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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


夏と迷子と海水浴

「海行きたいですよねー」
「ああ、海ねー。俺も今年はスイカ割りたい……」
 蒼月亭の昼下がり。カウンターの中にいる従業員の立花 香里亜(たちばな・かりあ)と、常連の夜守 鴉(よるもり・からす)は、そんな話で盛り上がっていた。曰く、去年は忙しくて海に行く暇がなかったので、今年は海水浴に行きたい。そんな他愛ない話だ。
 だがそれを聞いていたマスターのナイトホークは、つれない態度でこう言った。
「俺パスな。つか、日曜日に海に行ったら泳ぐどころじゃないから、平日に行ってこい。俺は仕事する」
 どうもナイトホークは、海水浴には乗り気でないようだ。鴉はガイドブックを開きながら、アイスコーヒーの氷をつつく。
「いいよ、香里亜ちゃんと行くから。それはいいけど、どこがいいのかね」
「そうですねー。私も鴉さんもこの辺の地理詳しくないんですよね」
 香里亜は北海道から東京に来ているし、鴉はアメリカ出身だ。海に行きたい気はあれど、人混みいっぱいなのは嫌だし、かといって地理に詳しくもなく……。
 するとその話を聞いていた篁 雅隆(たかむら・まさたか)が、桃のゼリーを食べながらこう言った。
「海行くのぅ?だったら、うちの会社の保養所来るー?」
「行きます!」
 即答する香里亜。雅隆の話では保養所の近くのビーチは貸し切りで、社員の家族などはいるが、他の海水浴場よりは断然すいているという話だ。だったらその誘いを断る意味がない。
「んじゃ僕も行くから、他の皆も誘って行こー」
「そだね。人数多い方が楽しいし」
 何とかこれで海に行ける。ほっとする香里亜と鴉に、雅隆はスプーンを持って何か気がついたように首をかしげた。
「ところで、二人とも何でそんなに海行きたいの?」
「え?」
「それはちょっと……海水浴以外に、理由いる?」
「んにゃ。僕も海行きたいからどうでもいいけど」
 海水浴やスイカ割りもしたいのは本音だが、二人が海に行きたい本当の理由。
 それが鴉の後ろにいる、迷子の霊を連れて行くためとはとても言えはしなかった。

◆【海に行こうよ】

「鴉さん、冥月さんと水着買ってきましたから、海行くのばっちりですよ」
 冥月がコーヒーを飲んでいるカウンターから少し離れた場所で、香里亜と鴉が話をしていた。鴉の職業的に、蒼月亭で顔を合わせることは少ないのだが、今日は珍しく同じ時間だ。
「了解。行き帰りもドクターが車出してくれるって話だし、ちょっとぐらい多くても平気みたいよ」
 暢気にそう言っているが、冥月は鴉の後ろにいる存在に気付いていた。
 「見える」訳ではないが、微妙に影が揺らいでいる。その揺らぎは丁度子供一人分くらいだ。そこには確実に何か「いる」
「嫌な予感的中だ」
 鴉がいると霊か死体が絡む。冥月はすっと立ち上がると、カウンターに入り、後ろから庇う様に香里亜を抱寄せた。
「ほにゃ?」
 驚く香里亜に構わず、冥月は軽く鴉を睨む。
「この娘は厄介事に引込まれやすい。十分注意しろ」
 だがその視線に鴉は全く怯む様子もなく、アイスコーヒーのストローをくわえたまま冥月の顔を見た。
「注意はしてるし、危険なものだったら人なんか誘わないでしかるべき所に頼むかな。そうやって警戒するのが癖だって言うなら仕方ないし、香里亜ちゃんの彼女だったら空気読めなくてごめんねーって思うけど、そんなに喧嘩腰だとこっちも困るのよ」
 このタイプのかわし方をする相手は苦手だ。
 そんな事を思っていると、香里亜が冥月を見上げてにこっと笑う。
「大丈夫ですよ。悪いものじゃないですし、海に行くついでに連れて行ってあげようってだけですから。鴉さんともちゃんとお話ししてますし。あと鴉さん、私は別に誰かとお付き合いしてませんよー」
「うん、知ってて言ってる」
 やっぱりこのタイプは苦手だ。小さく溜息をつくと、冥月は自分の席に戻る。
「基本的に海水浴行って、海で遊んで、スイカでも割ろうってだけだからさ。俺の後ろにいるのはオプションみたいなもんで。それでも良かったら皆で行かない?別に迷惑かける気はないのよ、俺だって」
「やっぱりダメですか?私は今年海行きたいなーって思ってますし、迷子さんも連れていってあげたいんですけど……」
 こうまで言われて行かないわけがないだろう。何より香里亜が心配だし、水着も一緒に買いに行った。これで行かないと言って、香里亜にしょんぼりとした顔をされるのは辛い。
「分かった。何か用意して欲しい物があったらいまのうちに言え」
 すると香里亜がぱぁっと嬉しそうに笑う。
「冥月さん、スイカ。スイカ用意して下さい。鴉さんスイカ割りしたことないっていうんで、正しいスイカ割りのお作法を……」
「アレって日本独特だよね。あっちで聞いたことないから、どんなものか知りたくて」
 この調子なら大丈夫か。
 警戒さえしなければ、鴉も割に普通の青年だ。
「分かった、スイカだな。私が正しいスイカ割りを教えてやろう」

