるよ」

と入っていった竹林は大きな竹でいっぱいだった。

「わ……私にこれをどうにかするのは……」
「ボクにまかせてよ。こう見えて仲間はいっぱいいるし、力持ちだよ」

そういうわけで、あやこは柚葉たちに全てをまかせてぼーっと過ごしていた。
ワイングラスを片手にジュースをゆらしていたあやこにお呼びの声が。

「あやこーできたよー」
「ほんと!」

窓の外をみるとなにやら和風なセットが見える。妖怪たちも霊魂たちもたくさん見かける。

「わー楽しそう。すぐ行ってくるね」

バタバタとあやこが降りてくると小さいお祭りみたいな風景になっていた。
はっぴを着た妖怪たち。美しく光る霊魂たち。その真ん中には半分に割られた竹に
水がそそがれていた。

「すごーい!お祭りみたい」
あやこはかなりわくわくしていた。

柚葉は大きな声で、

「それでは、人魂を竹から流しますので、好きなだけ持って行ってくださーい」

そうやって人魂争奪戦が始まった。あやこももちろん参加。

「あのピンク色の人魂もらおうかな?」
しかし、あっさりと通り過ぎていき、手に入れることはできなかった。

そうやっているうちに夜中になってしまった。柚葉は、

「今日、人魂をゲットできた人はおめでとう。もらえなかった人には残念賞があります」
「残念賞!?」

真っ先に反応したのがあやこだった。

「ペンペン草に謎な肥料をまいて一夜漬けの成長日記をかくことでーす」
「それって残念賞というより罰ゲームじゃないの?」

と、あやこは思ったが、しぶしぶ参加することにした。
とりあえず、ペンペン草に謎な肥料をまいてみた。
するとペンペン草はくねくねと形を変えていく。

「わー。スケッチ、スケッチ」
でもあやこは楽しかった。今日が最後の夜だから。

ペンペン草は最後にはどこかのゲームで見たことのあるお花になってしまった。
「これって……版権的に内緒の方がいいよね」
「まあなぁ」


朝になると恵美や綾が帰ってきた。
「ただいま。あやこちゃん」
「帰ってきたでーあやこ」
「恵美さん、綾さん。おかえりなさい」

一通りのあいさつが終わったら綾がおいしそうな土産物を持ってきた。

「これ、せめてものお礼や。受け取ってな」
「そんな……こっちも楽しかったし」

しばらく間が空くと恵美と綾は気づいたようだ。

「なんや?あのゲームに出てきそうな花は」
「あああああ、えと、気にしないで下さい」
あやこはついあわててしまった。

「ごめんなさいね、あやこちゃん。大変だったでしょう」
「いえ、そんなことありません。むしろ楽しかったくらいです」

肌着ドロボーを引き寄せたこと。
歌姫との音楽会。
ミス妖怪コンテスト。
人魂流し。
ペンペン草のスケッチ。

どれもどれも大切な思い出だった。

あやこは一言だけ言った。
「恵美さん」
「なあに?」
「ここには悪い霊も妖怪もいません。だから安心して管理してください」

わかったわ、という言葉を最後にあやこは自分の世界に帰っていった。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【7061 /藤田・あやこ/ 女 / 24歳 /女子大生】
【NPC /因幡恵美 / 女 /  21歳 /あやかし荘の管理人】
【NPC /天王寺綾 / 女 /  19歳 /女子大生】
【NPC /柚葉   / 女 /  14歳 /狐の妖怪】
【NPC /歌姫   / 女 /  23歳 /あやかし荘の妖怪】
【NPC /高峰・沙耶/ 女 /  29歳 /高峰心霊学研究所所長】

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■         ライター通信          ■
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こんにちは。真咲翼です。まだまだ未熟なもので、
情景描写などがあまりない等の不満はあるかもしれません。
私はいつも小説にテーマを残して作るのですが、
クライエント様のご依頼の中から見出せたので、それを使いました。