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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


ヴェデスタの封扉 (前編)

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0.オープニング

ここか…。
まぁ、確かに。
怪しげな空気が漂ってる。
しかしまぁ、組織も よく見つけるもんだ。
こんな偏狭の洞窟なんて。

俺は煙草をふかしつつ、
出掛けに呼んだ”アイツ”を待つ。

祈っておこうか。
見事な金銀財宝が眠らん事を。

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1.

呼び出されて、急ぎ足で向かう聞き覚えのない洞窟。
ヴェデスタの洞窟…か。なぁんか、どこかで聞いた事があるような気がするのよね。
気のせいかしら…なんて事を思いつつ、洞窟に到着。
洞窟といっても、穴が開いていて、そこから入るというものではなくて。
立派な扉があって、そこから入るみたい…。
「お待たせ」
私はフゥと呼吸を整えて言う。
「すまないな。急に呼び出して」
「いいわよ。慣れてるから」
クスクス笑いつつ、扉に手をあてがう私。
探偵さんは肩を竦めて苦笑。
別に嫌味で言ってるんじゃないのよ。
似たように、急に誘ってきたりする人が身近にいるから。
そう意味で、慣れてるって言ったの。
まぁ、その辺は理解してるんでしょうけど。あなたの事だから。
「それで…ひとまずは、この扉を開けなくちゃならない、って感じ?」
振り返って顔を見やりつつ言うと、
探偵さんはコクリと頷いて、返す。
「あぁ。中には金銀財宝が眠っている…かもしれない」
「あははっ。曖昧なのね」
笑って、髪を結わえなおす私。
探偵さんは煙草に火をつけ、呆れ気味に言う。
「追求しても、はぐらかされるだけだからな」
「ふふ。大変なお仕事ね」
お給料とか、手取りとか。その辺、どうなってるのかしら。
IO2って、正直よくわからないのよね。
何度か仕事のお手伝いをさせてもらってはいるけれど。
まぁ、謎がウリな組織っていうのも、アリよね。
ありきたりな気もするけど、それをウリにせざるを得ないって事もあるでしょうし。
「立ち尽くしてたって事は、普通にやっても開かないのよね?これ」
問うと探偵さんは煙を空に吐き出して頷く。
まぁ、そうよね。
簡単に誰でも開けられるようなら、
調べて来いだなんて指示が飛んでくるわけないものね。
「ちょっと調べてみていい?」
懐からルーペを取り出して言う私。
「何か、わかりそうか?」
首を傾げて私の行動を見やる探偵さん。
「んー…とね。あぁ、やっぱり…」
「何だ、どうした?」
「これ、模様じゃなくて文字なの。よっく見ないとわからないけどね」
扉に描かれた丸い模様を示して言う私。
癖があるけれど、知ってる古代文字と同じ系列っぽいわ。
出だしは ”封解を試みる者へ捧ぐ”
封印の解除方法が記載されてるみたいね。
「解読…できるのか?」
「ちょっと時間を貰えれば」
「大したもんだな」
壁に凭れて言う探偵さん。
私はルーペをあてがい、解読にあたる。
「ねぇ。最近、萌ちゃんの姿を見ないけど、元気?」
「あぁ。何だか面倒な仕事を任されて忙しそうだが、元気だよ」
「そうなの?凄いわねぇ。無理してなきゃいいけど…」
「あいつから元気を奪ったら、何も残らねぇだろ」
「あら。そんな事ないんじゃない?」
こんな、他愛もない雑談を交えながら。

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2.

ルーペを懐にしまい、ハフゥと大きく息を漏らす私。
その姿を見て、探偵さんは煙草を踏み消し満足そうに笑って言う。
「何て書いてあった?」
せっかちね。少し、休憩させてあげようとか思わないの?
私はクスクス笑いつつ、扉に刻まれた古代文字を指でなぞって。
「翻訳するわ。覚悟は良い?」
そう言いつつ、ふきだしそうな笑いを堪える。
「…?あぁ」
不思議そうに首を傾げて頷く探偵さん。
まぁ、無理もないわね。何がおかしいのか、さっぱりわからないでしょうから。
でも、すぐに理解るわ。
私が、何故。こんなに笑いを堪えているか。

封解を試みる者に捧ぐ―
この扉はヴェデスタの封扉―
神なる存在が眠る祠―
決して眠りを妨げる事なかれ―
さすれば神は汝の来訪を歓迎するであろう―
如何なる理由を持って扉を開けんとするか―
共に開けんとする者と手を繋ぎ心に思い唱えよ―
開け夢見る扉―
我を誘え―
ドリーミングドリーミング―