◇【海の青 空の青】

「うおー、うーみー!」
 海に来て一番はしゃいだのは、この中では表向き最年長の雅隆だった。今日は着替えやすいようになのか、普通のあっさりとしたパーカーにファイアーパターンの赤いサーフパンツだった。ただし大きな麦わら帽子が印象的だ
「あれ?女性陣の皆さんはどちらに?」
「更衣室があるって着替えに行ったよ」
 パラソルなどを立てているデュナス・ベルファーは、シンプルな青系のサーフパンツで、それを手伝っている草間 武彦(くさま・たけひこ)は黒のサーフパンツに青系のパーカーだ。
「女性陣が着替えてくるまで、俺達割と暇だねぇ」
 鴉も黒に髑髏が着いたサーフパンツ。どうやら最近はこのタイプの物が主流らしい。まあ、あまり海で競泳用の海パンを履いている者もいないが。
 そんな皆の周りで荷物を整理したりしながら、初瀬 日和(はつせ・ひより)は羽角 悠宇(はすみ・ゆう)に、小さくそっと頬笑んだ。
「やっぱり水着も持ってくるんだったかな」
 日和は少し前まで風邪をひいていたので、今日は波打ち際で遊ぶ程度に留めるつもりでの参加だ。悠宇は日和の水着姿が見られないことが少し残念だったが、水色のワンピースも、普段と違ってアップにした髪もとっても綺麗で、どきどきしている。
「じゃあ、俺が日和のぶんまで何か探してくるよ」
「うん、波打ち際で遊ぶぐらいなら、大丈夫だから」
 近くにある海の家では、ナイトホークと氷室 浩介(ひむろ・こうすけ)、辰海 蒼磨(たつみ・そうま)、そして松田 麗虎(まつだ・れいこ)と健一(けんいち)がなにやら打ち合わせをしていた。
「麗虎、お前も店手伝え。香里亜あいつ手伝う気ねぇ」
「マスター泳ぐ気ないんだから、仕事しろよ。出張蒼月亭で」
 いきなり手伝えと言われたが、また手伝わぬでもないという感じか。そんな二人に反して浩介はやる気満々だ。
「まあまあ、今日は稼ぐっすよ」
 そして蒼磨と健一は、大量のおにぎりを黙々と食べながら話をしている。
「健一殿はどうされるでござるか?それがしは監視員とやらの仕事があるでござるが」
「ああー、何か適当に泳いだりして遊ぶわ。手伝い欲しかったら言うて」

 一方その頃。
「みんな可愛くて眼福だわ」
 シュライン・エマは、更衣室から出てきた皆を見て嬉しそうニコニコと頬笑んでいた。シュラインは紺のビキニに、上だけ留めた前開きカバーアップを着ている。これなら着たまま泳げるし、激しい運動時もビキニのズレも気にならず安心だ。座ることが多くなったりしたときのためにロングパレオもしっかり持参している。
「海で見ると一段と可愛いな」
 タートルネックっぽい黒のビキニの白いファスナーを胸元の谷間が見えるほど下ろしている黒 冥月(へい・みんゆぇ)は、白地にピンクの花柄の、ホルダーネック型のタンキニにベージュの短パンを着ている香里亜にそう頬笑む。
「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいです」
「うおー、香里亜っちも可愛い……甲乙付け難いわね。ね、アリスちゃん」
「はい、皆さんお似合いです」
 桜(皆の前ではそう名乗っている)は、面積小さめの明るい赤色のビキニブラにオフホワイトデニム生地の短パンで、アリス・ルシファールは薄いピンク地にハイビスカスの花をを散りばめた柄の可愛いワンピースだ。普段着ている服も皆お洒落だが、やはり海だと趣が違う。
 そうしていると、長い髪をツーテイルに結んだ葵(あおい)が、そっと壁から顔を出すように皆を見る。
「あの……」
「こーら、葵ちゃん。前隠さないの!ほらほら冥月さん見て見て。葵ちゃん可愛いでしょー、ツーテールもレアよ」
 無地の青いホルダータイプのビキニに、大きな薔薇が描かれたパレオをつけた葵は、恥ずかしそうに皆の前に出てきた。それに香里亜が素直に手を叩く。
「葵さん、スタイル良いですね。いいなー、私もそれだけのスタイルがあればー」
「うん、可愛いぞ。恥ずかしがっていると余計恥ずかしいから、堂々としていた方が良い」
「じゃ、日焼け止め塗ってから出ましょ」
 女子たるもの、それはしっかりしなければ。だがシュラインがそう言った途端、冥月と桜が日焼け止めを持ってワキワキと香里亜と葵に向かおうとし、目が合ってピタ止まった。
「………」
 お約束とはいえど、行動が被ると恥ずかしい物がある。そんな二人にアリスがきょとんと首をかしげた。
「皆さんお待ちでしょうから、行きましょう」

「お待たせしましたー」
 女性陣が纏まって浜辺に出てくると、皆の間からおおー、というどよめきが上がった。
「やはり女性の水着は良いものでござるな」
「そういうことを堂々と言うな」
 見惚れる蒼磨の頭を浩介がしばく。日和と悠宇はパラソルの下で、そんな皆を楽しそうに見つめている。
 そして……。
「可愛い……」
 デュナスがぼーっと香里亜に見とれていたときだった。目の前が突然影で遮られ、近くに冥月の声が響く。
「嫌らしい目で見るな」
「そ、そういう風に考える冥月さんもどうかと思います……」
 どうしてもこの二人は、香里亜を巡ると何か確執があるらしい。それを知ってか知らずか、雅隆が右手を高く上げ、宣言する。
「んじゃ、今日は一日楽しもうね。お家に帰るまでが海水浴です!」