読み上げた古代文字に呆然とする探偵さん。
私は堪えきれなくなってプッと拭き出す。
「あっははははっ」
呆けていた探偵さんは、私の笑い声で我に返り。
十二本目の煙草を踏み消して苦笑する。
「…解読し間違いを期待しても無駄か?」
「っふふふ。残念ながら無駄よ」
笑涙を拭いつつ返す私。
嘘だったら良いって、あなたなら思うわよね。
当然よね。うん。そう思っていたから、笑いを堪えるの必死になったんだもん。
解読から単刀直入に言えば、
私とあなたで手を繋いで。
開け、夢見る扉、我を誘え、ドリーミング・ドリーミングって唱えなくちゃいけないの。
可笑しくないわけないじゃない?
クールなあなたが、こんな台詞を言わなくちゃならないだなんて。
「…始めの方は、至って真面目な文なのにな」
苦笑して言う探偵さん。
そうなのよね。始めの方は読んでてドキドキゾクゾクする文なのよ。
でも、途中から一気に崩れちゃうの。それまでの雰囲気を一気に。
この扉を封した人のセンスってば、凄まじいわ。もう、脱帽よ。
何で、よりによって、そんな呪文にしたのかしらね。
「…はぁ。参ったな」
頭を掻いて困り顔の探偵さん。
私は探偵さんに歩み寄り、彼の肩に手を乗せて言う。
「どうする?やるなら準備が必要だと思うけど」
「準備…?」
「うん。内容的に、ちょっと不安だから。防衛対策をね」
ふざけた呪文ではあるけれど、どうやら夢に関している扉のようだし。
開けた途端に精神攻撃系の打撃とか、
その術中にはまっちゃう可能性も否めないじゃない?
もっと言えば、欲望願望を増幅させちゃって判断力を鈍らされるとか。
考えすぎかもしれないけど、警戒していて損はないと思うの。
警戒もなにも必要ないようなものなら、
IO2が調べて来いなんて指示、飛ばさないような気もするし、ね。
「…そうだな。じゃあ、とりあえず」
パンッ パンッ パンッ―
私の提案に納得した探偵さんは、立て続けに三度発砲。
放たれた銃弾は、扉の周りに三角形に三箇所。
見た事のない赤い銃弾に首を傾げていると、
探偵さんは銃を懐にしまって教えてくれた。
「組織が開発した符弾だ。結界を張る…らしい」
「そこも曖昧なの?」
苦笑して言うと、探偵さんは私に手を差し出して、返す。
「そういう組織だからな」
私はクスクス笑って、探偵さんの手を取った。

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3.

扉の前で手を繋いで並ぶ私と探偵さん。
任務を忠実にこなそうとするも、これから行う事にゲンナリ気味の探偵さん。
私は、そんな彼を見やってニッコリ微笑む。
「開け、夢見る扉、我を誘え、ドリーミング・ドリーミング、よ。オーケー?」
「…………あぁ」
散々躊躇ってから、俯いて返す探偵さん。
私は、そんな探偵さんの姿にクスクス笑う。
私は笑って、探偵さんは溜息を。
何度かそれを繰り返して、ようやく。
私達は揃ってフゥと息を吐いて、気持ちの切り替え。
ピッと表情をひきしめ、扉を睨むように見やり。
同時に息を吸い込んで、唱える。

「開け、夢見る扉、我を誘え、ドリーミング・ドリーミング」

気持ちの整理に時間を費やした為か、
呪文の詠唱は一回目で見事に重なり合った。
呪文に反応し、白く輝く扉。
探偵さんは繋いでいた手をパッと離すと、大きな溜息を漏らした。
「お疲れさま」
探偵さんを労いつつ輝く扉を警戒する私。
けれど十分な警戒は無意味で。
扉は何の害も及ぼさず、ただ眩く輝くだけで、静かに開いた。
「…何だか拍子抜けしちゃうわね」
開いた扉を見やりつつ苦笑して言う私。
探偵さんは懐から銃を取り出し、いつでも発砲できるよう構えつつ呟くように言う。
「警戒が必要なのは、中かもしれないな」
探偵さんの言葉に私は真剣な表情で頷き。
うっすらと明かりの灯る洞窟内を見やる。
「行くぞ」
先陣切って、洞窟の中へ入っていく探偵さん。
私は妙な緊張と興奮と期待を抱きつつ、彼の後を追う。
さぁて、何が出てきますやら…。

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    登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【 整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

0086 / シュライン・エマ / ♀ / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

NPC / ディテクター / ♂ / 30歳 / IO2エージェント



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           ライター通信          
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こんにちは。いつも、発注ありがとうございます!心から感謝申し上げます。
気に入って頂ければ幸いです!また、どうぞ宜しく御願いします^^

2007/08/01 椎葉 あずま