【海辺から−やる気満々スイカ割り−】

 皆各々あちこちに泳ぎに行ったり、遊んだりし始めていた。
 保養所ということもあり、人はやはりすいている。海も綺麗で、シュラインは武彦を泳ぎに連れ出している。
「運動後のビールも美味しいでしょ」
 武彦は大抵興信所の中にいるので、こういうときに虫干しさせねば。岩場で動く物を探していると、麗虎が防水カメラを構えて何かを撮っている。
「麗虎ちゃん、なにかいた?」
「ああ、ヤドカリとかいるからさ。たまには心和む自然物も撮ろうかと思って。いつも廃墟とか樹海ばっかだから」
 そんな様子を冥月が眺めていると、海から桜が上がってきた。
「冥月さんは泳がないんですか?」
「皆で一斉に泳ぎに行ったら、荷物の番をする奴がいなくなるだろう。それより、ボディガードなのにいいのか?」
 多分桜が雅隆の護衛をしていないことを言っているのだろうが、桜は波打ち際で遊んでいる雅隆とデュナスを見て肩をすくめる。
「雅輝さんが仕事抜きにして、遊んでおいでって言ったんですよ。それに、デュナスっちの方が多分ドクターの扱い上手いと思うんですよね」
 確かにそれはそうかも知れない。次に何をやらかすか分からない雅隆を上手く扱えるという点では、デュナスが一番だ。
「桜がここにいるなら、私も少し泳ぐか」
「おおー、セクシーです」
 冥月は恥ずかしがる様子もなく、肢体を堂々と晒して歩く。すると海から戻ってきた武彦と目が合った。
「ふん、どうだ?」
 それを見た武彦は、しばらく目線を顔と胸元へ往復させる。悲しいかな、男のサガだ。
 だが……
「冥月、男なら海パンだろ」
 こいつは、それを言わないと死ぬ呪いにでもかかっているのか。次の瞬間、怒りの冥月によって武彦の体が砂に埋まっていた。影を使って砂と入れ替えてやったのだ。そしてその隣に、よく冷えたスイカを置く。
「よし、スイカ割りだ。見事割った奴は私が何でも奢るぞ」
 鬼だ、鬼がいる。しかも桜は目隠し用のタオルと、スイカ割り用の棒をしっかりと握っている。
「スイカ割りやる!私得意!一発でカチ割りますよ」
「待て、かち割るのはスイカで俺じゃない!」
 誰か助けろ。武彦が首を動かすと、シュラインが目隠しをして棒を構えていた。どうやらスイカ割りという言葉に反応して、海から上がってきたようだ。
「シュライ!俺の右だ、右」
「えっ?右を叩けばいいのね」
 こういうとき耳が良すぎるのは全く役に立たない。思い切り武彦の声がする方に爽やかに振りぬき……。
 すぱーん!
「いい絵撮れたよ。草間さんサンキュー」
「あら、やだ武彦さん!」
 目隠しを外して、シュラインは武彦のそばに近寄る。どうしても声がする方に行ってしまうのは、もう仕方ない。すると今度は桜が棒を振り上げて……。
「スーイーカーどこかなー」
「ちょ!」
 しぱーん!
「私を男と言った罰だ」
 二発も叩かれた武彦の隣では、かすりもされなかったスイカがひんやりとした空気を纏って日の光を浴びている……

◆【風の碧 海の翠】

 スイカも食べたし、武彦にも制裁を加えたので、後は日陰でのんびりしよう。
 そんな感じでゆったりとしていると、香里亜がちょこんと冥月の側にやってきた。
「日焼け止め、塗り直したいんですけど背中いいですか?」
 来た時点でくすぐろうとしていたことは、どうやら気付いていないらしい。冥月は今がチャンスと背中に日焼け止めを塗ると香里亜の脇をくすぐった。
「きゃー、冥月さんのえっちー」
「ちゃんと大人しくしてないと塗れないだろう」
 やっていることは至って悪ふざけなのだが、冥月はそれを巧みに影で遮断し男達のの視線を寄せ付けない。
「はーはー、海に入るより疲れちゃいますよ」
「そうか?香里亜、海は楽しんでいるか?」
 冥月にとって一番大事なのはそこだ。香里亜はその質問ににこっと可愛らしく笑う。
「はい。やっぱり来て良かったです」
 だったらいい。
 前々から楽しみにしていたし、その為に水着なども買った。被っている麦わら帽子もよく似合っている。
「冥月さん、喉渇きませんか?」
「ああ、そうだな。アイスコーヒーでも買ってきてもらおうか。ガムシロップとかはつけなくていい」
「分かりました。浩介さん達のお店の売り上げに協力してきますね」
 別に海の家のアイスコーヒーなどどこも同じのような気がするが、それもまた香里亜のいいところだ。結構繁盛していたから、帰ってくるのは少し遅いかも知れない。冥月はパラソルの下で紫外線を避けながら、流れる雲を眺めている。
「……こういうのんびりした時間もいいか」
 しかし。
 しばらく待っているがなかなか戻ってこない。どうしたのかと思い振り返ると、香里亜が大学生らしきグループに声をかけられているのが見えた。
「一人?どこから来たの?」
「いえ、待ってる人がいますので……」
「彼氏?」
「そうじゃないですけど」
「じゃあ一緒にビーチバレーでもしようよ」
 会社の保養所といえど、こういうのは避けられないか。集団にナンパされ、冥月に地下寄れず困る香里亜に冥月が手招きすると、香里亜はそれに気付きぱっと笑顔になる。
「冥月さーん」
 いきなり現れたセクシーな水着姿の冥月に、集団が言葉を失う。胸元まで下げたファスナーに、パレオから覗く足。そんな冥月は香里亜に近づくと、ぎゅっと肩を抱いた。
「ごめんなさいね、私『こっち』だから」
 『こっち』の意味を一瞬で察したのか、ぽかんとしたままのグループを背に、冥月は香里亜の肩を抱いたまま自分のパラソルへ連れて行く。本当であれば影でしばき倒してやりたいぐらいなのだが、保養所なのでこれぐらいで勘弁してやろう。
「み、み、冥月さん?」
「香里亜を口説く奴は許さん」
 少なくとも、自分の眼にかなう奴でなければ、安心して預けられない。チェアのあるところまで戻ると、香里亜が少し赤くなりながらコーヒーを渡してくれる。
「少し氷が溶けちゃったかも知れませんけど……助けてくれてありがとうございます」
 別に氷が溶けたぐらいで謝らなくてもいいのに。
 まあ、そんな所がまた構ってやりたくなるところなのだが。

 そうしているうちに時間はあっという間に過ぎていった。
 帰る準備をして着替えると、ピンクのワンピースに着替えた香里亜が冥月を誘う。
「車が出るまで時間があるので、少しお散歩しませんか?」
 西日が差し込む夕焼けの海。
 その波打ち際で、波から逃げたりして遊びながら歩いていると、香里亜が水平線を見てぼそっと呟いた。
「鴉さんが連れてた迷子さん、ちゃんと帰れたかな……」
 やっぱり何か連れていたか。霊の事が気に掛る様子に冥月は頭を撫でる。
「大丈夫だ。それに死者相手なら、あいつの方が場数を踏んでいる」
 鴉は死者の声が聞こえるだけではなく、腕利きのエンバーマーだ。死者を相手にするのが仕事だ。そうでなければあんなに余裕を見せていたりはしない。
「そうですね。鴉さんなら安心かな」
 しばらく無言で歩くと、冥月は残念そうに呟いた。
「香里亜に好きな奴ができたら、こうして誘ってもらえなくなるなぁ」
「えっ?い、いや……それはどうでしょう」
 今しばらくは、こうしていたいものだが。
 冥月は戸惑う香里亜の手を引き、波の音を聞きながら歩いていった。

◇【黄昏の海】

「皆さーん、楽しみましたかー」
 保養所で仕事が残っているという桜と葵を残し、小型バスは東京に向けて出発し始めた。皆心地よい疲れの中、雅隆だけが元気にマイクを握っている。
「何でお前はそんなに元気なんだ」
 前の席ではナイトホークが珍しく眠そうな顔をしていた。
 それぞれの思い出。
 それは一緒に歩いたり、泳いだり。迷子を無事に帰したり、泣いたり怒ったり。
 海に来なかったら、きっと出来なかったこと。大事な思い出。
「お家に帰るまでが海水浴ですよー」
 そんな声を聞きながら、皆は各々の夏の思い出を胸に抱き、窓の外の海を眺めていた。

fin

◆登場人物(この物語に登場した人物の一覧・発注順)◆
【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
0086/シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
6392/デュナス・ベルファー/男性/24歳/探偵兼研究所事務
2778/黒・冥月/女性/20歳/元暗殺者・現アルバイト探偵&用心棒
7088/龍宮寺・桜乃/女性/18歳/Nightingale特殊諜報部/受付嬢
6725/氷室・浩介/男性/20歳/何でも屋

6897/辰海・蒼磨/男性/256歳/何でも屋手伝い&竜神
6047/アリス・ルシファール/女性/13歳/時空管理維持局特殊執務官/魔操の奏者
3524/初瀬・日和/女性/16歳/高校生
3525/羽角・悠宇/男性/16歳/高校生

◆ライター通信◆
ご参加ありがとうございます、水月小織です。
今回は「◆個別」「☆グループ」「◇集合」と、分けさせて頂きました。グループのスイカ割りは三パターンありまして、そこではあえてご一緒に参加された方を分けて描写してます。
皆さんがNPCを誘って下さったので、思った以上に賑やかでしたが如何だったでしょうか。迷子を戻したり、海で遊んだり、二人の思い出が出来たりと、これが夏のアルバムの一つになっていれば幸いです。
リテイク、ご意見は遠慮なく言って下さい。
参加して頂いた皆様へ、精一杯の感謝を。ありがとうございました。